ここ数年間の検索エンジン最適化(SEO)業界の動向で、特に注目に値する変化の1つといえば、やはり何と言っても、GoogleとYahoo!の検索エンジンが賢くなった(少々見劣りするがMSNも)ということだ。
1997年から2002年までの間は、ウェブページを作成しようとする場合、訪問者向けの「設計」とはまた別のやり方で、検索エンジン向けに「最適化」する必要がかなりあった。しかし何とも嬉しいことに、ここ何年かでこの2つの側面の間にある溝を検索エンジンが埋めてくれた。
さてそこで、検索結果表示アルゴリズムに頼らなければならないSEOが、進化した検索エンジンでどのように働くのか見ていこう。
検索エンジンの進化の影響によるSEOの変化の1つに、titleタグとmetaタグの中をどう書いたらいいのかという問題がある。titleタグとmetaタグの書き方は、かつてのキーワード詰め込みや言い回しの小細工というゲームじみた手法から、今や見出しをどのように書くべきかという技法を論ずる世界へと変化した。
言い換えると、SEOのためにtitleタグとmetaタグを書くという作業は、今や検索キーワードに連動したクリック課金方式の広告(PPC広告)のために広告タイトルとコピーを書くという作業と、ほとんどまったく同じ作業になったということだ。
それにもかかわらず、ランク付けを行なう競争率の高い検索結果において、いかに訪問者の目を引くかという点に関していえば、PPC広告のコピーの方がまだはるかに優れている。たとえば仮に、PPC広告の文体が今現在のアルゴリズム検索結果のような文体で、なおかつ、アルゴリズム検索結果の文体が今現在のPPC広告のような文体になったとしたら、どうなるだろう。おそらく、アルゴリズム検索結果のクリックスルー率(CTR)が急激に増えている一方で、PPC広告のCTRは(有利な表示位置にあるにもかかわらず)劇的に低下することになるだろう。
私たちSEOに携わる者は、なにも単に検索結果の表示順位だけを競い合っているのではなく、人々の視線やクリックの獲得について競い合っているのだということを、どうして忘れてしまったのだろう?
ここで、検索結果の表示例をいくつか考察してみよう。
まず(検索結果の1位に表示されている)Andreoni.comは、読み手を意識した書き方ということに関して、PPC広告からもっと学ぶべきだろう。何よりAndreoni.comが犯している実にもったいないミスは、「Montreal, Quebec(モントリオール、ケベック)」と自社の所在地を記載していることだ。これでは、潜在的にクリックする可能性のあるユーザーに対し、Andreoni.comが単一の地域だけでしかサービスを行なわないと暗に思わせてしまう。
いっぽう(検索結果の2位に表示されている)About.comは、タイトルと説明文が長すぎるものの、結果は悪くない。とはいえ、説明の部分は2つめの文から始めた方が、ほぼ確実にCTRが増えるだろう。また、タイトルもくどいので、冒頭の「Business Card Design」という部分を外し、残りの部分「layout ideas and tutorials(レイアウト案とチュートリアル)」が見えるようにすれば、ずっと訴求力が増すだろう。
この例だが、アルゴリズム検索結果の3つはどれも、PPC広告と同程度の正確さで、検索した人を呼び寄せようとしているようには見えない。
PPC広告で最上位にあるTheWineBuyer.comは、なんと驚くべきことに検索キーワードの「champagne(シャンパン)」を使っていないのだが、高いCTRを獲得して、広告料金に見合う成果を得ているのは間違いないだろう(あるいはもしかしたら、トップの位置を確保するために法外な出費をしているのかもしれないが)。
PPC広告で2位のChampagneGifts.comは、TheWineBuyer.comよりはうまくやっている。とはいえ、どちらのサイトも、価格帯や出荷のタイミング(例えば「翌日発送可」など)を記載すれば、きっとプラスになるだろう。
一方、アルゴリズム検索結果のWine.comとCostco.comには、本当にがっかりした。どちらのサイトも明らかに検索キーワードに関連する内部リンクが存在するのだが、検索エンジンに対してもユーザに対しても、適切なターゲティングや誘導ができていない。どちらのサイトにも、titleタグ内にキーワードを持つページがまったく存在しなかった(costcoとwine.comのリンクを使い、Googleで確かめてみよう)。
新型の携帯電話「Cingular Blackjack」が登場したことで、私としては自分の携帯電話「Motorola Q」に物足りなさを感じるようになってしまったのだが、しかしCingular自身だって、「Cingular Blackjack」の検索結果を見て、自社のSEO技術に物足りなさを感じ、かなりひどい気分になっているはずだ。
Googleのアルゴリズム検索結果において、Cingularのページが上位2つを占めているものの、そのどちらとも私がクリックしたくなるような代物ではない。アルゴリズム検索のトップはCingularのページだけれど、Blackjackに関係するページではないし、2番目に至っては、すでに発売済みなのに未だ「Coming Soon(近日発売)」のままだ。
さらに皮肉で滑稽なことに、CingularのPPC広告担当者らは、SEO担当者らとは違って、非常に優れたPPC広告を作っている。そのため日々何度もPPC広告のクリックが発生し、毎日おそらく何千ドルものクリック課金による広告料金を支払っているのだろうが、実際にはアルゴリズム検索で、Cingularのページは上位に表示されているのだから、単にそのページのSEOを適切に行なえさえすれば、そんな料金は払わずに済むはずだ。
PPC広告でトップに表示されているWireflyは、Cingularよりもずっと利口だ。検索した人に対し、特別価格で販売していることを伝えているうえに、CingularのPPC広告にある「Compact 3G」ではなく、テレビコマーシャルで使っている表現「Slim Samsung Smartphone(スリムなSamsungのスマートフォン)」で携帯電話を説明している。
一般的に、このPPC広告チームとSEOチームの違いは何かと突き詰めて考えてみると、結局動機の問題に行き着くことが多い。つまり、PPC広告チームというものは、広告コピーにとてつもなく気を遣うのだが、SEOチームは(大抵の場合)広告コピーを大切にしようという意識が薄い。もちろん、PPC広告チームはPPC広告管理者用パネルが表示するちょっとした統計値によって、SEOチームよりも多くの知識やインセンティブを得られるのは確かだ(これは、SEOチームがアルゴリズム検索結果のCTRを比較するのに大変な労力を要求されるのと対照的だ)。
それでも、PPC広告に当てはまるものと同じルールが、SEOについても当てはまると私は思っている。
つまり、いったん検索結果の上位3番目から5番目にランクインした後は、CTR、ランディングページの品質、広告コピーの3つすべてがパフォーマンス(クリックが発生しそれが具体的な成果に繋がること)に直接影響する。また、上記3つによって、何人の人があなたのページにリンクしてくれるかが変わるので、間接的にアルゴリズム検索結果での表示順位も変わってくる。
したがって、PPC広告の専門家に見習い、私たちSEO業界でも、せっかくの検索結果における高順位をもっと活かすことが大切だ。あらゆる人たちから視線とクリックを奪えば、単にアルゴリズム検索の高順位だけでなく、もっとずっと多くのものを得ることができる。
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