業界人間ベム

電子送稿がきっかけになること

10 years 5ヶ月 ago

 僕は82年に広告代理店に入ったので、新聞は凸版、雑誌は版下、テレビは16mmのフィルム、ラジオも磁気テープと、物理的な素材を送稿するという50年以上前からやっていたような形式をすべて体験した。
若い人に「昔は『象眼』というのがあってね・・・。」とか昔話をすることもある。(今じゃ「ゾーガン」を知っている人も少なくなっただろうな。)テレビスポットも1日で最も多く放送される本数をその局に入れないといけなかったので、まあたくさんのフィルムをプリントしたものだ。

 DACをつくった96年でも最初のインフォシークの広告原稿はフロッピーディスクに入ってバイク便で着た。w

 とにかく「物理的な広告入稿素材を運ぶ」ということが広告代理店の存在意味でもあった。誰かが素材を媒体社に入れないといけない。それは広告代理店である訳で、物理的な広告素材を送稿する必要がある以上は「人」が絡む。だからこそ「手売り」が前提となるのだ。

 しかし、来年以降テレビもデジタル媒体の素材送稿からオンラインでの電子送稿になると聞いている。

 ブツを運ぶことが必要なくなると何が起こるかというと、まずCMプロダクションの収入モデルがひとつなくなるので、CM制作会社の経営に多少とも影響をキタすのだが、本当の影響は、広告枠のオンライン販売を促すということだ。

 米国ではテレビ枠のプログラマティックバイイングも始まっている。
Googleが以前、ラジオや新聞の枠の取引をオンラインでやろうとして撤退はしているが、結局は広告枠のオンライン販売は進むだろう。
 
 「手売り」から「オンライン取引」というのはあらゆる世界で進んでいて、おそらく最も遅れているのが広告なんだろうと思う。
 
 ローカルテレビ局も銀座界隈の東京支社と数人いる程度の大阪支社で「手売り」するだけじゃなくて、オンラインで日本中から受注できるようにした方がいいんじゃないのかな。
普段は営業しようもない九州のダイレクトマーケターから発注が来るかもしれないし・・・。
実験してみたらどうだろうね。テレビも少額から買える広告メディアとしてロングテールのバイヤーにも開放されると局の収入拡大のチャンスとなり得ると思うが・・・。

企画力は、発想力と実現力

10 years 5ヶ月 ago

 ベムはその昔、とあるビール会社さんでのダイレクトマーケティングを担当していたことがある。ヨーロッパの名窯であるマイセン、ジノリ、ウェッジウッド、ヘレンド、ロイヤルコペンハーゲンほかでそのビール会社のオリジナルビアマグを焼いてもらい、それを会員募って頒布するものだった。オリジナルビアマグにはそれはそれは多くの附帯情報がある。売るのは単なる物(ブツ)ではない。背景にある文化も一緒に売っていた。会員には石坂浩二さんもいたし、多くの文化人がコレクターとなってくれた。
 またある化粧品会社さんでも、カード利用明細に同封される小冊子のなかで文化的背景のある(情報がある)小物をマーチャンタイジングして毎月頒布する(商品数が限られるので抽選でお売りする)仕事もしておりました。
 確か第一号は箱根の寄木細工、二号では甲州の印傳(鹿革ですね)だった。また、まさにその会社の企業文化そのものである商品や広告宣伝素材を、歴史を辿って紹介した。
 そこにはコンテンツが山ほどあった。もともとあるものも、その企業だからこそ新たに生み出せるものも含めて・・・。
 
 バブル期は広告業界には実に面白い時代であった。広告も広告会社もその幅をいっきに拡げた時代であり、様々なコミュニケーション手法と生活者へのアプローチ方法を試した時代だった。

 だから僕が今「コンテンツマーケティング」と聴くと、例えば自分が携わっていたこうしたCRM×情報マーケティングも昔の「コンテンツマーケティング」だったんじゃないだろうかと思う。ただ企業側からの一方的な情報提供には限度があって、企業が「テーマ」とユーザーがコンテンツを上げる「場」を提供するのが現代版のコンテンツマーケティングなんだろうね。(それだけ周辺情報量や情報選択の仕方、コンテンツの消費のされ方は変わったんだろう。)

 ただ必要なのは、Webやデジタルが専門の人というよりは、味わい深くストックしたくなったり、コミュニケーションに参加したくなるテーマとコンテンツをプロデュースできる人なんでしょうな。デジタルのプロはそういう人をサポートするくらいでないといいものは出来ないんじゃないかと思う。おそらくデジタルのプロは装置としてユーザーからコンテンツが醸成できる「場」づくりを上手にするのが役割かもしれない。

 僕は今でもマイセンに行って日本のビール会社のオリジナルビアマグ焼いてくれと交渉しに行った元上司がすごいなあって思うんですよ。また、それ以上にGOサイン出してくれたクライアントが素晴らしかったなあと・・・。

 そういう意味で、企画を「仕掛ける」ということは机上(パソコン上)だけではなくて、行動してみることなんだよね。企画力とは発想力だけじゃなくて実現力でもあるから・・・。

デジタルマーケティングとは何か

10 years 5ヶ月 ago

ネットマーケティングとデジタルマーケティングは何が違うか

 答えは簡単。
ネットマーケティングはWebサイトやネット広告といったインターネット領域しか最適化しないが、デジタルマーケティングはマスもリアルも含めたマーケティング活動全体を最適化するということだ。

今はテレビだってデジタル放送、消費者が店頭を訪れるというようなリアル行動もポイントカードほかでデジタルデータに取り込める。

故に、マスコミュニケーションもリアルな販売時点を含む消費者接点もデジタルマーケティングの対象である。だから、「デジタルマーケティング」といいながら、テレビの話がないとか、O to Oとかオムニチャネルの話がないというのは「デジタルマーケティング」じゃない。

つまりデジタルじゃないマーケティングがなくなる前提で、過渡的にデジタルという形容詞をつけているのであって、もう5年もしないうちに当たり前なのでデジタルという形容詞がなくなるのが「デジタルマーケティング」である。

マーケティングのデジタル化を意識づけるためにデジタルと頭につけているだけなので、マーケティングに関わるすべての領域がデジタルマーケティングの対象とならないといけない。


さて、マスもリアルということでは、テレビこそ最後のマスメディア。唯一プッシュ力のあるメディアである。マスの本丸であるテレビもデジタルマーケティングの対象だ。もちろんTVCMだけでなく、番組内で提供される情報もトラックしないといけない。

その意味では、テレビメタデータとソーシャルメディアデータの相関性を見ておくのもデジタルマーケティングの重要な視点だ。テレビで話題になり、取り上げられるようになると、ソーシャルでもそれを受けてバズっていく、また逆にソーシャルでバズるとテレビが取り上げ、それがまたネットで話題になる・・・。というようないくつかのパターンがあり、ある特徴的なパターンを踏むとその後の話題拡大(商品が売れる)がある程度予測可能になってくる。

 テレビもCM到達と、番組のメタデータとソーシャル反応を追う。そこに検索量やサイトアクセス、そしてPOSデータと、POEを網羅して目的変数との相関を把握することでダッシュボードが成立する。
 これらを時系列、つまりリアルタイムで捕捉することで、状況に対応した「打ち手」を打つことができる。

 そもそも、従来のキャンペーンは予算化から始まっていて、予算化できると、その予算でできるキャンペーンがプランニングされ、そのプランが忠実に実行される。そして終わってから調査で効果検証とするということを未だに多くの日本企業はやっている。

 しかし、終わってから調査しても、もう終わっているのだから、もう何も手の打ちようがない。

 そうではなくて、常にリアルテイムのKPIを把握していて、キャンペーンによってKPIをどこまであげるかという目標設定をして、予算内で目標達成に向けて運用していくというのがこれからのキャンペーンである。

 リアルタイムで打ち手を最適化していくのであって、ある意味事前に最適なプランがある訳ではない。大枠の計画があっても1~2割は運用予算に当ててリアルタイムでKPIを把握しながら打ち手を打っていくための予算にしておくことだ。

 リアルタイムでKPIを把握するためにも、デジタルマーケティングデータを常に取得できる装置を用意していくべきなのである。

 そういう意味ではデジタルマーケティング基盤はPOEを網羅するマーケティングダッシュボードということになるんだろう。

 「マス・リアル・ネットをデジタルで繋ぐ」 これがデジタルマーケティングである。

若い広告マンに告ぐ

10 years 6ヶ月 ago

 「広告ビジネス次の10年」に書いたように、企業のマーケティング支援産業としての広告業界は大きく変わっていくと思われる。もちろん広告マンに求められるスキルも同様だ。

 データドリブンなマーケティング、デジタルを活用したマーケティング、これらは当たり前すぎて、そのうちデータドリブンともデジタルとも形容詞はいらなくなるだろう。

 これから起こることは、当たり前に「デジタル」と「データ」を介して、マスとリアルとネットの領域を連動させるということである。だから広告周辺のビジネス環境に身を置くのであれば、マスとリアルとネットの十分な理解が必要である。

 トラディショナルな広告代理店マン諸氏はデジタル対応が必須であることは十分意識しているであろう。それはデータと向き合うことであり、テクノロジーを使いこなすことである。若い総合代理店マンは自身のキャリア形成において、広告マーケティングのデジタル変革で今後何が起きて、自分のスキルをどうしておかなければならないかを真剣に考えるべきだ。今まだ考えていないとしたらそれはもうアウトだ。

