CMS(コンテンツ管理システム)はウェブには非常に重要なシステムだが、CMSといっても大きく2つに分けられることをご存じだろうか。ウェブで使われるCMSはウェブCMS(WCMS)というカテゴリのもので、それ以外にエンタープライズCMS(ECMS)というカテゴリもあるのだ。ECMSとは、企業内の情報を管理するためのもので、契約書から設計図から企画書から広告図版のラフまで、幅広いコンテンツを管理する。ECMSは企業内コンテンツを扱いつつ基本的なウェブCMSの機能も併せ持つものだが、現在すでに、WCMSはウェブ向けに特化した形に進化しているのも確かだ。
今日は、そういったウェブ向けの進化が進むウェブCMSに一般的には備えられていない機能のなかで、ぜひ標準的になるべきではないかと思われる機能「コンテンツの権利関係の管理」について述べてみたい。
ブログなどからCMSに触れた人は、CMSというとコンテンツを入力するとそれに対応したページが作られるものだと思うかもしれない。しかし本来はCMSとは、コンテンツはコンテンツとして管理し、それをサイト上でどう表示するかについては別途管理するものだ。つまり、「ページを管理する」のではなく、文章や画像などのコンテンツをそれぞれ資産として管理するのがCMSの1つの姿だ。
一方、ウェブサイトの運営には、さまざまな権利の確認や管理が必要になってくる。ウェブサイト制作会社に作ってもらったイラストやタイトルイメージは、別のサイトや印刷物でも使ってもいい契約になっているのか、ライターに書いてもらった事例の記事はパンフレットにも使っていい契約になっているのかなどだ。まだまだこういった著作権の管理をあいまいな状態にしていることも多いようだが、本来ならば個々のコンテンツに対して明確にしておくべきことだ。
そういった著作権などの権利関係を、各コンテンツに対して管理できるような機能は、まだウェブCMSとしては一般的ではないようだ。
たとえば新聞社や通信社がニュースを配信する場合のデータ公開フォーマットとして確立しているNewsML(ニューズエムエル)では、「権利メタデータ」という形で、コンテンツに権利関係の情報を保持する仕様になっている。「管理メタデータ」に含まれる出所の情報を使えば、だれに権利を確認すればいいのかわかるようになっている。
もちろん、雑誌なら出版社のこれまでの管理手法が、映像ならテレビ局のこれまでの管理手法があり、各コンテンツに対する著作権を管理しているだろうから、その場合は、改めてCMSでその情報を二重に管理する必要はない。しかし、その場合でも、ウェブサイトで使っているコンテンツそれぞれに対して、既存の著作権管理のシステムを参照するためのレコードIDなどを管理しておくべきだろう。
コンプライアンスなどが厳しくなっている昨今、著作権などの権利関係の情報をも含めてコンテンツを「管理する」ための枠組みをウェブCMSが提供してくれるといいのではないかと思う。
そうすれば、CMSがワークフローとして権利の確認を強いることになり、うっかりと権利関係があいまいなまま進むことが減るのではないだろうか。システムがワークフローを規定することを嫌がる趣もあるが、既存のフローが適切ではないのならば、システムで強制するのは良い手段だと私は思う。
この記事は、メールマガジン「Web担ウィークリー」やINTERNET Watchの「週刊 Web担当者フォーラム通信」に掲載されたコラムをWeb担サイト上に再掲したものです。
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