SEMマスターのリスティング広告ノウハウ伝授

リスティング広告担当者の悩みトップ8とその解決策! 全国のリスティング担当者約300人に聞きました。

リスティング広告のセミナーどの会場でも質問に上がった悩みを整理して、アドバイス

リスティング広告に関するセミナーで全国300名近くの担当者に会い問題を解決してきた筆者が、どの会場でも質問に上がった悩みを整理して、アドバイスします。

リスティング広告プレイヤーの人口は、
思っているよりも少ないのではないか?

これは、筆者が前々から考えていたことです。詳しい統計があるわけではないけれども、SEO人口と比較するとやはり少ない気がします。とあるSEOブロガーさんは一時期毎日記事を書き続けていましたが、ユニークユーザー数4000人という数字が最大で、それよりも増える兆候がなかったと聞きました。それを考えると、やはりリスティング広告プレイヤーの人口は少ないのかもしれない。

2013年現在の僕のブログのユニークユーザー数がおおよそ1500人ほどですから、構造上などの問題を省いたとしても半分以下になる計算ですね。

そんな貴重なリスティング広告プレイヤーの貴重な生の本音を集約しました。

筆者は2013年の今年、ウェブ解析士協会のエキスパート講座を担当し、全国5都市(東京、大阪、名古屋、福岡、札幌)を各2回ずつ訪問し、延べ100名以上のリスティング広告担当者とさまざまな問題を話し合い、定義し、解決に導いてきました(その他のセミナーなども含めると延べ300人近くに会っていると思います)。

どのような問題もそうかもしれませんが、同じ目標の中であれば、疑問や質問というのは自然に非常に似通ってくるものです。問題の認識、さらには問題解決までのアプローチが人それぞれである、ということくらいでしょうか。そのため、数多くの質問をいただく中で感じたのは、一見すれば異なる問題でも、その問題の本当の原因を探っていくと、本質的な問題は同じなのだな、と痛感します。

今回は、ほとんどのセミナー会場で質問に上がった問題や悩みなどを「普段の悩み」「技術的な悩み」「将来的な悩み」と3つのフェーズに分けて書き出します。皆さんが悩んでいる箇所が多少でもクリアになるのであれば幸いです。

リスティング広告担当者の普段の悩み

普段の悩み1情報収集や学びはどうしているのか?

SEMマスターからのアドバイス:

学びや情報収集について……これは都心から離れれば離れるほど多かった質問の1つです。

気持ちはわかりますが、FacebookやTwitterがある現代において、距離的な制約はすでに解決されていると考えるべきでしょう。今や、福井県にいようがフランスにいようが、情報収集で困ることなんてことはありません。情報収集において距離的な話を出すのは言い訳に過ぎません。

とはいえ、都心が情報収集について有利な部分がないというわけではありません。具体的に挙げるとすれば「環境」でしょう。都心であれば、地方よりも多くのセミナーや勉強会がありますし、相談会のような個別の質問ができる状況が多少なりとも存在しています。

とはいうものの、これも表へでて勉強しようという意識の高いメンバーだけで構成されているため、結局のところ都心だろうが地方だろうが、自分次第だということに変わりはありません。都心にいるだけで情報収集ができるわけではないのです。

待っていても情報は得られません。となれば、自身で情報を取得するスキームを何かしらの手法で見つけていかなければなりません。「情報を自分から拾いに行く人」と「ただ情報を待っているだけの人」、どちらが伸びやすいかは答えるまでもないでしょう。

個人的にお薦めなのは、こんなところでしょうか。

  • Twitterで業界人をフォローする。たとえば、こんなアカウントはどうだろうか。
  • Twitterで関連語句を検索する。たとえばこんなキーワードを検索してみるのはどうだろうか。
    • リスティング
    • 検索連動型広告
    • ディスプレイネットワーク
    • リマーケティング
    • スポンサードサーチ
    • Yahoo!リスティング広告
    • Yahoo!プロモーション広告
    • アドワーズ
    • AdWords
  • Googleアラートに関連語句を追加する。
    (チェック対象のキーワードは前述のTwitter検索と同様)

このくらいできれば世の中に出てくる9割のリスティング広告情報は簡単に仕入れられます。

普段の悩み2日々のチューニングで心がけていることは?