 一方、ネット専業代理店を中心とする広告マンはどうすべきか、今のままCPAに縛られたメディアバイイングだけの部分最適に日夜四苦八苦しているだけでは将来価値あるスキルを獲得できない。確かにそこに市場はある。企業としてその市場で生存していくことを私は何らおかしいとは思わない。しかし、ひとりの広告人として生涯価値を上げようと思うならば、ネット領域だけで、しかも通販の営業代行のようなことをしていくというだけであれば、それではマズい。しかもずっと続くものでもない。求められているのは「作業」である。
企業は人を換えれば済む。しかし一人ひとりの広告マン(ウーマン)から見れば使い捨てでは困る。オペ疲れして、疲弊してただ辞めてしまうのでは非常に残念だ。
今の仕事はけっして無駄ではないが、次のキャリアステージをしっかり描いていかないといけない。

 よくネット系人材が、トラディショナルな広告会社に転じることがある。本人はネットに疲れて、マスやリアルな領域をトータルにプランニングしたいと願ってくるだろうが、採用する側はそもそもデジタル人材がいないから採っているのであって、デジタルをやってほしいのだ。そこにギャップが生じる。どちら側も片方しかやっていないから融合したスキルを開発できない。

 しかし、まだ数は少ないが、当たり前にデジタル化してマスもリアルもトータルにアプローチしている所もある。
 早いうちにそういう「場」に身を置いて、マーケティングやコミュニケーションの本質を体感すべく、仕事のプロセスや考え方(行動様式/思考様式)を覚えるといいだろう。(そこをリセットしないとスキルが身につく、つかない以前の問題なのだ。)
 
 でないと、そうした先進的な企業は、地頭の良い新卒の学生をどんどん採用して純粋培養するだろう。中途半端に癖のついた人材は修正が面倒だからだ。
 
 
 いくら仕組みを取り入れても会社の文化というのはそう簡単には変わらないものだ。

マスもリアルもデジタルで統合したマーケティングに対応するのだからこうした方がいいと言ってくれる上司、先輩がいない。誰も思いつかない。根付いた文化とはそういうものだ。

広告マンとしてあるいはマーケターとして高い価値を得るには、当然デジタルを理解していてビジネス全体、マーケティング全体をコントロールできる人財になることである。

早くそういう「場」を探そう。


 キャリアの次のステージをどうつくるかに関しては、近々ベムがセミナーイベントを実施します。詳細はこのブログでも告知します。

テレビだけどうしてプッシュ力があるのか。

10 years 6ヶ月 ago

 海外では番組やCMをデータ分析してどんな因子に視聴者が反応するのか突き止めるような試みがどんどん始まっている。Netflixがドラマのシナリオをビッグデータ解析で変えるのはもうお馴染みの話だろう。リアルアイズという会社は、動画を映像、音声、その両方と分けて視聴者の脳波や心拍数を測っている。それによると、音声つまりサウンド効果が思いのほか大きなインパクトを持っているようだ。

 その昔、新卒で代理店を受けた時、クリエイティブ志望だったので、クリエイティブ面接の時にCMにおけるサウンド効果の話をしたことを思い出した。学生時代バンドで自主レコード盤をプレスしたり、楽曲つくっていたので、例えばギターのリフで引っかかるリフと、いい曲だけど引っかかりがないリフがある。楽曲選びやサウンドエフェクトについて素人の学生のくせに生意気なこと言ったと思う。

 
 テレビは点いているが、じっくり観ていない時間が長い。朝の時間帯は時計がわりでもあり、付けっぱなしだが、ウィークデーの朝は当たり前だが身支度しているのでじっくり観ている暇はない。しかしきっと聴いてはいる。

 そう思うと、テレビというメディアはデフォルトで音が出ているものだ。スマホもパソコンも必ずデフォルトで音声オンというわけではない。

 つまりテレビは唯一パッシブなメディアで、観る、観ないは「音」がきっかけになっている場合が多い。つけっぱなしでサウンドがデフォルト、しかし画面に専念することはテレビの前にいる時間の一部である。
 
 パッシブな接触を習慣的にしているのでプッシュ力があると言える、そしてその専念視聴のきっかけはサウンド効果だ。

 例えば朝の時間帯のCMはサウンドやナレーションを意識したバージョンにするのもアリなんじゃないかな。

広告主にクリエイティブ力の差が出るのはなぜか

10 years 6ヶ月 ago

 

一流企業なので、いずれも大手代理店の一流クリエーターがクリエイティブ提案に来るはずなのに、出来上がってくるCMクリエイティブにどうしてこんなに差が出てくるのか。

 これはやはり選ぶ側の力が反映するのである。もちろんプレゼンしてくる方にも多少の問題があるだろうが、選ばれないと意味がないので、代理店側も長くやっていると選ばれる案しか持っていかくなるわけで、原因は「選ぶ側」にある。

 企画は「提案する」より、「選ぶ」方が100倍難しいと言われる。

「選ぶ」能力、リテラシーを鍛えることも広告主には必要だ。なぜならクリエイティブが最も大きな変数であって、コミュニケーションの最適化には表現力開発に「強く」ならないと競合に勝てないからだ。
 ただこうした広告主側の「選ぶ」力は一朝一夕には獲得できるものではない。ある意味企業文化とも言えるくらいの伝統芸だったりする。

 例えば、長く広告宣伝に力を注ぎ込んできて蓄積された企業文化がある会社は、担当者がつい最近営業から異動してきた人であっても文化のある宣伝部に所属するとリテラシーが鍛えられるものだ。典型は代理店が持ってくるCM案の絵コンテを読み解くリテラシーだ。絵コンテから出来上がるCMの完成度、トーン&マナーが想像できるリテラシーである。なぜか分からないが、こうしたリテラシーが伝統的に受け継がれている企業がある。これは素晴らしい企業文化であり、貴重な財産である。こうした資産を上手にデジタルマーケティング時代にも対応させたいものだ。

 一流企業でも、広告表現を開発する際の「思考プロセス」を大事にするところと、アウトプットを直感的に評価するところがある。
 
 どちらがいいという訳ではないが、選ぶ能力のひとつは、コミュニケーションの考え方とアウトプットの間のジャンプをどう評価できるかだ。クリエイティブにはいいジャンプと悪いジャンプがある。いいジャンプなのか、悪いジャンプなのかを見抜く力が「選ぶ」リテラシーの重要な要素だろう。

 さて、CMを選ぶということは何十年もやってきたのでそれなりに経験値があるものだが、デジタルコンテンツとかなるとどうだろうか。オウンドメディアのコンテンツを企画開発するとなるとCMを選ぶのとはかなり違うかもしれない。フォーマットが確立している中のものを選ぶのとは違い、フォーマットや仕掛けから選択していかないといけない。そうなるとアイディアだけで選んではいけない。素材をつくって終わりではないので、運用体制がどうなっているか、しっかりPDCAを回せるのかなどチェックポイントは多い。そもそもオウンドなので、自ら仕組みやコンテンツを企画して表現のHowの領域をアウトソースするくらいでないといけない。ここでもアウトソース先は「どこに頼むか」より「誰に頼むか」で、まだまだデジタルのスキルは属人的だ。

 今の時代の優秀なクリエーターとは、CMプランだけでなく、その企業やブランドのマーケティングコミュニケーションにおける課題やポテンシャルをしっかり把握して、コミュニケーションコンテンツ開発のコアアイディアを創出できる人である。広告クリエイティブだけなく、サービス開発やビジネス開発までクリエーター的センスでデザインする能力と再定義されると思う。

 広告主のリテラシーとはこういう優秀なクリエーターと自らが「ストプラ」として渡り合うことが出来ることではないかと思う。そもそも考え方やコンセプト設計から代理店にお願いしないといけないようではダメだ。マーケティングメディアがほとんどペイドメディアであった時代はまだ良かったが、オウンドやアーンドも統合的に設計しなければいけない時代は完全に広告主たるマーケター側にストプラとしての高いスキルがないといけない。

 クリエイティブを選ぶ力を発揮させるのも、まずはそのあたりから構築していく必要があるだろう。

テレビ局はオーディエンス分析をしているのか。

10 years 6ヶ月 ago

DMPやデータマーケティングの効用はユーザー視点でマーケティングすることにある。商品視点ではなくて、顧客ユーザー視点でものを考えるということでは、以前にIBMさんのイベントでローソンの玉塚さんが説明された下記の話が実に分かりやすい。

「ローソンのID-POSデータ分析で、ある店お客さんは最寄りのコンビニが別の系列にも関わらずローソンに来てくれる。そして必ず買ってくれる商品がひとつあるという。この商品は週売としては棚落ちを余儀なくされるレベルだが、この商品が棚からなくなると大事なお客さまをひとり失う可能性があるため、この店ではしっかり置いてある。」という。

リテーラーらしい顧客視点の話だが、こういうことはメーカーであろうと、サービス業であろうと同じことが言える。日本は人口減少社会だ。LTVを上げること、クロスセル、アップセルを向上されること、またターゲットセグメントが年齢による構成になっているブランドのラインナップをもっている企業であれば、ブランドAからブランドBへ顧客を橋渡しして、引き継いでいかなければならない。こうしたことは事業部のブランドマネージャーでは出来ない。彼らは当然商品視点でマーケティングせざるを得ないのであって、ブランド横断型のデータマーケティング部門をつくってやらなければならない。

さて、「ユーザー視点でマーケティングせよ」という話だが、今日はこれをテレビの視聴者に当てはめてみよう。つまりテレビのオーディエンスをマーケティングするというテレビ局がやらなければならないことだ。番組が商品としたら、視聴者が顧客(ユーザー)ですよね。

最近私はテレビ視聴データを丹念に見ている。テレビの視聴が番組によってその専念視聴度合いがかなり違うこと、ひとつの番組の中でも視聴者はひどく入れ替わっていること、箱番組などはロイヤル視聴者(例えば1クールに一定以上回数を視聴するTV端末)がかなり少ないことなどに気づく。店に例えると、常連客は少なく、たま~に来るお客と一見さんがほとんどというお店だ。これが話題の高視聴率ドラマになると定着率と専念視聴度合いが大きく伸びるというわけだ。

そうするとテレビ局はまずは番組の常連さんとはどういう人かを分析しなければならない。視聴率に右往左往しているが、視聴率を上げるには、まず視聴質を分析しなければならない。視聴質とは、「誰が観ているか」と「どの程度専念して観ているか」のおもに2つの要素だ。これをコンテンツのメタデータと紐付けてみないといけない。

この番組に定着率の高いロイヤル視聴者(つまり常連さん)はどういう人で、この人たちは他にはどんな番組の常連さんなのか・・・。テレビを観る人たちとはどういうペルソナでどういうセグメントに分けられるのか・・・。こういう分析をしないとオーディエンスをマーケティングすることにはならないのだが、テレビ局の人、ちゃんとやってる?そもそも番組ごとの視聴率(つまり商品が何個売れたか)ばかりに一喜一憂していて、視聴者(誰が買ってくれたか)を全然分析してないんじゃないの? せっかくひとつのドラマを当てても、次の企画で獲得した視聴者をまったく違うセグメント向けのドラマにしてない? 同じ枠での視聴者の流入や流出ちゃんと分かってる?

