テクニカルSEOで成果を出せる「人を動かす」提案術
テクニカルSEO、それは「コンテンツが最重要」といわれるいまのSEOにおいても、無視できるものではない。特に、ネガティブな要因となり得る状況を解消しなければ、どれだけ良いコンテンツをつくってもSEO効果を出し切れない場合がある。
しかし、テクニカルな内容であればあるほど、ステークホルダーにはその施策の意味や重要性を理解してもらうのは難しい。
ここでは、SEOや技術に明るくない人に「その価値がわかりづらい“テクニカルSEO”施策」の意味や価値を納得してもらい、実行できるように調整するときの良いやり方を解説する。
キーワードは「説得しちゃダメ、自分たちで答にたどりついてもらう」だ。
テクニカルSEOに取り組んで何か発見が得られたあとも、まだ1つやるべきことが残っている。それは、ステークホルダーに結果を示し、次のステップについて合意を形成することだ。
SEO業界における他の多くのことと同様、これは口で言うほど簡単ではない。
今回のホワイトボード・フライデーでは、Distilledのベンジャミン・エステス氏が、クライアントやステークホルダーにテクニカルな提案をすることで成功に向けて最適な位置につける枠組みを紹介する。
こんにちは、僕の名前はベン。Distilledという企業で主任コンサルタントをしている。ホワイトボード・フライデーにようこそ。今回は、いつもとは少し違うテーマについて話したいと思う。
取り上げたいのは、上司やクライアントといったステークホルダーとの仕事の仕方を変えてみることだ。テクニカルSEOに関することや、テクニカルな発見をしたり何が問題かを考えたりする方法について見ていくのではなく、そうした発見をした後、それをクライアントにどう示すかについて考えてみたい。
課題
ここで取り扱うのは、どういう問題だろうか? それは、僕たちに何らかの提案があるとして、それをクライアントや上司に提示しようとしているシナリオだ。
非常にシンプルだ。
しかし、そこで意識すべきことがある。そうした状況における目的は何かという点だ。
具体的な目的をすぐに設定できることもあるだろうが、目的を考えるにあたって最も大切なのは、目的というのは個人や組織の行動を変えられるものだという点だ。
どんな施策や戦略をあなたが生みだしたとしても、行動が伴わなければ意味がない。たとえば、ある事業部のWebサイトに関してSEOの相談をされて、あなたが良いSEOの提案をつくれたとする。しかし、結果として事業部のWeb担当者が行動しなかったとしたらどうだろう? その場合、SEOの専門家であるあなたは、その事業部に対してどんな価値を提供したといえるだろうか?
そもそも、相手は君に相談にきた時点で、君を信頼していたはずではなかったか? しかし、こうした事態はあちこちで起こっている。
もし、僕たちが達成しようとしている具体的な目的が「相手の行動を変えること」だとしたら、それを実現できる最善の方法は何だろう?
その手段としてほとんどの人が考えるのは、「いかにして説得するか」だろう。場合によっては、こういう風に考えるかもしれない:
私に●●ができさえすれば、相手は私の話を聞くだろう。
たとえば、こういうことだ:
- 「予測を提示できさえすれば」
- 「投資利益率(ROI)を正当化できさえすれば」
おそらくはまだ行われていないか、あるいは実際に行うことさえまったくできないであろう不可解な調査を挙げて、そう言うのだ。
ここで僕が言いたいのは、説得という考え方は有害だということだ。「これができさえすれば」と言う場合、君の本音はこういうものだろう:
エビデンスさえあれば、相手は私の言うとおりにせざるを得ないだろう。
そういったことを言うとき、君は相手をコントロールしようとしている。
人は基本的に、それが何であれ、自分がやりたいことをやるものだ。君の主張にどれほど説得力があっても、それがクライアントではなく君本位のものであれば、相手は君が提案することをやりたがらないだろう。
そこで僕はDistilledで、これを克服するのに役立つ枠組みを導入した。ここで紹介したいのは、その枠組みだ。
アプローチ
この方法で重要なのは、プロセスの各段階で相手が自ら問題を解決できるようにすることだ。相手の視点で問題を考え、できれば相手が自ら解決策を見出せる機会を与えよう。それには3つのステップがある。
1. 提案する
まず、課題を提案する。
「提案」といっても、解決策を提案するわけではない。何らかの問題が存在していて、それを解決する必要があるという考えを、相手の頭の中に植え付けるのだ。これは始まりのようなものになるだろう。
そこでまず、次のように言う:
私の見方はこうだ。
相手に鏡を突きつけることで、相手が自分ではまだやっていない観察をするようになるのだ。
2. 実例を示す
第2のステップは、実例を示すことだ。実例を示すとは、君の行動を相手が真似できるようにすることだ。
同じような問題に対処しなければならないとしたら、そうした状況でどうするかを示すわけだ。そのため、あなたは次のように言おう:
あなたの立場だったら、私はこうする。
3. 詳しく説明する
最後に、詳しく説明する。次のように説明するのだ:
これが妥当な対応だと思う理由はこうだ。
ここで正直に言おう。僕の経験では、この枠組みを使うと、ほとんどの場合は詳しく説明する段階まで到達しない。なぜなら、クライアントはそれまでのどこかで問題を解決しているので、そこで会議を終えられるからだ。
