業界人間ベム

ブランドが自身で拡張のロジックをつくることが、プルの接点とプッシュの接点をつなぐことに繋がる

12 years 4ヶ月 ago

 プライベートDMPの導入コンサルを依頼される機会が非常に多くなっている。
企業がDMPを導入するなかで、トライすべきことのひとつが、自社でブランドごとのリターゲティング拡張のロジックをつくることだ。
 DSP事業者のブラックボックスの拡張ロジックを試して、DSPプライヤーを評価してもあまり意味はない。自社ブランドに一定以上の関心を寄せたユーザーに「似た」人とは(どう似ていることが、ブランドに反応する要素なのか)を突き止める必要がある。

 これはつまり、プルを獲得した人を分析して、プッシュをターゲティングするマーケティング技術である。

 ベムはおそらく日本で初めてのリタゲ拡張の実験を行ったことがあるが、拡張ロジックがブラックボックス状態では全く意味がなく、CPAさえ改善されれば良いというネットに閉じた施策になってしまう。認知してもらうべき対象をターゲットしてプッシュする作業にプルのデータを使うというこの施策は、まさにデジタルとマス/リアルを繋ぐものだ。

 Webマーケティングが本格的に始まってから十数年。マーケティングの大きな課題に「プルの接点とプッシュの接点をどう繋ぐか」ということがあったと思う。
 そのひとつの解答が、自社で自社ブランドの拡張ロジックをつくり、実際にパフォーマンスを検証する作業で得られると思う。これはプライベートDMPを導入する意味のひとつだ。

プルの接点.jpg

 この作業で得られる情報(インテリジェンス)は、すべてのマーケティング活動(マス、リアルを含む)の最適化に資するだろう。

広告反応データというリザルトラーニング

12 years 4ヶ月 ago

DSP/DMPに関わるデータ類の一分野に、広告反応データによるResult Learningがある。どんなクッキーが、どんな掲載面で、またどんなタイミングで配信された広告が良い反応を得たかなどが広告反応データということになる。もちろん変数はこれだけではない。

DSPと言うと、配信先クッキーの特定ばかりのように考える向きもあるが、実際には商品カテゴリーやブランドの特徴によって、反応変数は変わる。比較的購買リスクが高く、検討期間もそれなり長い商品カテゴリーでは、クッキーを特定するターゲティングは効果的なはずだが、そうではない商品では、必ずしも配信先クッキーばかりを追いかけるのが広告パフォーマンスを高める手段ではない。もちろんどんな掲載面が良い広告反応を得られるかは非常に重要なファクターとなる。これは広告に接触するユーザーの「モード」に合わせられるかどうかということでもある。どんな気分の時にその広告と接触するかであり、またある意味受け手のタイミングに合わせるという見方もできる。
リスティング広告とはまさに関心が顕在化した検索行動に対してカウンターで広告情報がマッチングされる訳で、ユーザーのモードとタイミングに合った配信になっている。
 

 PDCAという考え方を進めると、答えのひとつは『自動最適化』になる。
広告配信結果をフィードバックして自動的に入札を最適にコントロールする。最適化の要素にはモードやタイミングを掲載面や配信時間などを含めて学習することになるだろう。
 

 前回のエントリーに書いたように、パブリッシャーは、広告収入を最大化したいのなら、コンテンツもマーケティングして、マーケティング価値のあるオーディエンスを多く獲得するようにしないといけない。単純にPVの多いコンテンツを追いかけると、ゴシップやエロコンテンツばかりになってしまうだろう。オーディエンス(その文脈とタイミングごとに)とコンテンツをマーケティングすることはDMPによって実現するだろう。

 象徴的に_「枠」から「人」へ_というキーワードを私も使うが、従来との構造変化を説明するためだ。しかし物事そう単純ではない。広告配信にとって当然掲載面は重要である。しかし、ユーザーと広告の個別のマッチング(オーディエンスとそのモード、タイミング)が最適化されるということであり、クッキーか掲載面のどちらがいいかという単純な話ではない。

オムニコムとピュブリシス合併

12 years 4ヶ月 ago

衝撃的なニュースが飛び込んできた。オムニコムとピュブリシスの合併で、世界1のエージェンシーグループができる。グロスインカムは現在1位のWPPの1.38倍、米国だけでは何と2.15倍、米国以外でもWPPを上回る。

情報が入ってすぐに、ツイッターとフェースブックに、「こりゃまたスゴいことになって来ましたな。スケールで残るのはXaxisだけかと思ってたけど・・・。この合併で起きる事は面白いことにね。」とコメントしたが、どうやるそういう見方はこの記事でもしている。

http://www.adexchanger.com/agencies/the-publicis-omnicom-merger-scenarios-for-their-trading-desks/

