平均131万PVの大企業ウェブマスターが抱える業務負担と運営の課題
「第3回 企業ホームページ運営状況調査 結果報告書」ハイライト
「ウェブマスターの業務と立場」がメインテーマ
担当者の立ち位置で大きく変わる企業ページの役割と成果
Web担当者への調査からは、月間サイト訪問者数が100万人を超え、更新頻度・扱い内容・対応技術なども大きく拡大する一方で効果の実感を得にくい、ウェブ担当者の「苦悩」がかいま見える。その対策としては、サイトの効果測定にただ力を入れるのではなく、経営層や社内他部門を巻き込んだ活動により、コンテンツの質向上や成果獲得を目指すことが重要だといえる。
本記事では、2007年6月に発行された「第3回企業ホームページ運営状況調査」(社団法人 日本アドバタイザーズ協会、Web広告研究会 調査委員会)の調査結果の一部を紹介しつつ、企業ホームページの現状と今後について考えていく。
TEXT:編集部 協力:Web広告研究会(http://www.wab.ne.jp/)
本記事で紹介した内容は、2007年6月に発表された「第3回企業ホームページ運営状況調査 結果報告書」(社団法人 日本アドバタイザーズ協会、Web広告研究会 調査委員会)の内容を抜粋したものである。
この調査は2003年、2004年と行われており、今回で第3回となる。外部に出ることが少ない、企業ホームページの実態の一端を明らかにし、ウェブ担当者に運営と意識の方向付けとなる情報を示す内容となっている。おもな分析軸としては、企業の規模(従業員数)、業種タイプ、制作・予算体制タイプの3種類から、継続的な変化を捉えているのがポイントだ。
2006年12月6日~12月28日に、Eメール告知によるウェブアンケートを実施。
日本アドバタイザーズ協会(旧:日本広告主協会、JAA)、Web広告研究会(WAB)の会員社のうち、官公庁と個人を除く475社。回答者は、調査対象企業で「自社サイト(ホームページ)のウェブマスターまたはトップページの管理を担当している人」。回収61社(回収率12.8%)。
月間20万PVが境目。流通系500万PVが平均を押し上げる
本調査では、トップページの月間ページビュー(PV)、サイト全体の月間PV、月間ユニークユーザー(UU)について集計しているが、PV・UUいずれも平均100万を越え、前回調査(2004年8月)と比較して、2倍以上の伸びを示した(図1)。トップページのPV企業ごとに見ると、「5万~20万未満」(31.0%)と「5万未満」(16.7%)でほぼ半数を占めるが、「500万以上」(7.1%)が押し上げて、平均値は134.1万PVとなっている。まんべんなく散らばっていることになるが、平均20万PVを越えているかどうかで、逆にサイトの性質が決定するともいえる。
図1を踏まえて業種別に見ると(図2)、BtoB(企業向け)とBtoG(官公庁向け)企業では、月間PV20万未満が約9割(88.9%)を占めており、マスに展開していない方向性がうかがい知れる。BtoC(メーカー:パッケージグッズ)においてもこの傾向は同じで、100万PV以上の企業回答はなかった。一方で、BtoC(メーカー:耐久財他)とBtoC(流通・サービス)で5万未満の回答はなく、100万以上が40%以上を占め、突出している。カスタマーの購入前の下調べや顧客サポートで活用されている様子がかいま見える。
商品サイト・携帯サイトの使い分けを背景に、
見え隠れする予算体制との関係
企業情報を中心とする「コーポレートサイト」以外に、特定商品の情報を掲載する「商品サイト」(マーケティングサイト、ECサイト)を開設するケースも増加している。そのときに「ドメインを取得し個別化」「期間限定で別サイト化」「あまり明確に使い分けていない」といったやり方があるわけだが、前回調査との比較では「期間限定でサイトを立ち上げている」が急増していることが判明した(図3)。一方で「両者を使い分ける予定はない」が44.3%と半数近くあり、BtoCメーカーであっても別サイト開設まで着手しない傾向が見える。
図3を踏まえて、業種ごとに携帯サイトの開設状況を見ると、BtoC(流通・サービス)が76.9%ともっとも多く、以下BtoC(メーカー:耐久財他)、BtoC(メーカー:パッケージグッズ)、BtoB・BtoGが続く形となっている(図4)。BtoCにおいては、「わからない」とする回答はいずれも非常に少なく、携帯サイトの扱いについて、明確に企業指針を持って対応している様子がうかがえる。一方BtoB・BtoGにおいては、26.7%とBtoC(メーカー:パッケージグッズ)の65.0%の半分以下と、そもそも開設意図を持っていないと考察できる。
