企業ホームページ運営の心得

Web担当者の仕事とは何か? どんな企業にも共通するたった1つのコト

連載開始から10年、Web担当者の職務内容に結論はでていませんが1つだけ言えることがあります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の513(最終回)

ラストメッセージ

Choreograph/Thinkstock

毎週水曜日が寂しくなる。読者から声をかけていただき筆者冥利に尽きるというものです。サヨナラは別れの言葉ではないと昔の流行歌にあったように、いずれどこかで出会えるまでの、しばしの別れ。

それに本連載をまとめた通称「赤本」と「青本」は電子書籍で絶賛発売中! ワンコインで充実のノウハウが……最終回も手前味噌で始まりました。

さて、Web担当者の仕事とは何か。本連載が始まった当初は、自社サイトの管理者の意味合いが強く、同時に「Web 2.0」により新しい時代がやってくるとの期待感もありました。

そして10年。SNSとスマホの普及による変化はありましたが、「Web担当者の職務内容とは何か」についてはいまだ結論がでていないように感じます。それでも「何か」と結論をだすならこうです。

Web担当者は結果がすべて

本連載におけるラストメッセージです。

千差万別の世界

荷物を運ぶトラックドライバーや、美味しいハッシュドビーフを提供するシェフのように、Web担当者の業務は特定のコンセンサスがあるものではなく、少し前に流行したCMのコピーのように「結果にコミット」するぐらいしか共通項のない特異な職種だということです。

たとえば、同じWeb担当者と呼ばれていても、その会社におけるWebの位置付けが「広報」「販売」「集客」「求人」のいずれなのかによって、必要となるスキルも知識も異なってきます。

いまでは中小企業でも絶滅危惧種になりつつある、企画立案からコンテンツの制作実務まで行う「ワンオペ」的なWeb担当者にとってHTMLのコーディング知識は不可欠ですが、企画を中心とした業務のWeb担当者ならマストなスキルではありません。

いまなにをやるべきか

あるメーカーでは、卸価格と一般価格が異なり、また業者の取引実績でも変化するので、Web上に公開することができずにいました。ユーザーごとに価格を切り替えるシステムを構築するといった解決策もありますが、システム開発とメンテナンスの費用対効果から折り合わず、「FAX見積もり申込書」をPDFで掲示することが「最適解」となり、現在つつがなく「稼働」しています。

路面店を新規オープンする際の集客なら、開店当日の告知は、とりわけ住宅街なら、いまだに「新聞折込チラシ」に軍配が挙がります。Webの活用はもちろんながら、「結果」のためにはWeb以外の選択肢もあり得るということです。

それぞれの会社におけるWebの位置付けで「最適解」は変化しても、Webに期待する「結果にコミットする」ことだけは変わらない。それが「結果がすべて」だということです。

専門家風ならKPIとかを持ち出して説明すべきでしょうが、定量化できない環境も多く、また「ド素人向け」という原点から「結果」とし、それを意識する職種だということです。

ステージで異なる仕事

ここで街角のWebについても触れておきます。

あるオシャレ系のラーメン屋は、行列の絶えない人気店です。経営者は、別コンセプトの店を何店もだしている「やり手」の若手ながら、当人はアナログ人間。同業者から耳にしたのは「Facebook」の存在です。

地域コミュニティに参加すると、いろんな情報が得られて宣伝もできると知りましたが、若手社長は「アカウントの作り方」で苦戦します。

本サイトの読者には信じられないかもしれませんが、アカウントの取得ができない一般人はさほど珍しくなく、仮にこの社長に請われてWeb担当者になったなら、「パソコン教室の先生としての結果」も求められることでしょう。

実はこれ、弊社にも寄せられる「よくある質問」です。次々と新しいサービスが生まれるWebの世界ですが、取り残されている企業は決して少数派ではありません。これを「限界普及率」とみる声もありますが、ここは「成長余地」としておきます。

ワンオペが絶滅する理由

一方、業務内容としてある種の結論がでつつあるのが「ワンオペWeb担当者」です。先に絶滅危惧種と紹介したように、HTMLコーディングが必要なシチエーションは激減しています。「WordPress」のようなCMSの普及も大きな理由ですが、最近では「クラウドソーシング」と呼ばれる内職的フリーランスの登場で、正社員よりはるかに安い人件費で発注できる時代になっているからです。

テレビにレギュラー出演する大学教授は、ゼミのサイトをリニューアルするために専門業者と交渉を重ねていたところ、学内の専門家から「クラウドソーシング」を提案されます。見積もりを取ると、業者が逆立ちしても対応できない価格だったと雑誌で紹介していました。

Web屋の立場からすると、営業妨害レベルのネタのため細かな数字は割愛しましたが、これからのWeb担当者は、HTMLを覚えるより、良い外注先を探すテクニックを身につけるべき時代になったのかもしれません。

10年でWeb担当者の業務範囲は急拡大しました。「企画・制作」「戦略」「広告」「分析」「ソーシャルメディア」など、数え出すと切りがなく、これらをワンオペで回すのは現実的ではありません。また、作業者としてではなく、Webを活用した経営への貢献が求められるようにもなってきたことも大きな変化です。

真価を発揮する職場へ

繰り返しになりますが、Web担当者は結果がすべて。そして求められる結果は、職場環境によって異なります。ここからがWeb担当者への「ラストメッセージ」。

すでにWeb担当者の任にあり、一定の技術や経験を持ちながら、思うような結果に恵まれないなら転職も一考です。才能のミスマッチの可能性があるからです。

ある巨大ショッピングモールのECコンサルタントだった某氏は、中堅ロジスティクス企業に転職したいま、Web担当者として活躍し、社長の寵愛を受けています。結果さえ出せば、大企業、大メディアにステップアップすることも、身の丈にあった職場でいきいきと働くことも選ぶことができる。これもWeb担当者という職種のおもしろいところです。

さて、来週から本連載はありません。しかし、来週の火曜日(8月1日)発売の「月刊正論」で連載しています。最後まで手前味噌。「らしい」と開き直る自分を笑ってサヨナラです。

今回のポイント

Web担当者は結果がすべて

10年間余り、ありがとうございました

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