【漫画】デジマはつらいよ

サブスクの売上をすべて店舗に計上するってマジ!? ネットとリアル融合の秘策とは・第16話

白井室長の妨害で新規サブスクサービスは練り直しとなり、ルリたちデジマチームは営業部との調整に臨む。

前回のあらすじ!

OMOプロジェクトの新規サービス「アクセサリーのサブスクリプション」は、デジマチームを敵視する白井室長の妨害工作により、営業部が反対。社長の判断でプランは練り直しとなった。

ここから始まります

やられた全部白井室長の罠だったわけだとりあえず素案レベルでいいからプレゼンしろって白井室長が言うから昨日徹夜でプレゼン内容まとめたのに!虎さんっ社長なんて言ってましたか?再来週にもう1回プレゼンの機会をもらえた!ただ問題も起こったえ
明日から私は1ヵ月オーストラリアへ出張することになったええっ!おそらく白井室長の仕業だろうそんな…とにかく君たちは店舗側が納得のできるプランを練り上げそして事前に営業部長の協力を取り付けてくれ再来週のプレゼンは?君たちがやるしかない俺がいなくても今の君たちならきっとできるそ そんな…
翌日虎さん本当に行ってしまった…営業部長を説得して店舗側も納得のいくプランづくりなんて俺たちにできるんだろうか…ふんふんっルリっ!なにしてるのっ?虎さんのマネですこれまで教えてもらった虎さんスピリッツを発揮するためには虎さんになりきって考えるんです!そんなむちゃくちゃな…
おぉっ!なんだかやる気がでてきたなはいっ!この勢いで作戦会議だ!はいっ!はぁはぁなんとか完成した…筋肉痛やばい…がちゃんがちゃんはぁ!?なんで俺がそんなことに協力しないといけないんだパイセンしかいないんですよデジマの運命がかかっているんだわわかったよ
営業部長お時間をいただきありがとうございます説得してもムダだぞ我々は店舗で必死に戦っているんだその売上をネットが横から奪うなんて我慢ならんその売上についてですが店舗でサブスクリプションサービスの申し込みを取った場合には毎月の継続利用を含めた全売上を店舗の売上として計上しますなっなんだと
ただそこで重要になるのがサブスクの継続率…店舗は継続率が上がれば上がるほど1人のお客様から安定的に売上が見込めるようになりますだがそう簡単には…この継続率をあげる鍵になるのが店舗カウンセラーの存在ですそうそれだっ!店舗の人間はカウンセラーなどやったことはない教育はどうする?吉祥寺店の赤塚さんを教育責任者にアサインしました彼を中心に店舗横断型の教育体制を構築できればと思います赤塚くんか彼のおかげで吉祥寺店の優良顧客が大幅に増えたらしいじゃないか確かに彼なら…そして人事部とも相談しカウンセラーの方の新たな評価制度も作る方向で進めていますそれは助かる
ただもう1つ引っかかることが…ネット独自に契約したお客様にも店舗でのカウンセリングを促すんだろその工数はどうする?ネット契約のお客様にもカウンセリングを受けるマイ店舗を設定してもらいますそして店舗契約と同様にその売上はマイ店舗に計上しますちょっと待てそれだとデジマとしてのEC売上がないということだろチャットサービスや集客のコストはいったいどこがどうやって負担するんだ?各店舗からサブスクリプション契約の売上の20%を運営費用としていただく形とさせて下さい!そのコストの中でサービスの費用をまかないますなるほどそれなら我々営業はサブスクのお客様を契約させたぶん売上がアップし継続率が上がれば上がるほど売上が増すというわけか…いかがでしょうか?
悔しいが協力せざるを得ないだろ!ありがとうございます!こうして店舗側も営業部長も納得したプランができあがったそして――最終決戦室長である京極虎抜きで2度目のプレゼンテーションをむかえる

次回に続く

第16話のまとめコラム:OMO時代におけるECとリアル店舗の折り合いの付け方(中澤伸也)

こんにちは、「デジマはつらいよ」原案者の中澤です。

マーケティング支援企業のReproでCMOをやっています。noteで定期的に情報発信もしているので、興味ある方はそちらも覗いてみてください。

前回、白井室長の罠によりリアル店舗側と揉め、プロジェクト崩壊の危機に立たされたデジマチーム。今回、白井室長のさらなる策略で頼りの「虎さん」がオーストラリアに飛ばされてしまうピンチのなか、主人公たちは自力でリアル店舗側と折り合う答えを見つけ出しました。

OMOの時代にはECやアプリのデジタルチャネルとリアル店舗の関係性が重要になる

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響によりリアル店舗の集客が伸び悩むなか、デジタルチャネルの重要性が各企業の中でこれまで以上に重要視され、もう少し先の未来と思っていた「OMO化」(OMOはOnline Merges with Offlineの略。オンラインとオフラインの融合)への取り組みが急速に進みはじめました。

