LINEヤフーが「Yahoo!ショッピング」で進めるAIエージェント化が、利用拡大と機能拡張の両面で進んでいる。2026年7月時点で、AIエージェントを経由した「Yahoo!ショッピング」の注文金額は全体の約20%に達したという。ユーザー向けでは比較、探索、配送不安の解消へと機能を広げるほか、ファッション提案機能や、ユーザーごとに専用の売り場をAIと一緒に作る機能などを導入。一方、出店者向けの「Yahoo! EC Pilot」では、商品情報作成や問い合わせ対応といった業務支援から、ストアのデータを分析して課題や次の施策を提案する領域へと進化させる。「Yahoo! EC Pilot」の利用が約半数のストアに広がり、利用ストアは未利用ストアと比べて前年取扱高の成長率が15ポイント高いという成果も出ている。
「Yahoo!ショッピング」のAI経由注文が約20%に、利用拡大をけん引する3機能 LINEヤフーは8月18日、メディア向けに「Yahoo!ショッピング AIエージェント」に関する説明会を実施し、ユーザー向け・出店者向けの現状と今後の展開を説明した。登壇したのは、コマースドメイン ショッピングSBU プロダクト開発1ユニット ユニットリードの市丸数明氏と、コマースドメイン ショッピングSBU プロダクト開発2ユニット ユニットリードの河内俊介氏。
写真左からLINEヤフーのコマースドメイン ショッピングSBU プロダクト開発2ユニット ユニットリードの河内俊介氏、同プロダクト開発1ユニット ユニットリードの市丸数明氏 LINEヤフーは、2026年2月に提供を開始したAIエージェントを、商品を「検索する」ためだけの機能から、比較・検討、購入後の配送確認まで含めた購買行動全体を支援する仕組みへと広げている。
「Yahoo!ショッピング AIエージェント」は2026年2月に提供を開始。LINEヤフーによると、2026年7月時点でAIエージェントを経由した注文金額は全体の約20%に達した。5月20日時点の15%から5ポイント上昇しているともいい、AIを介した購買行動が急速に広がっている。
AI経由注文が約20%に(画像はプレゼン資料から編集部がキャプチャ)
現在、利用をけん引している主な機能は次の3つ。
おトクな日を提案する機能 AIおまかせ比較 AIお買い物メモ 「おトクな日を提案する機能」と「AIおまかせ比較」は、いずれも「Yahoo!ショッピング」来訪者の約37%が利用しているという。「AIお買い物メモ」は6月の提供開始から1カ月で利用者数が約12倍に拡大し、利用率は22%に達した。
比較・検討」と「探索」がAI利用をけん引 LINEヤフーは、買い物行動を「想起」「探索」「比較・検討」「意思決定」「配送・利用」という流れで整理している。現時点で特に利用率が高いのが、「比較・検討」と「探索」を支援する領域だ。
「おトクな日を提案する機能」 いつ購入するのが得なのか分からないユーザーを支援する。
「AIおまかせ比較」 「何を基準に比較すればいいのか分からない」「商品を1つずつ比較するのが面倒」といった悩みを支援する。気になる商品について、「早く届く」「価格が安い」などの条件を指定すると、AIが複数の商品を比較して提案する。
「AIお買い物メモ」 欲しいものをテキストや写真などでメモすると、AIが内容を読み取り、商品候補を提案する。
たとえば、小学校から指定された水遊び用サンダルの条件を記したスクリーンショットをもとに、AIが「マリンシューズ」を提案するデモを披露した。正確な商品名を知らなくても、用途や条件から商品にたどり着ける点が特長だ。
AIエージェントを経由した注文金額は、2026年7月時点で全体の約20%まで到達している。ユーザーの購買行動は明らかに変わってきている。また、AI利用ユーザーと非利用ユーザーではCVRに1.5倍の差がある。しかも、AIの利用率が高まってもこの差は大きく変わっていない。AI利用の拡大が『Yahoo!ショッピング』全体の流通額の押し上げにもつながっている。(市丸数明氏)
