検索エンジン最適化(SEO)を生業とする僕らの会社Voltierでは、最近フロリダ州ウェストパームビーチにある地元の中古車ディーラーをクライアントとして引き受けた。このクライアントは、ウェブサイトを通じて客を連れてくるため、僕らを雇ったんだ。
このプロモーションは、ウェブサイトで見込み客に接触し、ウェブサイト上に展示したさまざまな自動車に関心を持ってもらうことが主体となる。そして、さまざまなSEO対策をページに施すことに加え、このサイトを検索エンジンにインデックス化してもらうことが僕の仕事だった(僕が手を付けた時点で、どの検索エンジンもこのサイトをまったくインデックス化していなかったんだ)。
仕事は結構はかどったのだけど、リンクビルディング(被リンク獲得)に1か月しか時間をかけなかったこともあり、GoogleとYahoo!では、ささやかな成果しか得られなかった。けれどもMSNでは、多くの人が予想するとおり、かなり簡単に想定した重要なキーワードで良いランクを得ることができた。しかし、次に示すキーワード(とそのバリエーション)に関して、Yahoo!とGoogleでのランク状況はあまりはかどっていなかった。
- Used Car West Palm Beach(中古車 ウェストパームビーチ)
- Used Car Dealer Palm Beach(中古車ディーラー パームビーチ)
- Palm Beach Used Cars(パームビーチ 中古車)
- florida used cars(フロリダ 中古車)
そして面白いのはここから。
リンクビルディング作業の一環として、僕はエサにするつもりでいくつか記事を公開した(リンクべイティング)。
例を挙げると、偽物エアバッグの話や、自動車ディーラーのために最も優れたSEO実践方法は何かという話や、路上で最も危険なドライバーの話とかね。僕の発想にも少しずつ磨きがかかり、Diggやredditといったサイトで人気が出るかもしれないと思った考えが、ふと浮かんだんだ。でも残念なことに、中古車とはさっぱりつながらない話だったんだけどね。
その話とは。
僕が思いついた話というのは、「人に超人的な能力を与える8つの病気」という題名の記事だ。その中身は、YouTubeのビデオやWikipediaへのリンクと一緒に、Discovery Healthの特集を8本寄せ集めただけというのが実態だ。
記事は約10分で書き上がり、アイデアがひらめいてから30分後にはオンラインになっていた。redditにある記事は悪評価を受け難い感じだったので、まずはredditにその記事を登録することにしたんだ。すると驚くべきことが起こった。
みるみる上昇。
redditに登録した記事の得票数は、最初の45分で着実に上昇し続けた。その記事はredditの「Science(科学分野)」ページのトップに居座り、1時間以内にはredditの「Hot(人気記事)」のトップページに載った。その後、科学分野を除く「Hot」ページ内で順位が上がり続け、最終的にはトップに上り詰めたんだ。
この記事の中には「Digg」ボタンを置いていたので、最初にredditに登録したとき、Diggにも登録された。Diggボタンは記事のページ頭に配置したのだけど、redditで順位が上がっても、ほんのちょっとしかDiggで評価を得ることができなかった(約8件)。
僕の記事がredditのトップページに載った後、記事ページの最後にもDiggボタンを追加した。これは、記事を読んだ後じゃなければ、Diggするかどうか判断しないのかもと考えたからだ。
そうすると、この記事に膨大な量のDiggポイントが集まりだしたんだ。redditのトップページに載ってから1時間も経たないうちに、Diggポイントの数は8件から110件、さらに250件、そして450件へと増えていった。Diggの中で記事のランクも上がり、3時間以内に800件を越えるDiggポイントを得てトップページに躍り出た。夜が深まるにつれDiggでの上昇は続き、2000件を越えるDiggポイントを獲得して、その日第2位の記事になったんだ。さらにDiggのトップ10にも入り、その日の午後11時(redditに登録してから8~9時間後)には、1位を獲得した。今この話を書いている時点でどうなったかというと、Diggポイントの獲得数が過去365日間で191位になっている。
トラフィックの推移状況。
ここで、今回の「スーパーDigg」状態をトラフィックの推移で見てみよう。
このサイトでは、Diggとredditに件の記事を登録する前の段階で、1日のユニークビジター数は100人にも満たなかった。これを踏まえて、推移グラフは手を加えたものではなく、ひいては事実を歪めたものではないことを念頭に置いてほしい。
こうした結果からわかるように、Diggとredditのトップページに載ることで、かなり本格的なトラフィックが発生するんだけど、両サイトだけがトラフィックを生み出しているわけじゃない。僕らのページは、del.icio.usの「popular(人気)」ページにも載ったほか、Ebaumsworld.comやGorillaMask.netみたいに、とてもトラフィックの多いサイトのトップページにも載ったんだ。
グラフからわかるとおり、僕らは5日間の合計で、およそ23万4000人のユニークユーザーを獲得した。現在、僕らのページにつながるリンクは、これらサイトのトップページから外れて目立たない場所にあるものの、Ebaumsworld.comなどのサイトから、いまだにトラフィックが発生している。ほかにも、GmailやYahoo! Mailといった、ウェブメールクライアントがリファラーのトラフィックもかなりあった。これは、僕らの記事に対するリンクが、メール経由で伝わっていた可能性が非常に高いってことだ。
もう1つの驚くべき事実は、Alexaのランキングで僕らのサイトの順位が大きく動いたことだった。120万位程度の順位から、たったの5日で12万位まで上がったんだ。これは、Alexaの「Movers&Shakers(赤丸急上昇)」リストに載っても不思議じゃないほどの伸びっぷりで、かなり定評のあるウェブサイトの順位すら、大きく越えてしまったんだ。
