第2回 SEOのキーワードはどうやって選ぶ?
小林 範子(株式会社セプテーニ)
多くの企業が取り組み出したSEM(検索エンジンマーケティング)は、発展途上の分野でもあるため、確固としたセオリーが存在しない。SEMを行う上で担当者が直面するさまざまな判断・選択について、その見極めのポイントを専門家がアドバイスしていく。
SEM以上に考えることが多いSEOのキーワード選び
SEOを実施する時、最初にやらなくてはいけないのが、「キーワード選び」である。前回も述べたが、キーワード選びは非常に重要である。せっかくSEOが成功して目的のキーワードで上位表示を達成しても、最終目的である「ウェブサイトのアクセスアップ(クリック)」や「ウェブサイトからの成果数アップ(コンバージョン)」に結びつかなければ、マーケティングとしては意味を成さない。最終目的を達成させるためには、より多くのクリックやコンバージョンを稼げそうなキーワードでSEOを実施する必要がある。
ところでSEMの代表といわれるキーワード広告では、いわゆるロングテールの発想で、検索数の少ないスモールワードでも、思いつく限りたくさんのキーワードを入札することが費用対効果(ROI)の向上につながるとされている。
スモールワードは、多くの場合クリック単価が安い。またキーワード広告の多くは「クリック課金」であるから、大量のキーワードを入札しても、クリックされない限り料金は発生しない。単価の安いスモールワードを大量に入札しておけば、言葉は悪いが“下手な鉄砲も数打ちゃ当たる”に近い理屈で結構なクリックが稼げる。たくさん登録しておいて損はないといえる。
さて、SEOもこれと同じ理屈が通るのだろうか? ロングテールの発想はある程度取り入れることもできるが、キーワード広告のように数打ちゃ……という訳にはいかない。
キーワード広告と異なるSEOキーワードの選び方
まず最低条件として、SEOを実施するキーワードがウェブサイトのコンテンツとマッチしている必要がある。これはウェブサイトの中に、ある程度そのキーワードが含まれていなければいけないということである。検索エンジンは、ウェブサイト内の文字情報をもとに、サイトのテーマ(どのような内容のウェブサイトなのか)を判断しており、出現頻度が高い文字列(ワード)を重要視してテーマを認識する。つまり出現頻度が高いワードほど、検索結果で上位表示されやすいということになる。
となると、大量のワードでSEOするのは難しい。対策しようとするワードが多くなると、それぞれのワードの出現頻度を満遍なく高めることになるため、個々のワードの濃度(密度、デンシティなどとも言う)が薄まってしまうからである。初めてSEOを実施するのであれば、まずは1〜4個ぐらいが無理のない範囲だといえよう(図1)。
ではその1〜4個をどのようにして選び出すのか。まずは、オーバーチュアのキーワードアドバイスツール※1を使って、Excelに思いつく限りの関連ワードを書き出してみよう(図2)。このとき、隣の列に月間検索数も入力しておき、後で検索数の多い順にソートできるようにしておく。キーワード広告を実施している場合は、キーワードレポートも活用するといい。こちらもExcelで、クリックやコンバージョンの多い順にソートしてみる。
その上で次の2つの視点からキーワードを絞り込む。
- クリックやコンバージョンを稼げるかどうか。
- 自社のブランド力(認知度)がどれくらいあるのか。
冒頭に述べたように、上位表示されてもクリックやコンバージョンを稼げなければ意味がない。たとえば、ペット保険を取り扱っているサイトを例に挙げてみる。
「保険」というワードは、月間検索数が8万件を超えるビッグワードである。上位表示されればインプレッション数(検索結果がユーザーの目に触れる回数)が増えることは間違いない。当然SEOの難易度はかなり高くなるので、実施には相当なコストと時間がかかる。
しかし、果たして「保険」で検索したユーザーの何%が、ペットの保険を探しているだろうか?生命保険や医療保険、車両保険などを探している人がほとんどではないだろうか。彼らは、検索結果の上位にペット保険のサイトが表示されてもクリックしないか、たとえクリックしてもすぐに[戻る]ボタンを押すことになる。それよりも「ペット 保険」でSEOを行ったほうが、SEOの難易度も低く、またユーザーの具体的なニーズにマッチするので、クリック率、コンバージョン率も高まることが予測できる。
もう1つ、自社製品のブランド力(認知度)の有無も考慮する必要がある。化粧品メーカーのサイトを例に挙げてみる。
「化粧品」というワードは月間検索数9万件以上のビッグワードである。そこで実際に「化粧品」で検索をしてみると、検索結果の上位には、テレビでよく見かけるような大手化粧品メーカーがずらりと並ぶ。もしこの中に自社のサイトが一緒に並んだ時、ユーザーは果たして自社のサイトを選んでクリックするだろうか、と想像してみてほしい。
「化粧品」とだけ入力して検索するユーザーは、具体的な商品イメージを描いていないことが多く、見覚えのあるブランドに目が行く可能性が非常に高い。必ずしも、検索結果の1位、2位、3位……の順番にクリック率が高いとは限らず、ビッグワードになればなるほど、ブランド力がクリック率を大きく左右する。
もしブランドの認知度があまり高くないのであれば、製品の特徴に合わせて、「敏感肌 化粧品」「美白 化粧品」「自然派 化粧品」のように掛け合わせワードで対策するほうが賢いといえる。
※1:オーバーチュアのキーワードアドバイスツール
http://inventory.overture.com/d/searchinventory/suggestion/?mkt=jp
検索語=ユーザーのニーズという基本に立ち返る
検索ユーザーは、具体的な要求が高ければ、1語ではなく、2語以上の掛け合わせワードで検索することが多い。今後はさらにこの傾向が高まっていくはずだ。
たとえば、化粧品を検索するユーザーの心理を想像してみる。「そろそろ化粧品を変えたいけど、敏感肌だから心配、敏感肌に良い化粧品ってどんなのがあったかな?」とか「日焼けしちゃった! シミができないように、美白ものの化粧品に変えてみよう」といった具合だろう。そして、「敏感肌 化粧品」や「美白 化粧品」と入力して検索するのである。このキーワードでSEOをしておけば、自社の製品が敏感肌用や美白をウリにしたものであれば、まさに求めている顧客を呼び寄せることができる。
このように、検索するユーザーの気持ちになってその心理を考えることができれば、キーワード選びはまったく難しくない(「気持ちになる」というのが一番難しいのかもしれないが)。
SEOではできるだけビッグワードを選んだほうがいい、と思い込んでいるウェブ担当者も少なくないが、実はミドル級のワード(オーバーチュアの月間検索数で3千〜1万件程度が目安)が最も費用対効果が高いのである。
そもそもの基本に立ち返れば、検索ユーザーの求める情報を的確に提供するのが検索エンジンの役目であるのだから、「ユーザーのニーズに合っているワード」でSEOを実施することこそが、ユーザーにも企業にも、また検索エンジンにとっても最も重要なことなのである。
SEOのキーワード選びは、キーワード広告のそれとは違って後から変更するのは大変なので、じっくりと慎重に選んでほしい。
見極めのポイント
- まずは、1〜4個のキーワードから。
- クリックやコンバージョンにつながるキーワードかどうかを吟味する。
- SEOキーワードは、「検索語=ユーザーのニーズ」という基本から導き出す。
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.2』掲載の記事です。
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