社内でキーワードの取り合いとか何なの!? リスティング広告のキーワードはどう選ぶ?
ウェブ担当者:寳さん、ちょっと愚痴っていいですか。先週、リスティングの本を読みながら出稿するキーワードを考えてたんですよ。なのに他の部署の◯◯さんから横槍が入って、私が選んだキーワード、ほとんどダメ出しされちゃって。
寳:それはまたどうしてですか?
ウェブ担当者:こっちが聞きたいくらいですよ。◯◯さんいわく、「自分の部署で使ってるキーワードだから、ちゃんと住み分けしてもらわなきゃ困る」ですって。何なんですか? っていうか私のキーワード選びの時間を返せー!
寳:大変だったんですね。今日はキーワード選びについて話しましょう。それと、企業にとってキーワードがどれだけ重要なのかもお伝えしますね。
キーワードの取り合いは現場で起きている
同じ会社のなかで、キーワードの取り合いなんて起こるの?
リスティング広告を担当されたばかりの方は、会社名などのキーワードならまだしも、違うブランドを扱う他部署とキーワードの取り合いになることに疑問をもつかもしれませんが、こうした悩みを耳にする機会が増えています。
たとえば、化粧品やシャンプーで想像してみましょう。異なるブランドでも、同年代の女性をターゲットにした商品を複数扱う企業があるのが、思い浮かぶでしょう。詳しくは後半で説明しますが、リスティング広告に本気になればなるほど生まれてくる悩みでもあるのです。
キーワードには意図が含まれている
まず、リスティング広告のキーワードが持つ意味について整理しておきましょう。SEOやリスティング広告など、検索エンジンを使ったマーケティングでは、キーワード選びが重要な要素になります。ここでいうキーワードとは、検索エンジンでユーザーが入力して探す言葉のことです。毎日、おびただしい数のキーワードが検索されています。
ユーザーの検索した言葉がマーケティングを行ううえで重要なのは、なぜでしょうか。それは、キーワードにはユーザーの意図や気持ちが入っていると考えられるからです。
実際に検索エンジンで誰かが何かを検索しているシーンを思い浮かべてみましょう。たとえば、ある1人のユーザーが次のような検索行動を繰り返している様子を考えてみましょう。
問1 次のキーワードで検索している人は、どんなことを考えているでしょうか
- 週末 温泉 日帰り
- 箱根 温泉 おすすめ
- 箱根 食事 おいしい
ユーザーがどんな意図や気持ちを持っているのか、想像できましたか? 週末に箱根温泉へ行くため、さまざまな情報収集をしている様子がうかがえたと思います。
週末、日帰りで温泉に行きたいけどどこがいいかな、箱根はどうだろう。温泉はもちろんだけど、せっかくだから美味しいものも食べたいな。どこかあるかな。
もう一例、さっきとは別のユーザーを想像してみましょう。
問2 次のキーワードで検索している人は、どんなことを考えているでしょうか
- パウンドケーキ レシピ
- パウンドケーキ ショートニング 不使用
- ショートニング 代用
いかがですか? 検索しているユーザーの意図や気持ちを想像してみてください。
よし、パウンドケーキを作ろう。レシピ、レシピと。ああ、材料にショートニング使うものが多いや。あの子がアレルギーだから使わなくていいものはないかな。ええと、ショートニングの代わりになるものって何があるんだっけ。
正解は1つではありませんが、上記2つの例で、キーワードには、それを検索しているユーザーの意図や気持ちが含まれていることが実感できたと思います。そのため、リスティング広告をマーケティングで使う場合には、自社の製品やサービスを使ってくれそうな「こんな気持ちを持っている人に来てほしい」と考えられるキーワードを選び、登録することが重要になります。
キーワード選びの際には必ず検索エンジンを前にして、自分がユーザー(お客さん)候補だったらこんなキーワードで入力するだろうという言葉を打ち込んでみてください。
検索キーワードは想像を超えるほどバラエティ豊か
検索ユーザーの意図を知ろうとするうえで、気をつけたいことが1つあります。この「キーワードに意図が含まれている」という基本を早い段階でインプットをした人のなかには、それを鵜呑みにして「このキーワードはこういう意図に決まっている」というように、固定的に考えてしまったり、断定してしまったりする人がいることです。心あたりがある人は注意です。