前回のコラムでも触れましたが、OMOの世界ではオンラインとオフラインは「統合された1つのサービス」として機能し、その中では、オフラインの資産である「店舗」や「店員」そしてデジタルチャネルにはこれまでと異なった「価値」が要求され、全体のUXの中で「価値の再定義」が求められます。

もはやECやリアル店舗が1つのサービス内で「競合する」立場ではなく、お互いに相互補完する世界になりつつあるわけですが、いまだ多くの企業では、自社内で売上を奪い合う競合チャネルとしての意識を持っているケースも見られます。

この背景には、この新しいOMOの概念に適合する「社内評価指標」が未整備であることや、組織体制自体が未整備であることが要因にあるかもしれません。早急に組織体制や評価指標の見直しが求められています。

OMOにおけるデジタルとリアルの関係性を表す評価指標を開発する

デジタル接点(Webやアプリ)が純粋に、リアル店舗への送客や、既存顧客とのリレーション維持に位置付けられている場合には話は簡単です。集客媒体やメールのように、運営費用やシステム減価償却費用も単純にマーケティングコストとして捉え、送客数と送客CPA、そこから生み出される利益とのROIで評価することが可能です。

問題は、ECのようにデジタル接点自体が購買チャネルであり、同時にリアル店舗の補完的な役割や、全顧客とのリレーション機能を担っている場合です。

OMOの世界では、もはや顧客はリアルやデジタル接点を意識しておらず、その時の状況に合わせてチャネルを選択するだけなので、リアルとデジタル接点の融合が進んでいるほど、顧客体験は向上し全社的な利益も向上します。

ただ、企業側が、EC単体でのPL(損益計算書)、店舗単体でのPLでしか評価指標を持っていない場合には、各チャネルが独自に顧客の囲い込みをしたがり、また在庫の取り合いなどが発生します。

この対応策として、今回の漫画にあるように、売上の一部を手数料としてEC側が取得するという方法もありますが、より多くのケースで利用できる方法として、「EC貢献売上(利益)」という考え方を使う方法もあります。

EC貢献売上(利益)とは?

リアル店舗を利用せずECしか利用しない顧客の売上(利益)はすべてECの売上(売上A)とし、リアル店舗の利用経験がある顧客のECでの売上(利益)はECのバーチャル売上(売上B)とします。

そして、顧客が最初に利用した店舗を「顧客獲得店舗」としたうえで、ECのバーチャル売上(売上B)を、その店舗の売上として計上します(この際、売上の科目を分け、「EC貢献売上」として計上します)。

そして社内評価においては、ECについては「売上A」と「売上B」の合算値で評価し、店舗については、店舗売上とEC貢献売上(売上B)の合算値で評価します。

やや専門的になりますが、会計上の全社PLは、ECの「売上A」と店舗売上の合算値の合計で計上することで整合性を取ります。

この方法をとることで、リアル店舗はよりEC(およびデジタル接点)に自店舗の顧客を送客する方が売上が伸びますし、EC(デジタル接点)側は、それらの顧客へのリレーションを強化し、リアル店舗とより融合した顧客体験を構築した方が売上が伸びます。

よって、リアル・デジタルがお互いWin-Winの関係となり、より統合された顧客体験の構築に協力的に進んでいくことが可能になるかと思います。

理想的には、組織自体も「CXO(Chief Experience Officer)」を設置し、統合的な顧客体験を企画および管理していく専任組織を設置することが望ましいのですが、リアルとオフラインを統合した顧客体験を描ける人材自体、まだまだ不足している現状では、まずは評価制度から着手する方がより現実的と考えています。

これからのマーケターには「顧客資産管理」の能力が必要になる

OMOの世界では、リアルとデジタルをまたぎ、統合的な顧客体験の構築が必要になるのはもちろんですが、顧客との関係性も「点」ではなく複数のチャネルをまたいだ、より時間軸の長い関係性で見ていく必要があります。

そのような中での最重要KGIは、もちろん「LTV」になるわけですが、マーケターはこのLTVを具体的に計画し、そして予算化し、マネジメントしていくことが求められます。

そのためには顧客を資産として捉え、どのようなポートフォリオを実現させるのかを計画し、そのための活動を立案・予算化して運用していくことになります。

その手法の1つが「CEM(Customer Equity Management:顧客資産管理)」となりますが、この手法については、かなり詳細な説明が必要となります。興味がある人はこちらのnoteに詳しく書いていますので参考にしてみてください。

さあ、次回はいよいよ最終回です! どんな展開になるのかワクワクしますね!

それではまた、次回お会いしましょう!

次回に続く

用語集CPA / KGI / LTV / ROI / UX
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