顧客ロイヤルティを高める「NPS」のはじめかた

NPSを上げると売り上げはいくら上がるのか? 「口コミ」の効果を金額に換算する方法とは[第4回]

「NPSは業績との相関が高い」と一般的にいわれますが、自社でも本当にそうなのでしょうか? 自社の数字を使いNPSを金額価値に換算して検証してみましょう。

今回は「NPSという指標が自社のビジネスにとって本当に追うに値する指標なのか」、その有効性を検証する方法について紹介します。検証のポイントは次の2つです。

  • 推奨意向(おすすめ度)と実際の購買行動に相関はあるか?
  • NPSが上がるとどれくらい収益が上がるのか?

これまでの連載では、NPSが業績に直結する指標であること、具体的な調査票の作り方分析方法を解説してきました。

一般論ではなく「自社のビジネス」で収益と相関があるかを検証する

本連載の第1回で紹介したように、NPSが活用されている大きな理由の1つは「NPSスコアと業績の相関が高い」ことです。

これは実際に多くの業種で証明されていますが、一方ですべてのビジネスにおいて必ずその関係が成り立つわけではないことも、また事実です。一般的には顧客との関係が長期にわたり、体験の積み重ねがその後の購買行動に影響するビジネスほど相関が高く、逆に体験よりも入手のしやすさが重要な商材や、顧客との関係が単発で終わるような業態では、相関が出にくい傾向があります。

NPSという指標を関係者全員が納得して活用するためには、「NPSを上げれば売り上げが上がると言われているから」という一般論ではなく、「自社のビジネスにおいて、実際に収益性と相関がある」と示すことが重要です。では、どのようにそれを検証すればよいでしょうか?

検証1推奨者と批判者の購買行動を比較する

1つ目の考え方は至ってシンプルで、アンケートによって得られた個々のお客様の推奨意向(「他人にお薦めしたいか?」に対する0~10点の回答)と、その後の購買行動との相関を見ればよいのです。

アンケートの回答とその後一定期間の購買データを突き合わせて、9点以上を付けた推奨者と6点以下を付けた批判者の間で、総購入金額・解約率などに有意な差があれば、「NPSは自社においても収益性と相関がある」といえます。

以下の図1は、ある損害保険会社(以下A社)における、調査後2年間の顧客1人あたりの売上高です。一見してわかるように、推奨意向が高いほど売り上げが高いことがわかります。

図1:損害保険のA社における調査後2年間の顧客1人当たり売上高
図1:損害保険のA社における調査後2年間の顧客1人当たり売上高

ここでは代表的なものとして1人当たりの「売上高」を見ましたが、比較すべき値はビジネスによって異なります。たとえば携帯電話サービスや、フィットネスクラブのような会員制のサービスでは、料金プランがある程度決まっているため、推奨意向の大小で売上金額に大きな差が出ない場合があります。

このような場合は、売上高よりもむしろ「その後も利用が継続しているか否か」を見るべきでしょう。単純な金額だけでなく、次のような自社にとって重要な収益指標と比較してみることで有効性を検証し、関係者全員が納得できるようにしていきます。

  • 契約の継続期間
  • リピート回数
  • 1回あたりの購入点数
    など

購買データをうまく活用できない環境の場合は?

先ほど「アンケート結果をその後の購買行動と突き合わせて」と簡単に言いましたが、顧客の購買データが活用できる形に整備されておらず、必要なデータがそろわないこともあるでしょう。そのような場合、アンケートの中に次のような質問を含めることで、購買データの代替とすることもできます。

  • いつから利用しているのか?
  • 1回当たりの購入金額はいくらか?
  • 平均して年間何回購入しているか?

ただし、これらはあくまで記憶に基づいた自己申告をベースにした数値であることと、「回答後の後の購買行動」ではなく「回答以前の購買行動」を表しているデータであることに注意が必要です。

たとえばこれまで優良顧客だった人が、何らかの不愉快な体験をきっかけに離反するケースもあります。このようなケースでは、過去の支払額は多くても、つい最近経験した出来事を強く反映して推奨意向を低く評価して、収益性との相関が逆に出てしまうこともあります。

可能であれば、実際の購買データで検証するのが一番です。アンケートで購買行動の聞き取る方法は、あくまで必要なデータがそろわない場合の対応策だと考えるとよいでしょう。

検証2顧客価値を算出してNPS向上による金額のインパクトを測る

さて、ここまでの検証で、どうやら「自社のビジネスにおいてNPSが収益性と相関がありそうだ」ということが確認できました。すると次に気になるのは、「NPSを向上させると、どのくらい収益が上がるのか?」です。

