サイトの信用性が問われる時代――『インターネット白書2007』に見る個人のネット利用動向
ウェブサイトの信用性が問われる時代に
CGMがWeb 2.0時代の代表的メディアとなって久しいが、その登場とともにインターネットの情報発信・収集のありかたは大きく変化してきた。企業サイトやマスメディアが発信する情報に加え、CGMというメディアが一般化したことで、ユーザーのインターネット上の情報に対する姿勢も変化しつつある。ウェブサイトの信用性が問われる時代に突入しているのだ。そこで、2007年6月に発行された『インターネット白書2007』の最新調査から、個人利用者がどのようにインターネットを活用しているのか、その動向を探ってみたい。
インプレスR&D 白書・書籍編集部/インターネットメディア総合研究所
CGMの中でも集合知や経験による裏付けには高い信用度
CGM(Consumer Generated Media、UGC:User-Generated Contentとも言う)が登場して久しいが、CGMはインターネットユーザーにどのように作用しているのか。多くのユーザーが簡単に情報を発信できるようになり、Web 2.0では、多数のユーザーが情報を少しずつ出し合って参加し、その集積が巨大な「集合知」を形成するということも大きな要素となっている。そこで、今回、CGMユーザーを情報発信(書き込み)数と情報収集数で分類し(図1)、CGMユーザーのタイプ別にインターネット上の情報信頼度に関する分析を行った。
タイプ | 情報発信レベル | 情報収集レベル | 比率 |
---|---|---|---|
CGMアクティブユーザー | ◎ | ◎ | 7.40% |
情報発信型CGMユーザー | ◎ | ○ | 2.90% |
情報収集型CGMユーザー | ○ | ◎ | 3.10% |
一般的CGMユーザー | ○ | ○ | 56.40% |
CGMノンユーザー | ×、△ | ×、△ | 30.30% |
CGMユーザータイプと、インターネットによる商品・サービス・買い物に関する情報収集行動の関係をみると、CGM利用レベルが高いほどインターネットで買い物に関する情報収集を行う比率が高い(図2)。CGMアクティブユーザーではほとんどすべてが情報収集を行っており、情報収集型CGMユーザーが96.8%で続いている。また、情報発信型CGMユーザーや一般的CGMユーザーでやや低く、CGMノンユーザーが最も低い割合であることも納得いく結果である。
図3は、ウェブサイトの種類ごとにその信用度を聞き、「とても信用している」を5点、「信用している」を4点、「どちらとも言えない」を3点、「あまり信用していない」を2点、「まったく信用していない」を1点として、平均点をとったものである。「企業のウェブサイト」や「新聞社のニュースサイト」は情報発信者が明確なため、どのCGMユーザータイプでも信用度が高いのは当然であるが、特徴的なのは、CGMアクティブユーザーや情報収集型CGMユーザーで「ユーザー参加型の商品・サービスレビューサイト、評価サイト」や「Q&Aコミュニティ」「ウィキペディア」が高いことである。
インターネット上に掲載されている情報が正しい情報であると思うポイント(図4)をみると、CGMアクティブユーザーや情報収集型CGMユーザーで「更新頻度が多い、情報が新しい」「多数の人が修正を加えることができる」「経験によって裏付けられている」の比率が高く、また、「アフィリエイトが行われていない」も高い。
ウェブサイトの信用度が問われる
3つの集計結果を見てきて、はっきりとした傾向が読み取れる。CGMで情報を収集するユーザーは、CGMに掲載されている情報が信用できるものか、あるいは信用できないものか、ユーザー自身が判断しており、その際のポイントは、情報の新鮮さや、その情報を多数の人が閲覧・修正していること、単なる紹介記事ではなく、経験によって裏付けられた記事であること、そして掲載しているサイト(執筆者)のブランド力・専門性が高いことであり、これらの特徴をもつウェブサイトの信用度が高い。
もちろん、ブログや掲示板などは個別差が大きいためすべてが信用できないわけではなく、書き手の周辺情報や経験が掲載されているものなど、信用度が高いとユーザーが判断するウェブサイトも多いが、少なくとも個人が書きっぱなしの情報に対してはあまり価値を見出していない。CGMによる情報が鵜呑みにされていた時代は終わり、今後は、CGMだけでなく商業メディアなど、情報を掲載しているウェブサイトの信用性がより問われる時代になると言えるだろう。
テレビ以上に重要なインターネット、コンテンツが置き換わる可能性も
図5では、昨年に続き、テレビ、インターネット、ラジオ、雑誌、新聞について情報としての重要度を聞いている。重要でない~重要までの5段階を、-2~+2点とし算出し、加重平均をとっている。ニュース、エンターテインメント、その他の生活情報では、「インターネット」と並び、「テレビ」や場合によっては「新聞」が高い値となっているが、購入のための情報では「インターネット」が他のメディアを大きく引き離している。