コマースドメイン ショッピングSBU プロダクト開発1ユニット ユニットリードの市丸数明氏 「探す」だけではない、購入後の不安までAIが支援 LINEヤフーは今後、AIによる支援範囲を購入前から購入後へ広げる。
今後の主なユーザー向け機能は次の通り。
9月→「AIおまかせコーディネート」/商品に合わせてコーディネートを提案 9月中旬→「爆買ウルトラSALE」連動施策/AIお買い物メモを活用 9月30日→「AIお届け予報」/配送状況・到着見込みを案内 秋以降→ヤフショメイク(仮)/ユーザー専用の売り場をAIと作成 「AIお届け予報」で配送の不安を軽減 9月30日に提供予定なのが「AIお届け予報」だ。 ストアの過去の配送実績などをもとに、AIが現在の配送状況や「いつごろ届くのか」という見通しを整理・要約して案内する。配送が遅延した場合には、状況に応じて問い合わせ導線も提示する。
ユーザー側では「いつ届くのか分からない」という購入後の不安を軽減し、ストア側では配送に関する問い合わせの削減につなげる狙いだ。
AIエージェントをリリースした際も、配送について質問するユーザーは非常に多かった。AIお届け予報では、ストアの過去の配送実績まで含めて、今どこにあり、いつごろ届くかを整理して伝える。ユーザーの不安軽減だけでなく、ストアへの問い合わせ減少にもつながる。(市丸数明氏)
「AIおまかせコーディネート」で商品単体からコーデ全体を提案 9月提供予定の「AIおまかせコーディネート」は、気になる衣料品を選ぶと、ファッションスタイル別に複数のコーディネートを提案する機能だ。
単に画像を生成するだけではなく、商品の着丈などのデータをもとに、着用時のサイズ感もイメージ化する。ブランドによって同じサイズ表記でも実寸が異なるファッションECの課題を、AIによる提案で補う狙いがある。
主な特長は次の通り。
商品単体ではなく、コーディネート全体で提案 商品のサイズデータなどを踏まえ、着用時のサイズ感もイメージ化 開始当初は協力を得た一部ストアの商品から提供 なお、ユーザー自身の全身写真を使ってコーディネートを確認する「バーチャル試着」のような機能ではないとしている。
商品単体からコーデ全体を提案(画像はプレゼン資料から編集部がキャプチャ) 「ヤフショメイク(仮)」でユーザーごとの売り場をつくる 秋以降に提供予定の「ヤフショメイク(仮)」は、AIと一緒にユーザー専用の「Yahoo!ショッピング」の売り場を作る機能だ。
「Yahoo!ショッピング」内での行動・購買履歴や長期記憶を活用し、ユーザーが気になっている商品や情報にすぐアクセスできるようにする。ページのデザインや掲載する商品をユーザーがコントロールできる点も特長だ。
ユーザーごとの売り場が作れるように(画像はプレゼン資料から編集部がキャプチャ) たとえば、以前気になっていた商品をすでに別の場所で購入していた場合、「これは不要」と意思表示すれば、以後の表示内容に反映できる。
説明会では、長期記憶を利用した商品レコメンドによってCVRが2.23ポイント上昇した事例も紹介。この成果を踏まえ、より高度なパーソナライズへと進める考えを示した。
今までのようにサイトに来てから欲しいものを探すのではなく、サイトに来た時点で欲しいものがそろっている世界をまずは作っていきたい。(市丸数明氏)
決済のAI化は「技術的には可能」、まずは信頼構築を優先 ユーザー向けAIエージェントの進化に関連して、説明会ではAIによる購入・決済の自動化についても言及があった。
市丸氏は、購入や決済については技術的に実現可能な段階にあるとしながらも、現時点では優先しない考えを示した。
背景にあるのは、AIに購買を任せるためのユーザーとの信頼関係だ。
