顧客ロイヤルティを高める「NPS」のはじめかた

NPSを社内で定着させるには? 3年計画のロードマップを大公開 [最終回]

NPS連載シリーズの最終回は、社内でNPSプログラムを定着させる中長期計画の立て方を紹介します。
光安 史枝(NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション) 7/4 7:00 |

NPSをKPIとして設定し企業の成長につなげるためには、どのようなステップでNPSプログラムを展開していけばよいのでしょうか?

本シリーズの最終回は、NPSをベースとした顧客ロイヤルティ向上プログラムの中長期計画の立て方についてご紹介します。

顧客ロイヤルティ向上プログラムを根付かせ、成果を上げるには、中長期的な取り組みが求められます。企業規模や経営スタイル、施策実行のスピード感などによって、各ステップに要する期間は異なるため、ここでは1つの目安として3年のロードマップをベースに解説します。

  • 初年度 経営層のコミットと運用体制の構築
  • 2年目 成功事例の創出
  • 3年目 組織横断的な取り組みへの進化
図1. NPSプログラムロードマップ例

初年度 経営層のコミットと運用体制の構築

高いロイヤルティを実現している企業には、以下の共通点があります。

  • 経営層の強いコミットがあり、全従業員をけん引
  • 従業員がNPSの意義を理解し、改善活動へ積極的に参画

NPS導入の初年度は、上記のような顧客志向の組織や企業文化を醸成するために、主に以下の3つのステップで取り組みます。

  • STEP 1: 経営層への説明力あるデータの提示
  • STEP 2: NPSをベースとした戦略の策定
  • STEP 3: フロントラインへの改善プロセスの提示

STEP 1
経営層への説明力あるデータの提示

初年度の導入で何よりも重要なことは、NPSをベースとして顧客ロイヤルティ向上に取り組むという経営層の強い意思表示です。そのために、経営層に「自社のビジネスにおいて、実際に収益性と相関がある」とデータで示しNPSの有効性を理解してもらう必要があります。

自社データから、購買換算価値に口コミ換算価値を加えた顧客の経済的な価値を算出し、推奨者の重要性を明確に理解してもらうことが、NPSプログラムの原動力となります。これにより、経営層による強いコミットを引き出していきます。

図2. 経済的な価値の算出例

経済的な価値の算出方法については連載の第4回にて解説しています。

STEP 2
NPSをベースとした戦略の策定

企業の成長に向けて変革を開始するには、「顧客戦略を明確にすること」が肝要です。具体的には、まずNPS調査を行い、カスタマージャーに基づくロイヤルティに影響を与える重要なタッチポイントを特定します。

これによって、コアターゲットをどこにするか、コアとなる価値を何にするか、重要な顧客体験をどこに位置づけるかなど、全社的に取り組むべき戦略的な優先順位をつけフォーカスを明らかにします。

そして、経営トップがNPSをベースとした取り組みに強くコミットするとともに、変革のステップとして、どの顧客のどの体験から着手するかを、明確に全社員に向けて発信していきます。

図3. 顧客戦略における優先課題領域の特定例

重要なタッチポイントの抽出方法については連載の第2回で解説しています。
優先課題領域や重点維持領域の特定方法については第3回で解説しています。

STEP 3
フロントラインへの改善プロセスの提示

変革においては、顧客の声を起点に改善ループを構築することが必要です。スコアを算出するだけでは何も変化は生まれません。重要なのは改善アクションを着実に実行していくことです。まず、ロイヤリティに影響の大きい重要なタッチポイントで、顧客体験直後にお客様の声を捉える仕組みを作ります。

たとえば、新規契約直後やコンタクトセンターへの問い合わせ直後などに、トランザクショナル調査を実施する運用体制を整えます。

※トランザクショナル調査(Transactional survey): 個別の顧客体験を測定すること

顧客からアンケートの回答が得られたら、リアルタイムに顧客と接するフロントラインに共有し、迅速な改善アクションを展開していきます。

たとえば、アンケートへの回答で推奨度が3以下の場合、直接対応をした従業員へアラートを通知し、24時間以内に顧客とコンタクトを取ります。根本原因をヒアリングし、顧客の不満を解消したり、週次ミーティングで顧客の声を踏まえた改善アクションをチーム内で検討したり、といった改善サイクルを回していきます。

