感性と人間中心設計について&11月イベントのお知らせ/HCD-Net通信 #5
さる9月25日、第3回のHCD-Netサロンとして「HCDと感性」をテーマとしたイベントを開催しました。今回はその模様と、11月に行われる2つのイベントのお知らせをします。
HCD-Netサロンは皆さんが興味ある話題と講師のようで、80人定員がすぐに埋まるほどの大盛況。前半は3人の講師が講演、後半はパネルディスカッションというプログラムとなりました。
まずはじめは「感性と感性価値」というテーマで、経済産業省製造産業局の渡邉政嘉氏が講演。同氏が経済産業省で推進している「感性価値創造イニシアティブ」についてのお話をしました。
次に「企業と感性」の事例の1つ目として、小島健嗣氏(富士フィルム)が登壇しました。デザイナーと研究者がコラボレーションをした「Scientist X Desingner = Art!」というタイトルの技術アートを紹介し、これによって「技術の持つ本質的な機能」と「顧客にとっての価値の本質」をわかりやすく「カタチ」にするデザインの役割を説明しました。
最後の講演では、「企業と感性」の事例の2つ目として三澤直加氏(U'eyes Design)と藤田充氏(デンソー 技術企画部)が感動する商品開発の発想支援のために、感動シナリオの生成を支援するツールを開発・発表しました。
パネルディスカッションでは、まず「感性とユーザビリティ」の視点より樽本徹也氏(利用品質ラボ)がユーザービリティの定義と感性の関わりあいを解説。次に、「感性とユーザーエクスペリエンス」の視点から山崎真湖人氏(アドビシステムズ)が文字を例に感性とのユーザー体験の関わりを解説しました。3番目は「感性とインフォメーションアーキテクチャー」という視点から長谷川敦士氏(コンセント)が情報アーキテクチャーの紹介と、Webサイト開発においていかに論理と感性が関わっているかを説明しました。最後に僕が「感性とデザイン」という視点より、感性が貢献する「魅力的な満足度」を作る方法について解説を行いました。
僕の視点から見ると、HCDの目標というのは、対象となる人の総合的な満足度にあります。そうなると満足度は「当たり前の満足」と「魅力的な満足」に分けて考えることができます。
感性は「当たり前の満足」に関しては、ノーマンの本能的な部分に逆らうような感性を避けるという要素とつながり、「魅力的な満足」に関してはお客様に魅力を与える感性に強く関連します。これはスモールユーザビリティとビッグユーザビリティという話にも通じていて、前者の「当たり前の満足」を満たすのがスモールユーザビリティで、「魅力的な満足」まで満たすのがビッグユーザビリティであるという見方もあります。
このイベントで感じたのは、HCD(人間中心設計)と感性というのはとても深い関連があり、いろいろな視点でその感性との関わりを見ていくことで、HCDの役割やHCDの効果も浮き彫りにされてくるということです。今回のイベントでは、HCD-Netとして「感性のSIG」のようなものを作って、継続的に議論を続けようということになったので、このような議論に参加したい人がいれば、ぜひ事務局まで連絡してください。
HCD-Netからのお知らせ
HCD-Netでは11月に下記の2つのイベントを開催します。詳細および申し込みはHCD-NetのWebサイトを参照してください。
- World Usability Day 2008 Japan
World Usability Day(以下WUD)は、ユーザビリティを世界に広めることを目的に、世界各地で同じ日に行われるイベントです。このUPA(Usability Professionals' Association)が主催するWUDイベントに人間中心設計推進機構(HCD-Net)も賛同し、統一テーマである「Transportation(交通機関)」をテーマにして開催致します。
- 日時:2008年11月13日(木) 15:00-18:00(14:30受付開始)
- 場所:株式会社ビービット 大会議室
東京都千代田区富士見2-14-37FUJIMI EAST 地下1階 - 主催:HCD-Net
- 定員:50名(要申込・先着順・HCD-Net会員優先)
- 内容:
海外イベント参加報告&予告(CHI2008, User Friendly 2008, HCII2009)
「高齢者を対象とした駅の案内表示のユーザビリティ調査」 産業技術総合研究所 北島宗雄
「ユーザビリティ・ラボ見学」 ビービット
「スマートウェイの取り組み -道路から進めるITS-」 国土交通省国土技術政策総合研究所
- 組込み総合技術展(ET2008)へのHCD-Netの出展および人間中心設計フォーラム2008~ 「組込み型ソフトウエアのためのユーザビリティと事例~」
HCD-Netでは、組込み総合技術展(ET2008)にて「人間中心設計フォーラム2008」を開催・出展いたしますので、ぜひご参加ください。とくに人間中心設計フォーラムは例年は定員一杯になりますので、早めにお申込されることをお勧めします。
展示ブース
- 日時:11月19日(水)より21日(金)
- 場所:パシフィコ横浜・D11
人間中心設計フォーラム2008
- 日時:11月21日(金)10:00-12:00
- 場所:パシフィコ横浜・会議センター 3F[303]
- 主催:(社)組込みシステム技術協会(JASA)
- 内容:
10:00-10:25「ユーザビリティ手法で問題の共通認識を」 日本ビクター(株)技術改革部 UD推進室 主席技師 和井田 理科
10:25-10:50「ユーザーの特性と習熟を考慮したユーザビリティ評価」 日産自動車(株)実験技術開発部性能実験技術開発グループ 主担 美記 陽之介
10:50-11:15「カシオ計算機における人間中心設計へのアプローチと製品開発事例」 カシオ計算機(株)開発本部 デザインセンター 澁澤 博之
11:15-11:40「人間中心設計をプロジェクトに導入するには」 千葉工業大学 工学部デザイン科学科 教授 山崎 和彦
11:40-12:00 パネルセッション
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