収益性と相関があったからといっても、あまりにインパクトが小さいならば、追及する意味が(ビジネス効率の観点からは)薄くなります。これを検証するためには、推奨者と批判者の顧客価値を算出して、それらを比較します。

図2で表しているのは、先ほどの損害保険会社(A社)における推奨者1人あたりの顧客価値と、批判者1人あたりの顧客価値を比較した図です。

図2:損害保険A社における推奨者と批判者の顧客価値(年間)
図2:損害保険A社における推奨者と批判者の顧客価値(年間)

青色の部分が顧客1人当たりの平均売上高を、オレンジ色の部分が「口コミの価値」を示しています。推奨者は実際の購入額に加えて、他の人に「おすすめ」をしてくれるため、推奨者本人の売上高に加えて口コミ分の新規獲得効果が上積みされます。逆に、批判的な意見を他の人に伝えることで機会損失を引き起こしてしまうため、批判者の口コミ価値はマイナスで表しています

  • 推奨者1人あたりの顧客価値 = 平均売上高 + 口コミの新規獲得効果
  • 批判者1人あたりの顧客価値 = 平均売上高 - 口コミの機会損失

これらの要素を合計してみると、「A社の推奨者は批判者よりも年間8万5000円以上価値が高い」ことになります。つまり、「批判者を1人推奨者に移行させることは、1年間で8万5000円の経済的な価値がある」と考えられるのです。

口コミの価値を金額で表す計算式

ところで、売上高はともかく「口コミの価値をどのように算出しているのか?」という疑問が浮かぶかと思います。口コミの価値を計算するために、以下に示すモデルを用いています。

図3:口コミ価値算出モデル(※米SatmetrixのホワイトペーパーをもとにNTTコムオンラインが作成したもの)
図3:口コミ価値算出モデル(※米SatmetrixのホワイトペーパーをもとにNTTコムオンラインが作成したもの)

図3では上半分が推奨者の口コミ、下半分が批判者の口コミの各種数値を並べています。図で使われている「推奨者のポジティブな口コミの件数」「口コミが申し込みの決め手となった割合」「ネガティブな口コミを打ち消すために必要なポジティブな口コミ件数」は、それぞれアンケートの中で聞き取っています。

推奨者の口コミ価値は、次の考え方で算出しています。

  • 推奨者が過去1年間に行ったポジティブな口コミの平均回数(2.33回)に、口コミをきっかけに顧客に転じる割合(31.2%)を掛ける
  • 推奨者1人が創出する新しい顧客数の概算値が0.73人だとわかる
  • 新規顧客の概算値(0.73人)に全顧客の平均売上高(6万5000円)を掛ける

批判者の口コミ価値の算出も同様のアプローチで算出しますが、ネガティブな口コミのインパクトを求めるためには、「批判者の影響がなければ実際に顧客となっていたであろう人数」を特定しなければなりません。

そのため、アンケートの中で「一度ネガティブな評判を耳にしたと仮定して、その後何件のポジティブな口コミを聞けば、そのブランドを購入してもよいと思うか?」という質問をしています。これで、ネガティブな口コミのインパクトの強さを測ります。

批判者1人の口コミの影響は、次の考え方で算出します。

  • 批判者が過去1年間に行ったネガティブな口コミの平均回数(0.23回)に、ネガティブな口コミのインパクト(2.39件)を掛ける
  • さらに口コミをきっかけに顧客に転じる割合(31.2%)を掛ける
  • 批判者1人の影響がなければ実際に顧客となっていたであろう人数が0.17人だと推定できる
  • 機会損失の概算値(0.17人)に全顧客の平均売上高(6万5000円)を掛ける

これらの計算を通じて、A社では次の結果を得ることができたわけです。

  • 推奨者1人の口コミによる新規獲得効果はプラス4万7252円
  • 批判者1人の口コミによる機会損失効果はマイナス1万1148円
◇◇◇

今回は、NPSの有効性を金額で検証する方法を紹介しました。NPSは顧客満足度とは異なり、売り上げや利益などのビジネスパフォーマンスとの相関が高いといわれていますが、経営層からフロントラインのスタッフまで関係者全員が共通して目指す指標とするためには、「自社にとって本当にその関係が成り立っているのか」信頼できるデータに基づいて検証を行うことが重要です。

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次回は、少し切り口を変えて、「B2B企業においても、NPSは活用できるのか?」というテーマをお話したいと思います。

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