リスティング広告の教科書を読み解くと、必ずと言っていいほど、ビッグワードとロングテールのキーワードについて解説されています。ビッグワードで検索するユーザーは、まだ明確に目的が定まっておらず、検討段階が浅い段階。キーワードが2語3語と具体的になるほど、目的が明確になって検討段階が深くなるというのは、そのとおりです。
しかし、実際にユーザーが検索するキーワードは、私たちの想像をはるかに超えるほどバラエティに満ちていることも、あわせて知っておいてください。
あなたがすでに現場でデータに触れていれば、検討段階が深まった人が同じビッグワードを繰り返し検索する例はいくらでもあるでしょう。また、検討段階が浅い人が、検索窓に表示されたサジェスト(候補)キーワードを通じてロングテールの言葉で入ってくる例がいくらでもあることを知っているでしょう。
詳しくは別の回でお話しますが、同じキーワードでも状況に応じて意味合いが異なり、アプローチも変わってくることがあります。「このキーワードはこういう意図に決まっている」というように固定化せず、柔軟に考える姿勢を持つようにしてください。
製品サービスを徹底的に理解して軸となるキーワードを見つける
キーワードを選ぶには、自社の製品・サービスについて知る必要があります。
キーワードを抽出する際、自社の製品・サービスがカバーしている「全体」を、頭ではなく身体にしっかりインプットするつもりで挑みましょう。キーワード抽出と広告文作成のプロセスを通じて、あなたは今まで以上に、自社の製品・サービス全体に詳しくなるはずです。
キーワードは、サイトにあるページから抽出していきます。一定規模以上のサイトであれば、ページの階層ごとに軸となるキーワードを抽出していきます。軸となるキーワードとは、「このページは一言でいうと何のページか」という「何」にあたる部分のことを指します。
例として、キッチン用品の通販サイトで考えてみましょう。サイトの階層と、それに対応する軸のキーワードを見ていきます。
図1の例では、中分類の商品種別のページには、鍋やフライパンなどの商品一覧ページが存在しています。ここでは、「鍋」「フライパン」「包丁」が軸キーワードになります。
1つ階層を下りて小分類のページにはブランド別商品一覧ページが存在しています。これも同様に、たとえば、鍋の「バーミキュラ」といったブランド名が軸キーワードになります。
さらに深い階層には各商品の商品詳細ページが存在し、商品名である「オーブンポットラウンド 22cm」などが軸キーワードになります。
「バーミキュラ」「VERMICURA」など、同じページに軸キーワードが2つ以上ある場合もあります。また、家電製品などでは、商品名はもちろん、型番もよく検索されるので押さえておきます。このようにして、ページの階層ごとに軸キーワードをくまなく抽出します。
よく検索されるサブキーワードを知る
ここでもう一度、検索という行為を振り返ってみましょう。インターネットで探しものをしているとき、ユーザーは前述で説明した軸キーワードで検索します。鍋を探していれば、段階に応じて、鍋やオーブンポットラウンドなどと検索していくでしょう。
ただ、それだけだと自分が期待しているぴったりの結果が得られないこともあります。軸キーワードに続けて別のキーワードを入れることで、より自分の求めている結果に絞り込もうとした経験はないでしょうか。
結果を絞る目的で使われる言葉を「サブキーワード」といいます。リスティング広告の運用では、サブキーワードを軸となるキーワードと組み合わせて、キーワードを作っていきます。
上記は、ユーザーの検索パターンと、それに対応したキーワードと想定できるユーザーの検索意図を例としてまとめたものです。
たとえば、「バーミキュラ 通販」「バーミキュラ 買う」などのように、購入と関わる言葉と組み合わせて検索するユーザーは、購買欲の熱量がとても高いことが想像できるので、リスティング広告のキーワードとして高い効果が望めるため登録します。