ちなみに僕らは、この順位がどのように以前のレベルまで戻るのか、という点に特に関心を寄せている。このチャートは、Alexaがどんな具合に一部始終を見ていたを示すものだ。
Diggに登録した後36時間経ってから、ようやくAdSenseアカウントの申請が通り、AdSense経由で広告がいくつかトップページに載った(儲かるとは思っていなかったけど、Diggユーザーのクリックスルー率に関し、複数の矛盾する話を聞いていたことから、コンバージョン率にとても興味があった)。その結果わかったことは特別驚くようなことじゃなかったけれども、予期していなかったことがいくつかあった。
その1つは、Adsenseが実のところ、Google Analyticsよりも多くのインプレッション数を報告していたということ。僕らが見たGoogle Analyticsのデータは、10万199ページビューだったのに、AdSenseではインプレッション数が10万2029回となっていたんだ。僕らが4日間で稼いだ手数料は、合計で71.87ドルだった。また、掲載広告はかなり高度にターゲティングされていたようだったけど、平均クリックスルー率は0.24%という惨憺たるものだった。
ついでに珍妙なお話:サイトには関連性を持たせたAmazonの広告も載せていた。こちらはインプレッション数が20万回で1ドルを稼いだ。
余波
さて、僕らは何より、今回の「スーパーDigg」状態が、被リンクと検索結果における表示順位にどんな影響を与えるかということに関心がある。そして今回の事例は、いくつかの疑問の究明に役立つかもしれない。
まず、サイトのコンテンツとあまり関係のない被リンクを大量に得ることが及ぼす影響って何だろうか? 関連性があまり高くない被リンクは、類似コンテンツを持ち権威もあるサイトから得る被リンクよりも効果的じゃないことは、誰もが知っている話だ。しかし、Diggに登録した場合は、まったく無関係というわけでもない分野で権威的な多くのサイトからリンクを得る。そして一部には、非常にトラフィックが多くて信頼性も高いサイトからのリンクもあった。
次に、この影響はどれくらい持続し、その影響が表面化するにはどれくらいの時間がかかるのだろうか? この点については、Yahoo! Site Explorerで調べたDigg前とDigg後の被リンク数を挙げてみよう。
Digg登録前: | 被リンク数207 |
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Digg登録後3日: | 被リンク数1270 |
Digg登録後5日: | 被リンク数2642 |
Digg登録後7日: | 被リンク数3545 |
Digg登録前: | リンク数0 |
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Digg登録後: | リンク数138 |
Digg登録前: | リンク数0 |
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Digg登録後: | リンク数532 |
検索エンジンではどう変化したか。
Digg登録後7日目にやってきたGoogleのクローリング処理の結果、目指していたキーワードで、僕らのランクは非常に大きく上昇した。当初20位から300位程度だったのに、最重要キーワードのほとんどで、トップ10入りを果たした(トップ5に入ったものも多かった)。さらに、Googleが僕らのサイトの情報を更新する頻度が上がったし、インデックス内に取り込んだページ数も増えた。補足インデックス内に埋もれていた10ページ以上もの重要ページを補足インデックスから解放してくれたんだ。
しかし、Googleウェブマスターツールでみる限り、被リンク数は0だった(Digg登録後7日)。
一方Yahoo!では、僕らのサイトに対する被リンクを検出していたものの、検索結果内のランキングという点では、およそ何も起こらなかった。そればかりか、Yahoo!のインデックス内で、僕らのページ数が減ってしまった。
その他の興味深い点:
Diggに登録したページは実験的なもので、僕らのメインページとの間には、いかなる形でもリンクを設けなかった。Diggに登録したページからメインサイトに対するリンクはもちろん、メインサイトからそのページへのリンクもなかった(そうした理由の一部は、Digg由来のトラフィックを中古車ディーラーサイトに入れたくなかったし、中古車ディーラー側も、強くターゲット化した地元のトラフィックだけを求めていたからだ)。メインサイトとDiggに登録したページとの唯一の接点は、同じドメイン内にあるということだけだった。
Diggに登録したページには、メインサイトでランク入りを狙っていたキーワードを1つも入れていない。また、Diggに登録したページでは、メインサイトのキーワードや話題に関連した別のページはもちろん、メインサイトの話題自体にも触れていない。
Diggに登録したページは、そこに織り込んだキーワードの多くで、かなり高いランクを得たけれど、タイトルの中の言葉ではトップじゃない。
この記事を書いたのは、情報や意見が欲しかったから。今回示した結果について、みんなの意見やアイデアや予測を聞いてみたいんだ。そして、こうした類いの出来事について長期的な影響を本格的に追跡できるように、これからも用意でき次第、このブログ記事に追加情報を載せて更新していくつもりだ。
ほかにも誰か、これほど大規模なケースを追跡したことはある? 今回のような話で、もっと長期間の体験をしたことはある? SEOmozのRand氏が、Digg登録後の被リンクとリンク増大効果に関して、ある程度データを追跡したことがあるのは知ってるけれど、ほかの人はどう考えてるんだろう。
以上、Daniel Tynskiでした。
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