現状では、比較、探索、意思決定支援などの「上流」のプロセスに注力し、AIに「任せても大丈夫だ」と感じてもらえる体験を先に積み重ねる。購入・決済の自動化にすぐ踏み込むのではなく、段階的にAI活用を広げる方針だ。
現時点ではユーザーとの信頼関係構築を優先している。AIの利用を強制するつもりはない。AIに任せたいものは任せ、自分で検索して買い物を楽しみたい場合は従来の使い方もできる。(市丸数明氏)
この考え方は、AIエージェントによって従来型のECを置き換えるのではなく、ユーザーが「自分で選ぶ」「AIに任せる」を使い分けられる環境を残すというもの。AIによる決済代行についても、技術面だけでなく、利用者がどこまでAIを信頼できるかを見極めながら進める姿勢が鮮明になっている。
出店者向け「Yahoo! EC Pilot」は利用ストアが約半数、活用ストアの成長率は15ポイント高い ユーザー向けだけでなく、出店者向けのAI化も進んでいる。
「Yahoo! EC Pilot」は2026年3月に提供を開始。ストアクリエイターPro上で利用でき、現在は次のような機能を提供している。
文章作成支援 商品情報作成支援 ユーザー向け接客・問い合わせ支援 チャットによる質問対応 分析支援 LINEヤフーによると、現在は約半数のストアが利用している。さらに、EC Pilot利用ストアは未利用ストアと比べて、前年取扱高の成長率が15ポイント高いという。
Yahoo! EC Pilot」は利用ストアが約半数、活用ストアの成長率は15ポイント高い(画像はプレゼン資料から編集部がキャプチャ) Yahoo! EC Pilotの特長として、同社は次の3点をあげた。
提案型ソリューション LINEなどグループサービスとの高い接続性 毎日の利用に寄り添った機能設計 「質問すると答えるAI」から「先回りして提案するAI」へ Yahoo! EC Pilotの今後の強化ポイントは、AIがストアの状況を自ら分析し、次のアクションまで提案する方向にある。主な新機能は次の通り。
コンサルティングレポート(仮) ストアのデータをAIが分析し、課題を抽出。改善案や期待効果を提示し、施策実行後の結果までレポートする。
LINE配信分析 LINE公式アカウントの配信結果を分析し、次のコミュニケーション施策につなげる。クーポン発行など、具体的な施策提案も想定している。
これまでの「質問すると答えるAI」から、ストアの状況を見て先回りし、改善策を提案するAIへと役割を広げる。
白鳩ではCVR40%増、月間販売数20%増 Yahoo! EC Pilotの活用事例として説明会で紹介されたのが、インナーウェアを扱う白鳩のケースだ。
EC Pilotが競合分析を行った結果、同カテゴリーの上位商品では送料無料対応が多く、それが差になっていると指摘。これを受けて白鳩が送料無料化を実施したところ、次の成果が出たという。
CVR(購入率):40%増 月間販売数:20%増
AIが単にデータを可視化するだけではなく、改善余地を具体的に示し、ストアが施策を実行するところまでつなげた事例といえる。
白鳩ではCVR40%増、月間販売数20%増(画像はプレゼン資料から編集部がキャプチャ) AI時代の商品情報は「スペック」から「購入の文脈」へ 説明会の質疑応答では、AIに選ばれやすい商品情報のあり方についても質問が出た。 LINEヤフーは、商品説明や商品名、フリースペースなどをAIが扱いやすい形に構造化する取り組みを進めており、約半数のカテゴリーで整備が進んでいると説明した。
そのうえで、今後は商品そのもののスペックだけでなく、購入に至った背景を示す「コンテキスト情報」が重要になるとの見方を示した。具体的には、
いつ買ったのか 誰向けに買ったのか どんな用途で買ったのか どんなタイミングで必要になったのか といった情報だ。AIエージェントが商品提案に関与する比重が高まれば、「何の商品なのか」だけでなく、「誰が、どのような状況で、何のために必要とする商品なのか」という情報が、商品とのマッチング精度を左右する可能性がある。
