業界人間ベム

運用型広告とはそもそも「何を運用するのか。」

12 years 7ヶ月 ago

 入札運用型広告はインハウスで運用した方がいいと以前のエントリーで書いた。ブランド統合的にインハウスないしハウスエージェンシーでの運用がお奨めだ。リスティング広告をインハウス運用して、またアウトソースに戻してしまうケースもあるが、それは導入方法が悪かったからだ。ディレクションできるスキルを獲得できないで、作業に埋没してしまうと何も得る事のないまま、また完全アウトソースに戻すことになる。それでは意味がない。

 そもそも「運用」とは何を「運用」するのかというと、事業部から預かった広告投資用の金を、求められる広告パフォーマンスに変換して返すという「運用」である。期待値を上回るパフォーマンスにして返して初めて「成果を出した」ことになる。

 この際、売り手の論理で出来た「枠」を買うことももちろんあるだろうが、基本的に買い手が自在に入札するモデルを十分に活用することが前提だ。何故かというと、入札型であれば、買い付けてみて、期待されるパフォーマンスがとれない場合、すぐにでも止めることが出来るからだ。株を買って、株価が下がれば、場合によっては損切りしてでも売ってしまい、その分を他の株に投資して取り返すことを当然やるだろう。
 広告の運用も株式の運用と考え方は同じだ。

従来の「枠」もの広告は、契約上買ってしまうと、途中でパフォーマンスが悪いことが分かっても「止めます」という訳にはいかない。(当然です。)
 いくらPDCAを廻すとか言っても、「枠」を買ってしまう投資より、1配信づつを丁寧に入札するスキルを高めることが効果的だ。
 そのためには、日々、リアルタイムの運用経過を共有し、知見を高めることだ。

 事前に決めたバイイングプランで最後まで突っ走る時代ではない。反応はリアルタイムで把握できる。ユーザーレスポンスを見ながら、最も効果的かつ効率的なハンドリングをする時代なのだ。
 リアルタイムでデータが把握できるのに、リアルタイムで手が打てないのでは意味がない。PDCAサイクルはもう極限まで短いものになっている。「一定のパフォーマンスが得られなければ中断して他の手段にしてみる、または期待以上のパフォーマンスがあれば追加予算を投入して、もっと押す。」という考え方にならなければだめだ。

 「広告枠を買う」のではなく、「広告パフォーマンスを買う」のであり、そのためには自分自身でダイレクトに入札することで、いつでも「Go or Stop」を自在にコントロールするのが当然のこととなるだろう。
 代理店に発注してしまうモデルはマージンを取られるからどうこうではない、代理店のマージンは当然あってしかるべきものだ。「枠」の投資成績が良ければ、代理店から「枠」を買うので良い。代理店にマージンを下げさせるのが効率の良い買い付け方なのではない。そもそも買い付け額とその配分を、買っている本人が自分で自在にコントロールした方がよいのだ。
 

 「運用型広告」の「運用」とは、金融の「運用」と近い感覚のものである。もちろんかかるコストはPL上の費用ではあるが、だからと言って予定されたものは使ってしまうものとか、予備資金は全くないというのでは「運用」にならない。

実は広告主が損をしているコンペのさせ方

12 years 7ヶ月 ago

 広告主が広告代理店やクリエイティブファームに提案をさせる時、特に競合プレゼンテーションをさせる場合において、多くの広告主が決して上手なやり方をしていないケースが多い。それでも、CMなどのマス広告の提案の場合は、長年の経験値から広告主も代理店側も了解事項がかなり出来上がっているので、そうでもないが、問題はWebサイトやそのクリエイティブ、デジタル/ソーシャルのコンテンツ提案の場合だ。

 この領域の提案を求める時、特にコンペにする場合の広告主の提案のさせ方は、あまり上手ではなく、かえって本当に良いプランを得られていない場合が非常に多い。

 Webの制作費はピンキリで、ページあたり本当に安い単価でつくるところもある。(そもそもページ単価というのもどうなんだ?) ただただ安いのがいいのなら、それでいいのだが、クオリティの高いクリエイティブを買いたいのなら、それなりの知見が要る。

広告主側に経験値が少ないと、クオリティの認識(つくり手のどんなノウハウに価値があるか)とそのコスト感覚が出来ていない。求める期待値とコスト感覚が折り合っていないのだ。大手代理店に依頼するCMなどであれば、この辺が出来上がっている。しかし、Web/デジタル領域だと、どこに本当のクオリティの価値があって、どこをケチってはいけないかがまだ分からないというところだろう。「安物買いの金失い」にならないようにしないといけない。
意外にもWebクリエイティブのオリエンでは予算を明確にしないケースが多く、しかも期待値をうまくオリエンできていないので、提案する方もオーバースペックになったり、的外れなものになりがちだ。

しかも非常に短時間での提案要求が多い。コンペなので、競合させるところに平等な条件を与えるのはいいが、提案側にもベストなプランを出せるタイミングというものがある。比較的タイトなスケジュールでも一生懸命対応する姿勢があるかどうかを選抜の判断材料にしようという意図もあるかもしれないが、それはあまり的を射ていない。


本来ならアクセス解析ツールがあれば、アカウントを一時渡して分析させた上での処方箋を出させるべきだろう。その辺りは従来のマスクリエイティブ提案とは少し違うと認識した方がよい。全く同じ感覚でやると、本当に損をするのは実は広告主自身だということを認識しないといけないだろう。

やはり広告フォーマットがあるものはつくる側もそれを選ぶ側も基準があって、比較的楽に提案と採用が成立していたが、ノン広告フォーマットの企画提案にはまだまだ採用する側も提案する側も技術が確立していない。
これをうまくやらないと損をしているのは基本「買う」側である。

データ格納戦争

12 years 7ヶ月 ago

 DMPが火付け役になって、起こる戦争がある。名付けて「データ格納戦争」だ。

 まずは広告配信の世界だけでも、大手企業広告主、大手メディア会社、大手広告代理店が、データ取り込み戦争を行うだろう。既にアメリカで起きている状況でいうと、WPP、IPG、ピュブリシスなどのメガエージェンシーグル―プがDSPによるエージェンシートレーディングデスクを早くから立ち上げた。当初この動きに広告主側はオペレーションフィーを払うことを「マージンとの二重取りではないか」と騒いだが、本当の狙いはそんなことではない。DSP/RTBによる広告買い付けの扱いを受注すればするほど、配信結果データが集積できる。実はこのデータを取り込むことが狙いであった。それに最初に気が付いた大手広告主が代理店に「我々の金で買い付けた広告の配信結果データは我々のものだ」と主張したのだろう。大手広告主企業が外部のテクノロジーでプライベートDMPを構築したと同時にプライベートDSPを用意させるのは、データは自分たちだけのセキュアな環境をつくってデータによる学習効果を自社の広告配信に活用しようとしている。
 


 企業がプライベートDMPを用意した方がよい理由は、まずユーザーデータのセグメントはブランド側のマーケターの手によってしか出来ないということ。(他人のつくったデータが使えるということはない。)
 そして、せっかく自身の金で広告を買って配信しているのに、その配信結果データを活用して学習しないのでは意味がないこと。
 それから、DMPは広告配信ためだけのものではないので、DSP事業者のDMPだけ(広告のためだけに)使うのでは拡張性がないからだ。

この領域には、SIerさんたちが虎視眈々と参入を狙っているだろう。テクノロジーはマーケターのフロント側に出て行っている。業務システム系の「守り」側から、営業・マーケティングの「攻め」のフロントラインである。業務システム系にはしっかり食い込んでいるSIerさんたちは、フロントにも領域を広げたいだろう。
 広告配信データだけではなく、多くのマーケティング施策に活用できるDMPは、広告側からアプローチするプレイヤーと、基幹システム系でのデータを統合して,さらにマーケティング活用するDMPへのアプローチするプレイヤーでにぎやかになるだろう。

 DMPの導入は企業にとって、簡単ではない。しかし企業がデジタルマーケティングとかデータドリブンなマーケティングを実際に推進できるように、自らが変わるためには、DMP構築運用を組織横断プロジェクトは非常に有効な手段であろう。
 
 DMPについては、ATARA有園さんとの会談が、http://www.attribution.jp/000198.htmlに掲載された。こちらも是非ご一読あれ。

入札型広告のインハウス運用の必要性

12 years 7ヶ月 ago

 RTBでのディスプレイ広告枠取引が拡大すると、リスティング広告と合わせていっそう運用型広告の重要性が高まる。
 この入札運用型広告だが、従来の枠もの広告の買い付けと効果検証の仕組みがまったく違う。

 まず、従来枠ものであれば、枠そのものがPDCAの対象だが、DSPでは運用そのものがPDCAの対象である。よく枠ものとDSPを並列にしてCPCやCPAを相対評価している代理店があるが、これはナンセンスだ、DSPでどんな運用をしたかの情報がなにもないのに(レベルの低いオペレーションだったかもしれないのに)結果だけ見ても意味がない。
 
 枠ものでは、基本、広告代理店の営業が紙のレポートを持ってきて、広告主担当者と向かい合って説明を聞く。しかしDSPを含めた入札運用型広告では、PCのレポート画面などの管理画面をオペレータと広告主担当者が横並びに座って、同じ画面を見ながら報告を受ける(報告を受けるというより、いろんなファインディングをいっしょに確認する)というイメージだ。枠ものよりはるかにリアルタイム感覚が必要となる。