全貌については、これからもっと詳細がレポートされるだろうが、さてWPPはどう出るか・・・。
マーティンはIPGは呑みこむつもりはあるのかな?

http://adage.com/article/news/publicis-omnicom-group-facts/243346/

広告反応データというリザルトラーニング

12 years 4ヶ月 ago

DMPに関わるデータ類の一分野に、広告反応データによるResult Learningがある。どんなクッキーが、どんな掲載面で、またどんなタイミングで配信された広告が良い反応を得たかなどが広告反応データということになる。もちろん変数はこれだけではない。

DSPと言うと、配信先クッキーの特定ばかりのように考える向きもあるが、実際には商品カテゴリーやブランドの特徴によって、反応変数は変わる。比較的購買リスクが高く、検討期間もそれなり長い商品カテゴリーでは、クッキーを特定するターゲティングは効果的なはずだが、そうではない商品では、必ずしも配信先クッキーばかりを追いかけるのが広告パフォーマンスを高める手段ではない。もちろんどんな掲載面が良い広告反応を得られるかは非常に重要なファクターとなる。これは広告に接触するユーザーの「モード」に合わせられるかどうかということでもある。どんな気分の時にその広告と接触するかであり、またある意味受け手のタイミングに合わせるという見方もできる。
リスティング広告とはまさに関心が顕在化した検索行動に対してカウンターで広告情報がマッチングされる訳で、ユーザーのモードとタイミングに合った配信になっている。
 

 PDCAという考え方を進めると、答えのひとつは『自動最適化』になる。
広告配信結果をフィードバックして自動的に入札を最適にコントロールする。最適化の要素にはモードやタイミングを掲載面や配信時間などを含めて学習することになるだろう。
 

 前回のエントリーに書いたように、パブリッシャーは、広告収入を最大化したいのなら、コンテンツもマーケティングして、マーケティング価値のあるオーディエンスを多く獲得するようにしないといけない。単純にPVの多いコンテンツを追いかけると、ゴシップやエロいコンテンツばかりになってしまうだろう。オーディエンス(その文脈とタイミングごとに)とコンテンツをマーケティングすることはDMPによって実現するだろう。

 象徴的に_「枠」から「人」へ_というキーワードを私も使うが、従来との構造変化を説明するためだ。しかし物事そう単純ではない。広告配信にとって当然掲載面は重要である。しかし、ユーザーと広告の個別のマッチング(オーディエンスとそのモード、タイミング)が最適化されるということであり、クッキーか掲載面のどちらがいいかという話ではない。

パブリッシャーがDMPを使うのであれば・・・。

12 years 4ヶ月 ago

メディア企業側からもDMP導入に関して相談を受けることが多くなった。

DMP導入に際しては、その導入目的をしっかり持たないといけない。DMPを使うことは目的ではない。何のためにDMPを使うかだが、パブリッシャーが使うとなると答えはほぼひとつ。コンテンツマーケティングのためだ。
 どんなオーディエンスがどんなコンテンツを欲していて、そのニーズを充足しているかどうかを明らかにして、より価値のあるオーディエンスをより多く獲得するためのコンテンツのマーケティングをするのでなければ、メディアがDMPを導入する意味はほぼない。

 しかしこれは、雑誌、新聞、テレビが歩んできた「プロだからハイエンドなコンテンツを送り手主導でプッシュする」という文化を変えろということになり、編集や編成制作側はとても受け入れないだろう。

 なので、そこを変える気がないなら、メディアは自前でプライベートDMPを導入してもあまり意味がないと思う。

 コンテンツ別のアクセス量というデータでさえ生かされているとは言えない状況では、オーディエンスを分析して需要を創造するコンテンツマーケティングなどほど遠い。

 ただパブリッシャーの誰かはそのうちこれを成功させるだろう。
単に、もともとユーザー側に顕在化しているニーズを充足させるだけでなく、そのオーディエンスだからこそ、そのコンテンツとの出会いを大いなる「発見」として高い価値の関与を生むコンテンツマーケティングを実践するところは必ず現れるだろう・・・。

