24時間365日ライブ放送のテレビ通販番組「ショップチャンネル」を運営するジュピターショップチャンネルの業績が好調だ。2025年3月期(2024年度)は、前期比6.0%増で過去最高売上となる1677億9200万円を達成し、2期連続の増収となった。営業利益は同14.0%増の233億4600万円だった。2025年度も同水準を維持しており、着地にも期待できる状況だという。この成果をもたらしたのが、テレビ・デジタル・リアルを融合した「ショッピングエンターテイメント」の方針にひもづく緻密な戦略だ。2026年で創業30周年を迎えた同社の上席執行役員 営業統轄本部長の宮内正史氏に、「戦略の狙いと成果」を聞いた。
ほぼオリジナル商品。顧客は60代以上が75% 1996年に創業し、2026年に30周年を迎えたジュピターショップチャンネル。QVCジャパン、ジャパネットホールディングスと並ぶテレビ通販の最大手だ。創業年に放送を開始したショップチャンネルでは、毎週約500の商品を紹介し、そのうちのほとんどが同社のオリジナル商品だという。
オリジナル商品を多様なカテゴリーでそろえる(画像提供:ジュピターショップチャンネル) 「ほかで買えるものを売っても意味がない 」というのが、当社の基本的な考えです。魅力的ながら広く認知されていない商品を買い付けたり、各メーカーと協力して当社のオリジナル商品を開発したりして、他社と差別化を図っています。(宮内氏)
ジュピターショップチャンネルでは、ジュエリー、ファッション、コスメ、美容・健康、ホーム、家電、グルメ、コレクタブル、体験型サービスの全カテゴリーに専属バイヤーを設け、国内外から商品の買い付けや発掘をしている。
顧客の年齢層は60代以上が75%を占め、男女比は女性89%、男性11%となる(2025年3月時点)。団塊世代がメインだが、その世代を親に持つ団塊ジュニア世代(2025年時点で50~54歳)が新たな顧客層になりつつある という。
顧客の年齢層は60代以上が75%、男女比は女性が89%だ(画像提供:ジュピターショップチャンネル) 多様なカテゴリーのなかでも近年売れ行きが良いのが、洋服、靴、バッグ、ジュエリー、コスメなどの「外出向け商品」、UVコスメ、冷感寝具などの「猛暑対策商品」、そして、非常食、簡易トイレ、非常用電源などの「防災関連商品」だ。1万円前後の高級コスメや1万円台から数百万円まで幅広くそろえるジュエリーなど、高額商品も売れ行きがいいという。
そして、その好調を導いたのが、テレビ・デジタル・リアルを連携させた施策の数々だ。
ライブ放送を“双方向”にシフト。ファン化につなげる 新たなショッピングエンターテイメントを創造するにあたり、ショップチャンネルでは、「顧客との双方向コミュニケーション 」と「1人ひとりに向けたOne to One(ワントゥワン)の商品・サービスの提供 」の2点を掲げている。
同方針に則り、2022年3月からテレビ通販のスタイルを変更。画面にQRコードを表示して視聴者のコメントを募り、ライブコマースのようにコメントを随時拾いながら番組を進めている。さらに、視聴者の投稿をもとに作り上げる「モノを売らない番組」も登場した。毎週月曜から金曜の15時に10分間だけ放送する「Oh!Cha15(お茶行こう)」は、「最近のうれしいこと」や「私の中に棲む鬼」といったテーマに対する投稿を募集し、番組内で紹介している。通販番組というより、「井戸端会議」のような雰囲気だ。
モノを売らない番組「Oh!Cha15(お茶行こう)」は、視聴者の投稿を中心に展開している (画像はショップチャンネルのYouTubeからキャプチャ) 出演者やゲストからの“一方通行”の情報伝達から、視聴者に投稿で参加いただく“双方向”のコミュニケーションに大きく転換しました。それにより投稿数が増え、常連の投稿主が増えるなどショップチャンネルと視聴者とのコミュニティが形成 されています。この転換を図ってから顧客数やリピート率、客単価の上償が見られ、お客さまのロイヤリティ向上が数字に直結している と分析しています。(宮内氏)
また、放送局と連携した新発想の「コラボ番組」も好評だという。たとえば、2025年10月9日にBS朝日で放送した、俳優の中村雅俊さんが出演する紀行番組では、前半は食にまつわる旅番組を放送し、後半は番組内で紹介されたうなぎ料亭「山重(やまじゅう)」のうなぎを使った「おせち」を生放送で販売した。21時のゴールデンタイムの放送であり、旅番組と食の相性も良く、新規顧客の獲得に貢献したという。