 メディアの売り買いということで言うと、
 今までは、広告代理店の営業が持ってくる広告メニュー(プラン)から、メニューを選ぶということから始まる。広告というものはずっとこの形でやってきたので、何の疑問も持たずに広告主企業の方々も買ってきた。
 しかし、よくよく考えて欲しいのだが、広告枠(広告メニュー)というのは売る側(セルサイド)の論理で出来ている。枠が有限なテレビなどマス広告枠では分かるが、掲載面を買い切ることなど出来ないネット広告(今後もデバイスが拡がるデジタル広告)では、こうした売り手主導の取引きはいつまでも続かないのだ。
 
 広告の売買に関わる大きな流れは、明らかに「売り手主導」から「買い手主導」への移行にある。
 
 DSPとは、デマンドサイドつまりバイイングサイドのためのプラットフォームであり、
「バイサイドの論理で買う」ということがどういうことかを、まずは広告主本人がしっかり理解しないといけない。
 「バイサイドの論理」は「バイサイド」で主導権をとって確立しないといけないのだ。研究し、自分でトライすることなしには価値を得ることは出来ない。

その意味で、広告主はインハウス運用を一度は検討した方がよい。
少なくとも運用の「肝」をつかみ、運用方針をディレクションできるくらいのスキルを獲得すべきである。

DMP(データ・マネージメント・プラットフォーム)とは何か

12 years 8ヶ月 ago

 年初の2013年業界予測でも「DMPが立ち上がる年」と書いた。
DMPとはデータ・マネージメント・プラットフォームの略。DSP、RTBに続いてまたまたアルファベット3文字の登場だ。
 しかし概念としてのDMPは、大きくふたつに分けられる。ひとつは広告配信先のデータセラーとしてDMP、もうひとつは企業が自社でデータを格納するプライベートDMPだ。もうひとつの見方でいうと、広告だけのためのDMPと、広告配信も含むがもっと多くのマーケティング施策を最適化するためのDMPである。前者はDSPと一体にDSPを事業としているプレイヤーによってもつくられる。だが、プライベートDMPは広告主企業自身でないと出来ない。自社の顧客と将来の顧客データをどう意味づけてセグメントするかは企業自身でしか出来ないからだ。(これはアウトソースできる話ではない。)もちろん重要なのはこちらのDMPだ。


プライベートDMP図.gif


 「DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門」でも書いたが、「枠」から「人」への大きなパラダイムシフトが起きた。

 パラダイムシフトとは、

 「売り手の論理で出来た広告メニューを選んで買う」から「買う側の論理で1配信づつを自分で買値を決めて入札する。」ということだ。
 (DSPとはデマンドサイドつまりバイイングサイドの仕組みということ)

そして、
 「枠情報をもとにメディアプランニングする」から「ブランド側の情報でオーディエンスプランニングをする」に替わる。

 広告を配信すると当然広告反応がデータとして残る。クリックしたクッキー、ビュースルーしたクッキー情報、それらの反応が良い掲載面情報、悪い掲載面、配信タイミング、地域、配信環境・・・。これらを学習することで広告はさらに最適化される。企業が自分でデータ格納装置を持てば、必ず自身で管理したいと思うだろう。なにしろ自身のお金で買った広告の結果データだからだ。これを広告会社やDSP事業者側の学習機能のための差し出しているだけでは実にもったいない。
 自分でお金を出した買った広告配信の結果データは、自身のデータ格納装置に貯めて、分析、学習し、次の配信をより最適化するために使う。当然のことであろう。


 DSPでリタゲのクッキーを配信対象として買おうとする時、意外なほど安く入札できることに驚く広告主もいる。同じクッキーへの入札が競合しない限り、ターゲットされていながらも単価が上がるわけではない。従来売り手がメニュー化するとターゲティングされた広告は単価が高くなるのが必然だが、バイイングサイドの論理では、そもそも自社で獲得したクッキー(配信対象データ)なので、掲載面だけ買う広告がそんなに高くつく訳はない。


 単純なリタゲだけやっている時代はもう過ぎた。

自社サイトに来た見込み客がどんなユーザーかを外部データも使ってもっと精度を上げ、自身の分析とセグメントと、さらにそれらの広告反応データをマーケティング施策全体に活用する。これが出来る企業とそうでない企業の差は極めて大きい。(これをいつも言っていて恐縮だが、ホントです。)


*5月に「DMP(データマネージメントプラットフォーム)入門(仮題)」をインプレス
さんから出版します。

広告業界、ネット広告業界に入った新人さんのために ~新人研修への臨み方~

12 years 8ヶ月 ago

 もうじき4月なので広告業界に入社してきた新入社員の方々のために少しコメントします。
私はDACの新人研修も長くやってきましたし、「横山塾」も最初は新人対象だったので、まずは何を意識して研修にのぞむべきかのヒントだけでも書こうと思います。

 まず、総合広告代理店に入ったみなさん。
  おそらく最低でも4月の一カ月間は各社の新人研修カリキュラムで、いろいろ詰め込まれるでしょう。座学中心ですが、内容は結構先端的な話なはずです。むしろ旧態とした経営陣が受講したほうがいい内容となるでしょう。
 しかし、昨日まで学生だったみなさんには「豚に真珠」、なんだか良く分からないままです。そもそも座学を何も経験のない人間に短期間に詰め込むだけでは意味がないのです。
半分はいちおう研修したぞというアリバイみたいなもんです。
 実際には仕事を実務でこなしながらでないと、知識を知見にすることはできないでしょう。(まあ知識にもならないでしょう。)「横山塾」の経験でいうと、毎日の実務のなかで毎週1時間の座学研修を続けることが最もよい方法です。「継続は力なり」2年間もこれを続けたメンバーは相当な力をつけたと思います。
 
では、新人研修が全く効果や意味がないかというと、そこは受講するあなた次第です。
ひとつは、配属されたところの実務に入り込んでからビジネス全体を俯瞰できなくならないように、最低限自分の入った業界と会社のビジネスの全体像をしっかり把握しておくことが新人研修の意味です。

 そしてもうひとつは、今が広告ビジネスのたいへんな変革期であり、自分たちが変革の主役であることを意識して、今の会社にどんな職能が存在するのか、何が足りないのかを考えるきっかけにしてほしいということです。

 総合広告代理店は、基本的なマス広告メディア枠を売るために出来上がっている組織と職能開発体制をもっていますが、広告主は「広告」を買いたいのではなく、マーケティング目標を達成するための手段、マーケティング課題を解決するためのソリューションが欲しいのです。
 POE(ペイドメディア、オウンドメディア、アーンドメディア)でいえば、広告代理店に知見があるのはPだけです。新人研修で、「テレビはこうやってます。新聞はこうやってます。プロモーションはこうです。」みたいな部門紹介みたいな研修だったら、その矛盾
と将来性への疑問をもって受けてください。
 つまり新人研修が、このままではだめな会社の部門紹介でもあることを理解する機会にしてほしいと思います。

 デジタルマーケティング(私はこれを、デジタル施策によって得られるデータを活用して、マス/リアルを含むすべてのマーケティング活動を最適化することと定義しています。)
を推進するためには、マーケティングテクノロジーの理解が必須です。
 おそらく広告代理店社内には知見がないことでしょう。知見がないので誰に頼めばいいかも分からないのです。
 
ただ、総合広告代理店の新人さんたちは、せっかくブランディングコミュニケーション開発の本筋を歩んできた資産をもつ会社に入ったのですから、そもそものマーケティングとは何か、コミュニケーション開発とは、クリエイティブ開発のプロセスとはどういうことをしているのかを十分に学んでください。それが総合代理店の財産です。
 ネット専業代理店では、得られない知見です。
 最近では、大手総合代理店に入社したのに、最初からネット広告セクションに配属されると、CPA至上主義になってしまう残念な人もいます。ブランディングの価値と、その価値をつくる事への造詣を持とうとする立場を確立してください。それが総合広告代理店に入ることになった一番の意味です。


 それから、ネット広告代理店に入ったみなさん。
基本的にネット専業の広告代理店さんがやられていることは、ネット広告の最適化です。広告主にひたすらCPAを安くするためにどうするかを追求されることが多いでしょう。
しかしそれは部分最適であること、またはきわめて短期的なROIの最適化であることがが多いと思われます。
 せっかくマーケティングコミュニケーションに携わる仕事についたのですから、「コミュニケーションの本質」とは何かに触れる機会を持つ努力を是非してください。
 ネット専業代理店さんの研修ってどういう内容か、私は知らないのですが、リスティングやネット広告の実務研修だけでは寂しいですよね。
 よくネット専業系でリスティングのオペレーションを中心に業務をしているみなさんには「オペ疲れ」と言われる現象がおきます。リスティングのオペレーションをずっとやっていると、その業務(ひたすらCPAを追い求める)に限界感を感じることと、「自分はこの先もずっとこの作業をしていくのだろうか」という将来のキャリアに対するイメージが構想できないことでバーンアウトするということが起きているやに聞きます。
 
 ところが、社員のスキルの幅を広めるようなこと(育成)をあまりやっていないというのが私の実感です。悪い言い方をすると、どうせ4~5年で辞めちゃうから、お金かけて研修してもね~という感覚をもっている経営もいるように思います。オペレーション業務を中核ビジネスにしている会社ほどそんな印象を受けます。
 しかし、これからのテクノロジーを扱うことが主流になる広告マーケティングの世界では、管理画面でオペレーションするからこそ培われるスキルがあるのです。
 データサイエンティストもオペレーションが出来なければ始まりません。「文脈発見型マーケター」もこうしたオペレーションがしっかりできる人材から多く産まれてくるでしょう。
 そのためにも、スキルの幅を広げる、または普段接することのない、「コミュニケーションの本質」について座学とワークショップや実践型研修を受ける意味があると思います。
「コミュニケーションが分かる人がテクノロジーを駆使する」という状況をたくさんつくる必要があるからです。
 