Netflixはやってるよね、こんなことくらい。それどころかもっと内容、シナリオ(データによるコンテンツマーケティング)にまで踏み込んでいる。

クリティカルなのは、日本のテレビ局がデータによるコンテンツマーケティングとは未だほど遠いところにいることだ。Netflixが脅威かどうか以前に向こうは当たり前のことをやっていてこちらは当たり前のことをやっていないということに気づきましょう。

編成権はとっくの昔にテレビ局の編成から視聴者に移っている。みんなもうどこの局のドラマかなんてほとんど気にしてはいないのよね。

「見逃し視聴」とかいうけど、そもそも「見逃し」という言葉を使う時点で、「あらっ?見逃しちゃったの?」という未だ「〇曜日の〇時は、お茶の間で座って待ってなさい。」という感覚でないのかな。編成権が視聴者にあるということが理解できていない証拠のようなものだと思うけど・・・。

 オンデマンドでニーズのあるコンテンツは、必ずしも放送で視聴率の高い番組ではないはずだ。ユーザーが少ない可処分時間からアクティブな視聴行動を選択するコンテンツは、習慣的にテレビが点いている時間に流れているものを観るという行動とは同じではないのだ。また放送とオンラインのオーディエンスは同じコンテンツでもどの程度オーバーラップするのか、しないのか、そういう分析も必要だろう。


ちょっとばかり厳しいことを言いましたが、私はテレビが好きです。テレビで育った世代です。「鉄腕アトム」から日本のアニメをリアルタイムで観てきましたし、仕事で「Dr.スランプ」や「ドラえもん」や「ドラゴンボール」などたくさんの番組やスポットを売ってましたし、洋楽特番も制作してました。クライアントさんからナイターもらって(SG戦なので)雨降って中止にならないようにてるてる坊主つくってたような広告マンでした。テレビCMも10数本つくりました。ですからテレビがやるべきことをやらずに弱体化するのを見過ごせない思いがあります。

今のところテレビは強力なプッシュ力をもつ唯一の広告メディアです。

昔マス4媒体といいましたが、今や新聞も雑誌もラジオもマスと呼べるプッシュ力はありません。

マスと言えるのはテレビだけです。


そのテレビが若い視聴者にはそっぽを向かれつつあります。高齢層と若年層の到達効率の差は歴然とあります。

アメリカの若者なんか、そもそもテレビ番組を録画するという行動様式がほとんどありません。彼氏の家に行ったらテレビが置いてあって、「ダサい」と思って別れたと言ってる女の子もおります。w

そのトレンドは、きっと贖うことが出来ないことでもあるでしょう。しかし、コンテンツプロバイダーとしては、テレビ局が視聴者(オーディエンス)をしっかり分析して、今後放送だけでなく、オンラインも含めたコンテンツディストリビューションの最適化を図るという思考を始める時期に来ていると思います。

 しっかり分析してテレビ広告の価値を再発見すれば、実はもっと広告単価を上げられるかもしれないですよね。実際24時間しかないなか在庫を簡単に増やすわけにはいかないですし、全体で持ちGRPを上げる努力もさることながら、オーディエンス分析でターゲット効率の良い枠開発をして価値を上げる努力もされた方がいい。

 私は基本1業種1社のコンサルなので、局さん1社だけならコンサルします。(笑)

データドリブンな「シナリオ設計」ができる人材をつくるには

10 years 6ヶ月 ago

デジタルインテリジェンスがベストインクラスプロデューサーズをつくった一番の理由は、「データドリブンなシナリオ設計ができる人材育成、そのスキルセットの確立のため」である。DMP、データサイエンティスト、アドテクノロジー、データドリブン〇〇・・・、そしてデジタルマーケティング、氾濫するワードとどんどん進化するツール、しかし使いこなす人材がいないことは誰の目にも明らかだ。

さて、「データを駆使してマーケティングコミュニケーションをデザインする」という仕事ができる人材はどうやって育成できるのか。

一般的に右脳派側と左脳派側があって、これを融合するという獏とした思考は働く。しかし、データと向き合うことと、「シナリオ設計」するということには大きな文化的隔たりがあって、簡単ではない。
私は統計や数学はもちろん出来た方がいいが、ビジネスとしての実態をいろんな側面から「知っている」「イメージできる」「感覚値をもっている」という要素は「シナリオ設計」には絶対に欠かせないと考える。そうすると、まずはビジネスを理解していて仮説が立てられる人材にデータと向き合う、テクノロジーを使いこなすスキルを身につけてもらうということになりそうだが・・・。(もともと右脳派に「デジタル」「テクノロジー」「データ分析」を勉強してもらうということの方が、逆のアプローチよりまだ可能性を感じるのである。)

 ただいずれにしても文化の差を超えることはどちらからのアプローチにせよ、簡単ではないことである。

 文化とは「思考様式」「行動様式」に現れる。リアルな店頭で購買されている商品のデータを分析しているのにパソコンの中の数字しか見ていなくて、現場(店頭)に行くという思考がない(そもそも思いつかない)となると、これはもう文化の問題で、ちょっとやそっと研修だのなんだのしてもどうにかなるものではない。

 
 

 それと経験値として、マーケティング施策の企画実施経験が全くないと「打ち手」をイメージ出来ない。データを見て「ふ~ん」と感心しているだけでは全く意味がないのであって、「打ち手」を打ってみてのマーケティング活動である。(我々のやるべきことは、データから有効な変数を導き出して「KPI化」すること。そして「施策」と「KPI」をコインの裏表になるように仕掛けることである。)

 また逆に、従来のマスマーケティング(ある意味「経験の勘」の)に慣れていると確立した「パターン」がないとうまく動けない人が多い。「経験と勘」でやって来たのは、プロセスがそれなりに確立していて、その上で「経験値」があったからで、データから文脈を読み出してなんて・・・、初めてやることには脳がついていかない。

 また左脳派分析官のなかにもセンスがある人もいて、これは、僕は人間観察が得意な人、人間(消費者)に興味がある人だと思うのだが、こういう人の中には「マーケティング施策」の経験がなくても、施策の設計者に非常に価値のある「キーワード」や「コンセプト」を提示できる人がいる。

 左脳派側はむりやり「シナリオ設計」者に育てるというよりは、こうしたセンスをもっている人を探す、またはそうした感覚を育てるということが必要だろう。

 いずれにしてもマーケティングの対象となる消費者、「人」の連続的な意識、思考や行動を断片のデータから仮説でつなぎ合わせて、ストーリーにするスキルを育成するには、アナログな実生活環境を体験的な情報として持っていないといけないので、いろんな店舗にいかない人、料理しない人、クルマに乗らない人、街を見て歩かない人、いろんな業態の人と話をしない人・・・ではダメなんじゃないかという、何だか当たり前の結論にしかならない。
 ただ、仕事をしている環境に、「それだったらどこどこ行って〇〇を見てこいよ」と言ってくれる人がいるかどうかはすごく大事だ。おそらくその辺が「育成の場」になりうるかどうかだろうし、いろんな出自から集まって刺激し合い、研鑽し合う場になることも重要だろう。

 新しい「種」が生まれる時は「個体」に起こるものだ。 突然変異としての「新種」人材が生まれたら、そのスキルをある意味「純粋培養」すべく、地頭の良いまっさらな新人にDNAを引き継ぐことがひとつの考え方だとも思う。

故稲垣正夫氏のグローバル施策

10 years 7ヶ月 ago

ご逝去された旭通信社創業者稲垣正夫氏のグローバル戦略について、デジタルインテリジェンスNY榮枝からの特別寄稿です。

4月17日に旭通信社(現アサツーディケイ、ADK)の創業者、稲垣正夫氏の訃報がニューヨークにも届いた。この場を借りて、MAD MANでしか披露できない稲垣氏のグローバル化への志を米国から届けてみたい。

56年 稲垣正夫現会長らが旭通信社を設立
73年 業界ベストテン入り
84年 旭通信社が米BBDOインターナショナル社と資本・業務提携
87年 旭通信社が東証二部に上場
90年 旭通信社が東証一部に上場
91年 旭通信社が中国の新華通信社と提携
96年 博報堂らとデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)設立
97年 業界第3位に
98年 旭通信社が英WPPグループと資本・業務提携
99年 旭通信社と第一企画が合併、アサツーディ・ケイに (以降略)

◆「その土地の砂になれ」
これが稲垣氏の海外に派遣する人材に対する言葉であった。地理的営業拠点の拡大=海外戦略だった70年―80年代当時、「その土地の風習システムに馴染まずして、文化である広告の営業はできない」という理由で、法人設立を任された人材は「長期コミット」が抜擢条件であった。