1日の利用時間についても、インターネットによって利用が減ったメディアは、「テレビ(地上波)」がトップであり、「雑誌」「新聞」「書籍」といったプリント系のメディアの利用時間が減少する結果となっている。改めて述べるほどでもないが、インターネットユーザーにとって、インターネットは情報源としても時間的にも、テレビ以上に重要な位置付けとなっている。
また、PC以外でもゲーム機やテレビでインターネットを利用する世帯も十数%みられ、今後、家庭のテレビも放送番組による占用から、ネットワークコンテンツによる利用も増えることが考えられる。テレビやインターネットの情報源としての位置付けもさらに変化する可能性が考えられる。
約3割のユーザーが1年間に10回以上オンラインショッピングを利用
オンラインショッピング経験者の最近1年間の購入頻度(図6)をみると、「2~4回購入した」が37.8%、「5~9回購入した」が24.1%と続く。ほぼ月1回以上となる10回以上購入している利用者の比率は28.0%であり、男女とも30代~40代でその比率が高く、オンラインショッピングの中心的な利用者となっている。
ここでは触れていないが、最近1年間のオンラインショッピング利用者の年間平均購入金額について調査したところ、5,000円から1万円未満が28.1%と過半数を占めており、利用金額はそれほど高くない。購入商品のジャンルでは、数千円の書籍やCDなどが上位にランクしていることから、小額商品の購入者が多いと思われる。
80%以上がECサイトを利用して探すオンラインショッピングの商品情報
商品情報の探し方では、「楽天市場、Yahoo!ショッピング、生協などのECサイトで探す」が81.5%と多くの利用者が利用しており、まずはショッピングに特化したECサイトで探すことが「検索サイト」で探すことより主流となっている(図7)。取扱商品の充実や、出店している多数の店舗で比較可能であることに加え、最近では、商品レビューなども掲載されており、利便性が高いことが要因と思われる。
独自にオンラインショップを運営する場合、ECサイトへの出店と比較して集客が1つの課題になる。商品ジャンルにもよるが、この結果からもECサイトの優位性がうかがえる。
図8は、オンラインショッピング経験者に対して、インターネット広告からの購入状況をみたものである。広告から購入に至った経験がある利用者の比率は6割弱である。バナー広告や商品の映像など、ウェブ上に掲載される広告に比べ、メールマガジンの効果が高く、4割近くの利用者が「届いたメールマガジンの情報をクリックして購入した」と回答している。
7割を超えるコミュニティ機能の利用と動画投稿サイトの認知度
ここでは、Web 2.0のキーワードとともに、急速に普及したCGMや動画コンテンツの利用状況と認知度をみてみよう。
図9は、インターネットを利用したコミュニティ機能の利用状況を、参加形態別に聞いた設問である。「発言・書き込みをしている」率をみると、最も高いのは「ブログ」の24.4%、次いで「SNS」の17.3%となっている。一方、「閲覧のみ」を見てみると、百科事典「ウィキペディア」が34.9%と、「ブログ」の26.9%、「掲示板」の20.7%を大きく上回っていることに着目したい。発言・書き込みについても、ブログとSNSが掲示板を上回ることから、コミュニティの利用状況が変化していることがわかる。
動画投稿サイトの認知度と利用状況をみると(図10)、認知度は72.8%、サービス内容を理解しているのは61.1%であり、実際に利用しているのは18.7%である。「YouTube」の利用者数の爆発的な増加などの要因もあり、認知度は6割に達し、広く普及し始めていると言える。
なお、動画投稿サイトの利用者に聞いたところ、もっとも閲覧されているのは「YouTube」の93.3%であるが、今年登場したばかりの国内サービス「ニコニコ動画」29.1%と続いている(閲覧)。
『インターネット白書2007』では、世帯普及率調査のほか、個人・企業の利用実態をより詳細に把握するため、ウェブアンケートによる利用実態調査を行っている。回答者はすべてインターネットを利用している個人・企業であり、今年は代表性を確保するため、世帯普及率調査で得た年代・性別などのデータをもとにサンプルを調整している。本誌で紹介したもの以外に多数の調査データを収録し、CD-ROMにはプレゼンテーションにそのまま使える307点の独自調査データも収録する。
目次
- 第1部 日本のインターネット普及動向
- 第2部 個人利用動向
- 第3部 企業利用動向
- 第4部 通信事業者動向
- 第5部 ネットビジネス動向
- 第6部 社会動向
- 第7部 インフラストラクチャー動向
- 第8部 技術動向
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