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選択肢は多い方が良い? アンカリング? 代表性バイアス? - 行動経済学の“選択アーキテクチャ”(中編)

『実践 行動経済学』の中で示されている人間の特性と、WebサイトやSEOへの応用方法
Distilled
SEOmozは英国Distilled社と提携し、検索エンジン市場のニュースと情報を提供している。この記事はDistilled.co.ukに勤務する協力者から提供されたもので、内容はすべて筆者自身の見解であり、SEOmozの見解を反映しているとは限らない。
実践 行動経済学——健康、富、幸福への聡明な選択

書籍『実践 行動経済学』の内容からSEOを考えるこの記事は、3回に分けてお届けしている。前回に続いて、『実践 行動経済学』の中で示されている人間の特性と、WebサイトやSEOへの応用方法を紹介していこう。

では、『実践 行動経済学』の中で示されている人間の特性を紹介していこう。どれも示唆に富んだものだ。

選択肢は多ければ多いほど良い?

選択肢は多い方が少ないよりも常に良いと考える風潮が(特に公共部門において)広がってきた。その背景にあるのは経済的合理性に基づく主張であり、選択の幅が広い場合とそうでない場合を比べてみれば、前者には後者で利用できる選択肢がすべて含まれているので、前者の方が劣るということはまずあり得ない(選択の幅が広がっても、元々あった選択肢は依然として選べるんだからね)。だから、少なくとも同程度には(おそらくはさらに)すぐれているに違いないという理屈だ。

『実践 行動経済学』では、「選択肢は多ければ多いほど良い」という考え方は、実は人間の本性とずれているという。事実、人は多くの選択肢を提示されると、それに圧倒されて行動しないことを選んだり、おかしな選択をしたりする可能性があると主張している。

アンカリング(係留効果)

この本で数多く示される人間の弱点のうち、最初に登場するのが「アンカリング」。人間の脳には特定のパターンに縛られる傾向があるために生じる現象だ。論理的には何の関係もないと十分に認識できる数字が、別の数字を予測する際に影響を与えることもある。

たとえば、誰かにクレジットカード番号の下3桁を尋ねてから、同様に3桁になる他の数字(たとえば、フン族の王アッティラがヨーロッパに侵攻した年など)を推測させるとする。すると、自分の持っているカードの番号の下3桁が大きい(987など)人ほど、小さい(123など)番号のカードを持っている人よりも大きな数字を答えるという。理性的な人なら、クレジットカード番号の下3桁とフン族がヨーロッパに侵攻した年という2つの数字にまったく関連性がないことは十分認識できるのに、それでもこうしたことが起きるんだ。

この情報を利用するには?

この種の心理学的知識は、リンクベイトの効果を高めるのに役立つと思う。「発見」や「驚き」といった要素を利用したリンクベイトの形態は数多く存在する。最初に発生する予測を異なる方向へと誘導しておくことによって、実際の答えが明らかになったときに感じる驚きをさらに高めることが可能だ。驚きというのはコンテンツを他人に伝えたいと思う動機として一般的なものなので(「ねえねえ、知ってる?」というパターン)、こうした方法でリンクしてもらいやすくなる。

次にリンクベイトを作るとき、その内容が多少意外性のあるものだったならば、まず当初は、違う方向へと予測を誘導する仕掛けを作っておくといいだろう。

最初にきわめて高い数値について考えさせてから、はるかに低い数値(おそらくそれでもまだ高い)で相手を(いい意味で)驚かせるというのは、よく知られた交渉術だ。この情報の使い道は、みんなが自分なりに考えてみてほしい! ただし、その際には、フレーミング効果による別の影響に留意する必要がある。人は一般に、ある同じ価格について、他のものに比べて「割高」だと感じたり、最初の価格より「割安」だと感じるなど、異なる反応を示す。これらの価格がまったく同じだったとしても、フレーム(枠)の切り取り方(質問や提示で情報をどう示すか)によって判断が変わる場合もある。

アンカリングに関して、検討すべき重要事項だと思われるもう1つの分野が「時間の見積もり」だ。僕が思うに、人はみな時間を見積もるのが苦手だ。開発リソースや結果が現れるまでの時間について交渉するとき、相手の予測はアンカリングの影響を受けるということを知っておく必要がある。もし余裕のある見積もりを望むなら、どのくらいの時間がかかるかを質問する前に、来年起こることを相手に話してもらう。意欲的な見積もりを求めるなら、今晩の予定を話題にする。正確な見積もりを求めるならどうするかって? うーん、今晩のことと来年のことを両方話せばいいんじゃないかな?

