アクセサリーのサブスクリプション!? 真のインサイトは「気持ちのスイッチ」だった・第14話
前回までのあらすじ!
ルリと和尚は優良顧客比率の高いパイセンの店に着目し、実店舗で顧客の行動観察を行った。その結果、真のインサイトをつかんだルリは和尚に「指一本でオンとオフを切り替えるボタンってなぁんだ?」と謎かけをしたのだった。
第14話のまとめコラム:OMOにおける顧客体験価値設計(中澤伸也)
こんにちは、「デジマはつらいよ」原案者の中澤です。
マーケティング支援企業のReproでCMOをやっています。Noteで定期的に情報発信をしているので、興味ある方はそちらものぞいてみてください。
今回、主人公のルリと和尚さんは、ついに顧客のインサイトを見つけ、それを満たすための価値(バリュープロポジション)を見出し、それを実際の体験として実現するサービスである、アクセサリーのサブスクリプションサービスを考案するに至りました。
日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)の教科書とも言える『アフターデジタル』、そしてつい先日発売された『アフターデジタル2』の中で、著者である藤井保文さんも繰り返し述べていますが、DXの本質は「優れた顧客体験価値の創造」にあります。
またデジタル化された社会においては、オンラインとオフラインの境界線が曖昧になり、その中においてユーザーは、それぞれの状況や場面に応じて、もっとも心地良いと思われるチャネルを自由に選択するようになります。それに対応していくことが、OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)であると述べています。
そして、OMOにおける顧客体験の価値設計とは、オンライン/オフラインを統合的に考え、一体となったUX(ユーザーエクスペリエンス)を設計し、1つの体験価値を作り出すことをゴールに進めていく必要があります。
オフラインの役割を見直す必要性
OMOを考えていく上で避けて通れないのが、店舗や店員といった既存のオフライン資産の役割、全体のユーザーエクスペリエンスの中における機能の見直しです。
これまでの「商品を並べる場所」「お客様に物品を販売する場所」「決済する場所」といった機能から、全体のUXを考えた場合、どのような機能を果たす顧客接点であるべきかといった問い直しが必要になります。
今回の漫画の事例では、店舗や店員の役割を「カウンセリングする場所」という風に、機能・価値をリポジショニングしています。
このリポジショニングを、以前解説したテックタッチ・ロータッチ・ハイタッチの考え方で説明すると以下のようになります。
アプリやWebを日常的に顧客接点が持てるデジタル接点(テックタッチ)として位置づけ、コンテンツや今日のオススメストーン診断(作中では出てきません)といったアプローチで、接触回数を増やす。
そこで得られたデータをもとに、チャットで店員がアドバイスを随時行う(ロータッチ)。
そして実際の物品を見ながら、より本格的なカウンセリングが行える場所として店舗や店員を位置付ける(ハイタッチ)。
この3つの接点でOMOとしての統合的なユーザーエクスペリエンスを実現し、トータルでの体験として価値を提供する、ということを行おうとしています。
デジタル接点はオフラインである店舗や店員の「置き換え」になるのではなく、それぞれのチャネルが、それぞれの役割を相互補完の関係で担う。そういった考え方に基づいてオフラインの価値を見直す必要があるのです。
オンラインとオフラインは対立するものではない
ここまで解説してきて、すでにご理解いただけているかと思いますが、OMOの概念においては、オンラインとオフラインは対立するものや、代替するものではありません。残念ながら現在OMOの議論がされる場合、この考え方がまだ浸透しきれていない感があります。
もしかしたら、オンラインにオフラインの売上が奪われる、オンライン経由でオフラインに送客する(O2Oの考え方)、といった会話がいまだ社内で行われているケースもあるのではないでしょうか?
これはとても不思議なことです。
なぜならば、皆さんもすでに日常の生活の中では、オンラインもオフラインもほとんど意識していないというのが実態ではないでしょうか? 知り合いと会えばその場で直接会話するし、別れたあとは、自然にLINEで会話を続けているはずです。
すでにユーザーは、オンラインとオフラインのマージされた世界に生きており、その時々の状況に応じて、自分にとってもっとも都合が良く気持ちの良い手段を選択しているにすぎません。よって、企業やサービスも、このユーザーの実態に合わせていくことが自然になります。
お客様は、あなたの会社やサービスを、オンラインもオフラインも関係なく1つのモノ・サービスと見なしているはずです。そして、その状況に応じた選択肢の自由度が高ければ高いほど、そのサービスに対して価値を感じるのではないでしょうか?
CXOの必要性
日本ではまだあまりなじみがありませんが、すでに海外ではCMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)とは別に、または代わりに、CXO(Chief Experience Officer:最高エクスペリエンス責任者)という役職が市民権を得つつあります。まさにOMOの時代において、オンラインやオフラインを問わず、総合的な顧客体験を設計し、全社的な責任を担う役職です。
CXOを設置している企業では、会社の文化として「顧客体験」の重要性が浸透しており、売上やCPAといった言葉より先に、「顧客体験はどうなってる?」「UXはしっかりと体験価値を提供できているのか?」といったやりとりがされるそうです。
真に顧客目線を持ち、ユーザーの求める顧客体験を実現させる、そのような気持ちをマーケターとして常に持っていたいものです。
それではまた、次回お会いしましょう!
ソーシャルもやってます!