中国語の堪能であった稲垣氏は中国にロマンをいだき、その土地、文化を尊重する事を重んじていた。だからこそ達成できた政府お膝元である北京の新華社通信との提携が91年。単独出資が難しかった当時の中国において、合弁法人拠点数を急拡大させた。そして地元ローカルのリーダーを尊重し、リーダーとして育てる手腕は「誰も真似できない」個性として着々と拠点を伸ばしていたことは、他社の目からも明らかだろう。

長期ビジョンでの人的配分は「稲垣手法」の一角であり、このMAD MANの筆者である私も95年―2000年まで中国・香港、そして01年から12年まで米国ニューヨークでのADK経営に関わる事ができた。しかし稲垣氏のグローバル施策を振り返ると、特筆される(凄かった)キードライバーは、中国への思いよりも84年のBBDOとの「株式持ち合い」を決めたビジョンであった。この時62歳。

◆外資に企業価値を売る、資本を受け入れる
84年当時、既に電通がヤング・アンド・ルビカム、博報堂がマッキャン・エリクソンという「王者同士」の合弁は誕生していたが、日本で10位そこそこの代理店の代表としてマンハッタンに乗り込み、ペプシやアップルを担当していたBBDOとの「提携」ではなく「資本の出し入れ」を決めたのだ。若気の至りではない、62歳にしてのグローバル市場での「自社(株)売り」の術だ。ちなみにこの84年は、現WPPのCEOマーチン・ソレル氏がWPPを立ち上げる(買収する)1年前で、サーチ&サーチ社のファイナンシャル・ディレクターを務めていた時だ。何と稲垣氏はBBDOとのディールが完了するまでマーチン・ソレル氏とも資本提携の話をしていた、とインタビュー記事が残っている(当時稲垣氏62歳対ソレル氏39歳!)。旭通信社がBBDOとの提携継続から解消までの14年間に、稲垣氏はWPPマーチン・ソレル氏と継続的なコンタクトを持っていた上で、満を持して98年のWPPとの資本提携へのスイッチだったのだ。振り返ってみると、

84年 BBDOへの出資、持ち合い
90年 広告会社としての初の一部上場
96年 国内同業とのDAC上場
98年 WPPとの資本提携

これら全て「(大)資本」に関わる投資決断であり、今で言うアントレプレナーシップである「全員経営」を掲げる稲垣氏らしい経営奇跡だったと思える。現にADKは日本発の広告会社、マーケティング会社において、海外で利益を出している数少ない1社となっている。

◆単なる投資ビジネス理論ではない、その上位の考え
強調したいのは、資本政策の先人である稲垣氏だが西洋的な営利を求める資本政策ではない、東洋思想に基づく「和」をもたらす関係づくりを唱えていた事だ。利潤を追い求める西洋的マーチンソレル卿に対抗できるのは稲垣氏(1990年に藍綬褒章、1997年に勲三等瑞宝章を受章)だけだと思ったが、今やグーグルを筆頭としたグローバルでマーケティング世界において、思想的なビジネスの和を世界に唱えるアドマン・マーケターは知る限り居ない。

故・稲垣氏が著者に常々言っていた言葉は「植福」(人の中に福を木のように植えて育てる)だった。MAD MAN筆者もグローバルビジネス実現を望む次の日本生まれの広告・マーケティング、アドテク企業を、支援したいと思う。

データ・ホリゾンタリティ

10 years 7ヶ月 ago

 WPPのマーティン・ソレル氏が昨年放った言葉で「データ・ホリゾンタリティ」というのがある。拝借して新語として流行らすつもりは全くないが、意味するところをしっかり理解しておかないといけない。やはり世界最大の広告グループのトップが言っていることなので、今後のビジネスの方向性を決めるかもしれない。

 マーティン・ソレルの放つキーワードは常にその時々のマーケット状況のツボをついた分かりやすいものだ。過去にはGoogleに対して使った「フレネミー」(フレンドとエネミーを合わせた造語)や、最近では「Mad Men(マジソン街の人(広告人))はMath Men(データに基づいた新広告人像)を目指すべき」とか「CIOとCMOの垣根ととっぱらう。」とか・・・。

 そこでこの「ホリゾンタリティ」だが、「データ・ホリゾンタリティ」というキーワードが出てくる前に新概念として使い始めている。

 私の記憶する範囲では、WPPがデルのためにWPPグループから人材を出して専用エージェンシーをつくったことがあったが、これがフォードのためのベストインクラスであるチームデトロイトなどの先駆けだったように思う。それまでは単なる持株会社でファイナンスしかしていなかったWPPはバックヤードで大型クライアントのためにグループの企業群を機能編成するとい動きを始めた。

 その流れでこの「ホリゾンタリティ」という概念が出てきた。巨大なエージェンシーグループであるWPPがグループ間を貫く「水平」思考をし始めて、「水平度合い」(ホリゾンタリティ)というキーワードが発信された訳である。

 そしてこの「水平度合い」は、巨大グループ間でデータを共有するという「データ・ホリゾンタリティ」に発展した。

 これを促したのは、やはりオムニコムとピュブリシスの合併構想だ。バーティカル(エージェンシー)を寄せ集めただけの水平合併に意味はないと牽制していたWPPとしては、ここぞとデータとナレッジの横の共有をすべき、水平組み合わせの執行を取りまとめるホールディング会社の価値だと強調する。

 データ・ホリゾンタリティと提唱し始めたのは、WPPグループ間でのデータ共有構築を目指した The Data Alliance(GroupM、Wunderman、Kantar、JWT、Cohn&Wolfe、Xaxis等で編成)の強化がスタートした2014年1月から。The Data Allianceをデータの「スターアライアンス」と例え、「データ・ホリゾンタリティ」を目指す複合ユニットの象徴とした。

 今年になって話題になったフェースブックのトピックデータの活用は、1年以上も前にWPPのこの発表の成果のひとつだろう。

http://www.wpp.com/wpp/press/2014/jan/30/wpp-data-alliance-partners-with-datasift-for-unified-global-social-data-access/

 先日のアドタイに「WPPがフェースブックのトピックデータ活用で提携」という記事が載っている。(おっ荻野くんがコメントしとる。)

http://www.advertimes.com/20150413/article189526/

WPPの4つの戦略的重点事項(2014年決算資料より)は
1)BRICsを始めとした高成長地域での成長
2)デジタル化(New Media)を2020年までに自社内42.5%シェア(現36%)
3)データインベストメント(&マネジメント)部門を自社内50%シェアに
4)ホリゾンタリティー、クロスグループを上位40アカウントで達成
を挙げている。
「データ・ホリゾンタリティー」は3)と4)の分野を合併させて出来た言葉とも言える。


 こうした潮流は、広告会社を含めたマーケティング支援産業全体の大きなうねりと言っていい。流石にマーティン・ソレルだ。70歳を超えてなお先頭を走っている。

故 稲垣正夫氏を偲んで

10 years 7ヶ月 ago

旭通信社(現アサツーディケイ)の創業者の稲垣正夫氏がお亡くなりになった。僕のビジネスマン人生に最も影響を与えた方である。本当にひとつの時代が終わったんだなと思う。

 新卒でアサツーに入った僕は稲垣社長の半径7~8mのところに席があって(稲垣さんは社長室があるにも関わらず社員と同じ大部屋に平社員と同じデスクを置いていた。)ふたりでの会話も多かった。
 入社当時のアサツーは隔週で土曜日が出勤日で、ウィークデーは出先に行きっぱなしの僕は土曜日しか伝票を切って受注簿をつける時間がなかったので、土曜日でもよく暗くなるまでデスクワークをしていた。すると稲垣社長がトントンと僕の肩と叩いて「横山さん、そろそろ帰りましょう。」と言われる。(当時、稲垣社長は新卒の平社員も「さん」づけで、社員が7~800人になっても顔と名前を全員記憶していた。)もうオフィスには僕と稲垣さんしかいなかった。そう言われれば、急いで片付けて電灯を消してオフィスに鍵をかけていっしょに社屋を出るのだが、当然稲垣さんには社長車(デボネア)が待っていて、「横山さん乗ってきなさい。」とおっしゃる。一番最初は「断るのももしかしたら失礼かも」と乗ってしまったが、僕の上長たちに関していろいろ取材が入るので困った。それ以降はなんだかんだ言って同乗は丁寧にお断りした覚えがある。w

 その後も平社員でも気軽に声をかけてくださる稲垣さんをみんな敬愛の気持ちを込めて社員の間では「社長」ではなく、「稲垣さん」と呼んでいた。

 僕は稲垣さんに直談判したことが3回ある。1回目は同期のカミさんと結婚する時。当時もうアサツーは上場していたのに、社員同士の結婚では女性は辞めろということになっていて「じゃあ、僕が辞めます」と言ったら怒られるし、「それはおかしくないですか?」と食い下がったことがある。


 2回目はDAC(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム)を起案した時。デジタルガレージ社には「僕は稲垣会長を説得してくるから、君らは博報堂さんに行って一緒にやってくれるように頼んでくれ」と言って、稲垣さんと2人でお話した。今、朝日広告社さんのオフィスになっているビルの13Fの役員応接室だ。
 「博報堂さんと一緒にインターネット広告の会社をつくりたい」と言うと、稲垣さんは「2週間ほど前に博報堂の近藤会長と会食したんですよ。」と言う。「横山さん、私はその時に近藤さんに『アサツーを一企さんと合併させて、それを博報堂さんと一緒になってもらって電通さんに対抗する勢力をつくりましょう。』とお話したんですよ。」と言う。「げっ、そんな話オレみたいな小僧にしちゃうんだ。」と思って焦った。「まあそう簡単な話でもないんですが、まずは今までのように何でも競合会社ということではなくて、『協業できることが何かあればやっていきましょう。』とお話したんです。」「でも協業の材料がなにもなかったので、このお話はいいお話ですね。」と。まあそういう絶妙なタイミングでお話したことでDACは出来た。
 ちなみにこの時アキアというパソコンにインターネット広告の表示イメージをつくって稲垣さんに見せると「横山さん、これはミニコミですね。」とおっしゃった。この「ミニコミですね。」というフレーズも僕は一生忘れない。w