1-10デザイン「カンヌ受賞」記念 ~「アイディアを実現するテクノロジー」と「テックに精通するから出せるアイディア」~

12 years 5ヶ月 ago

ご縁があってベムはワン・トゥー・テン ホールディングスの社外取締役を拝命しているが、嬉しいことに今回カンヌで、ワン・トゥー・テン デザインがJ・W・トンプソンの北京の「Missing Children」でテクニカルサイドを担い、モバイルライオンでゴールドを受賞し、しっかりクレジットされた。
 接点をつくらせてもらって、JWTの上海に1-10デザインが人材を送ってまだ1年経たないが、ひとつ大きな成果が出た。

http://www.canneslions.com/work/2013/mobile/entry.cfm?entryid=36497&award=2


日本サイドのメンバーも含め、下記がクレジットされている。

石坂: CD、プロディース、ディレクション、インフラ準備
長井: テクニカルディレクション、プログラム
横田: アニメーション、テクニカルサポート
坪倉: AR部分実装、テスト、テクニカルサポート
松井: サーバサイトプログラミング
高取: テクニカルサポート

さて、この話題を紹介しようと思ったのは、今後こうした「アイディアを実現する力」としてのテクノロジー領域の力と、テックに精通しているからこそ創出できるアイディアの双方が今後のマーケティングコミュニケーション開発に非常に重要な要素となることを主張したいからだ。

 マーケティングコミュニケーションの目標を達成するために必要なコンテンツは、読み物や映像だけでは立ち行かない。読み物や映像がダメという訳ではないが、これらはものすごいスピードで消費されてしまう。よほど企業が「メディア化」を進めないと追いついていかないし、顧客を惹きつけるコンテンツとしては、「使えるサービス」であることが求められる。
 この時代そうした「使える仕組み」づくりを支えるのは深くその領域に精通したテクノロジー集団である。
 「Missing Children」もアイディアとしてはJWT北京チームで既にあったが、「実現」したのは、1-10デザインである。
 そして、実現する力は、アイディアを創出する力でもある。

ベムが、JWT上海に席を置いて今回の仕事もプロデューサー役を務めた石坂くんを取材すると、彼は中国の劣悪な通信環境のなかでの困難さを力説してくれた。またまだまだ中国ではデジタルに精通したクリエータがいないため、要求のハードルが高いことや、思いがけない領域までフォローしないといけないことが多々あったようで、仕上げるまでの苦労は半端なかったようだ。
 今回はARや顔認証のテクノロジーが駆使されているわけだが、彼らは自前で開発してしまうこともあれば、既にある最適な技術を選択し、料理することもある。

 こうした技量は、従来、広告コミュニケーションの周辺にはなかったものだ。(むしろゲーム開発の現場にはあったかもしれない。)よって、広告代理店には、こういうスキルを評価できる素養があまりない。

 なので、広告主企業のマーケティングコミュニケーションの担当者は是非、自らこういう開発力を研究して欲しい。

 どういうテクノロジー知見が存在していて、彼らがどんな「使えるサービス」を開発しているか、そうした技量からどんなアイディアが創出できるか、自社ブランドに当てはめれば、どんなコンテンツ開発にチャンスがありそうか、そういうことを研究して欲しい。

 彼らのような集団は、マンパワーの関係で自分たちの開発力やアイディアを広告主にアピールすることに長けていない。というか、従来の広告のプレゼンテーションの流儀のなかでは上手に引き出してあげることが少々難しいのだ。(その意味では広告主の方が彼らに提案させることに長けていない。)
 
 次世代のマーケティングコミュニケーション開発に意欲のある広告主企業のマーケターは、是非彼らに歩み寄って、技量の引き出し方については、従来の広告代理店へのオリエンというかたちや、あまり期間のない多数社の競合プレをさせるようなやり方でなく、ちょっと違う付き合い方を望みたい。それが広告主にとって返って損にならないからだ。

 ベムも大いにサポートするので、こういう技量を是非育てていただきたい。それが何よりブランドのためになると確信している。

デジタルマーケティング時代は調査の既成概念を変えよ。

12 years 5ヶ月 ago

 Webの世界では、ログというかたちで行動データが記録される。そのため行動データによるマーケティングが可能となった。とはいえ、意識の変容を掴むには意識調査(アンケート調査)が必要である。
 ブランドサミットでもプレゼンしたように、ネット広告の効果は、クリックやビュースルーで目的のサイトにユーザー(見込み客)を誘導するトラフィック効果(またはレスポンス効果)と、広告を認知することで得られるブランディング効果がある。これらを前者は3PASをしっかり使って、後者も広告配信ユーザーへのWeb調査によって測定できる。

 私は、ネット広告の効果を従来のマスと次元の違うものとして、トラフィック効果とブランディング効果を混在させた中間的な指標をつくろうとするのではなく、トラフィック効果とブランディング効果を両方しっかり測って、それぞれを評価し、効果全体としては双方を足しあげるのが正解と考える。
 何故かと言うと、ブランドによって、(または販売チャネルによって)、トラフィック効果の価値と、ブランディング効果の価値が違うので、双方をそれぞれしっかり測ることで貢献の度合いを各ブランドが評価すべきだからだ。

