なるほど!アクセス解析ケーススタディ

サイトの今とユーザーの行動を運営にかかわる全員で把握/イザ!+Urchin

イザ!(iza)/株式会社産経デジタル
Powered by Urchin(株式会社プロトン)

ウェブサイトの今とユーザーの行動を
運営にかかわる全員で把握する

産経デジタルは、「Sankei Web」や「SANSPO.COM」などを運営する産経新聞社のデジタル事業を引き継ぐ形で、2005年11月に分社化された会社だ。2006年2月から本格的に活動を開始した同社が最初に手がけたプロジェクトが、新しいコンセプトのニュースサイト「イザ!」(iza)である。イザ!で必要となったアクセス分析手法と、その結果どのような効果が生まれたかについて探っていこう。

産経デジタルの運営サイト「イザ!」の概要や今回導入したアクセス解析ツール「Urchin」の概要はこちらを参照

野本 幹彦(フリーライター)

新聞社系のサイトとして新たな試みに挑戦

株式会社産経デジタル
システム部 部長
脇雅英氏
株式会社産経デジタル
企画調整室 マーケティングマネージャー
小松大祐氏

イザ!は、産経新聞の子会社である産経デジタルが運営するサイトで、“ブログで楽しむニュースサイト”というキャッチコピーを持っている。開設してまだ1年も経っていないサイトだが、数百万のユニークユーザーと数千万のページビュー(PV)がある大規模なサイトだ。イザ!の開設の背景について、同社のシステム部 部長の脇雅英氏は次のように語る。

「産経新聞は2002年4月から東日本地区では“朝刊単独紙”となり部数は伸びているのですが、世界的に見ると、1997年以降は新聞の発行部数が減ってきているのが現状です。一方、インターネットではポータルサイトなどのニュースへのアクセスは上がっていますが、新聞社系のニュースサイトへのアクセスは伸び悩んでいます。これは、ユーザーの情報の扱い方が変わってきて、必要なものを必要なときに取り入れるようになってきたことの表れだと思います。われわれとしても、何とかユーザーのニーズを満たさなければならないということで開設したのが“イザ!”です。“Web 2.0”をもじって“新聞2.0”とわれわれは呼んでいますが、ユーザーの意見を取り入れて必要な情報を提供できるようなサイトを目指しています」

イザ!では、ユーザーにブログスペースを提供し、新聞記事にトラックバックを付けられることが大きな特徴となっているが(図1)、そのコンセプトと特徴について企画調整室 マーケティングマネージャーの小松大祐氏に伺った。

「われわれは新聞社系であるため、ポータル系のニュースサイトとは異なり、発信している情報の精度や信頼性にもこだわりがあります。その意味では、ユーザーにブログを書いてもらってトラックバックなどでニュース記事とのひも付けを行うという試みは、大きな挑戦となります。しかし、一方通行の情報発信ばかりやっていてもインターネットの特性を活かすことができません。

われわれが最初に考えたコンセプトは、記者が書いた記事を読んだ読者がどのような意見や感想を持っているかという、ニュースに対するプラスアルファの情報を提供することです。また、“イザ語”と呼ばれる用語辞典を用意し(図2)、ニュースを読んでいるときにわからない言葉があれば、すぐに解説を読んだり、関連する他のニュースやブログエントリを参照したりできるようにしました。このような“知る”ということのもう1つ先の“深く知る”ことができる情報を提供できるようにしたわけです」

図1 ニュース記事と並んで表示されるブログへのリンク。「ブログで楽しむニュースサイト」というキャッチコピーにふさわしく、さまざまな形でブログとの連携機能を持つ。トラックバック機能はもちろん、記者とユーザーのブログ記事が対等に並んでいたり、ニュースに関連したブログ記事が一目でわかるようになっていたりする。


図2 「イザ語」と呼ばれる用語辞典では、産経デジタルによる「オフィシャル解説」に加えて、ユーザーが自由に記述できる「みんなの解説」が並べて表示される。


インターフェイスの良さと解析の速さが選定の決め手

株式会社産経デジタル
Web開発室
藤岡高広氏

現在、イザ!ではアクセス解析ツールとしてUrchinを採用している。しかし、Sankei Webなどの既存のサイトでは、別のツールを利用しているという。イザ!でも採用しなかった理由は何だろうか。

「これまでは、フリーのアクセス解析ツールを使い、解析結果をCSVにしてExcelで図表にするようなことはやっていました。ほとんどPVを中心にデータを見ていたのですが、イザ!を開設するにあたって“ユニークユーザー”や“動線”などを知ることも今後は重要だと考え、より高機能な解析ツールの導入を検討し始めました」(脇氏)