LINEヤフーは、AIエージェントだからこそ取得できるこうしたコンテキスト情報を、今後積極的に拡充していく考えを示している。
ストア側の負担はどうなる? プラットフォーム側で補完 AI機能が増えるほど、出店者側では「対応すべきことが増えるのではないか」という懸念も出てくる。
これに対し説明会では、ストアに細かなテクニカル対応を一方的に求めるのではなく、LINEヤフーが保有するデータや既存の商品情報をAIが扱いやすい形に再構成することで対応していく考えが示された。
商品説明、商品名、フリースペースなどから構造化データを生成する取り組みは、約半数のカテゴリーで進行中だという。
また、EC Pilotを全ストアが使うようになれば差別化が薄れるのではないかという質問に対しては、送料無料対応の可否、広告出稿、レビュー収集など、AIの提案を実行できるかどうかはストアごとに異なると説明。AIが同じ提案をしても、実行力や判断の違いによって差は残るとの見方を示した。
めざしているのは、個別作業の効率化だけではなく、ストアが負担の少ない、より良い判断をして成長を実感できること。大切なのは、データを見える化するだけではなく、AIを使って分析し、改善ポイントを提案すること。成長に追われる日々を、成長を楽しむ日に変えたい。(河内俊介氏)
コマースドメイン ショッピングSBU プロダクト開発2ユニット ユニットリードの河内俊介氏 「Yahoo!ショッピング」のAI化、「商品を探すEC」から「欲しいものがそろうEC」へ 「Yahoo!ショッピング AIエージェント」は単なる検索補助機能ではなく、購買行動そのものをAIで再設計しようとしている。2026年7月時点でAIエージェント経由の注文金額が全体の約20%に達したことは、その浸透スピードを象徴している。
主要な数値指標を改めて整理すると、次の通り。
AIエージェント経由の注文金額:全体の約20% 「おトクな日を提案する機能」利用率:約37% 「AIおまかせ比較」利用率:約37% 「AIお買い物メモ」利用率:22% 「AIお買い物メモ」利用者数:提供開始1カ月で約12倍 Yahoo! EC Pilot:利用ストア約半数 EC Pilot利用ストア:非利用ストアより前年取扱高成長率が15ポイント高い 「Yahoo!ショッピング」のAI化は、商品検索や比較の効率化から、コーディネート、配送、店舗運営まで広がり始めている。出店者向けでも、AIは「質問に答える」段階から、データを分析して次の施策を提案する段階へ移りつつある。AIがユーザーの代わりに探し、出店者の代わりに考える。今回の説明会からは、そんな「AIエージェント時代のEC」の姿が見え始めたといえそうだ。
本当にこれに尽きると思うのです。SEOが終焉を迎えたのではなく、検索ボリュームの多いキーワードを調べ、検索上位を狙うSEOは終わっているのではないでしょうか。
検索結果やチャットでの答えを返すときに、クエリファンアウト(1つの質問を、AIが複数の関連する検索に広げて調べる仕組み)も重要になるなか、これからのSEOにこそ「王道の良いSEO」が必要になってくるでしょう。
八百屋さんで「大根をください」と言ったら、無言で包んでくれる店主と、「何に使うの?」「その調理法ならこういう大根がいい」とおすすめしてくれる店主、好き嫌いはあれど、どちらが専門家として信頼できるでしょうか。
お客さんをよく見て、健やかに運用していくための理想は「銭湯の番台」のような心得だと考えています。男湯・女湯の入口、脱衣所、浴場までを見渡せる場所。今、誰がどうしているか、何を欲しがり、困っているかのようなこともわかる場所。
それは、アクセス元、アクセスしてきたクエリ、サイト内での動きを見るECの運営でならうべき点が多くあると思います。それらを見ていないECは、番台にブラインドを下ろしているようなものですね。