身近であること

人は身近なものを過大評価する傾向がある(伝聞の経験よりも自分自身の経験を、古い出来事よりも最近の出来事を、それぞれ高く評価する)。

この情報を利用するには?

誰かに何かをさせようとするときは、それが自分のページにリンクを張らせることであれ、自分のWebサイトから何かを購入させることであれ、過去に似たことを行ってうまくいったときの気分を思い出させるとうまくいく。

リンク構築に関して言えば、これは、すでに自分のところと似たサイトに外部向けリンクを張っているサイトから、自分のサイトにもリンクを張ってもらうときのヒントになるかもしれない。コンバージョン率最適化(CRO)に関しては、誰もが利用した経験を持つ、大規模で人気の高いオンラインストアに似せて自サイトのユーザーインターフェイスをデザインするという応用方法が考えられる。

覚えておいてほしいのは、自分自身の経験の方が友人の経験よりも重んじられるし、友人の経験は耳にはさんだだけの経験談よりも重んじられるということだ。だからこそ、試用版の提供や、余計な手間をかけさせないといったビジネス戦略が有効なんだ。人は一度何かを自分で試したら、試す前よりも、それに関するコメントをはるかに信用しやすくなるからね。

代表性バイアス

これは、わかりにくい概念を表す、わかりにくい名称だ。「代表性」はよくある間違いで、あるカテゴリに属する事物に関して「あるべき姿」を思い描いているとき、その「あるべき姿」に近いものすべてを、無意識のうちにそのカテゴリに分類してしまうことを指す。こうしたバイアス(偏向)を実証する最も有名な実験は次のようなものだ。

リンダは31歳で独身、はっきりものを言い、非常に快活だ。専攻は哲学で、学生の時代には差別の問題と社会的正義に深く関心を持ち、反核デモにも参加した。

こうした説明を被験者に与えた後、リンダの将来として可能性の高いものを予測するよう求めた。選択肢のリストには、「1. 銀行窓口係」と「2. 女権拡張運動に積極的に参加する銀行窓口係」という項目があった。結果をみると、多くの被験者はより可能性が高いものとして①よりも②を選んだようだ(②の選択肢の論理的なおかしさから、その可能性が低いことが明白なのにもかかわらず)。

この情報を利用するには?

僕はまだ、こうしたバイアスのうまい応用法を思いつかない。代表性バイアスを表すものとしてよく目にするもう1つの事例は、「多くの物事の結果が偶然だとは見えないせいで、それを偶然だとは考えられない人が大勢いる」というものだ。これは、レポート作成時のデータの見せ方に影響を与える。自分の顧客や上司には、コンバージョンやトラフィックの数値など、実際のトレンドを評価するためのツールを提供することが重要だ。さもないと、偶然の変動が実際のトレンドだと見なされてしまう可能性が高くなるからで、これは将来的に面倒な問題を招くだろう!

楽観主義と自信

人は一般に、自分自身の将来について、楽観的になり過ぎる傾向がある。自分のビジネスが失敗する可能性と、「自分のと似たビジネス」が失敗する可能性について問われたとき、企業のオーナーは大きく異なる回答をする傾向がある(来年に失敗する可能性を尋ねると、自分のビジネスが0%で、自分のと似たビジネスが30%、といった具合に差がつくこともある)。

この情報を利用するには?

これは、そこから良い「利用法」を思いつくための情報というより、(代表性バイアスのように)ありがちな落とし穴を回避するのに役立つ情報だ。上司や顧客は、正当な理由もなく、自社のプロジェクトやリンクベイト、Webサイトへの実装について、類似のプロジェクトより大きな成功のチャンスがあると考えることに留意しよう。要注意!

この記事は3回に分けてお届けしている。後編となる次回も引き続き、『実践 行動経済学』の中からSEOに応用できそうな人間の特性を紹介していく。→後編を読む

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