「楽天市場」有力腕時計バンド店の事業承継。引受先がEC未経験でもスムーズに譲渡できたワケとは? | 通販新聞ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム

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EC業界においても、後継者不足による事業の担い手不足に課題を持つ事業者は少なくない。事業承継をサポートするサービスを展開する楽天における、承継の成功事例を紹介する

事業運営者の高齢化や後継者不足といった課題が深刻化する中で、中小企業にとって深刻な悩みとなっている「事業承継」。ベンチャーのイメージが強いEC業界だが、楽天グループの仮想モール「楽天市場」が誕生したのは1997年のこと。すでに30年近く事業を続けているEC企業もあるわけだ。また、傾いていた老舗の小売りや卸などが、黎明期のEC市場に進出することで事業を立て直したというケースは珍しくない。そういった事業者も「代替わり」の時期を迎えているわけで、EC業界にとっても事業承継は喫緊の課題といえる。

楽天の出店店舗における事業承継事例

こうした状況を受けて楽天では、出店店舗の事業承継に関する意思決定や、M&A仲介会社の紹介、譲受企業の選定などにおいて、事業承継希望店舗と譲渡先企業の双方が納得する形で店舗の受け渡しができるよう支援するサービス「楽天事業承継アシスト」を2019年に立ち上げた

楽天がサービスを展開している「楽天事業承継アシスト」トップページ(画像はサービスサイトから追加)楽天がサービスを展開している「楽天事業承継アシスト」トップページ(画像はサービスサイトから追加)

マッチング成立後も、店舗がスムーズに運営移行できるよう、楽天市場に登録している企業情報の変更手続きのサポート、譲渡先の企業に対する店舗の運営ガイダンスなどを実施している。

このたび、TMプラネットが同サービスを活用し、運営する「腕時計とバンドのアビーロード」(編注:以下「アビーロード」)楽天市場店を、タオルや作業着の加工、卸販売事業を手掛けるアシークに売却した。

TMプラネットの田口正社長(左から4番目)、アシークの斉木美樹代表(左から5番目)TMプラネットの田口正社長(左から4番目)、アシークの斉木美樹代表(左から5番目)

TMプラネットは「アビーロード」を2000年に楽天市場へ出店、月間優良ショップ賞を多数受賞するなど、腕時計ジャンルの有力店として知られてきた。実店舗や蒔絵時計なども手がけているが、今回譲渡したのはEC事業、それも楽天市場店のみとなる。

TMプラネットの田口正社長は、事業譲渡を考えたきっかけについて「EC事業は2名の社員に任せていたが、コロナ禍後に仕事の負荷が増えたこともあり相次いで退社してしまった。幸い人員は補充できたものの、時計業界のことは私でないとわからないので、“3足のわらじ”は自分の年令を考えると厳しい。トラブルが起きた際に対応する知力・体力が衰えていくのではないかと考えた」と説明する。

全社ではなく「楽天店舗のみ」の譲渡を実現

事業の譲渡を考えはじめたのは2023年ごろ。ちょうど、楽天より「楽天事業承継アシスト」に関するメールが来たこともあり、すぐに申し込みをしたという。田口社長は「会社を丸ごと売るのではなく、EC事業のみ譲ることを考えていた。楽天市場の店舗をスムーズに譲渡できるサポートサービスということなので、ちょうどいいと思った」と振り返る。

1.8年でアシークへの事業承継を決定

楽天では、提携する複数のM&A仲介会社の中からバトンズを紹介。楽天もサポートしながら買い手探しを行い、1年8か月の期間を経てアシークに事業承継を行うことが決まった。「当初は時計・宝飾業界に通じた会社に売却したいと考えていたが、タイミングや条件面でなかなか折り合わなかった」(田口社長)。

同店は当初、腕時計をメインに扱っていたが、値崩れが激しくなったことなどを受け、腕時計バンドをメイン商材にシフト。売り上げはピーク時の月商1000万円から300万円まで落ちたものの、利益は以前よりも出るようになったという。ただ、バンドが主力商材ということもあって、同じ業界ではなかなか買い手がつかなかった

アシークはEC経験ゼロからスタート

アシークは2023年創業で、作業着の名入れ事業を青森県八戸市の事業所で展開している。時計業界とは無関係なのはもちろん、ECについても全くの未経験。当初は本命の買い手先ではなかったという。

田口社長は「業界の人じゃないし、ECの経験もないし、本当に大丈夫かなと思っていた。ただ、私自身も40年前に妻と二人三脚で会社を立ち上げた経験がある。アシークさんもご夫婦で会社を経営されているということで親近感を抱いた」と話す。アシークの斉木美樹代表(現在の「アビーロード」運営者)に盛岡まで来てもらい、話し合いもしたという。「時間はかかるかもしれないが、私がノウハウを伝えればやっていけると確信した」(田口社長)。

引き継ぎは1年の見通し

事業譲渡は4月11日に成立。5月現在(※編注:「通販新聞」による記事配信5月28日時点)は引き継ぎを行っている最中だ。仕入れルートの紹介はもちろん、通販サイトの運営ノウハウ伝授など、教えなければいけないことは山積している。田口社長は「引き継ぎは1年かかるだろう。せっかく事業を承継してもらったのに、すぐに退店してしまうということには絶対にならないよう、サポートしていきたい」と語る。

