データ利用規制が強まる今、MAU 8,600万人にリーチできる「LINE広告」の現在と未来
Cookieの利用制限や、アプリにおける固有識別子のIDFA(Identifier for Advertisers)やAAID(Google Advertising Identifier)の利用規制が強まる昨今、これまでと同じような広告を展開していても効果は下がっていくばかり。ならばこれまでとは違うアプローチの手段を持つプラットフォームを選ぶべきだ――。
「デジタルマーケターズサミット 2021 Winter」に登壇したLINEの加藤喜大氏は、データの利用規制が強まる現在、その穴を埋められる「代替手段」を持つプラットフォーム、LINE広告の強みについて解説した。
LINE広告のバックボーンとなる群を抜くLINEのユーザー規模
LINEのMAU(月間アクティブユーザー)は、8,600万人。そのうち、1日1回以上起動するDAU(daily active users)の割合は85%にものぼる(2020年9月末時点、登壇時点での最新数値)。これは、国内トップレベルにアクティブなユーザーが多い媒体だといえる。
ユーザー数の増加に伴い、属性や居住地域の偏りも少なくなってきている。数年前まではLINEのユーザーは若年層が多いというイメージがあったが、実際は幅広い年齢層をカバーしている。
属性で見ると、男女比ではやや女性が多く、職業別では会社員が最も多く、主婦や学生が続く。国内の地域別ユーザー数は人口分布とほぼ等しく、他の新興アプリと違い、関東圏やメディアリテラシーの高い都市圏に偏っていないのも特長といえるだろう。
「普段スマホで利用しているSNSは?」の問いに対して、「LINEのみ」と答えたユーザーの割合は40%にのぼり、Twitterのみ(2.2%)やFacebookのみ(0.6%)を圧倒している。また、「普段スマホで利用しているサービスは?」の問いにも同じく「LINEのみ」と答えたユーザーの割合が、Yahoo! JAPANのみやYouTubeのみの回答を大きく上回っていた。
つまり「LINEはリーチできるユーザーが絶対的に多い」ということになる。
LINEが展開する法人ビジネスとLINE広告の特長
LINEは圧倒的なユーザー基盤を活かしながら3つの法人ビジネスを展開している。
- コミュニケーション
LINE公式アカウント LINEプロモーションスタンプ - SP、OMO
LINEで応募、LINEチラシ - Advertisement
LINE広告、Talk Head View
1.のLINE公式アカウントとLINEプロモーションスタンプについては馴染みがあるだろう。2.のSPとOMOはどちらもオンラインとオフラインをつなぐ広告形態だ。LINE上で実店舗のチラシを掲載することができたり、商品やレシートに付属する抽選用QRコードで応募したりする販促型の広告サービスを指す。
3つ目のLINE広告は、LINEとそのファミリーサービス内の掲載面に広告を出すことができる運用型広告のプラットフォームである。管理画面から、「誰に対して、どういう広告を、いくらで配信するか」を設定して入札するものだ。
配信面も豊富に用意されているが、Smart ChannelとLINE NEWS、タイムラインの3つへの掲載が全体の9割を占めるという。
その特長は以下の3点となる。
- 圧倒的なリーチによる新規獲得
- 膨大なデータを活かした最適入札とターゲティング
- LINEの複数のプロダクト間で、データの相互連携が可能
LINE広告を始めた企業様から「もう新規顧客はいないと思っていたが、まだ眠っていた」という声を頂戴する(加藤氏)
LINE広告の実績と利用状況
LINE広告は2016年にサービスを開始し、2018年にはプラットフォームのリニューアルを実施した。LINE広告は、運用型広告サービスのなかで、かなり後発といえるだろう。しかしリリース後も多数のアップデートを重ね、日本国内の広告主のアカウント数が25,000(2021年1月時点)を超える規模にまで成長した。その実績と利用状況をまとめてみよう。
- Impression
3か月で717億(2020年10月-12月実績)。1日あたり約8億の計算となる。 - 利用業種
1位はコスメ業界で、それ以外はまんべんなく分布しているが、ダイレクトレスポンス寄りの利用が多い。 - 配信目的
Webコンバージョンを目的としたものが全体の62%を占めている。ダイレクトレスポンスといった獲得を重視した目的で多く利用されている。また、精度の向上とともに自動入札を利用する企業が増え、今では全体の85%が利用している。 - 広告の形態
広告形態の割合では、静止画の広告が71%、動画の広告が25%。残りは複数の静止画や動画を組み合わせるカルーセルなどが占める。
継続的なアップデートで機能・使いやすさも向上
「LINE広告は後発のサービスであるがゆえに、先発のサービスとさまざまな面で比較され心配の声を多くいただくが心配を少しでも解決できれば」と述べ、加藤氏は顧客から聞いたという懸念・疑問に対して以下のように返した。
Q1:後発だから他のプラットフォームより機能が少ないのでは?