 3回目の直談判は、「DACを上場させたい」という話をしに行った時だ。
稲垣さんは「面白いじゃないですか。どんどんやりなさい。」と言ってくれた。そこで稲垣さんにお願いしたのが僕のパートナーをその気にさせるということで、1週間後に2人連れ立っていくと、稲垣さんはどうやってアサツーをつくり、どういう気概で仕事と会社経営に臨み、どういう目的と心持ちをもって広告会社で初めての上場を果たすに至るのかという話を1時間半くらい蕩蕩としてくれた。この時のお話は今も僕の財産だ。(日経で稲垣正夫版「私の履歴書」が読みたかった。)

 アサツーもDACもADKインタラクティブも、そして今も、僕のビジネスマンとしてのストーリーに必ず登場する最も影響力のあった「広告業界最後のカリスマ」が亡くなった。
 
 「稲垣さん、起案して持って行ったいろんな話をやらせていただいて、本当にありがとうございました。今の私があるのは稲垣さんのおかげです。」

 合掌。(涙)

PDCAのPはプライス? それともBudget ありきだからBDCA?

10 years 8ヶ月 ago

 従来、マーケティング活動特に広告キャンペーンの企画実施とその効果検証に関しては下記のようなプロセスが多かったのではないだろうか。

予算化した→予算を通すために使った稟議書に書いた企画概要をベースにオリエンする→予算を最も大きな与件として代理店が企画をもってくる→コンペでいいアイディアを採用する→プランどおりの実行を代理店に求める→キャンペーンが終わってから効果検証のための調査を実施する。

 そもそも予算化するためには、そのキャンペーンの目標が明確にないといけない。この目標だが、従来はかなりアバウトだった。まあアバウトなのも仕方のないところで、目標達成を確認する指標がとれないというのが実態だったからだ。
 しかしながら、今はキャンペーンの目標達成を指標でしっかり捉える時代である。KPIというワードもPDCAというワードもそれを前提としている。
 KPIもPDCAも多くのマーケターが普段から使う言葉になったはずだ。そうであれば、マーケティング施策を行うプロセスは、上記のような従来のままではいけない。

 予算が前提の施策の企画実施で、終わってから効果検証というのでは本末転倒。
それではPDCAのPはプライスなのか、またはバジェットから始まるBDCAだ。

 まず、
・どんなKPIをどの目標値まで上げる(下げる)ためにどんなキャンペーンを行うのか
・それにはいくらかかるのか
・実施中のKPI測定はリアルタイムで出来るか
・実施中にも方向修正(最適化)が効くのか
・目標が達成出来れば予算を使い切らずに済むか
・消費者の反応に対して新たなコミュニケーションを行う呼び予算はあるか
など


プランには具体的な目標があるはず。それを数値で示せというのは経営としては当たり前である。マーケティング施策を企画実施する部署は、数値化できてかつリアルタイムで捕捉できる指標を獲得しなければならない。それがKPIで、なぜリアルタイムかというと、キャンペーンが終わってから調査して把握しても、後の祭りだからだ。
キャンペーンの事前からKPIを測定しつつ、キャンペーン開始時点からリアルタイム測定がされている状況をつくることが大事だ。常に「打ち手」につながるデータ捕捉でなければならない。
KPIとは、KGIに連動する中間指標と定義することができる。売上と相関する指標をどう掴むか。宣伝部が予算を使うコストセンターか、投資対効果を最大化することでPLを改善するプロフィットセンターになるかはこうした意識の差から始まるだろう。
宣伝部とは事業部から資金を預かって、マーケティング施策によって特定のパフォーマンスにまで上げる資金運用者とも言える。ある意味トレーダーなのだ。

高速PDCAをすでに回している業界

10 years 8ヶ月 ago

  デジタル広告の配信設計や運用、トラッキングなどテックとマーケティングセンスを両方必要なサービス展開をしている業界に、ある業界からの参入組がかなりいるらしい。

 ベムが、DACをつくって黎明期に、ネット広告を扱う業界には当然経験者などいないので、広告業界以外からも様々な業種経験者に来てもらった。その中でネット広告に求められる資質があった2大業種というのがあって、ひとつは印刷会社経験者、もうひとつは旅行代理店経験者だった。
 印刷業界出身者は、とにかく機械どりなどが必要なので進行管理に関してはプロ。また旅行代理店経験者は何が起こるか分からないネット広告のトラブル対応に長けていた。基本個人客を相手にする旅行業界はトラブルとクレームの即時対応力がある。


 さて、冒頭のデジタルマーケティング/アドテク業界への親和性の高い業種経験者だが、「アパレル」らしい。というのも彼らが他の業界より、すでに商品開発から製造・流通・販売までのサイクルが極めて速い業界になっているのだ。売れなければ直ちに新たな商品にすげ替えるし、データもしっかりその「打ち手」に活用している。この高速PDCAサイクルが身についた人財は貴重だ。

 ベムはよく講演で、どうしてデータを活用するマーケティングが必要になったかという話をこう例える。「従来は年1回のマーケティング施策で良かった。その時は経験と勘でもまったく問題がなかった。経験と勘でも全く間違ってしまうということはそうそうない。しかし、微差が生じる。ちょっとだけズレる。これは年1回の時は問題にならないが、マーケティング活動のサイクルが早くなると、この少しづつのヅレが問題になる。よく目を瞑ってその場で小さくジャンプを繰り返すと、何十回も飛んでいると自分では同じ場所でジャンプしているつもりでも、部屋の隅まで行ってしまっていることがあるでしょ?だからデータを捕捉して、常に微差を修正しながらPDCAを回す必要が出てきたのです。」

 事業サイドでこの高速PDCAを廻して来た人は貴重だ。

「アパレル」出身者、うちも採用を考えようかな。

DSPはリタゲツールではない。

10 years 9ヶ月 ago

運用型広告と呼ばれるリスティングやDSPだが、DSPもまだまだダイレクトマーケティング利用ばかりで、CPA目標のリタゲツール化している。
 CPAが目的だから、特定の人の行動さえ喚起出来ればいい訳だ。

 ベムは楽器、特にギターをオンラインで買うことがある。(これは日本の楽器の精度が高いから出来ることで、海外で買うと店でフレット音痴がないかしっかり実物を調べてからでないと買えない。)特定のギターを発注しても、「在庫ありませんでした」メールが後から飛んでくることがある。せっかく注文したのに買えないという残念な結果だ。端から在庫がないことを表記しろよといいたいところだが・・・。そこにリタゲ広告が飛んでくる。まあ消費者の心理をまるで無視した所業である。

広告のひとつの重要な側面は「心理学」であることだ。行動を喚起できれば、その半作用としてブランドを毀損するような意識を受け手に与えることをよしとするのは、少なくても私がやってきた「広告」ではない。

ターゲティング出来るということは、広告を「当てたい人に当てる」だけでなく、「当てたくない人には当てない」ことなのだが、機能があるのにしっかり使わないのはいかがなものか・・・。

参照:『広告に接触すると買わなくなってしまい人もいる』
http://g-yokai.com/2014/09/post-336.php

 さて、肝心な話はこれからだ。

DSPとはデマンドサイドプラットフォームである。デマンドサイドつまり広告のバイサイドの仕組みだ。広告を買う側の都合で、好きなタイミングで、好きな入札価格で、好きなターゲットにだけ配信できる。効果ないと思えばいつでも止められる。

 この「いつでも止められる」を含めて、広告を買う側にとってこんな画期的なものはなかったはずだ。従来広告計画を立てて、それを忠実に執行することが広告活動であったが、今はリアルタイムで様々なデータを取得できる時代だ。事前のプランが最適であることなど有り得ない。「枠」ものは買ったら最後までやらなければならない。当たり前だが契約だから。
 「運用」型というが、この「運用」を行うところを「トレーディングデスク」というのは、本来は株式の運用のような感覚だからだ。
 
 株なら買って安くなってしまったら、ダラダラ持ってないで「損切り」する。損した分は他の銘柄でカバーして全体で利益が出るようにする。「枠」ものを買うとこの「損切り」してしまうことができない。
 
 広告主にとって画期的な価値をもった仕組みである「DSP」。

 2015年広告業界7つの予測 その5 にも書いたが、

  ベム曰く、
「事前にベストなアロケーションが決まっている訳ではない。運用でベストにするのだ。」
 が真実だと思う。

 しかしこのためにはリアルタイムで状況を把握するダッシュボードをつくって活用しないといけない。私の言うダッシュボードとは飛行機のコックピットにある計器類のことだ。これらの計器の示す数値をただ眺めて「ふ~ん。なるほどね。」と言っているだけだと、飛行機が落ちてしまう。計器類で高度や速度や進行方向また他の飛行機(競合ブランド)の位置・方向・速度を把握して、操縦桿をどう操作するのか(つまり「打ち手」)に即繋がらないと意味がない。そしてダッシュボードでのこの数値がこの閾値を超えたらこう対応すると決めておくことが大事だ。
 
