MNPと販売手法の見直しで変革期を迎える携帯市場
一般サイトの普及とともに無料コンテンツの利用が拡大
『ケータイ白書2008』ハイライト 〜利用者動向編〜
携帯電話市場は大きな局面を迎えつつある。MNP制度をきっかけに、各キャリアは新たな割引サービスや料金プランの提供、新機能を搭載した端末の発売などでしのぎを削っている。その一方で、モバイルビジネスのあり方を検討する「モバイルビジネス研究会」の報告書の中では、消費者の公平性の観点などから販売奨励金(インセンティブ)やSIMロックなど携帯電話の販売手法に対してのあり方も言及している。『ケータイ白書2008』では、成長期から成熟期に入り、新たな局面を迎えている携帯電話・PHSの個人の利用実態を把握するために、携帯電話やPHSを用いてウェブやメールを利用しているユーザーを対象に実態調査を行った。 本記事では、『ケータイ白書2008』から個人の携帯電話・PHSでのインターネット利用動向に注目して考察を行う。
テキスト:白書・書籍編集部/インターネットメディア総合研究所
調査:株式会社インプレスR&D
『ケータイ白書2008』第1部「個人利用動向調査」では、携帯電話やPHSでウェブサイトの閲覧やメール利用を行う11歳以上の男女個人を対象に、携帯電話上でのインターネット調査を行った。2007年2月に実施した電話調査で把握した、性別・年代別・インターネット利用機器別・インターネットの利用時間別インターネット利用者数に整合するように2000サンプルを抽出して集計している。
本調査は、現在の携帯電話市場の状況を踏まえて、調査結果がアクティブユーザーに偏ったものではなく、市場シェアに整合するように集計を行っている。また、パケット定額制加入率も、ほぼ市場シェアに整合するように抽出している。
コンテンツ利用頻度は4割弱が「1週間未満」
許容金額は200円未満
MNP開始をきっかけとして携帯電話市場が動き出し、ブログやSNSなどのサービスも登場して携帯電話のインターネット化も進んでいる。このような状況が携帯電話・PHS利用者にどのように影響しているのだろうか。まず、携帯電話・PHSで利用するウェブサイトやコンテンツの利用動向を調査した(図1)。コンテンツやウェブサイトの全体の利用率は72.7%で、利用頻度は4割弱が「週1回未満」となっている。利用頻度をパケット定額制加入状況別に見てみると、非加入者は加入者に比べて大きく下回っている。ちなみに、調査対象者のパケット定額制加入率は4割となっている。本記事には掲載していないが、性年代別で見てみると、男女とも10代で週10回以上の利用頻度の高い層の比率が3割を超えている。その比率は10代をピークにして低下し、50代以上になると男女ともに10%を下回る。反対に「週1回未満」の比率は年代が高いほど高く、年代が低いほど全体的な利用頻度が高い。グラフにはないが、有料コンテンツの利用率は全体の23.3%、ウェブサイトやコンテンツ利用者の32%である。有料コンテンツの利用数は4割弱が1個であり、2個の利用は26.9%となっている。
次に、携帯電話・PHSでの有料コンテンツ利用者に対して、1コンテンツ当たりの許容金額を尋ねた(図2)。
月額課金での許容金額は「100〜200円未満」が40.2%で最も高く、「200〜300円未満」が23.4%で続く。パケット定額制加入状況別にみると、加入者では「100〜200円未満」が39.9%、ついで「200〜300円未満」が23.9%である。非加入者においてもほぼ同じ傾向となり、パケット定額制加入状況による差異はほとんどみられない。
ダウンロード課金での1コンテンツ当たりの許容金額も見てみよう。「100円未満」が52.7%と圧倒的に高く、「100〜200円未満」が27.5%で続く(図3)。パケット定額制加入状況別にみると、「100円未満」が49.7%、「100〜200円未満」が31.0%である。一方、非加入者では「100円未満」が58.5%と高い。
無料コンテンツが有料登録に影響
コンテンツの利用意向は10代が「ゲーム」、「着うたフル」
