サブスクの売上をすべて店舗に計上するってマジ!? ネットとリアル融合の秘策とは・第16話
前回のあらすじ!
OMOプロジェクトの新規サービス「アクセサリーのサブスクリプション」は、デジマチームを敵視する白井室長の妨害工作により、営業部が反対。社長の判断でプランは練り直しとなった。
第16話のまとめコラム:OMO時代におけるECとリアル店舗の折り合いの付け方(中澤伸也)
こんにちは、「デジマはつらいよ」原案者の中澤です。
マーケティング支援企業のReproでCMOをやっています。noteで定期的に情報発信もしているので、興味ある方はそちらも覗いてみてください。
前回、白井室長の罠によりリアル店舗側と揉め、プロジェクト崩壊の危機に立たされたデジマチーム。今回、白井室長のさらなる策略で頼りの「虎さん」がオーストラリアに飛ばされてしまうピンチのなか、主人公たちは自力でリアル店舗側と折り合う答えを見つけ出しました。
OMOの時代にはECやアプリのデジタルチャネルとリアル店舗の関係性が重要になる
新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響によりリアル店舗の集客が伸び悩むなか、デジタルチャネルの重要性が各企業の中でこれまで以上に重要視され、もう少し先の未来と思っていた「OMO化」(OMOはOnline Merges with Offlineの略。オンラインとオフラインの融合)への取り組みが急速に進みはじめました。
前回のコラムでも触れましたが、OMOの世界ではオンラインとオフラインは「統合された1つのサービス」として機能し、その中では、オフラインの資産である「店舗」や「店員」そしてデジタルチャネルにはこれまでと異なった「価値」が要求され、全体のUXの中で「価値の再定義」が求められます。
もはやECやリアル店舗が1つのサービス内で「競合する」立場ではなく、お互いに相互補完する世界になりつつあるわけですが、いまだ多くの企業では、自社内で売上を奪い合う競合チャネルとしての意識を持っているケースも見られます。
この背景には、この新しいOMOの概念に適合する「社内評価指標」が未整備であることや、組織体制自体が未整備であることが要因にあるかもしれません。早急に組織体制や評価指標の見直しが求められています。
OMOにおけるデジタルとリアルの関係性を表す評価指標を開発する
デジタル接点(Webやアプリ)が純粋に、リアル店舗への送客や、既存顧客とのリレーション維持に位置付けられている場合には話は簡単です。集客媒体やメールのように、運営費用やシステム減価償却費用も単純にマーケティングコストとして捉え、送客数と送客CPA、そこから生み出される利益とのROIで評価することが可能です。
問題は、ECのようにデジタル接点自体が購買チャネルであり、同時にリアル店舗の補完的な役割や、全顧客とのリレーション機能を担っている場合です。
OMOの世界では、もはや顧客はリアルやデジタル接点を意識しておらず、その時の状況に合わせてチャネルを選択するだけなので、リアルとデジタル接点の融合が進んでいるほど、顧客体験は向上し全社的な利益も向上します。
ただ、企業側が、EC単体でのPL(損益計算書)、店舗単体でのPLでしか評価指標を持っていない場合には、各チャネルが独自に顧客の囲い込みをしたがり、また在庫の取り合いなどが発生します。
この対応策として、今回の漫画にあるように、売上の一部を手数料としてEC側が取得するという方法もありますが、より多くのケースで利用できる方法として、「EC貢献売上(利益)」という考え方を使う方法もあります。
EC貢献売上(利益)とは?
リアル店舗を利用せずECしか利用しない顧客の売上(利益)はすべてECの売上(売上A)とし、リアル店舗の利用経験がある顧客のECでの売上(利益)はECのバーチャル売上(売上B)とします。
そして、顧客が最初に利用した店舗を「顧客獲得店舗」としたうえで、ECのバーチャル売上(売上B)を、その店舗の売上として計上します(この際、売上の科目を分け、「EC貢献売上」として計上します)。
そして社内評価においては、ECについては「売上A」と「売上B」の合算値で評価し、店舗については、店舗売上とEC貢献売上(売上B)の合算値で評価します。
やや専門的になりますが、会計上の全社PLは、ECの「売上A」と店舗売上の合算値の合計で計上することで整合性を取ります。
この方法をとることで、リアル店舗はよりEC(およびデジタル接点)に自店舗の顧客を送客する方が売上が伸びますし、EC(デジタル接点)側は、それらの顧客へのリレーションを強化し、リアル店舗とより融合した顧客体験を構築した方が売上が伸びます。
よって、リアル・デジタルがお互いWin-Winの関係となり、より統合された顧客体験の構築に協力的に進んでいくことが可能になるかと思います。
理想的には、組織自体も「CXO(Chief Experience Officer)」を設置し、統合的な顧客体験を企画および管理していく専任組織を設置することが望ましいのですが、リアルとオフラインを統合した顧客体験を描ける人材自体、まだまだ不足している現状では、まずは評価制度から着手する方がより現実的と考えています。
これからのマーケターには「顧客資産管理」の能力が必要になる
OMOの世界では、リアルとデジタルをまたぎ、統合的な顧客体験の構築が必要になるのはもちろんですが、顧客との関係性も「点」ではなく複数のチャネルをまたいだ、より時間軸の長い関係性で見ていく必要があります。
そのような中での最重要KGIは、もちろん「LTV」になるわけですが、マーケターはこのLTVを具体的に計画し、そして予算化し、マネジメントしていくことが求められます。
そのためには顧客を資産として捉え、どのようなポートフォリオを実現させるのかを計画し、そのための活動を立案・予算化して運用していくことになります。
その手法の1つが「CEM(Customer Equity Management:顧客資産管理)」となりますが、この手法については、かなり詳細な説明が必要となります。興味がある人はこちらのnoteに詳しく書いていますので参考にしてみてください。
さあ、次回はいよいよ最終回です! どんな展開になるのかワクワクしますね!
それではまた、次回お会いしましょう!
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