なぜ海外では広告主が社内にトレーディングデスクを置いて自ら運用するのか・・。

 ブランディングコミュニケーションを目的とする多くの広告主がどうやってDSPを活用すればよいのか・・・。しっかりコンサルします。

 ダイレクトマーケターにも、「広告の心理学」をお教えします。

デジタル時代に浮き彫りになるTVCMの2つの欠点

10 years 9ヶ月 ago


 1982年私が広告会社に新卒で入社したとき、TBSで「クイズ100人に聞きました」の1社提供を同期が担当していました。当時は「この『100人に聞きました』の一番メジャーな回答をすぐに想起できることがアドマンの資質かもしれないね。」と言っていたのを思い出します。しかしデジタルマーケティング時代の今日、100人どころか1万人いても最もマイナーな回答までデータを使ってすべて「言い当ててしまう」ことが求められていると言えます。

 データドリブンに「シナリオ設計」をしてマーケティング施策を企画実施することで初めてデータは成果に結びつきます。

 データ分析からファインディングスがあっても、「ふ~ん。なるほどね。」と感心しているだけでは、マーケティング的には何の意味もありません。

 データドリブンにマーケティング施策を企画実施するには、そういう経験のある人でないといわゆる「シナリオ設計」のイメージが出来ないでしょう。いくら統計や数学に強いデータ分析のプロでも、その知見だけではダメなのです。
 
 では、マーケティングコミュニケーションに従来携わってきた伝統的な広告会社の人材のスキルがあればいいのかというと、そう簡単には行かないのが実態です。がっぷりデータと向き合うことが出来るかどうかは当然のことですが、まずもって、伝統的な広告会社では文化的に、「ひとつの文脈に修練させること」をやってきました。よって、コミュニケーション開発においては「できるだけ多くの人が、少しでも反応するように」つくるのが習い性となっています。しかし、前述の「100人に聞きました」ではないのですが、これからは、「このセグメントの人たちが強く反応する文脈はコレ」また、「別のこのセグメントの人たちが強く反応する文脈はコレ」というように複数のターゲットとそれぞれの「琴線にふれる文脈」を設計することが必要です。

 さて、本論ですが、この「出来るだけ多くの人が少しでも反応するように」つくることがTVCMの欠点になってきました。「みんなに刺さる」は「誰にも強く刺さらない」ことであり、「みんなに刺さる」ようにつくると、みんなが自分事化しないようになってしまいました。

 そして、TVCMのもうひとつの欠点。むしろこちらが重要かもしれないのですが・・・。
CMで特定のターゲットに刺さるようにつくると、そうでない既存の顧客ないし見込み客が離反してしまうということです。
 とかくTVCMを使うということは、マススケールつまり大きな売上を上げる商品であり、多くの消費者を獲得しなければいけない商品です。しかし、そのためにはいくつかの複数の層を対象にしなければならないのですが、その中のひとつのターゲット層または新たなターゲット層に刺さるようにCMをつくると、そうでない層の人が「これは自分向けのブランドではなくなった。」とブランドから離反してしまうリスクがあるということです。

 例えば、CMタレントを替えると、「このタレントがこのブランドのユーザーということなら、私は違う。」と思わせるコミュニケーションを図らずもしてしまう。

 「みんなに刺さる」は「誰にも強く刺さらない」、でも「ある層に強く刺さる」をつくると、顧客でいて欲しい別の層の人に「私は違う」と思わせるリスクがある。

 これが現代におけるTVCMの欠点です。

そこでオンラインの出番です。

ターゲティング出来るということは、「当てたい広告を当てたい人に当てる」ということだけでなく、「当てたくない人には当てない」ことでもあるのです。

日本のアドテクは北米を目指せ

10 years 9ヶ月 ago

 米国から発信されるアドテクベンダーのいわゆる「カオスマップ(LUMAscapes)」に日本の企業がいない。何百というプレイヤーのなかにひとつやふたついてもいいと思うが・・・。

 「広告ビジネス次の10年」にも書いたことだが、デジタルとグローバルは表裏一体、コインの裏表の関係である。つまりグローバル化しないデジタル技術は生存できない。だから積極的な日本のベンダーやネット広告サービスはアジア進出をする。しかし、鎖国によって守られてきた日本市場もだんだん状況が怪しくなってきた。アジアに出て行っても肝心な日本市場から日本製がグローバル標準テクノロジーによって駆逐されてしまうリスクがある。

 僕は前から「難しいのは重々分かっているが、何としても米国のカオスマップに名前が入るように北米進出をすべきで、アメリカから日本に逆輸入するくらいでないと、結局日本だけの技術の限界が来る。」と言っている。

 立場を変えて見れば、日本に東南アジアや南米あたりから「アドテクで~す」と言って売りに来られても最初は抵抗があって、そうそう信用するわけにはいかないだろう。だから日本から北米に売りにいくことが簡単でないことは言うまでもない。少なくてもネイティブな人間が営業しないといけないだろう。

 「ネイティブな人間が営業する」という視点で言えば、これは資本政策も含んでのことになるだろう。
 
 米国で日本からのテクノロジーが成功するには、日本で起業しててはやはり難しいということかもしれない。
 
 
これまでの発想は、
1)日本で起業した > 2)なんとかビジネスになった、余裕でた。 > 3)さあ、海外進出

だったが、この流れではなくて、たぶん、こんな流れ

1)世界を制覇したいぞ(少なくともアメリカ制覇したいぞ)アイデアあるぞ > 

2)アイデアを引っさげてシード投資が受けられるように米国で様々なメンター、エンジェルを回るぞ

3)無事にテスト、アクセラレーター支援受けられたぞ、3ヶ月西海岸で缶詰 >

4)無事にデモが認められ、事業拡大、投資ラウンド2へ、、、、

つまり、グローバルのテスト市場として、日本を選んではいけない、という事。

日本の1億2000万市場で事業を立ち上げ、日本ターゲットでうまくいってしまうと、
そこそこ食えてしまえる。ここで頭打ちで終わりとなる。もがいてアジアに行って、体力使って、日本国内が海外産に食われて終わる。
米国のスタートアップは、ほんとうに飲まず食わずで、モニターの前に寝泊まりして、
メンターと投資家とモニターの前でずーっと指導を受け、開発についやし、投資を募る営業をする。

 日本にもアクセサレーターがどんどん出てきてはいるか、これらの日本のベンチャーファンドから出資を受けてしまうと、その時点で(有頂天になってしまうのだろうけど)グローバル展開が出来ないという烙印になるんだと思う。

 むしろ、自力で米国で活躍できなくても「買わせる立場」になって、強力な外資に買収させるEXIT目標を持って、東証上場など目もくれず、外資傘下の懐に食い込んで行って、彼らのなかに入り込んで、グローバルプレイヤーとして立ち上げる成功例があるといい。

 というDINYの榮枝と会話をブログに上げてみました。

ちなみに、参考本あります。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4822249468/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4822249468&linkCode=as2&tag=edaeda-22

DINYからのレポート 「米国ヤフーがライトメディアを手放す」という方向性

10 years 11ヶ月 ago


~プレミアムエクスチェンジはオープンエクスチェンジからの撤退理由か~

ヤフーがライトメディアを手放す。

http://adexchanger.com/platforms/yahoo-finally-pulls-the-plug-on-right-media-exchange/


ザクシス・WPPがOpenAdstreamをAppNexusに手放し、YahooがRightMediaを手放す。プレミアムへの移行といえば聞こえはいいかもしれないが、結局勝者はグーグルDoubleClickの1社だけで、WPPもYahooもMicrosoftも負けたということだろう。WPPもYahooもおかげでプレミアムに進む道のりが明確になったという言い訳もできるでしょうが・・・。

この記事いろいろ面白いことが書いてあって、RightMediaの開発者のIPONWEBがテクニカルコンサルから手を引いたせいで「弱った」ということも出ている。またAppNexusが実はRightMediaを買いたがっていたというくだりもあります。

エージェンシーの戦略的買収 その2

10 years 11ヶ月 ago

エージェンシーの戦略的買収のその2

しかしピュブリシスといい、WPPといい、本当に金を使う。

今度はWPPがTESCOの流通データビジネスをしているDunnhumbyを20億ポンド(約2370億円)で買収する準備をしているという。

http://www.thedrum.com/news/2015/01/06/wpp-reportedly-preparing-2bn-swoop-tesco-s-data-division-dunnhumby

TESCOは世界4位の巨大流通、ウォルマート、カルフール、コストコの次に大きい。このテスコで集計されるポイントカードなどのデータビジネスを行う会社として、1989年から独立事業化されていて、リテールチェーンのコンサル事業、消費者分析で有名だそうです。
P&G、コカ・コーラを始め、400以上のCPGブランドが利用する2000人規模で世界30カ国にサービス拠点がある。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20131209/256852/?P=3

テスコはWPPのクライアントで、Dunnhumbyはパートナーとしてカンターなどと組んでデータソリューションを提供していたが、WPPはこれを「買い取る」方向で動いているようだ。


それにしても巨額な買収。

前エントリーで書いたピュブリシスのサピエント級である。

WPPは先日もIBMの提供するプラットフォームに8億ポンド投資することを発表しており、次々にすごいこと。

ただ、もうエージェンシー同士の統合という水平型M&Aは、トレンドではなくなったということだろうか。

WPPも「データ供給サービス」を柱にするという意思表明と思える。

本来は独自のデータを持たないエージェンシーが必死でデータを取り込もうとしている。


エージェンシーの戦略的買収 ~買う側の論理と買われる側の論理~

10 years 11ヶ月 ago

早速ですが、「2015年 広告マーケティング業界7つの予測」を補足するエントリーです。電通報で昨年2番目に多く閲覧された記事が「広告ビジネス次の10年」の書評だそうですが、ちょっと残念なことにこの書評にはグローバル戦略についてはノータッチです。

http://dentsu-ho.com/articles/1233

本の約半分で広告ビジネスのグローバルな環境に言及していて、日本では電通さんだけがグローバルメガエージェンシーになって一人勝ちしているが、グローバルな闘いは熾烈で鎖国を保ってきた日本も例外ではなくなったと書いたのですが・・・。