SEMマスターからのアドバイス:

「日々のチューニングで心がけていることはなんですか?」と、すべてのセミナー会場で質問されました。

僕が日々心がけていることは、1つしかありません。それは、「目標からの乖離に軸足を置く」ことです。

リスティング広告を始めるには、何かしらの目標設定が不可欠です。

  • 目標獲得単価(CPA)
  • 目標獲得件数(CV数)
  • 投資対効果(ROI)
  • 売り上げ

など、目標は人によってさまざまなでしょうけれど、目標なきリスティング広告に改善の余地はありません

  • その目標を達成できるのか?
  • 達成が難しいのだとしたら、何が原因なのか?
  • 達成する見込みがないときは、その乖離を埋めるためにどのような施策を行わなければならないのか?

などなど、目標からの乖離状況を詳細に分析することで、目標に限りなく近づけられるようになるはずです。

目標を大きく達成した場合も実は重要です。そのときはさらに高い目標を立てれば、(あなた、または担当しているクライアントを)次の次元に引き上げられるようになるでしょう。

普段の悩み3新機能が多すぎてついていけないけど、どうしてるの?

SEMマスターからのアドバイス:

Google AdWordsに限らず、最近ではYahoo!プロモーション広告やYDNなどでも新機能が続々と導入され、これらすべての機能の特性・特徴を網羅的に理解するのは非常に困難になっています。

リスティング広告を専門で取り扱う僕たちでも同様ですから、リスティング広告をサービスの一部として提供しているWebサイト制作会社さんや、インハウス(社内)でリスティング広告を行っている組織であればなおさらです。

誤解を恐れずに言えば、僕はそんな方々にすべての機能の詳細をすべて理解する必要はないと伝えることにしています。大事なのは、その機能の役割を明確にすることなのですから。

たとえば、Google AdWordsでは「リマーケティング」、Yahoo!プロモーション広告には「サイトリターゲティング」と呼ばれる配信機能があります。これらは何かを技術的に解説すると、次のようになります。

リマーケティングやサイトリターゲティングの技術的な説明

自分たちのサイトを一度でも訪問したユーザーのブラウザにクッキーを付与し、そのクッキーを元にさまざまな広告配信先で広告を表示できる機能。

つまり、リマーケティングは一度サイトを訪問しているユーザーへの配信手法です。ということは、通常のユーザーへの配信と比べて、見込み度の高いユーザーに広告を配信できる機能であると言えます。

リマーケティングやサイトリターゲティングの役割の説明

通常のユーザーよりも見込み度の高いユーザーに広告を配信できる機能。

リスティング広告にはリマーケティング以外にもさまざまな機能がありますが、それらも、AISAS理論で考えると非常にすっきり考えることができます。

ディスプレイネットワークやYDNはAttention(注意・認知)やInterest(興味)の役割、検索連動型広告はSeach(検索)の役割を果たします。

リマーケティングは前述したとおり、原則として「一度サイトを訪問しているユーザーへの配信手法」ですから、上図ではリマーケティングがAction(ここでのActionはコンバージョン)に限りなく近いポジションに位置しています。そのために「リマーケティングは成果が良い可能性がある」という仮説を建てることができれば、「リマーケティングに早速トライしてみよう!」という判断を早期に下せるようになるでしょう。

つまり、ここでのリマーケティングの役割は“強力な刈り取り”だと言えるかもしれませんね。

リマーケティングやサイトリターゲティングの役割の端的な説明

強力な刈り取りの機能。

こういった形で機能ごとに役割を付加していけば、「その機能はいつ、どの状況で必要となるのか」が明確になっていきますし、何よりも思考がスッキリとしてきて、リスティング広告が多機能であってもそれ自体が苦になることはなくなります。