サブキーワードを探す際は、Google AdWordsの「キーワードプランナー」やYahoo!プロモーション広告の「キーワードアドバイスツール」などのツールを使うと効果的です。
その他にも、Googleで軸キーワードを検索したときに候補として表示される「サジェストキーワード」を確かめるのもいいでしょう。過去に軸キーワードと組み合わせて検索されたことがあるキーワードを調べるだけでなく、今後、表示されたサジェストをユーザーが活用する可能性があるという意味でも有効です。
軸キーワードがどんな言葉と一緒に検索されているのか、しっかり身体にインプットするためにも、主要な軸キーワードのサジェストは必ず確認しておきましょう。
ねらいの範囲をコントロールする「マッチタイプ」と「除外キーワード」
リスティング広告には「マッチタイプ」という、登録するキーワードの「ねらいの範囲をコントロールする」機能があります。まず、基本として2つのマッチタイプで考え方を大きくとらえましょう。
- 完全一致:登録したキーワードどおりにユーザーが検索したとき広告が表示される※
- 部分一致:登録したキーワードとユーザーの検索する語句が近しいときに広告が表示される
完全一致と部分一致
ここまでに解説したプロセスで抽出したキーワードは「こんな気持ちを持っている人に来てほしい」というキーワードであり、リスティング広告としても高い効果が望めます。自分が抽出したキーワードだけを広告の表示対象にしたい場合は、キーワードのマッチタイプを完全一致で登録します。
しかし、前述でも説明したように、検索キーワードは1人の担当者が思い描くよりもバラエティに満ちています。そのなかには有望なキーワードも含まれていると考えられますから、そのバリエーションを可能性としてとらえ、部分一致というマッチタイプで登録するほうがチャンスを増やせます。そうすることで、登録したキーワードどおりの語句だけでなく、関連する語句があるとみなされた場合にも広告を表示できます。
除外キーワード
リスティング広告の効果を高めるには、狙いとかけ離れたキーワードで広告が表示されるのを防ぐ「除外キーワード」を登録することも重要です。
たとえば、製品を購入してもらうことが目的の広告が、異なる意図を持った、株価や求人などを探しているユーザーに広告を表示することを防ぎます。その他、ネガティブな要素を含む語句や、広告を使った集客にふさわしくないキーワードが明確な場合は、除外キーワードとして登録します。
Google AdWordsには、広告の表示やクリックにつながったキーワードを分析する「検索語句レポート」(Yahoo!プロモーション広告では検索クエリレポート)という機能があります。そのレポートを見れば、部分一致によってヒットした言葉のうち、どの検索語句の効果が良かったのかを確かめることができます。良い言葉を新たにキーワードとして追加登録し、ダメな言葉を除外キーワードに登録して、ねらいの精度を高めながら運用していきます。
絞り込み部分一致
もう1つ押さえておきたいのが、近年、使用頻度が高くなってきている「絞り込み部分一致」というマッチタイプです。通常の部分一致は、関連性が高いとみなされた場合に、語句そのものが含まれていない言葉へも拡張します。可能性が広がる一方、広がりすぎて意図しないクリックを増やしてしまうこともあります。
一方、絞り込み部分一致は、指定したキーワードの語句そのものが含まれている場合に広告が表示されます。広告を表示したいキーワードを網羅できて、あらかじめコントロールの度合いを高められるなら、絞り込み部分一致を登録するのが効率的です。
マッチタイプ別のキーワード利用例
ここまで解説してきた登録キーワードの考え方の実例として、「冷えとり靴下」を軸に考えてみましょう。
「完全一致」の利用例
「冷えとり 靴下」というキーワードを完全一致として登録すれば、そのとおり「冷えとり 靴下」と検索されたときに広告が表示されます。
「部分一致」の利用例
部分一致と絞り込み部分一致では、部分一致のほうが広く、「冷えとり 靴下 おすすめ」など、「冷えとり」や「靴下」を含む検索語句を含みます。さらに、
- 冷え性 靴下
- シルク 靴下
- 絹 靴下
- 冷えとり ソックス
- 靴下 重ね履き