ただ、逆にそれが電通マンにとって幸せなことかというと、いつ隣にインド人の同僚が(具体的にはオンライン上の同僚が)来て「今日からデジタルによるグローバルスタンダードなプラットフォーム上で担当クライアントに対応します」と云われてお役御免になるかもしれないというリスクは、むしろ電通マンの方があるということも言外に書いている訳で・・・。たとえ日本企業でもグローバルスタンダードが海外現法からやってくる可能性は大きいのです。(むしろ電通さんはあえてそうしようとするでしょう。とはいえ他のエージェンシーはどっかに買収されてしまって大リストラということも有りうるので電通マンより安心ってことはないですわな。)

012.png 電通2014上半期レポートより。2015年3月期には日本は過半数を割る勢い。欧州、米州、アジア、日本とバランスを取る経営手法にシフトするのはまちがいない。


023.jpg
上の図は、参考2013年の広告ホールディング企業の買収数

 さて、7つの予測の中でもコメントしたピュブリシスのサピエント買収ですが、例のオムニコム×ピュブリシスの大合併がご破産になった直後に決定されている。
 それも$3.7billionだから120円で換算すると、何と4440億円、AKQAをWPPが買収した時が540億円(当時の円換算)だったから、デジタルエージェンシーとしては実に大きな買収額だ。オムニコムとの合併解消後ではあったが、ピュブリシスはこの案件を2年前から進行させていたようだ。WPPのマーティン・ソレルがこの買収を「振られた恋人症候群」と揶揄したが、ピュブリシスのモーリス・レヴイは「マーティンは恋のことに詳しいとは思わない。恋に喩えるならフランス人の方が得意だ。」と応戦していて面白い。

 サピエントのCEOのアラン・ヘリックは何と48歳。ピュブリシス・サピエントのCEOとなって、ピュブリシスグループのデジタルエージェンシーのレポートラインはモーリス・レヴィ直からアラン・ヘリックを経由する。72歳のモーリス・レヴィの後継者選びの新たな選択肢となるだろう。

 7つの予測のその1は、データプロバイダーとなるテクノロジー企業がエージェンシーを買収するというトレンド
 米国ではGoogleやフェイスブックに対抗しようとするメガエージェンシーの動きがM&Aとなってあらわれているが、日本ではほとんどのエージェンシーはデータプロバイダーと比較しても規模が小さく、一方的に買われる側だ。ただその何のアセットを買うのかという視点で言うと、「広告主の口座」、「媒体社の口座」、「エグゼキューション力」などが挙げられるものの、データを活用した企画・実行の出来るエージェンシーになるのはそう簡単ではない。大幅な人材の入れ替えとスキルセットの再構築と、これを指揮する知見と力のあるリーダーが必要である。ただ、旧態のままのエージェンシーの生き残りはもはや「買われる」ことでしかないのは言うまでもない。
 (買収されるっていうと日本ではとかくネガティブな印象だけど、買収される戦略ってのもあるんだよね。生き残るために・・・。)

2015年 広告マーケティング業界7つの予測

10 years 11ヶ月 ago

2010年から年初恒例の広告業界予測も今年で6回目・・・。だんだん文章量も多くなり今回は7000字近い。「広告ビジネス次の10年」の書評が昨年電通報で2番目に多く読まれたとのこと。本には書いてない次の10年のエッセンスも織り込みました。長文で申し訳ないですが、お付き合いください。


その1) データプロバイダーによるエージェンシー設立(買収)が始まる年

データプロバイダーとは、巨大流通企業、モバイルキャリア、EC企業、ポイントカード事業者などを中心とするビッグデータ保有企業のことである。彼らはデータの直販を目指す。

しかしデータはマーケティングのコメではあるが、そのままでは喰えない。コメを炊いて、炒飯なりリゾットにして付加価値をつけて売ることができなければマーケティング産業にはならないし、そもそも儲かる事業にはならない。
データをマーケティング的に価値づけするという作業は、商品開発やコミュニケーション開発やプロモーションプラン、メディアプランなど、つまりは広告会社がやってきたことだ。これをまさに「データドリブン」に行うことを標榜するマーケティング会社をデータプロバイダーが考えるのは自然な流れだろう。

「システム会社によるエージェンシー買収」ということであれば米国ですでに起こっている。というか、その次の展開を見せている。Sapientは、もともとはソフトウェア開発会社でかつデータプロバイダーとも言えるが、ここがエージェンシーであるNitroを買収し、SapientNitro社ほか2社の事業体でマーケティング、オムニチャネル、コマース、コンサルティングの領域で企業のデジタル対応を支援している。そして、これをまたピュブリシスが買収しようとしている。

 SapientはNitroの買収の前に、PGIというBelow the Lineの会社(おそらくWeb屋)を買収しており、そこからマーケティングエージェンシーシフトが始まる。NitroというAbove the Lineのエージェンシーを買った時は「リバース・ディール(逆ディール)」と言われた。

http://adage.com/article/agency-news/advertising-agency-sapient-buys-digital-shop-nitro/137361/

IT屋がWebの会社を買収し、エージェンシーを買収し、米国に3000人、インドに8400人もの社員がいるデジタルマーケティング会社となって、ピュブリシスが4000億円近い額で買収する。

 また巨大なデータ保有者であるAT&Tやベライゾンは、マーケティング会社を次々と設立しており、こちらもさらに大きなエージェンシーを買収、吸収してもおかしくない。(ただ通信会社によるデータマーケティングはいったん事業モデルの再設定を迫られているようだ)。

http://www.businessinsider.com/att-is-ending-its-adworks-mobile-experiment-and-laying-off-staff-2013-10

日本の場合も、データプロバイダーの事業体規模が大きく、彼らが広告会社を買収してくる力は十分過ぎるほどある。

 いずれにしても、広告会社のマーケティング「施策」を企画・実施する能力は、あらためて評価されるようになるだろう。データ分析は分析しただけでは価値を生むものではない。データ分析を「施策」化して、成果を上げることでしかない。企画力、エグゼキューション力を買われる広告会社が出てくるだろうが、彼らが本当にデータを活かした施策を企画実行出来るかは、そう簡単ではない。新しい人材と企業文化を生む強力な主導力と知見が必要だ


その2) オンラインビデオマーケティングの本格化と日本版マルチチャンネルネットワークが登場する年


http://www.ibtimes.com/why-disney-dropped-nearly-1-billion-maker-studios-youtube-channel-1572752


 マルチチャンネルネットワークとは米国ではディズニーに買収されたMakersStudioのように、YouTuberを束ねるというだけでなく、その先の視聴者を囲い込んでチャンネルを形成している事業体のことである。日本ではYouTuberをマネージメントしているというところまでに留まっており、視聴者をチャンネルで束ねるという思考がない。また入口としてYouTubeは必須ではあるものの、自社による動画配信テクノロジーとデータマーケティング装置も保有して高い収益性も獲得しようとしている。
 (*オプトさんがMCNについて書いているが、ちょっと踏み込みが浅い。彼らが視聴者を保有するテクノロジー企業だという認識にまで至っていない。)
http://www.opt.ne.jp/column/journal/detail/id=2596


 ここには、1本で何百万再生を目指すという考え方はあまりない。それはあくまで従来のCM発想を脱しきれていない。何万という制作者による何十万という動画が何千万という視聴者によって何十億もの再生回数をもたらす。また制作者はあくまで自分でつくりたいものをつくる。CMを安くつくらせるという発想ではなく、つくりたい動画を自由なセンスでつくり、そこに視聴者が集まり、それをスポンサードする企業が出てくれば良いのである。
 
 こうしたコンテンツに集まる視聴者を獲得するというのは、ある意味テレビ局と同じモデルと言えなくもない。ABCを所有するディズニーが買収したように、日本版が出来てくれば、テレビ局が関心を持つということもあるだろう。プロがつくるハイエンドなCMがなくなるということはないが、素人がつくる中途半端なCMが乱立するということもない。動画コンテンツをつくる者は自由につくりたいものをつくるから視聴者を集めることが出来るのだ。


 

その3) SIer主導の本格的プライベートDMPと「シナリオ設計」人材開発が始まる年

 今、日本でDMPと呼ばれているものは、ほぼDSPの機能拡張版である。つまりDMPによって最適化されるのは、DSPによるディスプレイ広告配信にとどまる。DMPによる分析の負荷はかなりのものだが、その成果がDSPによる配信だけではもったいない。
マスマーケティング展開する企業にとって、まだまだネット広告は一桁%であろうし、入札型のディスプレイ広告はそのまた一部でしかない。

 DMPは、2つの方向に展開する。ひとつは、3rdパーティデータを取り込んでの潜在層セグメントの方向。1stパーティデータ分析だけでの限界をマスマーケターがどう打破するかがテーマ。
そしてもうひとつは基幹システム系に繋がる骨太のDMPの方向である。特にSIer主導でCRMシステムとの繋ぎ込みと分析基盤構築が本格化するだろう。セールスフォース、アドビ、オラクル、IBMなどとそれらのツールをもとに一部開発を伴う分析基盤構築をSIerが行うモデルが増える。
 マーケティングシステムをスクラッチでつくることは今やナンセンスだ。かと言って、単にツール導入だけで済む話でもない。ツールと基幹のつなぎ込みをデータサイエンティスト人材の投入も含めて、SIerが基幹システムからマーケティング領域への進出のために行ってくる。

 ただ、彼らには「マーケティング施策」を導くための「シナリオ設計」を果たすまでは難しいと思われる。いくら統計や数学に強くても、施策の企画実施の経験のない者に簡単に「シナリオ設計」はイメージ出来ないだろう。

