キャンペーン名のネーミングと考え方のコツ セール販促はベタなほど効く?
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の495
プレミアムフライデーに足りない販売促進の心得
政財界とマスコミの総力を結集し、盛り上げを画策中の「プレミアムフライデー(プレ金)」。月末の金曜日の勤務時間を午後3時までとし、余暇を有意義に過ごしてもらうことを狙いますが、「関係ないね」という人が圧倒的多数派。月末の金曜日に「早退」は困難です。弊社は初回の2月24日、午後3時までの勤務と発表し、それ以降を「残業」として対応しました。
旗振り役の経済産業省に話を聞くと、米国における「ブラックフライデー」や「サイバーマンデー」のような消費拡大を狙った、政府の販売促進施策だったといいます。ところが各所からの「横槍」が入った結果、迷走してしまったと嘆いていました。
一方、販促目的だとするなら「ネーミング」がいただけません。そこに明確な「サイン」がないからです。もちろん、Webの販売促進企画も同じです。
ブラックが生まれた歴史
「ブラックフライデー」や「サイバーマンデー」について、日本では「年末商戦」の「開始日」と紹介されることがほとんどですが、消費拡大の理由としては不十分です。
米国の「ブラックフライデー」は、11月の第4木曜日の「感謝祭」の翌日になると店舗にあふれる「黒山の人だかり」を発端とし、会計上の「黒字」が加えられて定着した言葉です。現地では感謝祭から日曜日まで4連休、家族や親戚が集まる風習があることから、需要が喚起されます。もう一方の「サイバーマンデー」は、連休期間中に「ショールーミング」して、休み明けにオフィスで「ネット注文」する人が増える現象から生まれました。
つまり、建国の歴史を刻む「感謝祭」や、4連休といった環境が背景にあっての消費拡大です。名前だけ真似したプレ金で消費が拡大するわけがありません。
チラシに負けたウォルマート
そもそも米国と日本の一般消費者の間には、大きな商習慣の違いがあります。これを見誤り苦戦したのが「ウォルマート」です。
米国の小売り最大手「ウォルマート」は「Everyday Low Price(EDLP)」を掲げ、年間を通じて低価格販売する営業戦略を採用し、企業買収で参加におさめた「西友」にも導入しました。EDLPは極度な特売を避けると同時に、顧客に浸透することで広告費を削減ができるメリットが考えられます。そこで西友はチラシを一時廃止したのですが、これが大ダメージとなります。その理由をざっくりとまとめると
チラシの特価品、目玉商品をみて購入計画を立てる客
日本人は特売チラシを見て買い物をする人が多かったのです。西友は方針を転換し、チラシが復活します。
日本人の建て前と本音
「日本人はチラシ好き」という話ではありません。質素倹約を美風とする文化という建前と、無駄遣い……もとい消費好きという本音を使い分けているのです。
いつも安い、それならすぐに買わなくてもいい、と買い控えるのは倹約の建前です。しかし、チラシなどで「今日だけ」と囁かれれば本音が頭をもたげます。今日だけの得によって、明日以降の倹約につながるというロジック(いいわけ)が消費の背中を押すからです。
だから日本全国津々浦々、チラシの有無はともかく「セール」が行われています。小売業者に限らず、エステ、理美容、工具販売業者にネット通販も同じくです。そして日本国民の多くが「セール」に麻痺しています。
そこで
いま、セール中です
と明示するのが「ネーミング」のツボです。具体的には「祭、市、売り出し、セール」など、ありがちなキーワードを接続したタイトルを用意します。ベタなようですが、ベタということは、それだけ「販促してますよ」とお客が理解できる「サイン」なのです。反対に気取った言葉では、多くのお客が脱落します。「プレミアムフライデー」が反面教師です。
いまでしょ!
ネーミングの基本は「ポイント還元」のように内容を示すことです。そして、「ポイント2倍還元」の販促を実施するなら、「今」実施されていることを強調します。
ポイント2倍セール実施中
ただいまポイント倍増祭!
「還元」だけでは「予告」と勘違いするお客もいるからです。
さらに「開催中」と添え念を押し、タイトルの側に実施期間を掲示するのも効果的です。1日のみなら「本日限定!」はマスト。すべては「いまなら得する」と明示することで建前を押しやり、購買意欲を刺激するためです。少し前に林先生の「いまでしょ!」が販促シーンで多用された理由も同じです。
そしてここからが真の「現場の心得」。同じ内容のセールであっても、ネーミングを換えることで「目新しさ」を演出し、マンネリな販促を延命させます。
言葉遊びではなく
先の「ベタ」なキーワードには、それぞれ関連語、派生語があり、これらを組み合わせます。
祭 | 創業祭、感謝祭、フェス、フェスタ、フェスティバル、カーニバル |
---|---|
市 | 赤札市、火曜市、夕市、朝市 |
売り出し | セール、フェア、特集 |
これに「季節、時期」を結合すると次のようになります。
祭 | 決算祭、さくら祭、新生活フェスタ |
---|---|
市 | 春の大市、歳末市 |
売り出し | 卒業フェア、新入学セール |
マンネリであっても、「販促はやらないより、やった方がよい」と経験則から断言します。かつて某サイトで、名前を差し替えただけの同じ内容のセールを2か月実施したことがありましたが、前年対比で1~2割ほど売り上げが伸びました。「チラシ」の話で恐縮ですが、タイトルを替えただけで何年も同じセールを繰り返している家具屋は実在します。
ちなみに「プレミアムフライデー」に入った横槍とは、有名な「経済団体」からのもので、「働き方改革」とリンクしろというもの。それによって当初予定のなかった「午後3時の早退」が組み込まれます。第2回は今月の3月31日で、会社によっては年度末の金曜日。なんだか「早退」するための残業が増えるという、逆の意味での「働き方改革」になりそうです。
今回のポイント
販促は消費の免罪符
ベタなネーミングほど効く
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