2020年の1年間に、管理画面や配信機能に関するものだけで60のアップデートが行われ、すでにLINE広告の機能は他社のプラットフォームに比肩するレベルにある。
そのうえで加藤氏はこう続けた。
他社ができることはLINE広告でもできるが、LINE広告ならではの機能もある(加藤氏)
それは、最近アップデートされた、電話番号やメールアドレスを使ったターゲティング機能だ(※ターゲティングに利用する電話番号やメールアドレスは、その利用について明示的にユーザーの許諾を取得している)。
LINEの登録にはメールアドレスと電話番号を使う。スマホの機種変更時にも電話番号の紐付けは行われるし、メールアドレスも必要なため、数年ごとに「現在使用されている電話番号である」ことと、「今も使われているアドレスである」ことが担保される。使われていない電話番号やいわゆる「捨てアド」での登録は存在しないのだ。これは広告主の持つ、顧客リストとのマッチング精度が高い、ということになる。
また、過去にコンバージョンしたユーザーに類似する新規のユーザーを自動で探す「類似配信」がより簡単にできるようになった。今までは類似オーディエンスの拡張幅(1%~15%)を手動で設定する必要があったが、目標とするCPAとソースとなるオーディエンスを入力すれば、最適な拡張幅を自動で調整してくれるという。つまり、運用の自動化がますます進んでいるということだ。
Q2:管理画面が使いにくいのでは?
管理画面のアップデートにも力を入れていて、30近くのアップデートが2020年に行われている。
今後は、広告効果の改善提案を管理画面上で通知したり、配信結果のレポート確認・分析ができたりする機能が追加される予定だ。
Q3:運用に手間がかかり、大変なのでは?
自動入札の精度が向上し、現在では85%の広告主が利用している。自社の運用が進み、活用できるデータが蓄積されればされるほど、精度が上がっていく仕組みだ。
Q4:LINE広告って動画と相性が悪いのでは?
