「NPS」と顧客満足度調査の違いとは? その算出方法も紹介します
「○○を友人や同僚にお薦めしますか? 0~10の11段階でお答えください」
「その理由を教えてください」
「NPS(ネットプロモータースコア)」という言葉をご存じでしょうか?
これは顧客ロイヤルティを把握するために「企業やブランドに対してどれくらいの愛着や信頼があるか」を数値化する指標のことで、日本でも認知度が高まってきています。上記のような質問で「他人への推奨度」を聞くことが特徴です。NPSの特徴は、何といっても業績に直結することです。
この連載では、顧客のロイヤルティを上げるために使われる新しい指標「NPS」について解説していきます。第1回のこの記事では、NPSの特徴とその算出方法を解説します。
企業に成長をもたらしてくれる「ロイヤルカスタマー」という存在
将来の収益の80%は既存顧客の20%がもたらす
調査会社のガートナーグループは上記のように言っています。つまり、成長の鍵を握るのは既存顧客で、その価値を高めるためには顧客ロイヤルティを上げることが重要です。顧客ロイヤルティとは、企業やその企業の製品・サービスといったブランドに対する顧客の信頼度・愛着度のことを指します。
顧客ロイヤルティは、大きく「理性」と「感情」に分けられます。
「理性」は、「その企業が最良の製品やサービスを最良の価格で提供している」ことでロイヤルティが形成されます。性能や価格といった現実的な要素に対して抱くロイヤルティです。
一方「感情」は、「企業との関係性が良い」「自分のことを理解してくれている」「価値観と合っている」と感じることでロイヤルティが形成されます。たとえば、一流のホテルでは顧客の好みを覚えていて、1年に1回訪れただけでも最適なサービスを提供してくれます。
このように「理性」と「感情」という異なる2つの側面が複合的に絡み合うのがロイヤルティなのです。これは一体どうやって測ればいいのでしょうか? そこで登場したのが「NPS」です。
NPSは「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いて算出する
NPSは、日本語で「推奨者の正味比率」を意味します。測定方法は非常にシンプルです。自社の顧客に対して「この会社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」と質問し、0点~10点の11段階で評価してもらいます。
9~10点を付けた顧客を「推奨者」、7~8点を「中立者」、0~6点を「批判者」と分類し、回答者全体に占める推奨者の割合(%)から、批判者の割合(%)を引いた値がNPSのスコアとなります。
たとえば、100人の回答のうち「9~10」の推奨者が30人で「0~6」の批判者が50人だった場合、NPSは30-50で「-20」となります。実際には、統計的な観点から、400サンプル以上を確保することが望ましいといえます。この場合の誤差は±5%となります。もし誤差を±2%に抑えたい場合は、2000サンプル以上が必要となります
NPSのポイントは「業績との相関が高い」こと
NPSが昨今注目されている大きな理由は「業績との相関が高い」ことです。これまで多くの企業が「満足度」を答えてもらう顧客満足度調査(CS調査)を行ってきましたが、従来の顧客満足度は必ずしも実際の再購入や購買金額の増加といった行動につながらないことが明らかになっています。
Satmetrixが実施した調査では、解約した顧客の約8割が、直前の顧客満足度調査で「満足」と回答していたという結果が出ています。これは、次のことを表しています。
- 「満足」していてもリピートしてくれるとは限らない
- 「満足」していてもロイヤルカスタマーではない
このような背景から、業績との相関が高いNPSに関心が集まっています。それでは、NPSと企業の業績はどのような関係があるのでしょうか。
NPSと業績の成長率は比例する。推奨者が企業に与えるポジティブな影響
NPSを開発した1社であるSatmetrixのホワイトペーパー「THE POWER BEHIND A SINGLE NUMBER」では、複数の業界の400社以上の企業/ブランドに関して、延べ1万人以上からの評価を分析した結果、NPSは企業の売上高成長率と高い相関があることが明らかだとしています。特に航空業界の主要企業において、NPSと5年間の売上高成長率では、相関係数「0.89」と強い相関が見られます。
NPSが向上するということは、すなわち批判者が減って推奨者が増えることを意味します。これにより企業の業績に次のようなポジティブな影響を与えます。
- 再購入・継続購入・高頻度での購入
- 追加購入・アップセル・クロスセル
- 他者へのポジティブなクチコミ・友人や同僚への積極的な推奨
- 企業への建設的なフィードバック・プロダクト開発やサービス改善へのアイデア提供
たとえば、2016年6月にNTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションが実施した生命保険業界のNPSベンチマーク調査では、推奨者は批判者に比べて7倍超えのクチコミを発信しているという結果が出ています。
推奨者のライフタイムバリューは批判者の約2.4倍ある
この調査結果をもとに、顧客のライフタイムバリュー(顧客が取引期間を通じて企業にもたらす価値=顧客生涯価値)を算出したのが次の図です。
推奨者は批判者に比べ約2.4倍価値が高いことがわかります。つまり、批判者を減らし推奨者を増やすことで、業績向上が期待できるのです。
このようにNPSは、シンプルな測定方法でありながら業績と強い相関があることから、欧米では公開企業の3分の1以上が活用しているといわれています。しかし、実際の導入にあたっては、考慮しなければならないポイントは多岐にわたります。
単なるスコアの測定にとどまらず、具体的な改善アクションやロイヤルティの獲得に結びつけるためには、自社の顧客接点(=Moment of truth)を洗い出し、ロイヤルティに影響の高い要因をとらえた調査票を作ることが重要です。
では、どのように調査票を作ればいいのでしょうか? 次回は調査票の設計方法について解説する予定です。
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