楽天グループがAIエージェントを軸にしたコマース戦略を加速。AIエージェントはすでに11サービスで稼働し、今後は特化型とスーパーエージェントの両軸で展開を進める。
楽天グループのAI戦略が進展している。同社の2026年1−3月期(第1四半期)決算説明会で、チーフAI&データオフィサー(CAIDO)のティン・ツァイ(Ting Cai)氏が、楽天のAI戦略や差別化の源泉、エコシステム全体で進めるAIエージェント展開の進捗について説明した。
ティン氏は、楽天のAI戦略について「AIの力で人間の想像力を高める」ことをビジョンに掲げていると説明。その実現に向け、オンライン・オフラインを合わせて1000万以上のタッチポイント、国内月間アクティブユーザー4588万人規模の楽天エコシステムを活用し、ユーザー体験の高度化と事業成長の両立をめざしているとした。ユーザーは新しいサービスを簡単に見つけられるようになり、事業側は新サービス立ち上げ時の顧客獲得コスト低減につながるとしている。

楽天エコシステムの優位性(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)AIで検索・レコメンド・広告・顧客対応を高度化
ティン氏は、楽天の強みとして、多様な事業ポートフォリオと楽天IDを軸に連携したエコシステムを挙げた。日常消費からビジネス利用まで幅広いニーズに対応するサービス群のなかで生まれる多様なデータをAIと組み合わせることで、より深い顧客理解と高品質なサービス提供が可能になると説明した。
AIの活用領域としては、検索、レコメンデーション、広告、カスタマーサービスを挙げ、ユーザーのニーズをより深く理解し、パーソナライゼーションを通じて顧客満足度やリピート利用、サービス定着率の向上につなげる考えを示した。
また、AIによって音声、画像、会話といった新たなインターフェースでユーザーと接点を持てるようになり、より多くのユーザーが自分に合った方法でサービスを利用できるようになるとした。
「お買い物マラソン」での店舗選びもAIが支援
AIによる支援の具体例として、「楽天市場」の販促施策「お買い物マラソン」にも言及した。楽天市場では、複数店舗で買い回ることでポイント倍率が高まるが、「どの店舗を選べばよいか」といった判断に対し、AIがレコメンデーションを提供できるようになっているという。
ティン氏は、AIによってユーザーのニーズをより早く捉え、具体的なアクションにつなげられるようになると説明。ポイントプログラムやキャンペーンの理解を支援し、購買プロセス全体をガイドする役割も担えるとした。
楽天ID、決済、配送の一体運用が外部AIにない強み
楽天がAI時代において差別化できる理由として、ティン氏は「楽天IDを軸にしたエコシステム」を強調した。楽天IDを通じて、過去の利用履歴やユーザーの嗜好を含むデータ資産を蓄積しており、それをもとに最適化されたサービスを提供できるという。
さらに、共通ID、コンテキスト、シームレスな決済・発送・配送といった仕組みは、外部のAIエージェントが容易に再現できない優位性だと説明。各事業領域における深い専門知識を活用したAIエージェントを展開することで、単独の汎用エージェントでは実現しにくい高度な体験を提供できるとした。
同氏は、「AI時代において、単にデータを保有しているだけでは十分な競争優位にはならない」とも指摘。データからどのような価値を生み出し、ユーザーやマーチャントとの関係性、経済的・情緒的な付加価値につなげられるかが重要だとの認識を示した。

楽天ID、決済、配送の一体運用が外部AIにない強み(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)特化型エージェントと「スーパーエージェント」を並行開発
楽天のAIエージェント戦略は、大きく2つの方向で進めている。1つは、各領域において深い専門性を持つ「特化型エージェント」の構築だ。これにより、ユーザーは従来のWeb検索を経由せず、商品やサービスの発見から比較検討、購買意思決定までを楽天内で完結しやすくなる。
もう1つが、複数サービスを横断してユーザーのタスク達成を支援する「スーパーエージェント」の構築だ。ユーザーが漠然とした要望を伝えるだけで、AIが記憶や対話を通じてニーズを把握し、計画、実行、反復を行いながら、エコシステム内の複数サービスにまたがるアクションやトランザクションを支援する構想を描く。
ティン氏は、今後はAIエージェントがより多くのタスクを完了できるようにし、検討初期段階での接点を広げることで、楽天のAIを「あらゆる問い合わせやニーズに応えられる第一の選択肢」として確立したい考えを示した。

特化型エージェントと「スーパーエージェント」を並行開発(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)AI基盤にも投資、自社開発と外部連携を両立
AI戦略を支える基盤として、楽天はインフラ、データセンター、GPU最適化、モデルシステム、アプリケーション、エージェントに至るまで各レイヤーに投資しているという。
AIモデルについては、「最高のものを自社で構築するとともに、最高のパートナーと協業する」方針を掲げる。ティン氏は、OpenAIやAnthropicなどの大手AI企業に加え、スタートアップとも早い段階から連携してきたと説明した。
AIエージェントはすでに11サービスで稼働
楽天は2025年7月の「Rakuten Optimism」でエージェント型AIプラットフォーム「Rakuten AI」を発表して以降、取り組みを本格化してきた。現在は11サービスでAIエージェントを提供しているという。開発中で直近導入予定のAIエージェントは8サービスあり、導入計画中のAIエージェントは50サービス以上にのぼるという。

導入計画中のAIエージェントは50サービス以上(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)楽天は、エコシステム全体でAIエージェントの構築、テスト、展開を迅速に進めており、今後もすべてのサービスをAIエージェントで強化していく考えを示している。
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人が検索して選ぶ際に必要な「検索エンジン最適化」と、AIに選ばれるために必要な「AI最適化」は本当に異なるものなのでしょうか。
「AIによって人は検索しなくなる」「AIによる概要(AI Overviews) によってゼロクリック検索が増える」という趣旨の文献を読むことも多いです。しかし、人が選んで手にしたい「欲求」、知りたいという「探究心」を失わない限り、従来の検索はなくなったり置き換わったりするのではなく、AI検索と併用されるものだと思っています。