 マス広告でのブランディングコミュニケーション開発とネット広告の両方をやってきた私から見ると、従来の広告クリエイティブ(マス広告を中心とした広告フォーマットの中をクリエイティブする作業)は、バットをぶんぶん振り回してひたすらホームランを狙う野球です。一方ネット広告がやっているのは、ひたすらバントをする野球です。
 バントでは、バットを出す角度を1度づつ調整して、ボールのころがり方を計算して出塁率を1%でもあげようとする確率の野球です。
 ホームラン狙いでは、ホームランが出てもどうして当たったかも、またどうして三振したかも検証はしません。
 こんなマーケティングが並走しつづけて融合しないのは、実にもったいない。
 シュアなバッティングで、連打で得点し、検証できるマーケティングを目指す必要があるでしょう。
 
 せっかく真っ白な新人さんが入ってくるのですから、ふたつが融合された新しい知見を身に着けてもらうような研修をはやく受けさせてあげたいと思うのです。

インハウス運用の意味 ~例えば3PASは第三者というよりバイイングサイドのサーバーということ~

12 years 9ヶ月 ago

 デジタルマーケティングは広告主企業側が自身でやらないといけないことが多い。全部はできないのは当然だが、構造的に言って、やはり自分でやらないと意味がないものがいくつかある。そのうちのひとつが、3PASの導入と運用。第三者配信サーバーとかいうから意味が分かんないが、本来は広告主が自ら使うサーバーつまりバイイングサイドサーバーということ。DFAは「ダート・フォー・アドバタイザー」の略。DFP(ダート・フォー・パブリッシャー)とは利用者の立場が違う。
 つまりセルサイドじゃないということ。だから枠を売りに来る広告代理店にバイイングサイドサーバーを扱わせるのは基本的にはやらない方がいいというのが私の見解。ハウスエージェンシーがあればそこに担わせるのはアリです。
 
 これはそもそも日本の広告主の広告代理店の使い方に関わることで、一概に言いとか悪いとかではないが、メディア扱いを発注することでマージンを得ている代理店に、付加サービスをさせるというやり方がほとんどであった。別途フィーを要求しないで、マンパワーも提供してくれるからね。人が張り付いて、お客さまとして何でもいうこと聞いてくれるから心地いいし・・・。
 しかし、枠売りが基本の広告代理店にバイサイドの論理での運用が本当にできるか。またそれ以前にテクノロジー活用の知見が本当にあるかどうか。吟味した方がいい。
 高い知見のコンサルを入れないといけないところは、自社内にスキルが育つまでの間はフィーは仕方ないと考えた方がいいかと思う。ずっとマージン取られるよりも・・・。

 入札運用型広告は基本的にバイサイドの理屈で出来ている仕組みである。ブランドごとにAE代理店を競合させてベストな提案を求め、選んだ代理店に体制を整備させ、ブランドキャンペーン管理を、責任をもって運営させることは広告主にとって良いやり方であるのは間違いない。
しかしAE代理店ごとに入札型広告のバイイングもさせると、社内で同じキーワードやクッキーを入札し合って価格を上げてしまうという実にナンセンスな現象を起こす。やはりブランド横断の管理が社内で必要なのである。どこまでインハウスにするかはやってみてから決めれば良いが、基本「セルサイドにお任せ」ではなく、自社で(インハウス)で運用するつもりにならないといけない。自社でやった者には、苦労に見合った恩恵がある。自社で買った広告のデータは自社のものであり、それを本当の意味で分析できるのも広告主だけなのである。自分でやる企業と任せる企業、おそらく2~3年するともうとんでもないくらいの差(もう追いつけないような差)が生まれるだろう。

マーケティングテクノロジーのランドスケープ

12 years 10ヶ月 ago

アド系のランドスケープは公開されているが、マーケティングテクノロジーという広範囲での日本版がなかったので、つくってみた。昨年のアドテックで、「マーケティングテクノロジー」だよね・・・という感じで概念が共有された感があるいわゆる「マーケティングテクノロジー」
そもそも集合知でつくるものなので、複数の人間が集まって、会議室テーブル大の紙にカードを配置していく作業を数回やってみた。

DSPなどのアド系には詳しいものもあるので、あえてアド系は簡略化している。(全体像を1枚にするため)

基本、テクノロジー(製品)を基本として、サービスと区別しようとかいろいろ苦労したが、まだまだベータ版ということで、更新していきたい。

DATA20130206.jpg

ネット専業の人材にマーケティングとコミュニケーションを学んでもらうということ。

12 years 10ヶ月 ago

 「広告やマーケティングの業界にはデジタル人材が不足している。」とよく言われる。確かに総合代理店のほとんどはデジタルを理解していないし、今から勉強したところでもうキャッチアップは難しい段階に来ている。それに既に広告領域だけはデジタルマーケティングは出来ない。マーケティングテクノロジーの理解や、データマイニングのスキルなど必要な知見は広範囲でかつ統合や融合が難しい。
 とはいえ、あまりトライされていない試みとして、ネット専業系のエージェンシーでの知見をもっている人材に、総合代理店が昔からやってきたマーケティングの基礎やコミュニケーション開発の基礎をインプットするということがあると思う。

 ネット広告におけるディスプレイ広告やリスティング広告を扱って、CPAを目標にこれを最適化することのみに向かって一生懸命走っていると、実はその目標は部分最適であって、全体最適を目指していることにはならない場合も多い。また広告を含めたコミュニケーションの本質が分からなくなるという面もある。

言い方を変えると、上流で行われている戦略設計やクリエイティブ開発、マスメディアプランニングとバイイングの実際を知ることは非常に意味があるはずである。

 そもそもコミュニケーション開発というのはどういうプロセスで行われてきたかを知り、実践してみるチャンスをネット広告だけにハマってしまっている人たちに得てもらいたい。
 
今回、ベムがプロデュースして、特にネット専業の方々を対象にマーケティングの基礎とコミュニケーション開発の基礎及び、クリエイティブとマスメディアプランニングを演習する「プランニング力養成プログラム」をつくった。
 詳細は下記でご確認いただけばと思う。

http://tateito.co.jp/manabito_plannning201302/

 従来、広告キャンペーンを含むマーケティングコミュニケーション施策を企画する際は、コミュニケーション戦略は表現戦略とメディア戦略に分業して行われることが多かった。しかし、トリプルメディア時代にあっては、コミュニケーション戦略は、表現もメディアも統合的に行う必要がある。
 デジタルメディアの知見のある人材が、コミュニケーションプランニングの本質を理解し、スキルを養成するということは、この業界にとって非常に良いことである。

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デジタルマーケティングとは何か

12 years 10ヶ月 ago

 「デジタルマーケティング」という言い方が広まって定着した。私自身も「デジタルマーケティング」のコンサルタントと称している。しかし、このワードの定義は意外と獏としている感がある。「そんなことはない。デジタルマーケティングの定義はしっかりある。」と言われる方もいらっしゃるかもしれないが、あえてここで私が考える「デジタルマーケティング」の概念とその目指すところを明確にしてみたいと思う。

 一言で云うと、デジタルマーケティングとは「デジタルなデータや施策を使って、マスやリアルを含むマーケティング全体の最適化を目指す試み」と解釈できる。
 つまり、ネットだけを最適化するのは「デジタルマーケティング」ではないと考える。あえて「ネットマーケティング」とは違うと定義してみる。
 
 例えば、Webやネット広告配信に反応するユーザーがいる。あるブランドのメッセージに反応したのだからそのユーザーはターゲットである。むしろ「反応した人がターゲット」と規定すると、それはデジタルデータによって実証されたターゲットである。このターゲット像(クッキーからそのプロフィールを分析)を基点にマスやリアルなマーケティング施策を設定する。デジタルマーケティングとはそうしたものではないかと考える。
 またあらゆるマーケティング活動がブランドのゴール(売上、利益、長期のブランドエクイティ・・・)にどう寄与しているかを分析するための、デジタルであるが故にインタラクティブになっているメディアの反応を中間指標としてモデル化することが出来るようになった。これもデジタルマーケティングのひとつの有り方である。

 ビッグデータ時代のマーケティングとは、デジタルデータを中核とする様々なデータを使って、今(現状)を知り、打ち手を企画実施し、その結果を予測するものだ。またマススケールで従来のワン・トゥ・ワン マーケティングを行う、ないしマススケールのデータから購買行動の予兆を発見して、個別のユーザー行動に紐付けて的確なタイミングのコミュニケーションを行うものだ。
 よって、デジタルマーケティングとはマーケティング活動の真ん中にあって、マスマーケティングとワン・トゥ・ワン マーケティングを融合するポジションにある。
 マスマーケティング(レガシーなマーケティング思考)と対比するポジションにデジタルマーケティングがあるのではなく、デジタルマーケティングは、デジタルマーケティングによって改革されるすべてマーケティングのど真ん中にあって、レガシーなマスマーケティング思考や手法を変革してしまうものと捉えられる。

デジタルマーケティングの構図改.gif

世界の広告業界トップは年頭に何と言っているか。

12 years 11ヶ月 ago

デジタルインテリジェンスのフェースブックページに掲載した内容ではあるが、このブログにも上げておきます。

WPPのトップが年頭にどんなことを発信しているかです。

今年68歳になるWPPのCEOマーチン・ソレルが「既存のマーケティング業界から、離脱」を新年から発表している。

IT投資を通して、いわばデロイトやアクセンチュア、のITコンサルティングの領域すらを上回る意気込みだ。

サー・マーチン・ソレルは一代でWPPを世界一のマーケティング・ホールディング会社に育てた事がすでに凄いことだが、エージェンシー(広告会社、と呼べない)が、どこを目指すべきか、CEOとしてリーダー自ら、くっきりとした指針と言葉を使って声明発表し、買収の基軸を打ち出せる事に敬服する。