アシークによる事業承継の変遷

TMプラネットより、「腕時計とバンドのアビーロード楽天市場店」を譲受した、タオルや作業着の加工、卸販売事業を手がけるアシーク。同社は2023年創業で、作業着の名入れ事業を青森県八戸市の事業所で展開。時計業界とは無関係なのはもちろん、ECについても未経験だった。

アシークの斉木代表(左)はEC経験ゼロからの挑戦となったアシークの斉木代表(左)はEC経験ゼロからの挑戦となった

継承した店舗の運営を手がけるのは、アシークの斉木美樹代表。同社は中小企業診断士である夫の家業を引き継ぎ八戸市で事業を営んでいる。

斉木代表は、ECへ参入した理由について「八戸と東京の2拠点で事業を展開したいと考えていた。東京を離れられない事情があるのでECは最適」とした上で、「北東北の中小企業は経営者の高齢化が進んでおり、後継者のいない会社は廃業を余儀なくされ、行き場のない従業員が増えていると耳にした。そこで、北東北の中小企業を買収することを考えるようになった」と説明する。

在庫管理のしやすさから時計関連を買収

なぜ時計関連だったのか。「当初はキャンプ用品を扱っているEC企業や、ペット用品のEC企業にコンタクトしていたが、本社が自宅兼事務所なので、SKUが多すぎると対応しきれない。しかし、時計バンドならかさばらないし、在庫は段ボール数個で済むのが大きかった」(斉木美樹代表、以下同)。

参入障壁の高さも時計バンド商材の魅力

当初は500万円程度で買収できるEC事業を探していたという。「アビーロード」の売り値は予算オーバーだったものの、「まだ取り扱っていないバンドもあり、伸びしろがある。また、従業員は引き継がず私1人で運営するので、利益もかなり出せるのではないか」と考え、M&A事業承継プラットフォーム「バトンズ」経由でコンタクトを取ったという。

近年は、スマートウォッチの普及もあり、時計バンドの需要は伸びている。ただ、仕入れルートの開拓が難しく、参入障壁が高い点も魅力だった。

業界には全く通じていないアシークだが、TMプラネット田口正社長の尽力で、仕入れ条件についても、以前と同等か、やや高い程度で引き継ぐことができた。また、出荷は東京の事務所から行っているが、宅配事業者との契約もこれまでと同じ条件だ。

買収先企業で1か月研修

「本当に運営できるのか、最初はとても不安だった」と吐露する斉木代表。ただ、買収前に1か月かけてTMプラネットで研修を受けた。RMS(店舗管理システム)の使い方や発注の仕方、顧客からのクレームへの対処法、さらにはサービスとして行っているバンドの穴開けや長さ調整のやり方などを学んだ。「研修を受けたことでかなり自信がついた。おかげで比較的スムーズに事業承継ができているのではないか」。

買収先社長が1年間アドバイザーとなり後援

さらに田口社長も1年間はアドバイザーとして尽力することになった。斉木代表は「困ったことがあれば田口さんが教えてくれるし、楽天市場関連でわからないことがあったら(『楽天事業承継アシスト』担当者である)濱本(芳郎)さんが対応してくれる。1人で悩むことがないのが心強い」と安心感を口にする。

今後、アビーロードをどういった店にしていきたいのか。

斉木代表は「25年続けてきた優良ショップを引き継げたことは、当社にとって大きなメリットであり財産。田口さんが築いてきたブランドを大切にしていきたい」とした上で、「八戸市では作業着に刺しゅうを施す事業を手がけているので、時計バンドでも同じことができれば。また、SNS活用は手付かずなので、『LINE』などを積極的に使って販促していきたい。さらにはアビーロードでしか買えないオリジナル商品を開発し、売り上げを伸ばしていければ」と意欲的に語る。

「アビーロード」は「楽天市場」内の優良ショップに何度も選ばれてきた実績を持つ(画像は「楽天市場」からキャプチャして追加)「アビーロード」は「楽天市場」内の優良ショップに何度も選ばれてきた実績を持つ(画像は「楽天市場」からキャプチャして追加)
楽天は「ECの事業承継」広まりをめざす

今回は、EC未経験企業が楽天市場店を承継することになったわけだが、楽天によれば珍しい事例という。譲渡対象となるアカウントには、蓄積されてきたレビューといった高評価の「実績」があるわけで、EC未経験企業が引き継いで出店を続ける場合、当然のことながら審査のハードルが高くなるからだ。

ただ、今回のケースでは、TMプラネットのサポートが得られることや、アシークの将来性を鑑みて、アカウントが継続されることになった。アシークの斉木代表も「楽天や担当者である濱本さんのサポートは本当に大きかった」と感謝の言葉を口にする。

後継者不足による退店に危機感

コマース品質管理部経営支援グループの濱本芳郎氏は「EC業界も世代交代の時期を迎えているのに、事業承継という概念が浸透していない。ECの場合、事業撤退の手続きが実店舗と比べて容易であることも影響している。出店店舗が長年培ってきたノウハウや顧客基盤には大きな価値があるので、後継者不足による退店は楽天にとっても大きな損失」と危機感を口にする。

こうした状況を受け、2019年からスタートした楽天事業承継アシスト。今回の事例も踏まえ、濱本氏は「ECの事業承継はまだまだ認知度が低いので、一般化するのが目標。そのためにもTMプラネットさんのような後継者不足の事業者をサポートしていきたい」と力を込める。

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