企業ホームページ運営の心得

営業の非常識が許される日。リアルアプローチもお忘れなく

新年の挨拶はビジネスならばやはり「ハガキ」です。一年の始まりの貴重な客の時間を「ゲット」するのです
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百四十八

歳末の合い言葉

フリーターから社会復帰して潜り込んだ広告代理店で、11月の終わりに「社員名簿」が配られました。なぜこの時期にと首をひねったものの、理由を深く考えなかったのはフリーター生活の後遺症です。

12月に開かれた忘年会の席で「お局様」から「書いた?」と問われました。年賀状のことです。年賀状とは遠方で新年の挨拶に伺えない方に送ったもので「松の内」に顔を合わせる上司や同僚には送らなくてよい。などと理屈をこねると「ダメよ」と叱り、査定に響くと続けます。社長は猜疑心が強い人で、部下からの新年の「挨拶」をすべてチェックし、忠誠のバロメータとしているという噂があるというのです。

毎年、この季節になると「書いた?」「だした?」という会話が交わされます。主語は「年賀状」。メールやWeb上のグリーティングカードで十分という人もいますが、私は出します。査定はともかく営業ツールとして。

経済合理性が高いツール

社会人で年賀状を出さない人を見ると「もったいない」と呟いてしまいます。年賀状はわずか50円です。チラシやパンフレットを印刷し、送付・配布することに比べればべらぼうな安さです。しかも「お年玉付き」の年賀ハガキで、運良く「当たり」が届けば、受けとった人は一生、自分を覚えてくれることでしょう。

そして「営業」のタブーを許されるのが年賀状です。

ご無沙汰をしております

本来、挨拶を欠き、疎遠を詫びるには足を運ぶものですが、「年賀状」だけはハガキを送るだけでそれが許されます。ならば使わない手はありません。

新年の挨拶も「メールで十分」という人もいますが、ビジネスならばやはり「ハガキ」です。

みみずのブレイクダンスを披露

仕事始めのオフィス。パソコンを起動しメールをチェックすると、そこには迷惑メールと「あけおめ」「ことよろ」のメルマガがずらっと並び、新年の挨拶メールはここに埋もれてしまいます。一方、ハガキなら少なくとも一度は手にし、宛て名と文面を確認します。これで客の時間を「ゲット」します。

さらに「手書き」でゲットする時間を増やします。カラープリンターの普及により、宛て名や文面を印刷する人が増えましたが、必ず手書きで一筆添えます。株式会社アイシェアが2008年に調査したデータによれば、88.3%が年賀状に一筆添えられていると嬉しいと回答しています。ここで「ご無沙汰しております」が大活躍します。私はさらに踏み込んで「宛て名」も手書きし、より多くの時間をゲットしています。

「文字の上手下手」は時間をゲットする観点からは気にすることではありません。下手でも丁寧に書けば気持ちは伝わりじっくりと宛て名も眺めてくれます。そして、一年の始まりにおける客の貴重な時間を「ゲット」するのです。ちなみに私の字は「みみずがブレイクダンス」したようなと形容されるほどアーティスティックです。

気をつけることを

同じく、アイシェアの調査データによると年賀状が届いて「嬉しい」と感じるのは「非常に嬉しい」と「どちらかといえば嬉しい」を合わせて83.3%とあります。客が喜ぶとわかっていることに取り組まないのは商売人としてもったいない話しです。

ここで年賀状のぷちトリビアを。「賀正」を目上の人に出すのは失礼に当たります。同じく「寿」などの一文字も丁寧さに欠け適切ではないとは、明鏡国語辞典の編集委員である鳥飼浩二氏の談。謹賀新年、恭賀新年などが無難です。また「元旦」は1月1日の「朝」という意味ですからご注意ください。

そして個人事業主の方などで時々見かけるのですが「子供」と「ペット」の写真の年賀状はイエローカードです。親戚や友人のように親しい間柄ならともかく「ビジネス」の相手に送るのは不適切。公私の区別はつけるべきで、何より誰もが「子供好き」とは限りません。そしてこれは1つの真実です。

我が子の可愛さは他人には理解できない

ご不幸ごとのときには

喪中につき年末年始のご挨拶ご遠慮申し上げます。こうした喪中ハガキが届いた場合の対応です。

寒中お見舞い申し上げます。寒さはこれからが本番です。どうぞご自愛ください

※1 1月5日を過ぎた頃に寒中見舞いとして代わりに出すのがマナーとしてよいともいわれています。

三が日を過ぎた頃に届くようにポストに投函します※1。喪中のご家庭に届くのは美容院や、レストランの案内。つまりは「広告」で、裏寂しい気持ちになっているところに届く、身体を気遣うハガキはご遺族にとって嬉しいものです。祝いを伝える賀状ではなく「季節の挨拶」ならば喪中でも問題ありません。創業当時お世話になったある社長から教わった方法です。

ここでも仕分ける必要が

何かと忙しい師走に年賀状を書いている暇がないというのはわかります。しかし、宛て名を書き、一筆添えても、一枚当たり数分程度です。その僅かな時間で、今年の不義理と来年の「ご縁」を考えれば、年賀状の「投資効率」の高さは折り紙付きです。

そこで「仕分け」をします。

まず「会社と自宅」。オフィス宛てにだす年賀状は後回しにできます。早くても1月3日、遅ければ5日までは会社に来ませんから、クリスマス以降に投函しても十分間に合います。一方、中小企業の経営者に多いのですが、会社と自宅が隣接しているならば「元日必着」です。さらに「同一市区内」と「遠方」でも分けることができます。都市部の郵便事業会社は同一市区内の郵便を迅速に処理するようになっており、午前中に投函された速達郵便が当日届いたこともあります。しかし、地方となるとやはり時間が必要で、これを考慮し「遠方」から先に書き投函していきます。

一年に一度、疎遠になっている取引先、知人を思い浮かべて一筆を添える年賀状。アナログを侮ってはなりません。IT界の著名人も年賀状を出しています。そして上達しない「字」も、出し続けているウチに「味」だと開き直れるようになります。

今年の「心得」は今週で店じまい。次回は年明け。それでは良いお年をお迎えください。

※追記:取引先の社長や、その近親者が亡くなった場合の対応について。

厳密に論じれば「個人」と「法人」は別人格ですから、法人に対して「賀状」をだしてもOK。少し違和感を覚えるかも知れませんが、社長が急逝しても、新社長の就任を祝うことをイメージすればご理解いただけるでしょうか。さらには子会社が倒産しても「喪 中」にならないようにです。もっとも、中小・零細企業では社長の近親者の不幸で喪に服す人もおり、これは正否で断ずるものではなく「心」の問題と考えるので、私は事前に先様のご不幸を存じ上げている時は、こう対応します。

「相手から年賀状が届けば、即レス。喪中案内が届けば寒中見舞い」

今回のポイント

疎遠もネタになる便利イベント。

リアルチャネルを確保するとみればハガキ代は安い。

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