日本の広告業界社長から、こんなセリフが聞けるだろうか。

この紹介原稿の中身を打ち出せないどころか、「読めない」「理解できない」「解ってない事がわかっていない」という状態であるのを感じる。

==旧来マーケティング業界からの離脱==

http://www.adexchanger.com/agencies/martin-sorrell-qa-wpp-will-broaden-its-tech-footprint/

======以下、AdExchangeインタビュー記事からの抜粋=======
世界の6大ホールディングカンパニー(WPP, Publicis, IPG, Omnicom, Dentsu, Havas)は業界区分では「広告」会社として登録されているに違いないが、今や広告と、遥かに言えない業態に変化してしまっている。

「我々ビジネスは、過去5年に、超劇的な変化を起こした、残念な事は、まだその事実が理解できるレベルの人が、業界内に少ない事だ」

と、マーチンソレルが述べた。


2012年末、$70million 投資でブエノスアイレスのGlobant社の
株式20%を取得。社員2500人の大半が「技術者」である会社を買収した。驚くことに、この会社は、メディアバイイングなどの
アドテクノロジーを直接開発している訳ではない。
(企業のイントラシステム開発、データベース構築、モバイルインテグレーション等)
=============
Q:トラディショナルマーケティングの領域に留まるか、
それとも(まるで)デロイトやアクセンチュアのような
テクノロジーコンサルの領域に踏み込むつもりなのか?

マーチン・ソレルAnswer:
デロイト、アクセンチュア以下だが、SapientNitroや、
http://www.sapient.com/
Cognizants以上だと確信する。
http://www.cognizant.com/

これまでのエージェンシーは通常CMOをターゲットとしていた仕事が、
徐々にCIO、インフォメーション・テクノロジー向けに変化しているのは明らかだ。
=============
Q:アルゼンチンのGlobant社 株式取得の件についての、説明を。

A:業界全体の課題だが、どうもクリエイティブや芸術的な目線のみでビジネスを評価したがる。
どちらかと言えば、技術的視点では、評価されない傾向がある。WPPは違う。


今回資本提携したGlobant社は2500名もの技術者をラテンアメリカとUK方面に抱えている。

24/7社を買収して以来、独自技術としてWPPトレーディングデスクのXAXISに注入した。
独自独占技術で、我々にしか見えないインサイトをレバレッジに、クライアントの中に蓄積されているデータを、より意味のあるものに仕上げていく。

Sapientを見るが良い、技術会社が、Above the lineのクリエイティブ会社(Nitro)を買収したではないか。
===========
Q:でも、あの事例は、クリエイティブ良い人材が、飲み込んだ技術系から追い出されてしまっただけでは?

A:SapientNitroは、確かにそのケーススタディとなってしまった。
WPPでは新たな試みとして、
Globant(アルゼンチン会社)の技術をを、JWTや、Y&R、Kanterへの注入を試みている。
===========
Q:WPPトレーディングデスクのXAXISはメディアバイイング会社同士の中で、横断的な機能を司るのか。

A:Xaxisは現在14カ国に拡大中で、中国にも進出できている。

これほどのトレーディング(技術)デスクを横断的に持つ競合は
Havasがほんの小規模で後続しているだけで、他は無いだろう。

成功の可否は、WPPの特許とも言えるこれらのツールをクライアントがどれだけ使うか、で計ってもらえればいい。
===========
ラテンアメリカは、2014年にFIFAワールドカップと、2016年にリオデジャネイロでのオリンピックが決まっている。


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マーティンは別のインタビューで、WPPが24/7を買ったころから、考えが急速に変わったと言っている。

ああ、あのころなんだな・・・と今にして思う。

「デジタルが自分たちのビジネスを変えてしまっている」ことに対する理解を、今の経営はしっかりしているか・・・。

デジタルの知見は、それまで素人だった者が改めて追いかけて何とかなる時期はもう5~6年前にとっくに終わっている。
デジタル広告にももう15年以上の歴史があり、膨大な知見の積み上げがある。
最初は単にネット広告で始まったものは、デジタルマーケティングとマーケティングテクノロジーの理解という実にたいへんな勉強と実践によってでしか身につかないレベルになってしまった。

そうしたことへの理解も何もない者が経営することは全くもってナンセンスだ。

2013年広告業界予測   ~7つの出来事を予測する~

12 years 11ヶ月 ago

今年も業界予測を書いてみます。デジタルマーケティングに関わる業界のことです。今年は7つの出来事に整理してみました。


① DMP(データ・マネージメント・プラットフォーム)が始動する年
 
DMPとは何かが明確になる年と言い換えてもいいだろう。
オーディエンスデータセラーとしてDMPと、企業が顧客と見込み顧客データを格納し、分析するプライベートDMPと2つのDMPがあるが、ビッグデータの時代のマーケティングの本筋は、プライベートDMPの構築である。

 ビッグデータという概念のなかにおけるDMPの位置づけがはっきりする年、それが2013年だろう。

 企業、ブランドごとに個々のユーザーにどんな意味や価値をもたせてセグメントするかは個々の企業でしかできない。有効なセグメントで、コミュニケーションだけでなくサービスを差し分ける。これが次世代マーケティングである。

 そのためにも、企業の持つファーストパーティデータと、サードパーティデータを有効にクロスさせてみる必要がある。プライベートDMPを構築するためにも、データセラーとしてのDMPを活用することが肝心だ。

 ビッグデータ格納とプライベートDMP構築の前段として、CRMと広告を繋ぐ試みが、いろんなところで始まるだろう。


② 動画DSPが始まる年

改めて動画のネット広告が活性化するだろう。
特にスマホへの動画配信が急速に市場を形成する年になる。
 
PCの動画枠インベントリーも増えるだろうが、スマホの動画の方がより効果的との見方も出てくることによって、スマホ枠が開発されインベントリーも増える。

インプレッション効果を購買行動と紐付けた調査も可能になるはずだ。
TVCMとは違うデジタル広告用の動画CM素材を作ろうという動きが始まる年にもなるかもしれない。
日本でもEコマースの業界が、動画に注目し始める年になるだろう。
既に多くの実績が米国で出ている。
TV通販の効果減退が、こうした流れを活性化するはずだ。


③ オーディエンスデータプランニングが試行される年

特にネット広告のメディアプランニングでは、「枠」から「人」の大きなパラダイムシフトで大変革を求められる。

例えば、メディアレップには大手代理店ですら管理できない広告メニューデータベースがある。万の数に及ぶネット広告の広告メニュー情報をアップデートしているのが、メディアレップの最大の価値である。しかし、媒体情報がメディアプランの根幹でなくなったら・・・、クライアントのもつオーディエンスデータから組み立てることになったらどうなるか。

当然、メディアレップは「枠」のプランニングだけでなく、オーディエンスデータプランニングを志向するだろう。しかし事はそう簡単ではない。クライアントと直接、しかもかなり深くインターフェイスする必要がある。

それに、プランナーにはコミュニケーションの知見とデータ分析の知見が必要である。
ブランドのターゲットプロファイルを理解し、ファーストパーティデータをセグメントできるかどうか。これを複数のメンバーにスキル化して習得させることができる人材はそういないだろう。

米国のエージェンシートレーディングデスクのOEMでも比較的大きなシェアをもつMediaMathの管理画面上では、ブルーカイなどのDMPからカテゴライズされたオーディエンスデータを配信対象に選ぶことができる。データ料がCPM○ドルと管理画面上から買うことができる。
こうしたテクノロジーとメソッドが米国から輸入されても、実際のプランニングは容易ではない。上流でのオーディエンスデータプランニングを設計するコンサルが要る。

とはいえ、オーディエンスデータプランニングは確実に時代の要請となる。これをこすスキルは当然まだ確立していない。今年1年では到底確立というところまで行かないだろうが・・・。


④ オペレーションスキルの重要さが顕在化して見える年

DSPやリスティングという入札と3PASによる配信、クッキーの一元化やコンバージョンパスデータ分析、またはソーシャルモニタリングなど、管理画面と常に向き合って適切なオペレーションを適切なタイミングで行うことがさらに重要になる。また管理画面から的確な情報を抽出することが従来にない大きな価値を生み出すことになる。

オペレーション業務をしているからこそ、読み出せる「顧客の文脈」というものがある。コンバージョンパスデータ分析もより簡易に出来るようになるだろう。ただ操作に長けていない者が扱っても、うまく「情報化」できない。ましてや自ら操作しない人たちには「文脈の発見」は出来ない。

総合代理店の人材はそれに対応できるか?