動画フォーマットも拡充され、横長(16:9)、スクェア(1:1)、バーティカル(9:16)と最適な画角を選べるようになっている。
また、動画における「3秒間再生の最適化機能」も新たに追加された。動画を視聴する可能性が高いとされたユーザーに対し、最適な自動入札を経て広告が配信される仕組みだ。機能の実装に先駆けて行われたテスト配信で、手動入札の広告配信と比べて動画の3秒間再生数は約200%増加し、3秒あたりの動画再生単価も約35%改善するなどの結果が出ているという。
今後は「視聴完了の最適化機能」も追加される予定だという。
データ利用規制による広告効果は約1/2に低下
ここで加藤氏は、プライバシー規制がデジタル広告に及ぼす影響にテーマを移した。
世界的には、EUではすでにGDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)が、国をまたいで施行され、米国のカリフォルニア州では、CCPA(California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法)が施行されている。カリフォルニアはいわずもがな世界のITトップ企業が集中しているところだ。
「個人を特定するかたちでマーケティングするのはよくない」――それが世界のスタンダードになりつつあり、グローバルジャイアントは、そのトレンドに合わせて動き出している。
Apple(iOS / Safari)はITPによりCookie用いたトラッキングを制限し、Appleに追随してGoogle(Android / Chrome)も2022年までにサードパーティCookieの使用を停止すると発表した。
Webブラウザだけではなく端末の識別子の制限も始まった。AppleはユーザーがIDFAの利用を承諾しない限りはクロスアプリトラッキングが許可されない。GoogleのAAIDに関してはまだ詳細な発表はされていないが、近い将来Appleに似たような規制がかけられることだろう。
では、オーディエンスデータの有無で、広告効果にはどのぐらいの差が出るのだろうか。
情報の受け取りや自らに関する情報の利用を許諾している顧客(オプトイン)とそうでない顧客(オプトアウト)とで、CTR(クリック率)、CVR(コンバージョン率)、CTVR(CTRとCVRを掛け合わせた指標)の比較調査を行ったところ、CTVRに至っては1.9倍もの差が現われた。つまり広告効果がおよそ1/2に低下する可能性があるということだ。
しかも、今後はオプトイン(緑色)のユーザーがぐっと減り、オプトアウト(灰色)に変わってしまうのだ。これはゆゆしき事態である。
このような厳しい状況のなかで勝てるマーケターなるには、情報のキャッチアップ、効果的な予算投下に加え、「代替手段」を持つプラットフォームの選択がカギとなる。
個人を識別する情報を使えなくなる中、LINEには生きた情報が詰まっている(加藤氏)
代替手段を持つLINE広告の優位性
ここで代替手段の事例が紹介された。
高度な類似を見つけ出す技術の活用
LINE広告には全体の10%のユーザーからしかデータがとれなくても、残り90%の中から類似ユーザーを探し当てるデータの解析力がある。「犬を飼っていますか?」などのアンケートを行い、その回答サンプルの類似を拡張し、同じようなユーザーを探し当てるテストを行ったところ、ソースと近い回答をするユーザーの割合が約90%をマークした。
高度な類似を実現する3条件はビッグデータを定義する3原則と一致している。すなわち3つの「V」、「Volume:量」「Variety:種類」「Velocity:発生頻度」だ。月間アクティブユーザーが8,600万人、多様なサービスを展開し、ほとんどのユーザーに1日1回以上起動されるLINEは、高度な類似を実現するにはうってつけだと加藤氏は語る。
LINE公式アカウントの友だちのデータ活用
LINE公式アカウントの友だちと非友だちで広告配信の効果を比較した場合、CTRで平均131%、CVRで平均135%のパフォーマンスアップがみられた。LINE経済圏において囲い込んだユーザーにターゲティングすることで広告効果を上げていける事例だ。
Talk Head Viewのデータ活用
Talk Head Viewとは、LINEのトークリスト最上部に1日1社限定で広告配信ができる機能だ。広告を視聴したユーザーにリターゲティングも可能で、タイムラインで再表示した例では、CTR比較で270%アップ、CVR比較では290%アップというパフォーマンスを得たという。
これらの他に、LINE Payでの購買情報、LINE NEWSの閲覧状況、どのようなLINE公式アカウントと友だちになっているかなど、LINE内で取得できるデータは多岐にわたる。それらのデータを活用できるプラットフォームも整備拡充を続けている。
今後はオフラインで触れるサービスとも連携を進め、テレビや小売りの実店舗のデータも活用できるようにするという。
データ利用の規制が進むなか、膨大なデータを活かし、代替手段を幾手も持つLINE広告は未来ある広告プラットフォームだ。
LINE広告のWebサイトでは導入事例も閲覧できる。加藤氏は「LINE広告の活用をぜひ検討してほしい」と呼びかけて講演を締めくくった。
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