このように、顧客からのフィードバックに基づいて改善のための行動を起こし、顧客に働きかけるサイクルのことを、クローズドループといいます。この改善プロセスをフロントライン(顧客に直に接する担当者)に提示し整えていくことが、初年度のNPS運用体制構築の土台となります。

図4. フロントラインにおける改善プロセスの例

ここで注意が必要なのは、顧客対応のフロントにいる従業員がNPSの効果について腹落ちしているか、という点です。社内の理解が得られていなければ、仕組みは形骸化します。従業員にNPSの意義を丁寧に伝えていく地道な営みが欠かせません。

NPSの理解向上のため、セミナーやトレーニングを実施したり、STEP 1で明らかにした自社におけるNPSの有効性データを共有することも、社内を巻き込むうえで重要なアクションだといえます。

こうした社内の理解や関与を高め協力体制を構築することがNPS導入において重要なアプローチです。このステップが抜けてしまうと、NPSをKPIとしても施策を実行に移すことが難しくなります。顧客対応の最前線の従業員に顧客志向のマインドが醸成されれば、推奨者を生み出す取り組みが加速し、NPSの向上が期待できます。

2年目 成功事例の創出

初年度は、顧客志向の組織や企業文化の醸成が主たる取り組みでしたが、2年目からは、全社展開に向けた起爆剤として、小さな成功事例の創出に注力します。NPSへの理解・協力を得られた部署単位で、短期的な成果を創出できる領域で、施策のトライアルを実践しレビューを繰り返し、成果把握を行います。

NPS導入2年目ともなるとNPSの数値的な向上を目指す傾向にありますが、まずは成功事例を積み上げることを目標とします。そうすることの効果として以下2点があります。

  • 顧客志向で取り組むとはどのようなことか、具体的なイメージを社内で共有できるようになる
  • ロイヤルティ向上が自社のビジネスにとって意味があることを実績として社内に示せるようになる

たとえ小さな成果だとしても、解約率が低下したり、コスト削減につながったりすることは、社内にロイヤルティ向上の必要性を訴求する力を持ちます。活動の成果が見えなければ、モチベーションが下がり継続することが難しくなります。そのため、小さな成功を積み上げ、ロイヤルティ創出につながった具体例を社内で共有しながら、組織展開するのが成功の近道です。積み重なった小さな成功事例が3年目の本格的な取り組みの足がかりとなります。

3年目 組織横断的な取り組みへの進化

3年目は、いよいよ全社的な取り組みへとドライブしていきます。過去2年間に導き出したロイヤルティ要因や顧客インサイトを踏まえて、サービスの変革をリードします。

組織内にとどまった改善の取り組みは、得てして、現時点で表出した課題をつぶすだけにとどまり、施策が行き詰まるケースが見られます。現状の顧客の不満の解消や、個々の体験の改善によって、批判者の削減の効果はみえたとしても、革新的なサービス創出による推奨者の拡大には至らないことがあります。

つまり、推奨者を生み出すためには、顧客の「顕在化している不満の改善」ではなく、「期待を超えた体験価値=感動体験」を提供するレベルまで到達する必要があります。そのためには、組織別に閉じた活動の枠を超えて、全社横断で抜本的な顧客体験の変革へ踏み出すことが求められます。

3年目には、徐々に社内での顧客志向の文化が浸透し始めるフェーズに入ってくるため、共通の言語で話をする土壌が生まれ、取り組みもスムーズに進むはずです。

組織横断で、「理想の顧客体験がどのようなものか」をディスカッションし共有しながら推進することが、成果創出の鍵となります。

◇◇◇

以上、3年のロードマップをベースにNPSプログラムの展開方法について、解説してきました。

NPSは、スコアをとるのは非常に簡単です。しかし、スコアの測定だけでは、企業の成長にはつながりません。顧客志向に徹し推奨者を生み出していくためには、顧客からのフィードバックに対して、継続的にクローズドループを回し続けなくてはなりません。終わりなき長い道のりではあるものの、着実に企業の成長につながっていきます。本NPSシリーズが貴社の顧客ロイヤルティ向上の契機になれば幸いです。

※Net Promoter®およびNPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

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