リスティング広告経験者であれば、各機能の役割を考えるという作業自体は、ヘルプを読み思考を巡らせるだけで、ものの数分でできる簡単な作業です。

※もちろん、「すべてのユーザーがAISAS理論通りに動くのだ!」と言いたいわけではありません。あくまで消費者行動モデルの1つとして念頭に入れておくことで思考がスッキリしますよ、と言いたいだけですので、勘違いのないように。

リスティング広告担当者の技術的な悩み

技術的な悩み1アクセス解析をどうリスティング広告に活かすのか?

SEMマスターからのアドバイス:

Googleアナリティクスを代表とするアクセス解析は、リスティング広告との相性が非常に良いツールの1つです。アクセス解析を使わないとできないことも多く存在するのですから、「使わなきゃ損」ですよね。

ここでは、僕がリスティング広告を運用する際に重要視する、次の5つのアクセス解析利用方法をお伝えします。

  1. Motivation(動機)
  2. Excavation(発掘)
  3. Period(期間)
  4. Contribution(貢献度)
  5. Real-Time(現在)

それぞれについて説明していきましょう。

  1. Motivation(動機)

    Motivationとは、「リスティング広告経由のユーザーの動機を図ることで、そのキーワードや配信先のポテンシャルがわかる」ということです。

    指標としては、主に滞在時間や平均ページビュー、場合によっては直帰率などを見ることで、どのようなユーザーがサイトを訪れているのかを明確にできます。

  2. Excavation(発掘)

    広告主として行っている施策はリスティング広告だけではないはずです。SEOであったり、他の広告であったりと、さまざまな流入元からのアクセスがあるはずです。それらのデータを分析し、現在のリスティング広告アカウントに足りない要素を拾って利用しましょう。

    わかりやすい例で言えば、「オーガニック検索でコンバージョンを生んでいるキーワードをリスティング広告に導入する」といった類のものでしょうか。

  3. Period(期間)

    Periodとは、コンバージョンまでの期間を指します。コンバージョンまでの期間がわかれば、無駄な広告配信を抑制することだってできます。

    わかりやすい例で言えば、リマーケティングの期間です。たとえば水漏れ修理工事のビジネスでリマーケティングを行う場合、デフォルトの30日間リマーケティングを出し続けますか? 水漏れは「今」起こっているのであって、サイトにアクセスした10日後にまたコンバージョンするとは到底思えませんよね。

    この例は極端なものですが、こういったことをあらかじめ仮説立てすることに役立つのが、コンバージョンまでの期間の情報なのです。

  4. Contribution(貢献度)

    「広告に一度触れただけでコンバージョンに至るユーザーは、さほど多くない」……そんな風に考えたことはありませんか? ユーザーはさまざまな参照元を横断し、最終的なコンバージョンに至るのは、今や周知の事実です。

    ということは、「どの参照元(配信先やキーワードなど)を経由したユーザーはコンバージョンを最大化できるのか」を考えることで、より強気な入札が行えたり、機械損失を減らしたりできるようになるということです。

    わかりやすい例で言えば、「ビックキーワードのCPAが高い場合に停止するべきかどうか?」といった問題に対応する場合です。

    普通に考えれば、CPAの高いキーワードへの出稿は停止するべきでしょう。しかし、ユーザーが、次のような行動をしていたとします。

    ビックキーワードで検索
    →検索連動型広告経由でサイトを訪問
    →コンバージョンせずに離脱
      →後日ミドルキーワードで検索
      →検索連動型広告経由でサイトを訪問
      →コンバージョンせずに離脱
        →さらに後日ブランドネームで検索
        →検索連動型広告経由でサイトを訪問
        →コンバージョン