こういった差異は何によるものだろうか。制作・メンテナンスや予算管理の体制がある部署に集中しているのかを分散しているのかを、従業員数ごとと業種ごとに調べてみた(図5)。メーカーの3種を見ると、BtoC(流通・サービス)はむしろBtoB・BtoGの予算構成に近く、集中タイプが主要となっている。「完全主管型」(B-B)が低めなのが特徴的だ。また企業規模が大きくなると分散している傾向もあるようだ。
分析やSEOは軽業務? 担当業務の負担に大きな意識差あり
今回は、そのときどきの状況を反映したテーマとして、「ウェブマスターの業務と立場」がスポット調査された(図6)。担当業務と考えているものを聞いたうえで、「もっとも負荷が大きい業務」について1つ選択する、というアンケートがされたが、「ログ分析」「予算管理」「SEO」について、業務と考える一方で負荷は低いと感じている傾向が見える。逆に「新コンテンツ・新機能企画」「社内への働きかけ」について、負荷を感じている(苦手と感じている)ことも明らかになった。
ウェブマスターの担当業務を制作/予算管理体制の組み合わせタイプ別に見ると、「完全集中型」(A-A)の場合、担当業務は、すべてウェブマスターの業務となっている。一方で「完全分散型」(C-C)の場合は、100%となるものとして「サイト運用ルールの設定・周知徹底」「社内への活用働きかけ」が出てきているが全体的な業務率は低めだ(図7、図8)。
ただし、この2つの業務は、どちらかというとウェブマスターが負荷を感じている業務であり、望ましい状態ではない。「完全集中型」(A-A)の場合だと、単一部署が担当しているため、「サイト運用ルールの設定・周知徹底」などを行わなくてもいいため数値が低くなっているわけだが、「完全分散型」(C-C)の場合ほど、ウェブマスターが負荷を感じる業務を引き受けているという奇妙なねじれが発生していることにもなるだろう。 いずれにせよ、どのタイプのウェブマスターも、自分の本来フィールド以上の業務範囲を担当している、と感じているようだ。
「サイトの効果が見えにくい」という重大課題に対し、
「評価」の軸は2次元化
自社ビジネスへのサイトの貢献度については、「商品情報」「企業紹介・広報」「IR(投資家向け情報)」が高評価だ。「顧客とのコミュニケーション」「CSR(社会貢献活動情報)」「売り上げへの間接貢献」もおおむね高評価だ。しかしながら「売り上げへの直接貢献」のみ、「非常に」(9.8%)「ある程度」(16.4%)の合計26.2%と非常に低いものとなっている(図9)。「間接貢献」という項目があるため、直接貢献=ECサイトでの売り上げと考えられるが、その場合、サイトでの売り上げがそもそも見込めない、BtoB・BtoGサイトが評価を下げている可能性は考慮しておくべきだろう。
こういったサイトへの「評価」そのものについて、実は「サイトの効果が見えにくい」という不満を持っている企業が多いことがわかる(図10)。効果が見えにくい状態で、ビジネス貢献を評価すること自体が難しいわけだが、「完全集中型」(A-A)の場合は「コンテンツ制作が難しい」「分散型」(B-C,C-C)の場合は「アクセス増や集客が難しい」という課題を掲げている。新規コンテンツ制作あるいはアクセス増という、上層部にもわかりやすい評価軸を打ち出してはいるが、実際の課題は「いかにサイトの効果を測定するか」というであり、まずその解決を図ることも大切だろう。
「インターネット広告に関わるすべての関係者の情報交流の場」として、インターネット上の広告展開におけるさまざまな課題について、広告主と関連企業・団体(広告会社、メディアレップ、媒体社、調査会社、システム提供会社など)が共通の場で研究活動を行うことにより、インターネット上の広告の健全な発展を促進することを目的としている。
定期的なフォーラム・セミナーの開催のほか、各種広告手法の効果実証実験、企業サイトのプロデュースの研究とその評価、個人情報保護問題への取り組み、ブロードバンド・モバイル環境の研究、生活者のメディア接触変化の研究などの幅広い活動を7つの活動委員会を中心に行い、それを運営委員会が支援するかたちで運営している。
- Web広告研究会
http://www.wab.ne.jp/ - 第3回 企業ホームページ運営状況調査
http://www.wab.ne.jp/topics/websitestudy3.html - 入会申し込み
http://www.wab.ne.jp/contact/ - 会費
- 正会員(登録2名):1口21万円/年間(税込)※日本アドバタイザーズ協会員社は1口18万9,000円/年間(税込)
- 賛助会員:1口5万2,500円/年間(税込)※幹事3名以上の推薦(推薦人明記)が必要
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