紀行番組と連動したコラボ企画では、うなぎ料亭の「おせち」が好評だった (画像提供:ジュピターショップチャンネル) こうした成功事例が出ている一方、BS/CSの衛生放送業界は、視聴者離れやスポンサー離れが加速するなど厳しい環境下にあると言われる。こうした状況への見解をたずねると、宮内氏は「一方通行の情報発信がテレビ離れを招いているのではないか」と考えを述べた。
消費者のライフスタイルや価値観が多様化しているため、衛生放送にかかわらず、従来のテレビのような一方通行の発信では満足されなくなっていると認識しています。とはいえ、公共メディアならではの「信頼感」や「高品質の映像」に加え、「正しい情報伝達」ができる点は大きなメリットです。テレビが苦手とする「双方向性」や「パーソナライズされた情報提供」をデジタルで補完することで、当社ではテレビ通販による売上高が増加 しています。よって通販番組を縮小することは考えていません。(宮内氏)
LINEやインスタを有効活用し、パーソナライズを強化 SNSやアプリの活用、ECサイトの充実といった「デジタル強化」もショップチャンネルの売上増に欠かせない戦略となっている。上述したとおり、デジタルは「テレビの補完」を主目的としており、特にパーソナライズされたレコメンドに注力 している。
まず、広いターゲットへの情報発信としては、主要SNSを活用している。メインとするのは商品のビジュアルを見せるのに相性が良い「Instagram」だ。テーマに沿ったおすすめ商品の紹介からキャンペーン情報、フォロワーへのアンケートなど多様な情報を発信している。
ショップチャンネルのInstagramは、「テーマ選定」や「読みたくなる見せ方」にこだわる (画像はショップチャンネルの公式Instagramからキャプチャ) 一方、パーソナライズされたレコメンドは、「公式アプリ」と「LINE」が中心だ。2014年から公式アプリを、2018年からLINE公式アカウントを開始しており、LINEの友だち数は83万人に達している(2026年1月時点)。
レコメンドは、年齢や居住地域、購入履歴などのデータをもとに、顧客をセグメントして情報を出し分けている。AIを活用して顧客データにマッチする「その人へのおすすめ商品」を紹介するほか、特定商品を軸にして、過去の購入履歴から該当商品に興味を持ちそうな層を予測して、情報発信をすることもあるという。
LINEでのパーソナライズされたレコメンドのイメージ(画像提供:ジュピターショップチャンネル) 当社は、過去30年間の顧客データを保有しています。そのデータをLINEアカウントとひもづけて、パーソナライズした情報発信に生かしています。メルマガなど複数媒体で発信していますが、特にLINEは反応が良いですね。LINEの登録者は長年のリピーターである方も多く、より注力していきたい ところです。(宮内氏)
その他のデジタル施策では、ファッションカテゴリーを強化する狙いで2023年1月に開始した「SHOP CHANNEL PEOPLE(ショップチャンネルピープル)」が好評だ。社員などが販売商品を使ってコーディネートを提案するもので、公式ホームページやアプリ内で提案を紹介している。
社員などがコーディネートを提案する「ショップチャンネルピープル」 (画像はショップチャンネルの公式ECストアからキャプチャ) 顧客が自身の身長や体型に近いコーディネートを探しやすく、購入の後押しになっているそうだ。顧客の多くはスマートフォンを片手にテレビを視聴しており、デジタルコンテンツを充実させることが、テレビをより楽しむために重要になる と宮内氏は話した。
テレビ通販と“連動”した「リアル店舗」の狙いと反響 テレビ通販と連動した「リアル店舗」の運営も、ショップチャンネルならではの施策と言える。2005年に開業した常設店舗「ショップチャンネル大阪」のほか、近年は東京でのポップアップストアにも注力する。
東京では、2024年2~3月(二子玉川 蔦屋家電)、2025年3月、2026年1月(共に北千住マルイ)の3回にわたって、約2週間のポップアップストアを実施した。ターゲットとなる50代以上の女性が集まるエリアや施設を選び、成果につなげているという。
