リスティング広告運用でビジネススキルも磨く

アセットの活用法とは? 広告・マーケティングで成功を手に入れるコツ

マーケティングにおいて、企業の成功はマーケティングアセットの適切な活用にかかっています。広告やマーケティング戦略を構築する際には、企業が持つデータや情報を最大限に活かすことが必要です。コンテンツや顧客データを活用することで、効果的な広告キャンペーンを展開し、ビジネスの成果を最大化することが可能です。この記事では、ビジネスアセットの重要性と効果的なアセットの使い方について詳しく解説しています

寳: 今日はデータフィードを作っているのですね。なんだか元気ないですが、どうしました?

ウェブ担当者:: もういやだ! 「データフィードを作ればラクになるよ」って教わったのに、なんでこんなに大変なんだろう。ところどころデータが歯抜けになっているし、どうすれば……。

寳:: 元のデータにそもそも追加する項目がないわけですか。わかりました。では今日は「アセットを整え、磨き上げる」ことについてお話します。

これからの広告・マーケティングで重要な「アセット」とは

この連載ではリスティング広告について、キーワードを選び・広告を考えて・Webサイトに呼び込むという流れをお伝えしています。この基本が重要なことは変わらないのですが、近年急速に進化しているリスティング広告の打ち手には、1つ大きな共通点があることが見えてきています。それは「アセット」を使って広告を出している、というものです。

「アセット」(asset)は、一般的には「資産」「経営資源」という意味です。Webビジネス領域では「企業がビジネスを行ううえで保持する、情報やデータベース」のことを指します。下の図を見てください。

アセットを活用した広告

図の左に並んでいる「Webサイトのコンテンツ」「商品情報データベース」「ユーザーリスト」「顧客データ」が、自社の「アセット」を示しています。広告の打ち手はこれらを使い、右に並ぶような広告を出稿します。以下、アセットを活用した3つの広告手法について、それぞれ説明していきましょう。

  • 動的検索広告(DSA)
  • ショッピング広告、動的リターゲティング
  • リターゲティング、カスタマーマッチ、類似ユーザー

動的検索広告(DSA)

「動的検索広告」(DSA: Dynamic Search Ads)は、キーワードの代わりに、Webサイトのコンテンツを使って広告を出す手法です。これまでのようにキーワードを入れる必要はなく、広告を出したいWebサイトのコンテンツを指定するだけで、ページ単位でターゲティングを行えます。

動的検索広告のイメージ図

これまでは、広告の運用担当者がページからキーワードを抽出していましたが、こうしたプロセスを飛ばして、“ページと関連性の高い検索をしたユーザー”向けに広告が表示されます。その際、検索語句にマッチしたページがランディングページになり、検索語句にマッチした広告のタイトルが自動で作られます。

「動的検索広告」では、「このページは広告を出すが、このページは出さない」といった、広告表示の対象となるURLを、厳密にコントロールするのが可能です。そのため低めのCPCでも広告を出すことができます。意図どおりに動かす使い方を覚えてしまえば、合理的かつ効率的なしくみであることがわかります。

ただし、Webサイトのコンテンツからターゲティングするため、そもそものページに情報がしっかり載っていることが重要です。

ショッピング広告、動的リターゲティング

「ショッピング広告」「動的リターゲティング」は、近年急速に利用が広がっている手法で、「データフィード広告」とも呼ばれます。「ショッピング広告」は、商品情報のデータベースから作ったデータフィードをターゲティングに使います。キーワードの代わりに、商品情報と関連性の高い検索をしたユーザーに広告が表示されます。

ショッピング広告(動的リターゲティング)のイメージ図

その際、検索語句にマッチしたページがランディングページになり、商品画像も広告の一部として使われます。たとえば、モバイルで検索していて下記のような画像付きの広告を見たことがありませんか? 枠で囲った個所がショッピング広告です。とても目立ちますよね。