有料コンテンツを登録する際、無料コンテンツやお試し期間を利用するユーザーはどれくらいなのだろうか。図4の調査データを見ると、全体では「無料サンプルやお試し期間を利用した後、有料登録することが多い」が29.0%と最も高いことがわかる。性年代別にみると、男性20代、女性10代、20代を除く年代で「無料サンプルやお試し期間を利用した後、有料登録することが多い」が「無料サンプルやお試し期間を利用せずに、有料登録することが多い」を上回っており、無料サンプルの利用が有料登録に影響している。
ちなみに、今後利用したいコンテンツやウェブサイトのジャンルを聞いた設問への回答は、10代の男性以外のすべての年代で、ニュース・天気予報と交通情報の利用意向が高い。また、10代の男女でゲームや着うたフルという回答が多かったことが特徴的であり、ほかの性年代とは異なる傾向が表れている。
30%以上が携帯ショッピングを利用20代〜30代では40%超の利用率
次に、携帯電話・PHSにおけるショッピングの利用動向を見てみよう。
携帯電話・PHSによるショッピングの利用率は全体の36.2%であり、パケット定額制加入状況別にみると、加入者では利用率が47.8%、非加入者では27.6%とほかのサービス同様、加入者のほうが利用率が高い。これを性年代別に見てみよう(図5)。すると、利用率が高いのは女性20代の46.9%、女性30代の45.6%、男性20代の43.2%と20〜30代が中心であり、高年代ほど利用率は低い。ちなみに、ここ1年間の携帯ショッピングの利用回数は、「2〜4回」が31.4%と最も高いが、「0回(最近1年間は利用していない)」も25.2%を占めている。10回以上、つまりほぼ月に1回は利用するユーザーは12.9%である。年間の利用金額については、「5,000〜1万円未満」が16.7%、「1万〜3万円未満」が16.5%であり、実質的なボリュームゾーンである。
購入ジャンルは「ファッション」が
今後の利用希望では「書籍、雑誌」がトップ
携帯電話・PHSによるショッピングで購入したことのある商品のジャンルを聞いた(図6)。「衣料、アクセサリー、ファッション」が30.7%でトップ、以下、「書籍、雑誌」が30.0%、「CD、ビデオ、DVD」が23.1%である。『ケータイ白書2008』には掲載していないが、男性より女性のほうが購入したことのあるジャンルの回答数が多い。
また、今後利用者は携帯電話・PHSによるショッピングでどういった商品を購入したいと考えているのか聞いたところ、「書籍、雑誌」が33.0%でトップ、「CD、ビデオ、DVD」が27.1%、「衣料、アクセサリー、ファッション」が25.3%で続く(図7)。実際に購入したことがある商品ジャンルと上位3項目は同じであるが、順位は入れ替わっている。
バナー広告/メール広告のクリック経験率は65%以上
携帯電話・PHSでのインターネット利用者は、モバイル広告に対してどういった行動を起こしているのだろうか。本誌には掲載していないが、モバイル広告のクリック経験者は53.4%で、未経験者をやや上回っている。パケット定額制加入状況別にみると、加入者では「ある」が67.6%であり、未経験者の43.2%より24ポイント高い。
さらに、モバイル広告のクリック経験者に、クリックした広告の種類を聞いた(図8)ところ、「バナー広告」が66.1%、「メール広告」が65.7%、「ウェブ上のテキスト広告」が36.3%の順となっている。パケット定額制加入状況別にみても、順位は変わらないものの、加入者のほうが非加入者より全体的に比率は高く、より多くの種類の広告をみた経験があることがわかる。
パケット定額制加入者の61%が懸賞への応募を経験
では最後に、懸賞・キャンペーンの応募経験の傾向を見てみよう。「応募したことがある」が46.5%であり、半数弱のユーザーが応募経験を持つ(図9)。パケット定額制加入状況別にみると、加入者では「応募したことがある」が61.8%であり、非加入者の35.3%を大きく上回っている。『ケータイ白書2008』には掲載していないが、年代別にみた場合、50代以上のユーザーでは応募経験者の比率が30%台以下と低いことがわかっている。
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