「トレーディングデスク機能をつくりました」というリリースがあちらこちらから聞こえた2012年だが、まだまだ単一のDSPしか対応しないとか、スマホだけだとか、本格的なトレーディングデスクとは言い難い。
 あまり詳細は語らないが、トレーディングデスク機能の進化の方向は今年明確になるだろう。


⑤ 大手代理店ワンストップの流れが変わる年

新たなプレイヤーの進出と、クライアント側のスキルの試される年

ブランデッドコンテンツやユーザーサービス開発ができる新たなパートナーをゲットできるか、またどういうオリエンやディレクションができるか。

企業のマーケティングメディアがTVを中心としたペイドメディアによる「広告」であれば、広告枠を扱う広告代理店にコミュニケーション開発を依頼する妥当性は高かった。しかし、広告枠を買うことが必ずしも前提でなければ、(つまり、「広告クリエイティブ」を依頼するのではなく、「ブランデッドコンテンツ」や「情報クリエイティブ」開発を依頼するのであれば、何も広告代理店だけがパートナーではない。

むしろ、ユーザーサービス開発までが企画発想できるプレイヤーを直接やりとりする方が、発注側のスキルも高くなるし、パートナーのモラールも上がる。
某外資デジタルエージェンシーの日本進出の理由のひとつが、有力広告主がデジタルクリエイティブファームとの直接取引を志向し始めたことを上げている。

しかし、広告主側にもデジタルのプロ集団と直接インターフェイスするためには必要なことも多い。優秀なパートナーは、優秀なだけにハンドリングが必ずしも容易ではない。
そもそも広告主企業側がコミュニケーション開発のプロセスの変革を実行しなければいけない。パートナーを新しくするだけではうまく行かない。
オウンドメディアとは企業自身のメディアだ。これを開発する知見は誰よりも広告主自身になければいけないし、意味がない。

  急速は対応には、テンポラリーでもスペシャリスト人材の登用が必要だろう。
  また、急速な対応が次世代のマーケティングをリードするには必須条件となっている。


⑥ マス広告を含めたマーケティングROI最適化の試みが始まる年

オンラインのアトリビューションは昨年のバズワードであった。しかしまだ本格的に第三者配信サーバーを導入してコンバージョンパスデータを把握し、かつリスティング広告のキーワード単位の入札価格やディスプレイ広告のコストデータをしっかり捕捉して、再配分のために活用している企業はほとんどないと言っていい。コンバージョンパスデータには、マーケターとしては実に興味深いデータが満載されているだろう。しかし、マーケティングコストの最適化のためには、これをリアロケーションに結びつけなくてはならない。
 オンラインマーケティング企業にとって、アトリビューションを志向することは当然のこととなるだろう。

 また、マスマーケティング企業でも、広告投資の最適化に対するトライが始まるだろう。マス広告を含むすべてのマーケティング投資の最適化について予測モデルを完成させるのは容易ではない。
 しかし、こうした最適化の実現性は従来よりはるかに高く、かかるコストははるかに安くなっている。
 多額なマーケティングコストを使っている企業ほど、こうしたトライによって得るものは実に大きい。
 その意味でも、目的変数である商品の売上げと相関するKPIをネット上に創出できた企業のチャンスは大きいだろう。

 さらに、Webサイトやネット広告配信によって測定できるデータは、ネットの最適化にとどまることなく、マーケティング活動全体の最適化に資することになる。説明変数として捉えることが難しい「クリエイティブ」についても示唆を得ることができるだろう。


⑦ 「どこに頼むか」から「誰に頼むか」がより顕著になる年
 

 2013年は、広告主企業側のデジタルマーケティングシフトの具体的アクションが顕在化する年となるだろう。それは組織や人材、実際の取組み、メソッド、パートナーなどが新たになることでもある。ということは広告会社における「デジタルの専門性」を育成する段階は既に終わったということだ。

 今現在デジタルをコアにした、または必須条件とするマーケティング施策を担わせることができる広告会社は限られているが、「出来る人材」は流動化し、再編されるだろう。
「どこに頼むか」から「誰に頼むか」はより顕著になる。コミュニケーションプランナーやクリエーターのアサインのためのコンサルが必要かもしれない。また、広告主企業のテクノロジー導入コンサルもニーズが高まるだろう。

 さて、次の闘いは始まった。
当然、既存の広告業界内での闘いはもう本丸ではない。

2012年をちょっと振り返ると・・・

12 years 11ヶ月 ago

デジタルマーケティングの2012年をちょっと振り返ると・・・

 今年2012年、DSPはかなり普及したが、まだまだ「DSP=リタゲ」というレベルに留まっているということと、リタゲの精度がまだ低いことで課題を残した感がある。

 RTBの本当の効用を得るのはこれからだ。

 また、「アトリビューション」はバズワードとしてはかなり浸透したが、実践にもまだほど遠い。第三者配信サーバーでコンバージョンパスデータを取得するのはいいが、そもそもリ・アロケーションするために必須の入札コストデータなどを捕捉しておかないと意味がない。こうした整備がされ始めるのはやはり来年2013年からだろう。

 当然、マス広告を含めた「トータル・アトリビューション」も今年認識はされ始めたが、実行に着手できるのは来年からとなりそうだ。デジタルのマーケティング装置を使って、ネットだけでなく、マーケティング施策全体の最適化を目指す流れは始まりつつあると言っていい。

 そういう意味では、もろもろ本格的な動きは2013年に持ち越した。

米国IABでも、今年e-GRPの基準策定が検討されていたが、しっかりした合意形成に至らなかったようだ。動画が、DSP展開とスマホへの拡大で、来年大きく動く可能性が高い。クリックで評価する意味があまりないこうした動画配信については、新たな指標を要する。

 さて、恒例の年初の業界予測を書く準備に入ろうと思う。

総合広告会社とネット広告会社の「クリエイティブ」の解釈の違い ~そしていいとこ取りした融合を考える~

12 years 11ヶ月 ago

 私がADK-i社長の時に毎週水曜日の昼に1時間実施していた座学講座「横山塾」は、デジタル広告の最前線だけに、とかくデジタルメディア戦術だけに嵌りがちなメンバーのために、川上で何が行われているかを知る講座だった。もちろんデジタル領域も知るべきことが次から次に出てくるので、その道のエキスパートの方に講師になってもらってインプットしていた。全部で80週分のコンテンツになっている。
 川上で何が行われているかというのは、ブランドの表現戦略とメディア戦略が、どういうブランド課題や目標設定のもとに設計されていくのかを知るということだ。クリエイティブは何を訴求し、どんな課題を解決しようとしているかTVCMとしてアウトプットになる手前を理解することが、メディア戦略の一部となっているネット広告を担う人間にも大事だ。

 もちろん、ネットのスペシャリストももっとマス広告の実際を知るべきだ。私がDACの新人研修の講師をするときは、最後に必ずテレビスポットの作案演習をやらせる。おそらくTVの仕事はすることはないだろうが、マス広告がどんな取引形態で、そんなプランニングが行われているか「知っている」方がいいのは当然だ。

 「横山塾」の講座内容は、このマトリックスにプロットしていた。網羅しているかと、最新情報を得ると、以前の話はどこがどう変わるか(これを私は「上書き保存能力」と呼んでいた。)がすぐ理解できないといけない。

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 さて、最近、ネット広告代理店がやっている「クリエイティブ」って、私が昔やっていたマス広告の「クリエイティブ」と概念や解釈がちがうよね・・・という話をする機会があった。ひとりはアサツーで同僚だった佐藤達郎氏(多摩美術大学教授)、もうひとりはDSP/RTBオーディエンスターゲティング入門」の共著者の菅原健一氏だ。

 ネット広領域では、広告の「クリエイティブ」と言っても、例えばリスティングの広告文作成やバナーでも出来合いの素材を使ってレイアウトする程度(といったら怒られるかな)ではある。リスティングの広告文もメソッドみたいなものがあって創られるようだ。
時折、こういうメソッドを破って、マス広告のコピーライターに書いてもらってものを使うと中にはえらいCTRを叩き出すものが出てくるらしい。
 
 菅原氏と話していて、野球に例えると、ネットのクリエイティブはバントヒットを狙って3つか4つを試して、どの辺に転がると出塁率がどのくらい上がるかという野球だが、マスのクリエイティブは1000回バットを振り回して、打席に立ってホームランを狙う野球だという話になった。ただしマスはどうしてホームランが出たか、またどうして凡打に終わったかは検証しない。とにかく1000種類くらいバットの振り方を考えて、その1打席にかけるのである。

 この話は佐藤氏と話したことと、まったくリンクする。マスのクリエーターは、とにかく1000本ノックをするので、発想を一度大きく拡散させる。でっかいホワイトボードにカードにコンセプトワードやコピー案をたくさん書いて貼りまくる。(この手書きがいいんだと思うが)
 そして、一回拡散させた案を収斂させるプロセスに入る。こうした拡散と収斂というプロセスはネット系にはない。
 私が思うに、パソコンで文字打ってつくるとPC画面をはみ出す発想に拡張できないんではないかと思う。

 とはいえ、マス系クリエイティブも基本マス広告のフォーマット(15秒のCMとか15段広告とか)を前提にしか発想できない「CM職人」化が問題かと思う。

 そこで、ネット系の広告マンに、伝統的なマス広告のクリエーターがどういう開発プロセスで発想するのかを演習したり、マス広告のメディア戦略設計やマス広告のプランニングの実務を研修する講座をやってみようという話になった。
 もともとPDCAを廻すことに身についている人たちに、もっと豊かなクリエイティブ発想の実践を応用することにチャレンジされたい。
 
 詳細はTATEITO社からセミナー実施要領が発表されるかと思う。

私は、刈取りの部分で顧客化のプロセスをよく見ているネット広告系アドマンに、刈取りから上流に上がってアウェアネスを設計するチャレンジをもっとしてほしいと思う。
 特にサーチは「顧客インサイト」そのものである。サーチに対応しているスキルを1000本ノック(文脈)でコピーを考えられるようになって欲しいのだ。

 こうしたハイブリッド人材の育成が、きっと日本のマーケティングに貢献できるものと思っている。


「パブリシティコンテンツ」のアトリビューションについて

13 years 1ヶ月 ago

出来れば記事コンテンツを読んだ人が、ブランドサイトの訪問を果たしたか、はたまた何らかのコンバージョンに至ったかを測定する試みをしたい」と以前から考えていた。

今回、弊社デジタルインテリジェンスとインテグレートさん、アタラさん、JBプレスさんの4社で取り込んでいる「パワー・コンテンツ連動型アトリビューションマネージメント」は、言ってみれば、パブリシティ活動の成果をオンライン上のアトリビューション分析で見ようというものだ。従来、中身のある編集タイアップページを頑張ってつくってWebに掲載したとしても、なかなか何百万PV閲覧されるなどということはない。数万とか場合によっては数千とかのPVでもじっくり読んでくれれば、価値のあるコンテンツであるが、では、これを閲覧した人にその後どれだけのアクションを誘発しているかとなると、タイアップからの直接クリックは知れたものだし、記事ともなればクリックのリンクどころかブランド名、社名も入れる訳にもいかない。