Eコマースサイトの流入経路を長期トレンドで見ると、ショッピング広告の流入の増加と反比例して、オーガニックの流入が、大きく減少していることがあります。「ショッピング広告」は大きなインパクトを持っているので、Eコマースサイトの広告の打ち手は、必ず検討しているのが現状です。

もう1つの「動的リターゲティング」は、文字どおり表示する広告を動的に変化できるもので、こちらはデータフィードとユーザーリストをマッチすることで実現しています。たとえば、特定の商品詳細ページを見たユーザーが、買わずに別のサイトへ行ってしまったとき、商品の広告を見せ、思い出してもらうことで再訪問を促します。

ショッピング広告も動的リターゲティングも、データフィードからターゲティングするため、データフィードの情報が揃っていることが重要です。

リターゲティング、カスタマーマッチ、類似ユーザー

「リターゲティング」「カスタマーマッチ」「類似ユーザー」は、“自社サイトに訪れたユーザー”“すでに顧客となっているユーザー”“これらのユーザーに行動が似ているユーザー”に対して広告を出す手法です。

リターゲティング、カスタマーマッチ、類似ユーザーのイメージ図

「リターゲティング」は、文字どおり「一度サイトを訪問したユーザーに再訪問を促すために使われる広告」です。一般的になっているので詳しい説明は省略します。本連載の過去記事などを参照してください。

「カスタマーマッチ」は、自社顧客のメールアドレスをGoogleアカウントと照合し、一致リストを作成して活用する方法です。これらのユーザーが、Google検索やYouTubeやGmailといった、Googleのサービスを利用したときに広告が表示されます。一致リストの作成は、Googleにアップロードすることで自動的に行われます。なおFacebookやTwitterにも「カスタムオーディエンス」という同様のしくみがあります。

「類似ユーザー」は、リターゲティングやカスタマーマッチユーザーリストから、傾向が似ているWebサイトに来ていない人をリストするもので、有望なターゲットの拡張として使えます。

あなたの企業は「アセット」を活かせているか?

ここまで見てきた3つの広告は、いずれも、自社データの「アセット」をフルに活用しています。この他、「画像」「ロゴ」「見出し」といった広告アセットを複数パターンセットするだけで、機械学習により、ターゲット・クリエイティブ・入札まで自動最適化する、「スマートディスプレイキャンペーン」の利用も始まっています。いずれもテクノロジーの進化により出てきた広告だけあって、みな強力かつ効率的な、広告の打ち手になっています。

しかし、これらの新しい打ち手を、すんなり活用できる企業とそうでない企業とで、大きな差が生まれつつあります。活用できない企業のアセットは、広告やマーケティングに活用されることをあまり想定せずに設計されているケースがほとんどです。冒頭の会話で見たように、アセットの活用を意識していない企業では、データが歯抜けになっていたり、ページでの商品説明が不十分だったりして、うまく使えないのです。

反対に、すんなり活用できる企業は、必ずどこかの地点で、Webサイトのコンテンツやデータベースをマーケティングに活用できるように整備しています。そのため、アセットを活かして打ち手を効果的に行える企業と、そうでない企業のあいだで、どうしても差がついてしまっているのです。あなたの企業はアセットを活かせているでしょうか? 一度考えてみてください。

アセットを「整え、磨き上げる」ことが重要

仮にアセットのマーケティング活用ができていないなら、その見直し・改善はいつ行えばいいのでしょうか? たとえば、「Webサイトのリニューアル時」は絶好のチャンスと言えます。

リニューアル時のSEOでは、「ユーザーがどんな検索をしているのか」「どんな検索をしているユーザーに来てほしいのか」、検索意図を調査したうえで、サイト内のカテゴリやページの全体図を設計します。これにより、それまで存在していなかったものの、本来なら備わっていて当然のページや、より深く掘り下げるべきページなどが、構造的に整った状態で加えられます。