静的なニュースサイトでは、各記事のPVだけでもある程度の分析を行えたが、動的なページが多く、ユーザー参加型となるイザ!ではさらに細かな分析が必要になった。市販ツールの導入を検討し始めた産経デジタルだが、脇氏によれば「コストはもちろん、解析にかかる時間、どの程度までのPVまで解析できるか、インターフェイスが使いやすいか、サーバー増強時にどのような対応が必要となるか」が選定基準になったという。選定の決め手については、Web開発室の藤岡高広氏が次のように答えてくれた。

「初期導入コストを考えて、パケットフィルタ型は選択肢となりませんでした。ASP型に関しては、やはり情報が外部に出てしまうということで抵抗がありましたので、ログ型のアクセス解析ツールを探しました。最終的に、いくつかの製品候補があった中でUrchinに決めたのは、解析速度が申し分なくインターフェイスも使いやすかった点ですね」

運営にかかわる全員で分析結果を把握する

産経デジタルでは、システムを導入して分析を行う脇氏、小松氏、藤岡氏はもちろん、編集や企画担当者、上層部の経営陣に至るまで、すべての人がUrchinにアクセスして分析結果を見られるという。「特に職種によってアクセス権限を変えたりはしていません」と藤岡氏が言うように、すべてのデータを平等に見られる体制となっているのだ。

「サイトにかかわっている人すべてが日常的にサイトの状況を共用できることを考えていましたので、高機能で処理が重いツールよりは、軽快でわかりやすいツールが必要でした。ニュースサイトの特性でもあるのでしょうが、同じ曜日の同じ時間帯だからといって、同じようなアクセス数になるとは限りません。話題の記事が掲載されたり、大規模なポータルサイトにリンクが貼られたりするような場合は、急激にアクセス数が増えます。このような場合、どこからどの記事にアクセスが来ているかをリアルタイムに知ることができれば、訪問者がその記事だけ読んで離脱しないように、他の記事へも誘導するような施策を行うことができます。また、その施策が成功したかどうかの検証も必要です。Urchinを使うようになって、毎時間ごとに10分遅れくらいで解析結果を得られるので、非常に重宝しています」(小松氏)

さらに、編集の現場と直接やり取りを行うことが多い小松氏の作業も軽減されたという。

「現場や経営陣へのマンスリーレポートは現在でも作成していますが、開設当初はデイリーレポートも作成していました。しかし、インターフェイスが使いやすく、誰もが簡単な説明ですぐに使いこなせるようになったので、デイリーレポートは作成しなくなりましたね。こちらで作成するよりも、直接Urchinを見てもらったほうが早いですから」(小松氏)

読者の行動が見えることでサイト改善も的確になる

アクセス解析を行うことで気付いたことも多い。

「数多くトラックバックされている記事がアクセス数の上位かというと、必ずしもそうではないのです。政治や社会問題などの記事には多くのトラックバックが付くことがありますが、実際にアクセス数がもっとも多かったのはエンターテインメント系の記事だったりすることがあるんですよね」と小松氏は笑う。

さらに、「単発のニュースをまとめた特集を作成するようなときには、人気のある記事がどれかということはもちろん、特集へ訪問者を誘導するためにもアクセス解析結果が重要となってきます。また、バナーやカテゴリーの配置をどうすればよいのか、といったことにも役立てていますね」と藤岡氏が言うのに続いて、小松氏が具体例を示してくれた。

「たとえば、イザ語という用語集のページでは解説を読むユーザーのほかにも、その下の関連ニュースをクリックしてニュースを読んでいくユーザーが多いことが解析結果からわかりました。それまでは、ニュース記事内のある用語をクリックすると解説のページに飛んで、関連記事を表示するにはタブをクリックする必要があったのですが、ユーザーが使いやすいようにタブで分けずに解説の下にリンクが置かれるように変更しました」

また、サポート面でも迅速な回答に満足しているという。

「導入当初は10万レコードくらいしか解析できなかったので、内部の設定ファイルなどを変更する必要があったのですが、サポートに連絡したらすぐにその方法を教えてもらいました。問い合わせるとすぐに返事がもらえるのは安心ですね」(藤岡氏)

他のツールと併用してより高度な解析を目指す

図3 Urchinのレポート画面。採用の決め手の1つがそのインターフェイスの使いやすさ。初心者でもすぐに確認でき、ビジュアル表現もわかりやすい(画面はサンプルです)。

Urchinの特徴について、高速性(リアルタイム性)やインターフェイスを挙げた産経デジタルだが、実際に利用してみて感じた不満などはないのだろうか。今後サイトが成長していくうえで考えられる課題などについて聞いてみた。