これの閲覧者をクッキーベースで捕捉できると、どういう効果を生んだかが分かるのではないかというのが最初の発想。そして、記事コンテンツを読んでくれた人に、今度はブランドをアピールする広告を配信できれば効果的ではないのか?という仮説にもとづいたチャレンジである。

今回は、「ネット上でのパブリシティは効いているのか」を詳らかにするとともに、記事で当該商品カテゴリーに関する社会事としての情報で学んだ人に「広告」を打つことでの効果検証でもある。

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図は縦がブランドに対する関与レベル、左右にその商品やサービスのカテゴリーに関する関心の顕在化の度合いというものだ。まだ関心を潜在化していない左下から右上に、広告だけに引き上げるのは、かなり無理がある。いったんカテゴリーへの温度を上げてからブランドを訴求した方が効果的なはずという仮説だ。


「トリプルメディアマーケティング」を書いてから、実践論を確立するためにも、広告だけ対応するのは無理と分かっていたので、「情報クリエイティブ」という戦略PRのアプローチが有効だと思っている。

下記の図は、ヴォーン博士のマトリックスである。これは旧アサツーがBBDOとの提携時代にBBDOから教わったPurchase Decision Model として、いくつかのマーケティングメソッドのうちのひとつであった。(余談だが、BBDOには心理学ほかの博士号をもったマーケティング部門の人たちがいっぱいいて、マーケティングコミュニケーションを科学し、メソッドを開発していた。日本とはレベルが違っていた。)

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マトリックスは上部が、自己関与が高い領域で、下が自己関与が低い。左は理性的購買つまりThink型で、右は情緒的購買、Feel型というものだ。自己関与(involvement)が高いかどうかということを測る質問項目があって、購買リスク、こだわりに関わる何問かの回答スコアで数値化されている。

私がこれを使ってプレゼンでマーケティング領域の理論武装をしていた20年ほど前には、クルマはもっと左で、ビールはもっと上(高関与/情緒型購買)にプロットされていた。また、ここでは商品カテゴリーを分析しているが、同じ商品カテゴリーのなかでのブランドをプロットすることもできる。同じ商品ブランドに関してどう感じているか被験者ごとにプロットもできるだろう。(つまりこの商品カテゴリーのプロットは平均値で、商品カテゴリーによって散らばり具合も違うだろう。)

このモデルを面白いと感じたのは、プロットして相互のポジションを確認して終わりではなく、象限ごとにどういうコミュニケーションプロセスとすべきかが明解に定義されているところである。そして、このプロセスは、AIDMAなどの旧ファネルモデルでは解釈しづらい「Buy」から始まるものや、広告(アド)だけでは難しい「Learn」の醸成を含むものであった。

そして、このマトリックスは、トリプルメディア時代になった今だからこそ私には非常にmake senseするモデルとなった。

まず、低関与をBuyからスタートするとなると、従来だと、「店頭施策」からになってしまうか、「買って良かったんだ」と納得するコミュニケーションを創るのかとか、広告だけの使命ではないのがよく分かる。ファネルを購買行動で終わるモデルではなく、そこからも始まるこの蝶ネクタイ型にすると、習慣的購買や衝動的購買のモデルのプロセスの理解ができるし、応用が効きそうだ。


図2.jpg

そして、特に今回の施策で言うと、左上のLearnから始まるプロセスは、単に広告だけで行うことが難しいと思われる。ここにアーンドメディアの活用のポイントがありそうだ。最初から自社ブランド名を声高に叫ぶだけでなく、第三者の立場で、正直に真実を語り、学んでもらうプロセスが大切だろうと思う。
現代の消費者はつくられた虚像のコミュニケーションに辟易としており、(ソーシャルメディアがこれを促進したと言える。どんな価値より「自分」に対する「真実性」が重要と考えている。消費者が信じる価値が「真実性」であれば、コミュニケーションも「真実性」を追求するものでなければならない。そこで、まずは消費者が真実を語るであろうと考える第三者(メディア)によって、本当のことを学び、理解を深めてもらうこと、そして、それが果たせた消費者に狙い撃ちの広告が配信できることが、次世代型のマーケティングである。

コミュニケーションの「Authenticity」を「Learn→Feel→Buy」のプロセスに生かすには、パブリシティの力と、メディアに書く意味と価値を作り出す「情報クリエイティブ」力が必要である。


「Authenticity」については。また別途エントリーを書こうと思う。

「第三者配信サーバー」に関わるいくつかのことと感慨

13 years 1ヶ月 ago

 まだ20世紀だった99年、ヤフーが扱えなかったDACは、最初にダブルクリックに接触してアドネットワークを実現した後、ボストンでおそらく世界で最初の第三者配信サーバーをつくったアドナレッジ社と接触しました。
 ここの社長は元南アフリカの空軍のパイロットという異色の経歴で、元軍人らしく「できないことはできないと」いう真面目な人でした。(当時アメリカに行って、アドテクノロジーの会社の社長に会うと、大概「ノープロブレムおじさん」で、出来ないことも出来るというのにずいぶん騙されたものです。)


 ここの仕組みを日本に持って来ようと動き出してから、アドナレッジはエンゲージを経て結局ダブルクリックに買収されてしまうのですが、とにかくアドネットワークにはプレミアムな枠をリクルーティングしづらい中、個別の媒体社のプレミアム枠もクリックだけでなく、ポストインプレッションも計測して媒体価値をもっとアピールできたらいいなというこで、日本導入に走りました。
 

 ダブルクリックのDFA(ダート・フォー・アドバタイザーズ)は、ダブルクリックがアドナレッジを買収して、その技術を使ったのではなく、自社でも開発していたものでした。競合をつぶしておくための買収で、それだけアドナレッジはよく出来ていたとも言えました。

 さて、日本でもという当時、IBMさんは全世界でDFAを使っていて、DFA配信でないとそこの媒体社は使わないというくらいのスタンスだったので、最初はヤフーさんもタグを受け入れていたのを憶えています。
 その後、ヤフーさんが他社サーバーからの配信を受け入れない方針をとるのですが、第三者配信サーバーが日本で普及しなかったのは、それだけが原因ではありません。そもそもエージェンシーを含め、別途配信料を払ってまで、これを使うメリットを創出しきれなかったと言えます。


 ポストインプレッションやビュー・スルー・レートが分かったとして、いわゆるCPAの効率化にどう貢献できるのかの具体的な施策を提示できなかったわけです。また広告主さんのご担当も、クリックによる単純CPAの方が上司への説明もしやすいし、あえて話を複雑にするメリットも少なかったと言えます。
 こうして、日本のネット広告の単価は、どんどんバイイングサイドのCPAに見合ったCPMでの買い付けが進み(価格形成力がバイサイドになっていき)、インプレッション単価は米国の1/3ほどにまでなってしまいました。こうなると余計に、広告の購入代金に対しても配信料がリーズナブルな価格に感じなくなり、日本の第三者配信はずっと水面下に潜ったままでした。


 そんな折に、今回ヤフーさんと提携したメディアマインドの前進のアイブラスターがDACと提携し、これを代理店に販売すべく、よくF君と行脚したものです。
 

 アイブラスターは、リッチメディア広告フォーマットのシステムでした。もちろん配信サーバーではありましたが、その提供している価値は、フローティングアドなど媒体社の掲載面のなかで広告の画像の稼働範囲やアクション、インタラクションを、制作サイドとメディアサイドと広告主サイドがオンラインで確認しあうことができる画期的なものでした。今でも私は素晴らしいソリューションだったと思っています。


 いくつかの代理店、それも媒体セクションだけではなく、クリエイティブにも見せて紹介しましたが、これをどんどん使ってくれるところはほとんどありませんでした。まあ、広告クリエーターにとって、こういう画面上での作業がクリエーターの矜持にかかわるとかということもあったかもしれませんが、そもそもリテラシーに乏しいからではありました。そうこうするうちに、アイブラスターはリッチメディアフォーマットもいいけどレポーティングが実に良いという評価が先行していき、3PASとして、DFAの対抗にのし上がった感があります。


 しかし、今回のヤフーさんの発表で、宮坂さんがクリエイティブの提携先としてメディアマインドを上げたことは、良かったと思います。このソリューションの一方の本質がやはりそこにあるからです。

 まだ広告会社のクリエイティブには、ネット広告のクリエイティブを未だに見下しているところが少なからずあると思います。82年から15年、マス広告にどっぷり浸かって、十数本のCM制作とアウトプットまでの表現戦略やブランディングコミュニケーションのあり方のご提案をやってきて、かつ96年からネット広告をほとんどゼロから作ってきた自負のある私からすると、インタラクティブなクリエイティブ環境にワクワクしないクリエーターは信じられません。

私がクリエータだったら、新しいリッチメディア広告フォーマットを開発して、それに自分の名前をつけますね。(体操の技に固有名詞がついているように・・・)