各ページには、ユーザーが知りたい情報を、詳しくわかりやすく盛り込んでいきます。商品やサービスを整理すると同時に、Webサイトに訪れたユーザーにとって商品やサービスが輝いて見えるよう、ていねいに磨き上げるプロセスです。このようなプロセスを経てリニューアルしたWebサイトならば、動的検索広告は、スムーズかつ効果的に活用できるでしょう。

カテゴリの設計だけでなく、商品情報データベースの項目も同様です。データベース項目を整理することで、データフィードの情報を詳しく指定でき、商品を求めているユーザーの検索語句に対して、確実かつ柔軟にショッピング広告を表示できるようになります。リスティング広告やデータフィード広告に、一定予算を毎月投じている企業ならば、後々の広告の改善にもなることを見据え、項目を整理し磨き上げる視点を入れるべきでしょう。

アセットを整え磨き上げる

ほぼ日の糸井重里氏は、広告について以下のように語っています。

広告とは商品のなかに練り込まれているものだ。

昔からある言い方だけど、石仏を掘る人が「石のなかに仏様はいて、周りの石をどかして、出してあげるだけなんだよ」というじゃない。それって見事な言い方でさ(後略)

出典:「BRUTUS(ブルータス)」2011年4/15号

石仏における“周りの石をどかして、出してあげる”ことは、現代では“Webサイトやデータベースを整え、磨き上げる”ことに通じると筆者は考えています。

アセットを整え磨き上げるのは「社内の人間」

そのうえで、1つ心に留めてほしいことがあります。

Webサイトや商品情報のデータベースといったアセットは、企業が保有しているものであり、「外側」ではなく「内側」にあるものです。内側にあるアセットを整え、キラリと光るものにまで磨き上げるのは、最終的には自社内の人間であることを忘れてはなりません。

広告代理店も制作会社もコンサルタントも、あくまでもその手助けができる存在にすぎません。自分が働く会社で思ったようにアセット活用が進んでいないと思う方は、アセットを自社内で整え、磨き上げる視点を持ってください。

それには、しっかりとリソースを割くことが重要です。まずは、周りにいる同僚や上司と話し合うことから始めてみましょう。

少し組織が大きくなると、SEOやWebサイトの改善を行うチームと、リスティング広告を行うチームがわかれ、十分に話し合いが行われていない状況が増えてきます。ここまで見てきたように、広告の打ち手にとって自社のアセットは重要な資産です。チームを横断してアセットを整え、磨き上げる一歩を踏み出しましょう。そうすればテクノロジーの進化によってできた、有効な広告の打ち手を使って、未来の有望な顧客をスムーズに集められるはずです。

あなたのアセットは何か。自身を見つめ磨き上げよう

ここまで、これからの広告やマーケティングで重要なアセットについて説明し、自社のアセットを自社内で整え、磨き上げることの重要性を話してきました。

  • Webサイトのコンテンツを活かす「動的検索広告」
  • 商品情報のデータベースを活かす「ショッピング広告」「動的リターゲティング」
  • ユーザーリストや顧客データを活かす「リターゲティング」「カスタマーマッチ」「類似ユーザー」

ビジネスパーソンとしての個人のレベルで考えれば、アセットは自身のキャリアやスキルなどと喩えられます。それらは言うまでもなくあなたのものです。ふだんの仕事はさまざまな人との関係や支えによって成り立っているでしょう。でも、いざというときに最終的に残るのは自分自身です。どんなに忙しくても、ときには自身を見つめる時間を持ちましょう。

そして「周りの石をどかして、出してあげる」ように、内側から自身を磨き上げてください。明るい未来はその先に開かれていきます。

CSS Nite After Dark 2019 「Google広告の新フォーマット『レスポンシブ検索広告』ワークショップ」開催
主催:CSS Nite

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用語集
CPC / Facebook / SEO / アップロード / キャリア / キャンペーン / クリエイティブ / フィード / ランディングページ / リスティング広告 / リターゲティング / 広告代理店 / 訪問
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