繰り返すが、重要なのは、彼らなりの理由によって、彼らが最も満足できる方法で、自ら問題を解決できるようにすることだ。
アプローチの例
ここで具体的なアプローチの例を見てみよう。というのも、これまでの説明もどちらかというと抽象的だからだ。
たとえば、Google Search Consoleである観察を行ったとしよう。ある製品のサイトには、かなり多くの種類のページがあり、多くがグーグルにインデックスされている。
しかし、本来ならインデックスされるべきではないページがあったり、そもそもグーグルに見てほしくないページがあったりする――そうした問題を発見したとする。
まず、提案する
そこで、提案することから始める。次のように言ってみよう。
Search Consoleで確認したところ、グーグルは1800万ページをインデックスしている。
本来なら、たとえば1万ページ程度のインデックスであるべきケースだ。そこで話しを続ける。
この原因は、ファセットナビゲーションだ。
ここで、何も評価を加えてはいないことに注意してほしい。それについて何をすべきか示唆しているわけでもないし、ましてや問題の深刻さについてほのめかしているわけでもない。数字を示しているだけだ。
この時点で、すでに転換点にいるようなものだ。クライアントはそれを聞いて自分の頭を軽くはたき、次のように言うかもしれない。
そうか、その問題には気付かなかった。だが、それについてどうするべきか、私はこう思う。それは……
そうすれば、君たちは何らかの合意にこぎつけ、問題は解決され、会議は終わり、君はその時間を節約できる。
そううまくいかず、次の段階に進む必要があるかもしれない。相手はそれが何を意味するのか、何を示唆するのかについて、何らかの疑問を抱き、君の解決策を聞きたがっているかもしれない。
自分ならどうするかの実例を示す
そこで、その事実を示された場合に、君ならどうするかの実例を示そう。たとえば、次のような感じだ。
そのファセットコンテンツへのリンクにrel="nofollow"を追加すれば修正できるだろう。
これに対して相手は、それがいかに明白な解決策であり、自らのテクノロジースタックで完全に対応できる問題であるかに気づくかもしれない。そうなれば解決だ。会議は終わり、君はまたも50分ほどの時間を節約できる。やるべきことはやった。
ここでも相手が納得しないこともある。相手は、なぜそれが優れた解決策なのか理解できないかもしれない。
最後に、詳しく説明する
そこで最後に、この段階に至るのだが、それが詳しい説明だ。次のように言えばいい。
これが優れたアイデアだと思う理由を説明しよう。
これらのページはユーザー体験にとって重要だ。貴社のEコマースストアのファセットナビゲーションを削除したくはないだろうし、削除するべきではない。
しかし、SEOのためには、それらのページにリンクしないほうがいい。というのも、関連するキーワードの検索ボリュームはないと思われるからだ。
よって、ユーザーにはその価値を提供し続け、検索エンジンにはそこを認識させないという対策をするべきなのだ。それがrel="nofollow"だ。
ファセットナビゲーションというのは、要はサイト内検索や商品検索での「絞り込み」のためのパーツだ。「このメーカーの製品のみ表示」「この金額以下のみ表示」「この色に絞り込み」といったものだ。
人間のユーザーがどれを買うかを決めるには必要だが、あるアイテムの特殊な価格レンジとかいった検索を最初からグーグルで行うことはない。
そこで、「これらのページはユーザー体験にとって重要だが、いかなる検索意図も満たすものではない」と説明するわけだ。
その時点で、相手が次のように言えば、解決だ。
そのとおりだ。理想の解決策を教えてもらった。提案してもらったようにやってみよう。
あるいは、そうならないかもしれない。その場合も、それより悪い状況にはならない。基本的には、その会議から退席して、次のように言ってもいい:
提案に乗ってもらえるよう、可能な限りあらゆる手を尽くしてみたが、うまくいかなかった。
自分の対応は正しかったと思えるその気持ちは、少なくとも僕の経験では、非常に強力なものだ。僕はコンサルティング業を8年ほどやっており、このプロセスを経験することで、自分は確かに責任を果たしたのだと感じられるし、夜もぐっすり眠れている。
それ以外にも、こうしたメソッドを使うメリットが2つある:
僕たちの経験では、このプロセスによってクライアントの成功率が非常に高くなることもわかっている。
提案する際の資料やプレゼンテーションをつくるときのフォーマットが定まっていれば、資料をまとめるのもはるかに簡単になる。
君の仕事が相手にエビデンスを示して何かを説得することにあると思っているのなら、収集できるエビデンスに終わりはない。常にもっと多くのエビデンスを収集できるし、クライアントと袂を分かつ最後の会議を迎えてしまったら、こんな風に考えてしまうだろう:
これは私が問題を見誤っていたわけではないし、伝え方を間違えたわけでもない。ROIの正当化が不十分だったのだ。
このルートに出口はない。未知のトンネルはどこまでも続いていて、どこまでいっても「もっとできたはずだ」と考える余地が残る。
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