 そういう新しいことへのチャレンジ精神をもっと発揮しないと、広告会社のクリエイティブは本当に領域が狭くなっていきます。
 

 3PASはアトリビューション分析とそれにもとづく「リ・アロケーション」によって、広告主企業に新しい価値を生むでしょうかが、分析によって最適化されるのは当然メディア配分だけではありません。そこにはメッセージの最適化(ターゲットとメッセージの最適化)と消費者のコンバージョン性向という文脈の発見によって、さらに最適なコミュニケーションの開発がなされることです。そこでは当然マス広告を含むマーケティングコミュニケーションすべてに関してです。


 エポックメイキングなアドテックを終えて、インターネット広告を自らのビジネスにして17年目の感慨ひとしおと言ったところでしょうか・・・。

広告会社のマーケは企業のデータドリブンなマーケティングをサポートできるか

13 years 1ヶ月 ago

 「広告会社の行く末」では、広告会社の営業マンをやり玉にあげてしまったが、次は広告会社のマーケである。昔はマーケティング対象商品を企業シーズから組み上げるのではなく、コミュニケーション開発の目線から商品ブランドのコンセプトワークをする広告会社のマーケの役割というのが注目された時期もあった。

直接、エンドユーザーとコミュニケーションしづらいメーカーからすると、メディアと、メディアを通して消費者を理解している代理店の提案にはそれなりの価値はあった。しかし今、商品ブランドのマーケティングに関しては、広告主企業側の優秀なマーケターに対抗できるわけもなく、さほど優秀でない代理店のマーケの多くは、企画書の代書屋さんになっている場合が多い。

 営業の能力が比較的落ちてきて、ろくに企画書すら書けなくなったので、こうした需要が広告会社社内で膨らんだからとも言えよう。

 だいたい「ストプラ」と呼ばれるような「代理店のマーケ」は、表現戦略やメディア戦略を明示し、具体的なアウトプットを理論武装するのが役割だ。

 しかし、優秀なクリエーターは、何故こういう表現なのかというロジックを簡潔明瞭に説明できるので、企画書を何枚も書いてプレゼンに時間をかけるまでもない場合も多い。


従来、広告会社側に情報が多かった時代には、いわゆる「前段」で、クライアントが気付いていないことを提起できて、それに基づいたアウトプットを提案できた。
もちろん今でもこうした「前段」が決め手となってコンペに勝利するシーンもあるだろうが、代理店しかもっていないメディアの情報からアプローチしたり、クライアントが気づかなかった「消費者インサイト」を提起することは難しくなっていると言わざるを得ない。


 企業にとってのマーケティングメディアは「ペイドメディア」だけではなくなった。そしてオウンドメディアを持ち始めた広告主は、代理店よりはるかに消費者を知ることになる。広告主は「買うメディア」に関してのみ、代理店を必要とすることとなる。様々なテーマの中の「短期的な認知獲得」だけ「代理店さんお願いね」になってしまう。


 そもそも、広告会社のマーケがマーケティング施策を「こうすべきだ」と提起する時、何をもってそう判断するかのロジックはあるようでない。データを持ち出して論拠をつくるものの、ではそうしたデータがどのくらいだったら、どうすべきかという客観的、科学的理論に基づくことはあまりない。「データがこの閾値を超えたら、こうすべきである」という判断基準を明確にすることはほとんどできない。


それも仕方がないというか当然で、「そんなに単純にデータだけで判断ができるものではない」というのがマーケティングの奥深いところだ・・・なんていうようなマーケターの経験や知見による(能力による)判断がすべてだったころはそうだったであろう。


しかし、今後はそうはいかなくなる。データドリブンな判断や施策決定が求められるようになると、理論や経験的理論値から、データに閾値を設定して、これを超えたらどうするという方針が事前になければならない。具体的施策案ではなく、戦略方針である。高速PDCAを廻す場合、具体的な施策はまだしも、基本戦略ではどういう手を打つかは事前に設計されていないと、高速化できない。従来の年一回のキャンペーンであれば、代理店にオリエンして1カ月後提案を受けるスタイルでも良かったが、時間軸だけの問題でなく、そもそもキャンペーンモデルで対応するのか、から考え直さないといけない。

そして、ビッグデータ時代に、マーケティングに関わるデータはどこくらい広告会社が手にすることができるだろうか。まず代理店でなくても誰でも手に入る(当然広告主も)データがネットによって爆発的に増えた。クエリー情報などは典型だ。(グーグルトレンドくらいは当然使ってるだろう。)その上に、企業がもつデータは膨大に増えた。特にオウンドメディアにおけるデータだ。マーケティングコミュニケーションに関わるデータ測定を行うコミュニケーションダッシュボードの概念だと、ペイド、オウンド、アーンド、すべてのメディアを観測することになる。ペイドメディアで起きた効果(反応)も、オウンドやアーンドで観測するので、広告主企業が、「説明変数」をほとんど手にする。もちろん「目的変数」は当然企業側にしかない。


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*上記の図は日本インタラクティブ・マーケティングの真野英明氏の「マーケティングダッシュボードの概念図」に、ずうずうしくも少し書き足させていただいたものです。真野さん有難うございます。


その上、従来リアルな販売チャネルだけでなく、自社でECや会員化によるサービスを開発する企業が増えると、エンドユーザーと直接コミュニケーションできる。もう代理店は広告主企業にデータを貰わないと何も提案できなくなる。

 こうした時代に、代理店のマーケはいったい何が出来るのか。

 コミュニケーション(クリエイティブ)という「右脳」の作業にロジックらしいことを加える作業でやってきた代理店のマーケが、ビッグデータ時代の企業のデータドリブンな評価や判断をどうサポートできるのか。
 データを貰うとして、どこまで分析できるのか。ビッグデータからどんな文脈を発見できるのか。そもそもそんなことを企業は広告代理店に頼るのか・・・。
 
 岐路にあるのは、明白だ。

アンケート調査のような「意識調査」、つまり消費者に意見を聞く調査データからではなく、行動を起こしたログとしての「行動データ」から文脈を読み出すことが、今の代理店のマーケに出来るか。勝負はまずはそのあたりからだ。

広告会社の行く末 その4  次世代エージェンシーの業態を探索する

13 years 1ヶ月 ago

マイクロソフトに買収され、その後またAgency部門は売られてしまったaQuantiveは,
もともとは、アヴェニューAレイザーフィッシュというエージェンシーと、Atlasというテクノロジー会社とDrive performance という最初はアドネットワークの3社を統合した全く新しいマーケティングコミュニケーション会社の構成だった。MSに解体されてしまった格好になったのは残念だが、アドネットワークは、進化していわば広告配信先クッキーデータベースとも言えるので、エージェンシーとテクノロジー会社とDMPを統合するモデルで実に斬新だった。アドエージ誌によるとグロスインカムもADKより上位にあった。

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 テクノロジーは開発力を常に維持することが決め手でもあり、経営統合で1社を囲い込むのが得策かどうか分からない。(エージェンシーとしてバリューチェーンが成立するか難しいかもしれないが)しかし、有力なテクノロジーをニュートラルに使える立場でありながら、自社でも開発力を持ち、なおかつオーディエンスデータも保持できれば、かなりの競争力を獲得できるようにも思う。

 このような機能再編は、広告会社だけが目指すわけではない。むしろ文化的にテクノロジーに明るい、または経営者の判断と実行が早い「広告会社以外のプレイヤー」から主導的にこうした再編にチャレンジしてくるプレイヤーが出てくるだろう。
 そうなると、広告会社は買収されるか、人材の草刈り場になる(使える人であればだが)可能性もある。

 ベムは広告主企業のためのテクノロジー導入コンサルをしているが、そういうニーズがあるのは、テクノロジーベンダーに企業側の課題をしっかり理解し、成果を出す運用方法を的確に明示する力がないからだ。それも無理もない。クライアント自身が自分の課題を理解していない場合が多い。そもそもコンサルとはクライアントの本当の課題は何かを指摘することができないと意味がないのだが・・・。

 ともあれ、そうしたコンサル機能とテクノロジーと価値のあるデータを供給できるようになると、次世代のマーケティングコミュニケーションにおけるサービス提供のできるプレイヤーとなるだろう。しかし、現状、誰もこうした機能を収斂させることは実現していない、というか、まだ誰もトライしていない。

 次世代のマーケティングサービス産業のための再編を主導するのは誰か。興味深いところだ。私ももちろん参画しますよ。!(^^)!

広告会社の行く末 その3 「営業はいらない?」

13 years 1ヶ月 ago

 その1、その2では、広告会社の営業のフロントラインに専門知見を取り戻し、全体がプロ集団化した専門性と機動力ある企業群に再編すべし・・と書いた。
 
 しかし、この「営業という存在がいて、プランニングスタッフがいて、実行部隊が社内外にいて」という構成は、広告主ごとに「すり合わせ」して「人の手」によるサービスをするという従来のビジネスモデルに準拠した基本構成に過ぎない。

 というのも、これはほとんどアドテクノロジーなどがない時代のモデルだからだ。


テクノロジーがマーケティング活動のど真ん中に配置される時代が来ると、「人手」によるサービスが主役であった故に存在した「営業」という存在意味そのものが問われる。

 まず、導入時の「すり合わせ」には、非常に高度なコンサル機能が求められ、運用が開始されてからのPDCAはオペレータがすり合わせるので、ただの「営業」が来ても意味がない。コミュニケーションプランナーはもちろん必要だが、これも従来型の「広告」のプランナーではない。

「実行」はアドテクノロジーのシステム管理画面上でオペレーションされ、オペレータが日々クライアントと情報共有する。週に2~3回訪問してきて「すり合わせる」従来型営業の居場所はない。