    この場合、リスティング広告の管理画面上では、ブランドネームにしかコンバージョンが付加されません。しかし、ビックキーワードやミドルキーワードがなければコンバージョンを生まなかった可能性だってありますよね。

    一見してビックキーワードのCPAが高い場合でも、「ビッグキーワードで接触できたことが、その後のコンバージョンに貢献しているかどうか」を可視化することで、機会損失を防いだり、さらに成果を伸ばしたりできるかもしれないのです。

  5. Real-Time(現在)

    サイトにはどんなユーザーが滞在しているのか? これを可視化してくれるのが、Real-Time分析機能です。サイト上に訪れているユーザーをより感じることで、次の一手が見えてくるかもしれません。

技術的な悩み2テクノロジーとどう付き合うべきか?

SEMマスターからのアドバイス:

APIや自動入札ツールなど、さまざまなテクノロジーの波がリスティング広告業界にも押し寄せています。Google AdWordsでは自動化機能や拡張CPC、コンバージョンオプティマイザーなど多くのテクノロジーがあり、もはや無視できる状況ではないと考えるべき状況です。

個人的には、テクノロジーと付き合うときは以下の3つを大事にしています。

  • 楽になること
  • 売り上げにつながる柔軟な対応ができること
  • 人間の想像を超えること

この3つのうち、どれか1つでも当てはまるのであれば、そのテクノロジーには価値があると考えていいのかもしれません。

これからはテクノロジーをアレルギー的に避けるのではなく、寄り添うように付き合っていくのが吉だと思われます。テクノロジーの時代は、遅かれ早かれやってきます。大事なのは、変化に対応できる人材であるかどうかです。

技術的な悩み3A/Bテストに必要な期間は?

SEMマスターからのアドバイス:

これもよく聞かれる質問の1つです。

「A/Bテストを期間で判断する」という考え方自体に問題があるということは、そろそろ知っておかなければいけないと思います。

A/Bテストの結果を判断する材料は、期間ではなく、サンプル数です。統計学的に……といった話をすると切りがないのですが、一般的には400のサンプルが集まれば良いとされています。3日で100クリックあるのならば、12日程度必要となるでしょうし、1週間に1400クリックあるのであれば、2日もあれば十分だという解釈が可能です。

リスティング広告担当者の将来的な悩み

将来的な悩み1キャリアプランについて

SEMマスターからのアドバイス:

リスティング広告を本質的に理解できる人材は、さまざまなジャンルで重宝されています。

運用型広告の側面ではDSPなどのジャンルでもリスティング広告経験者が求められています。

またインハウスリスティング広告の需要も以前よりも増加している印象があり、チームビルディングを含めたポジションが強く求められています。

もちろん、その他のマーケティング界隈でもリスティング広告の俯瞰的な経験は必ず役に立つことでしょう。

そして何よりも、自身でリスティング広告を運用できる、ということは、どんな状況でも大きな武器になるはずです。胸を張って、自分に自信を持って、経験を重ねてください。

将来的な悩み2リスティング広告の未来

SEMマスターからのアドバイス:

2012年の運用型広告費は3,391億円と、前年比118.9%という伸びでした。リスティング広告を代表とする運用型広告の未来は明るいと言えます。

ただし、これまでどおりの形のまま、ずっと生き残れるというわけではありません。前述のように、今後はよりテクノロジーとうまく付き合い寄り添っていくことが、重要だと言えるでしょう。

まとめ

全国でセミナーを行っていて多くいただいた質問を中心にお届けしました。その他にも多数のご質問をいただいていますが、どの問題にも共通して言えることは、「リスティング広告は身近に相談ができる人がいないので、大きな問題に限らず、小さな問題でも悩み続けてしまう」といったことでしょうか。

こういった問題をインターネット上で解決するのは簡単なことではありません。しかし実際に会って話をすれば、解決するのはそれほど難しくはありません。

2014年も全国での講座をさらにバージョンアップしてお届けする予定ですので、機会があればご参加いただき、悩みをぶつけてください。

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