「2か月間のツール選定期間があったとは言え、まったく新しいサイトでどのような解析ニーズがあるか、どのようなツールが最適かといったことは決めかねていたというのが正直なところです。その中で解析の速さやコストの面からUrchinを選択したのですが、今後さらに詳細な解析が必要になった場合は、ほかのツールが必要になるかも知れません。ただ、今の使い方の範囲であればUrchinを選択したのは正解だったと言えます。現在、われわれが重視している点には満足しています。

解析ツールは、サイトの目的や解析のニーズによって相性があると思います。詳細な戦略が組める高価なツールを使えば、毎月分析しながら次の効果的な戦略を立てていくことができます。しかし、前述のようなリアルタイムに修正を行って、その効果がどうだったということは見落とされてしまう。その時々で判断しなければならないものであるし、われわれは現時点ではこのようなリアルタイム性を重視しています」(小松氏)

また、大きな戦略を立てながらサイトをリニューアルしていくことと、細かな改修によってサイトを改善していくことの両方の重要性についても、小松氏は語ってくれた。

「アクセス解析で得られる数字というものは、訪問者の行動を示すものであるし、説得材料になるものです。使いやすいページを作っていれば訪問者の滞在時間やPVが増えるし、使いづらいページからは訪問者がすぐに離脱してしまいます。そのため、数値を見ながら日々の改善を行っていくことが重要となってきます。改修の際には、コンテンツや機能の大きな変更などに目が行きがちなのですが、実際には細かな改修で大きな改善が行えることが多いものです。大きなリニューアルのときにもアクセス解析結果は重要ですが、小さな改修と確認を繰り返すこともアクセス解析の重要な役目だと思いますね。123と並んでいるものを132の並びに変えてみて、その効果を見ていくといったことも重要なのです」

最後に、イザ!が将来的にどのように発展していくのかについて伺った。

「イザ!は現在の形が最終形ではなく、2006年12月にソーシャルブックマーク機能を搭載したように、今後もさまざまな機能を追加していきたいと考えています。とにかく、おもしろければ何でもやってみようと考えていて、昨年末は除夜の鐘の音を聞き比べるという企画を立てました。今後も、新聞2.0というキーワードの中で、新たな挑戦をしていきたいと考えています」(脇氏)

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イザ! サイト概要

izaは、2006年6月に開設された読者参加型のニュースサイト。無料の会員登録をすると、ブログを開設できるようになり、各ニュースにトラックバックを付けられる。また、イザ語と呼ばれる最新用語集やソーシャルブックマーク機能なども搭載し、ニュース+αの情報が得られる。


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株式会社産経デジタルの選んだアクセス解析

複数ユーザーでの利用と高速な解析が可能

Urchin 株式会社プロトン
http://www.proton.co.jp/products/urchin/

Urchinは、ログ型のアクセス解析ツールでありながら高速な解析が可能であることが大きな特徴となっている。販売元のプロトンによれば、CPU:Pentium D 3.0GHz、メモリ:3Gバイトを搭載したサーバー環境において、1.6Gバイトのログファイル(1か月分110万PV。UTMを使わないApacheデフォルト設定)の解析を約115秒で完了させたという。また、複数台に負荷分散されているような場合でも、ログをまとめて取得してレポートを作成することが可能となっている。

Urchinには、独自技術であるUTM(Urchin Tracking Module)機能によってかなり正確なユニークユーザー数を計測することが可能だ。UTMは、排他的なファーストパーティCookieを使用しているため、ウェブブラウザのキャッシュを参照した場合もPVカウントに含めることができるのが大きな特徴だ。また、ユニークユーザーの追跡はIPアドレスやCookieだけでなく、User AgentやURIを使った複合的な分析も可能であるため、同一ドメイン内から複数のユーザーのアクセスがあった場合もかなり正確なユニークユーザーとして計測できる。

もちろん、リファラー情報から検索キーワードなどを解析することも可能。ECサイトでの売上金額と検索キーワードの傾向を解析する「Eコマース・モジュール」や、ウェブ広告の費用対効果を測定する「キャンペーン・トラッキング・モジュール」なども提供されており、オプションで利用できる。また、複数のユーザーで利用して各ユーザーの閲覧権限を制御することも可能だ。

価格は、基本機能を持つ「Urchin V5.7」が26万400円で、1台のマシンにインストールして、100プロファイルまで作成できる。そのほか、EC関連の機能を持つ「ECパッケージ」(45万9,900円)と広告機能を持つ「Suiteパッケージ」(123万4,800円)もある。

プロトンでは、Urchinのトレーニングはもちろん、アクセス解析やウェブマーケティングに関するさまざまなセミナーも開催している。セミナーは不定期ではあるが、ほぼ1か月に1回の割合で開催されているようなので、一度同社のホームページをチェックしてみるとよいだろう。

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※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材時点または記事初出時点のものです。

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