「広告」は従来、実際にほとんど「人手」によって実行されてきた。広告原稿素材は版下や凸版やフィルム、ビデオ素材など物理的なもので入稿されていて、それを「作る人」と「運ぶ人」が必要だった。有限な「枠」ものを取引するため、媒体社との交渉力が必要で、そこには扱い量と人間関係が機能する。「人」が介在することで「枠」が取引され、そこに「物(ぶつ)」の広告素材のやり取りがあっての生態系が存在した。昔はCMプロダクションの稼ぎどころはプリント代だったし、新聞原稿も製版屋さんを保護するために、同じ5段でも新聞社によって微妙にサイズが違って流用できなかった。(これを知っている人も少なくなった。)
 
 ほとんどの業界では、こういう状況は当の昔に卒業しており、どういうわけかメディア産業と広告業界だけが、昔ながらの「業態特性」を引きずっている。

アドテクノロジーが主役の時代になると、

マーケティング活動は基本、「データ収集集積」⇒「データ分析」⇒「キャンペーン管理」⇒実行」⇒「リザルトデータ集積」という設計になり、それぞれのアドテクノロジーが担う。もちろんPDCAサイクルなのだが、欧米のアドテクノロジーはいずれも自動最適化や自動実行を目指している。自動とはいえオペレータは確実に必要で、逆にオペレーション経験から様々なナレッジが生まれるだろう。


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 そもそも「枠」ものというメディアを売る側の論理で出来た「出来合い」の広告メニューのなかから選んで買うという「すり合わせ」ではなく、データをもとに自動化されていく最適化がなされる。仕組みを構築するまでの導入コンサルは、非常に高度な知見を要するが、日々の最適化はオペレーション側で行われる。オペレーションサイドから出てきた新たな課題発見をさらにソリューションしていくので、オペレータとコンサルの連動性が重要になる。

 ここでは高度なコンサルタントとスキルの高いオペレータと、コミュニケーションプランナーがいればよい。(もちろんこの3職種もそれぞれのスペシャルティに分化するだろう)特にオペレーション機能が広告主企業内に取り込まれると、従来の広告会社の「営業」職の機能価値は著しく低くなる。というかはっきり言って「要らない」。
 
早目に退職して逃げ切れるのは私の世代までか・・・。
  
 「どうする!?広告会社の営業マン」 ~生き残るための選択肢~

 という本書こうかな。

広告会社の行く末  その2

13 years 1ヶ月 ago

 DAS(Diversified Agency Services)というワードが聞こえてきてから、もう6~7年経つのだろうか。Diversifiedとは「多様な」とか「多角的な」とかという意味で、いわゆるDAS領域での売上シェアが高くなるということが、WPPにしろ、オムニコムにしろ、メガエージェンシーグループが言っていたのを記憶している。で、そのDAS領域とは、CRM系とか戦略PR系、またはspecialty communication とか呼ばれるヘルスケアとかの専門分野だったりするのだが、こういう分野が昔はなかった訳ではない。しかし専門性の高いそれぞれの領域はより専門性に特化することで競争力をもつということになってきたため、改めてDASという概念が出てきたように思う。

 前回のエントリーでの話の繰り返しだが、専門性とは、営業のフロントラインからして専門家ということだ。スタッフだけ専門家ではないのだ。

 昔の代理店の営業マンは、売りに行くメディアについてはいちおう専門家だった。私が82年に入った当時のアサツーなどはむしろSP代理店に近かったので、私も紙を指でつまんで「これは90キロ」とか、印刷会社の営業並みの知識があったし、メディア部のスタッフは媒体社との交渉ごとをするのが仕事ではあるが、媒体そのものの知識やプランニングに関する知見は営業もほぼ同等に持っていた。というかむしろ営業の方がほぼすべてのメディアに精通している分、プランニング能力があった。

ところが、ここ20年くらいでのマーケティングコミュニケーションに関わるサービスの多様化は、代理店の営業マンの素人化(知見の希釈化)を相当促進したようだ。クライアントに対してフロントに立つ営業マンが、なんでもかんでもスタッフに聞かないと分からないとか、プロデューサーとしての仕切りができないとか、アカウントプランナーとしてのプランの方向づけや、「決め込むこと」ができないとか聞くと、ずいぶん情けなくなったものだと思う。もちろん自分がやっていたころのビジネスが大してハイエンドなものでなかったかもしれないが、マスメディアのプランニングにしても、そのメソッドにさえ熟達してしまえば、営業にでも当然出来る。そもそも欧米のメディアエージェンシーなどは、そんなに高いスキル(よって高所得)ということにはなっていない。ちゃんと勉強していないだけだ。

いつから代理店のフロントは、スタッフに丸投げするようになったのだろうか。もちろんそうでない優秀な営業マンもたくさんいるが、実は丸投げの方が効率がいいという経営判断が右肩上がりのころにあったのだと思う。御用聞きしてくれば、あとは専門スタッフにやらせる方が大きな仕事が効率的に回るという時期もあっただろう。また営業の仕事のうち企画や実行の実務以外のところで、もろもろの仕事(役割)があったし、またそれが相当増えたのだろうと思う。

しかし、時代は広告会社のフロントに、プランニングとエグゼキューションにおけるプロ(専門家)の知見を求めるようになった。広告主もやらなければいけないことがものすごく増えて、トータルに(ワンストップに)アウトソースしたい一方で、それぞれの専門性の高いスペシャリストが常にインターフェイスしてくれて、フロントで解決してくれる方がありがたいのだ。それだけ現代はスピードが要求されている。まあPDCAサイクルが実に高周波になっているのだから、「スタッフに聞いてきます」といってその場で解決できない営業マンはいらないということにはなる。

フロントを少なくしてバックヤードを厚くする方が効率的な時代も、それはあった。ワンストップはクライアントも便利だった。しかしそれはクライアントに知見が乏しい場合だ。また、ペイドメディアだけならともかく、企業のマーケティングメディアがトリプルメディア化するなかでは、オウンドメディアとアーンドメディアでは広告主が素人ではなく、広告会社の方が素人になった。


よって代理店は根本的にその機能を再編しないといけない。そして、そこには専門性と機動力がきわめて重要になった。


が、日本の広告会社くらい高齢者が経営しているとこころはない。広告主企業の経営トップがどんどん若返りしているのに、広告会社、媒体社の経営トップはおそろしく高齢だ。昔の成功体験からマインドを切り替えることがそもそも無理な世代とも言える。

昔の世代は「企業は大きい方がいい」と思っている。(電通や博報堂くらいのスケールがればそのケーパビリティは確かに武器だが)また、「360度だなんだ」と1社で何でもできることがいいとも思っている。しかしこの時代「何でも出来る」なんてのは大うそで、こんなことを標榜するのは「何ひとつ完全にプロの仕事は出来ません」と言っているようなものだ。


すでに問題はどういう専門性に区分して、それぞれの組織構造や人材育成をどう組み立てるかであって、フロントからスタッフまで全体がプロ集団化するエッジの効いた専門会社(当然、給与形態もキャリアステージの考え方も違う)を持ち株が統合するスタイルになるのは必然だろう。
必要なのはマーケティングに関わる様々なサービスを、それぞれ専門性の高いプロ集団で販売する、販売力の水平拡大であり、もう一方でのビジネスモデルの垂直拡大である。広告会社が成長戦略を描くのであれば、こう考える以外にはない。

ビジネスモデルの垂直拡大とは、従来のドメインからシナジーの効く領域への事業モデル開発であり、いわば広告代理業からの脱却である。


おそらく、広告代理業のモデルは衰退を余儀なくされる。Googleのアドワーズが誰でもオンラインで買えるように、限られた「枠」を大きな企業広告主に売るというビジネスはシュリンクする。大きな企業広告主も広告枠を買うことで行うマーケティング施策は減っていくだろう。また大きな企業でも社内でオンラインで入札型の広告を買うだろう。
従来からの「枠もの」は売る側の論理でできている。買う側の論理で「人」を選んで買う広告はすべての広告主、ブランド、キャンペーンに究極にカスタマイズされるもので「枠」の概念では対応できない。
売り買いの仕組みが、代理店の営業マンの「手売り」から広告主企業の「入札」にかなりシフトするだろう。
それはなぜか・・・。

「広告」にとって「広告代理店」がもっている「メディア情報」が優位だった時代(多少は今もそうかもしれないが)は、そろそろ終焉を迎えるだろう。「広告」にとって重要なのは「顧客情報」になる。つまりCRMの延長線上に新規顧客を獲得するための「広告」があるということだ。顧客化したユーザー、情報をプルしたユーザー、そうした顕在化したユーザーを分析することよって、まだ認知していない見込み顧客を選別して広告配信対象とするのが当たり前になるだろう。
となると、この世界には「広告会社」以外のスペシャリストがごちゃまんといる。CRMをやってきたテクノロジーベンダーはじめ、様々なプレイヤーだ。IBMやオラクルも広告会社にはコンペティティブな存在になるだろう。


そして、広告会社にとって競合してくるプレイヤーが増えるのは、これだけではない。前回エントリーで書いたように、マーケティングコミュニケーションのために開発すべきものは、「読み物」や「映像」のようなコンテンツばかりではない。Webサービス開発やリアルなビジネス開発も含まれる。
ただでさえ、「広告クリエイティブ」しかやってきていないので、「情報クリエイティブ」や「ブランデッド・コンテンツ」開発が簡単でないのに、「ユーザーサービス開発」や「事業開発」までが領域となると、これは「広告会社」がマーケティングコミュニケーション開発のメインな担い手ではなくなる。

新しいマーケティングコミュニケーション開発の視座2.jpg

こうした外部環境認識に立って、既存事業の再編や新たな事業モデル開発ができるかどうかが今の広告会社の経営トップの責務である。

この人たちには、バブル期の成功体験はむしろない方がいい。

確認済み
1 時間 11 分 ago
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