 すでにこういったことを理解したSIerが人材をどう獲得して対応するのかが見ものである。

 今年はこうした「データからシナリオ設計ができる人材」育成をめぐる動きが本格化するだろう。データドリブンとコンテンツドリブンを繋ぎ込むスキルが明確になり、こうしたスキルセットをもって機能することを標榜する会社が登場するだろう。

 また事業主企業内でも、DMPによるデータドリブンマーケティング組織のあり方について、かなり明確に定義づけられるようになってくるだろう。
 事業部、ブランドマネージャーという縦のラインに対して、ブランド横断的なデータマーケティング組織という位置づけである。ブランドマネージャーは商品視点だが、ブランド横断データマーケターはユーザー視点である。
 
 デジタル部門を設置する企業は多くなったが、ここでもデータ分析とマーケティングコミュニケーション開発を繋ぐ「シナリオ設計」=反応する文脈の設定を目的とするということが明確になってくるだろう。
 デジタルマーケティングセクションは、専門家でないと難しいし、面倒くさいデジタル
施策だけを投げられてくる傾向がある。ブランドコミュニケーションの本筋は相変わらずAE代理店が担当するだろうが、(それだけ大手代理店の「守り」が堅い)デジタル施策とそれによって得られるデータがブランドコミュニケーションの方向を揺り動かす事例が出てくるだろう。

その4) オウンドメディア戦略が変質する年

企業が自社Webサイトをオウンドメディアとする従来型の展開も少しばかり変化を起こすだろう。デバイスのスマホシフトがどんどん進むと、自社ドメインのサイトへの訪問を促すかたちだけでは十分な効果を獲得しづらくなる。

自社で情報サイトをつくり、それを縮図としてサイト訪問者を消費者、生活者として拡大推量してマーケティングすることにはすでに無理がある。自社サイト訪問を前提にしたB to Cのデジタルマーケティングは、新たな展開を見せることになるだろう。それと同時にDMPも従来の1stパーティデータをベースにするだけでなく、サイト訪問しないユーザーをどうセグメントしてターゲティングするかの時代になると思われる。

 またオウンドメディア戦略にとって動画コンテンツをどう扱うかは大きなテーマとなり、その意味でも自社サイト内展開の限界が露呈するだろう。今年1年ではまだ具体的な動きにまで行かないだろうが、マルチチャンネルネットワークを大手広告主がスポンサードしてくるトレンドの原点は、こうした環境に起因するだろう。

 

その5) 3rdパーティデータとしてのTV視聴データの流通する年

ベムは常日頃、マスマーケターにとって重要な3rdパーティデータとは、ソーシャルメディアデータ、購買行動データ、TV視聴データの3つであると言っている。そのなかでもまだまだ全数データとしては取得しにくいTV視聴データがマーケティングデータとして活用され始める年となるだろう。

VRの世帯視聴率は取引き単位ではあっても、マーケティングデータとしてはどうだろうか・・・。デジタルマーケティングを「デジタルデータによるファインディングスをもってマス・リアスを含むすべてを最適化する試み」と定義する時、最も巨額なテレビ広告の最適化を図る取り組みは、広告マーケティングのど真ん中にいる人たちにデジタルマーケティングの意味を再認識させるものになるはずである。

テレビ広告に携わる者こそ「デジタルに刮目せよ。」ということだ。

 その3にも書いたように、DMPによるマーケティング活動の最適化がDSPによる入札型ディスプレイ広告だけではつまらない。テレビ広告を最適化出来ればその改善効果も大手広告主なら何億、何十億にもなるだろう。
 
 従来、視聴質とは何かについてベムはオーディエンスの違いと考えていたが、オーディエンスの違いだけでなく、視聴態度の違いが大きいことが分かってきた。つまり専念の度合い、集中力の度合いが番組によって全然違う。また、番組の定番客を見極めることも必要だろう。こうした分析も可能なデータも取得されている。

 また、テレビとオンラインのアロケーションモデル構築も多くの大手広告主でチャレンジされることだろう。事前に予算化しないと始まらないのは分かるが、その先はやはりリアルタイムのKPI把握による、運用による最適化しかない。それだけ実際の変数は多く複雑で簡単にモデル化しようと思わないほうがいい。

 ベム曰く、

「事前にベストなアロケーションが決まっている訳ではない。運用でベストにするのだ。」

 

その6)キャンペーン型(送り手のタイミング)から通期型(受け手である消費者のタイミング)へのマーケティングコストのシフト  ~ダッシュボードによる即応型運用広告の原型が出現する年~
 
 マスマーケティング企業にも、キャンペーンという「送り手のタイミングでのコミュニケーション」から消費者の行動データから兆しを発見し、「個々のユーザーのタイミングに合わせたコミュニケーション」にマーケティングコストのシフトが始まる年が今年ではないかと思う。
 
 そのためには、マーケティング活動の成果として数値化できるKPIをリアルタイムでトラックする必要があり、一定の閾値を割ったら、すぐに「打ち手」を作動する仕組みが要る。通期で常時自社ブランドの閾値を維持する手立てを打っていける方が、キャンペーンだけで毎回減衰してしまうよりも、マーケティングコストはよほど効率的になるだろう。

0001.jpg  某大手グローバル広告主では壁一面のマルチスクリーンで、全国のメディア、SNSでの反応を「リアルタイム」で「全スタッフ」共有を図る。モニターの前には常に数名のブロガー、データサイエンティスト、ディレクターがチームで張り付いて逐次施策を出している。マーケティングダッシュボードの「氷山の一角」だ。


マスマーケターにとっては、マーケティングダッシュボードは競合他社を含むTV出稿データなども取り込み、すぐに「打ち手」を実施できるものでなければならない。競合のキャンペーンに対抗するために2~3ヶ月かけていたら、その間に失うコミュニケーション資産を取り返すのにはよりコストがかかる。


 また消費者ごとのベストタイミングを推し量るビッグデータ活用の仕組みづくりの探索は今年のテーマと言ってもいいかもしれない。
 
  ベムもポイントカードによる購買タイミング把握と購買サイクルに合わせた広告配信をプロデュースしてみたが、リーセンシー効果は確認できている。


その7) エージェンシーのプライベートマーケットプレイスと広告配信結果データ格納合戦開始の年
     

 
 米国のインハウストレーディングデスクの動向や、Xaxisの戦略を見ていると、これは大手広告主と大手エージェンシーの綱引きという様相を呈している。
 大手広告主のプログラマティック直取引に対して、プレミアム掲載面囲い込みと配信結果データ格納で対抗する大手エージェンシーという図式だ。エージェンシー側も「アービトラージ」で収益性を高めようと必死だ。一方大手広告主も、エージェンシーに掲載面やオーディエンスデータを囲い込まれたくはない。1stパーティデータを軸にするオーディエンスデータは自分たちの顧客データにニアリーイコールであって、自社保有データとして扱うのは当然で、ここをエージェンシーに依頼するつもりはない。

 一方、中小広告主は自分だけでは大量なデータを取り込めないので、巨大エージェンシーのデータを借りたほうが得策である。エージェンシーはデータ量で圧倒して大手広告主もどんどん取り込みたいのだろう。グローバル企業のような超大手広告主がいない日本では、むしろこちらの環境にある。

 グローバル大手代理店の広告配信結果データの格納とプライベートマーケットプレイスの構築はグループMや電通さんの宣言どおりに着々と進むだろう。ただ蓄積するデータが有効に活用できるかは、これから次第だ。データストレージが安価になったので、とりあえず保存してみるだろうが、それは、今はまだ単に倉庫に入れるという程度の話である。データストレージであってDMPとは言えない。エージェンシーが保有すべきDMP構築はかなり壮大で、企業のプライベートDMPより構築は困難である。メディアオーディエンスデータや有効な3rdパーティデータとのつなぎ込みを果たし、「さあ、あとは御社の1stパーティデータとつなげばすべて可視化できますよ。」と広告主に迫ることが出来るか、そこが課題だ。
メディア側も売ってもらう掲載面の買い切りは喜んでも、オーディエンスデータを簡単には渡さない。

エージェンシーのプライベートマーケットプレイスとデータ格納は金融業界でいうところの「ダークプール」になるのか。(「ブラックボックス」ほど何も見えない訳ではないが、よく見えない「ダークプール」(金融業界では「証券会社などの金融機関が、機関投資家などの注文を匿名で付け合わせて行う取引。証券取引所など公開の市場を通さず、市場での取引価格を参照したり、取引参加者同士が直接、価格や数量などの条件を交渉して価格を決定する」コトバンク参照)
 その方向を見定める年になるだろう。
 
 
 これは今年の予測ではなく、もっと中長期の予想であるが、広告のプログラマティックバイイングは、金融(株式の取引)のように、同じ主体が「買い」も「売り」もするモデルになると思う。「買ったものを売る」というか「融通し合う」という方が正確かもしれないが、企業間のオーディエンスの交換が行われると思う。
 
プレミアムな掲載面をネットワークしようとするプライベートチェンジ。しかしプレミアムが望ましいのは、売る側だけではない。メディアにとってプレミアムな広告主という基準もある。


さて、


総論として言えるのは
「やっとデジタルが企業マーケティングのど真ん中に入り込み出す年」ということだ。

 ・【デジタルだけを最適化するマーケティングの終焉】
・【アドテクプチバブルの終焉】
・【デジタル専門サプライヤーの価値低下とトラディショナル広告マンスキルの再評価】

 を明確にする年になると思われる。

ADVERTISING WEEK ニューヨーク や同ロンドンのように日本でも広告マーケティングの本流が当たり前のようにデジタルを取り込んで議論する新しい場が必要だろう。アド協の理事クラスの宣伝部長たちやテレビ局上層部がこぞって参加するアドバタイジングウィークTOKYOを期待したい。

確認済み
2 時間 58 分 ago
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