- 冷えとり 健康法
など、「冷えとり」や「靴下」を含まないキーワードでも広告が表示される可能性があります。
「絞り込み部分一致」の利用例
「絞り込み部分一致」を使うときは、次のように+マークでキーワードを指定します。
- +冷えとり +靴下
+マークで指定した「冷えとり」や「靴下」を必ず含んだバリエーションで広告が表示されるため、普通の部分一致よりも文字通り「絞り込む」ことができます。
リスティング広告においては、キーワードもマッチタイプも一度決めたら終わりではありません。広告の成果を経過観察しながら、マッチタイプを変えたり、キーワードを追加したり除外したりして、広告を表示させたい検索語句を明らかにしていくものだと頭にとどめておいてください。
部署間で生まれるキーワードの取り合い
さて、ここまでキーワードに含まれるユーザーの検索意図や、リスティング広告のキーワードの考え方を説明してきました。では、冒頭で示したようなキーワードの取り合い問題は、なぜ生まれるのでしょうか。そして、それはどうやって解決すればいいのでしょうか。最後に、課題と解決策を紹介します。
キーワードは「企業ドメイン」
ユーザー視点で組織の壁を乗り越えよう
ここまでリスティング広告におけるキーワード抽出の方法について話してきましたが、キーワードとはビジネスにおいて何なのか、という根本についても知っておきましょう。
キーワードは「企業ドメイン」です。企業ドメインというのは、企業が事業を展開する領域のことです。つまり、その企業が「やる」と決定した範囲によって、検索エンジンマーケティングにおけるキーワードもほぼ規定されるといっていいでしょう。
ところが、冒頭の会話にも出たように、部署間や事業部間でキーワードの取り合いを耳にする機会が増えてきています。
たとえば、企業にA事業部とB事業部があったとします。どちらの事業部も売上目標があり、達成するためにリスティング広告を出稿しています。A事業部にとって重要なキーワードが、B事業部にとっても同じように重要になることがあるために、取り合いになるわけです。
別々のサイトでそれぞれ同じキーワードの広告を出稿している場合、同じ社内にもかかわらず、入札を競い合ってしまうこともあります。これは非常にもったいないことです。
企業ドメインであるキーワードとは、ユーザーの意図や気持ちが反映されたものにほかなりません。そのユーザーが広告を通じてサイトに訪れ、製品やサービスを購入するとき、「これはどの事業部が展開しているものだろうか」などと考えるでしょうか。その企業が信頼できるものかどうかの判断こそすれ、組織内での違いなど、取るに足らない種類のものでしょう。
もしそのような壁を自社の組織内に感じはじめたら、あなたがするべきことは、大きな声を出して自分が担当するキーワードを守り、奪うことではなく、組織内の他の事業部、他の部署の人間に働きかけることです。取り合うほど同じキーワードが重要ということは、「お客さんが共通している」ことを示しているとも言えます。話し合いの場を持ってみてください。
第一歩は、まずお互いのキーワードのパフォーマンスについて共有し合うことです。別の角度からユーザーの気持ちを知ることで、意外な発見もあります。共通のページを作って、ユーザーにどちらかを選んでもらうだけでなく、どちらも利用してもらえるような提案をするのもいいでしょう。ユーザーのニーズや気持ちに応えられれば、新しい製品・サービスを生み出すことができる可能性もあるはずです。
リスティング広告のキーワードを広告の視点だけで捉えるのではなく、企業ドメインであるキーワードとして、ユーザーの視点に立って考えて動くことが、これからのマーケティング担当者に求められています。
今回のまとめ
検索キーワードにはユーザーの意図や気持ちが含まれている
軸となるキーワードをサイトから抽出する
軸のキーワードと一緒に検索されるサブキーワードで意図をしぼる
マッチタイプや除外キーワードでねらいの範囲をコントロールする
企業ドメイン=キーワードをユーザー視点で話し合い、社内の壁をくずす
主催:CSS Nite
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