リアル店舗は、顧客と直接対話できる「究極の双方向 One to Oneの拠点」として位置づけられている。テレビ通販と連動させ、その日にテレビで紹介されるメイン商品を店頭でも日替わりで展示 している。
東京でのポップアップストアの様子(画像提供:ジュピターショップチャンネル) ショップチャンネルでは、毎日0時に「その日に最もおすすめの商品」を、12時に「2番目のおすすめ商品」を紹介する取り組みを長年続けています。それを店頭でも連動させて、リアルタイムで展示しています。
テレビで紹介された商品を実際に見てみたい、試着したいという方が多く店舗に訪れ、購入やLTV向上につながっています 。大阪も東京も通りがかった方が入店するよりは既存顧客の来店が多いこともあり、現時点では、新規顧客獲得よりも既存顧客との接点を深めることを重要視 しています。将来的には東京にも常設店を作りたいと考えています。(宮内氏)
それ以外にも、視聴者を招待してキャストやゲストとコミュニケーションを取れるイベント を年に数回開催 するほか、30周年を記念した大型リアルイベント を予定している。
また、数量限定の希少性の高い商品の対面販売や特別なおもてなしを提供する新事業「パーソナルサービス事業」も2024年度から開始。同年11月には、優良顧客を招いて「心おどるショップチャンネル特別ご招待会」を実施した。百貨店の「外商」に近いサービスで、より深く豊かな顧客体験を提供し、売上増や顧客との関係性強化につなげる狙いだ。
30~50代をターゲットにした「ECサイト」も登場 ショップチャンネルのメイン顧客は60代以上の女性だが、将来の顧客につながる30~50代の獲得に向けた動きも強化している。それが、2025年秋に開始した新ソーシャルコマース事業の「うちのね、」と「CanauBi(カナウビ)」だ。
「うちのね、」は、「理想のおうち時間を探せるビジュアル型UGCコミュニティコマース」をコンセプトとする。自宅で過ごす時間を豊かにするような商品を集め、テレビとは連動せず、Instagram風の口コミ投稿(PRを含む)をECストア上で閲覧できる ようにしている。
ECストア上で商品紹介の口コミ投稿を閲覧できる(画像は「うちのね、」の公式ECストアからキャプチャ) 「うちのね、」のInstagramは10.6万人のフォロワーがいる (画像は「うちのね、」の公式Instagramからキャプチャ) 「うちのね、」を開始する3年前から、同カテゴリーの商品に特化して紹介するECストア「コレイヨ」とそのInstagramを運営していたが、同ECが成長したことから「うちのね、」へリブランディングしたという。Instagramにはすでに10.6万人のフォロワーがおり、立ち上げたばかりながら売り上げは好調に推移しているそうだ。
一方、「カナウビ」は美容のプロが教えるエイジングケア特化メディアをコンセプトに、「カナウビスト」と呼ばれる美容のプロが、おすすめ商品やその使い方をサイト上で紹介 している。こちらもInstagramをメインの発信媒体と位置づけ、認知向上や購入につなげる狙いだ。
「カナウビスト」と呼ばれる美容のプロによるコラム(画像は「カナウビ」の公式ECストアからキャプチャ) 両サイトの商品はショップチャンネルでも購入できるものがほとんどだが、カテゴリーとして切り出し、入り口や見せ方を変えることで次世代のターゲットに届けたい と考えているそうだ。
創業30周年を迎えたショップチャンネルでは、より特別感のある商品の販売や送料無料などのキャンペーン企画を2026年に多数予定している。「これまでの感謝をお伝えしながら、事業成長につながる大きなきっかけにしたい」と宮内氏は意気込みを見せた。
ついにやってきましたね! 7~8年ほど前の現役店長時代にずっと言っていた「ソーシャルギフト」。「LINE@ギフト」が登場した当初から、各社のECCや開発の人に話していました。モールで先陣を切ってきたのはやっぱり「楽天市場」でしたね。元々ギフトの世界でECを運営していたので、これは大きな部分です。
ギフトの概念がガラリと変わるので、ギフト商戦が様変わりすると考えられるくらい大きな変化ですね! 4月ということは、母の日商戦から。ソーシャルギフトは「パーソナルなギフト」と「ソーシャルなギフト」に分かれるのですが、売り方、戦略、時期によってかなり面白い使い方ができるので、今後が楽しみなニュースですね。