 ただ、ネットのブランディング効果を測定する際に、従来のTVなどの広告認知率調査の概念とは違う考え方が必要になってくる。またデジタルが故に把握できるデータを上手に使いこなすには、従来の調査の考え方から意識的に脱却することを奨める。

 ベムがいろんなところで再三話しているように、ネット広告はある意味「広告しながら全数調査」しているようなものである。そして、ユーザーのURL閲覧や検索行動、ソーシャルメディアへの書き込み行動なども含め、ほぼリアルタイムに近いかたちで時系列変化を追えるデータ取得が可能であり、アンケート調査もネットではそうした性格をうまく利用する手がある。


・「全数調査」になる
・ほぼリアルタイム測定が可能


ビッグデータ時代って、全数で把握できちゃうので、サンプル調査して、拡大推量をかけるという従来の統計学の概念はすでにそぐわないのではないかと思える。

この考え方を、アルベルト社の山川会長を話す機会があって、確信に至った。

山川さんの主張も、「ビッグデータ時代は全数で把握できるので、ある意味統計学はいらなくなる。」というものだった。
そして「より定性調査の重要性が増す。デプスインタビューなどのしっかりした定性調査でモデル(仮説)をつくり、全数(ビッグデータ)で立証するプロセスが重要」と言う。

私も、DMPを活用することを考えると、大量のデータがないとクロス集計に耐えられないので、サンプル調査系データだけで立証するのは限界を感じる。(当たり前か)


 ネット広告では、配信したクッキーでユーザーを把握できるため、広告接触者か非接触者かどうか、また接触フリークエンシ―を認識できる。そのためフリークエンシ―別の認知率もしっかり採れる。
従来のマス広告の調査では、被験者を集団として捉えるので、例えば平均フリークエンシ―7.4とでる。しかし7.4回という半端な回数接触した人はひとりもいない。
ネットではフリークエンシ―7回の人の認知率と8回の人の認知率をそれぞれ出せる。

つまり、ネットでの調査は、ログデータとアンケート調査データがマージできる点でたいへん優れている。
 集団でなく、個別に評価できる「意識データ×行動データ」になることが従来と違う、そうしたデータを採れることを念頭に活用しないと「もったいない」のが、次世代調査となるだろう。

もうひとつの新しい概念は、調査する側のタイミングではなく、被験者である消費者のタイミングで調査できること。そして年1回や半年に1回でなく、ほとんどリアルタイムでソーシャルや検索行動やブランドサイト閲覧行動を分析するのと同様に、意識調査を走らせて時系列変化を追う手法も考えられる。

この時代、ブランドKPIを半年に1回出てくる調査データの中の指標にしても高速PDCAを廻すことは出来ない。

そして、繰り返すが、意識調査単独でデータを出すのではなく、ソーシャルアカウントごとの分析や、全ログデータ分析などと、調査を組み合わせるなど新しいデジタルマーケティング発想の調査が産まれるだろう。
従来の調査の概念に縛られず、様々なチャレンジをして、独自のブランドKPI(高速PDCAを廻せるKPI)を獲得できるマーケターは強い!と思う。

インターネットを始めて20年経った。

12 years 5ヶ月 ago

 93年にインターネットを始めたから、20年経った。この20年間の目まぐるしい進化と変容にはあらためて驚く。
 僕はパソコン通信じゃなくて、インターネットから始めた。しかもDOS/V機で・・・。ハードディスクがたった40MBというスペックで、ウィンドウズ3.1が動くと言われて買ったが、まあお世辞にも動くという感じじゃなかった。カメレオンというインターネットのスタートアップソフトでネット生活と洒落込んだものの、ブラウザもまだモザイクがあるかないかで(だいいち日本語のホームページがない)、ゴーファーとかニューズグループ、あとメールなんだが、メールする相手がまずいない。ニューズグループ内に、MIDIファイルがあって海賊版のレッド・ツェッペリンやデビッド・ボウイの何ビットか忘れたけどチープな音源があって、それを聴いてみるくらいが、最初のインターネット体験だった。

 JOIが社長をしてたPSIネットというプロバイダーに入ったけど、そのころの日本のネットユーザーはいったい何人いたんだろう。秋葉原のラオックスのコンピュータ館の4Fがたしか全フロア、パソコンソフト売り場だったが、ほとんどが98のソフトで、マックが棚4~5くらい、DOS/Vにいたっては、(IBM/AT 互換機用と言っていた)棚の半分くらいという悲惨なDOS/V&インターネットユーザーは、しないでもいい苦労をたくさんしてきた。先取りしたのはいいが、誰も教えてくれないから、障害だらけだった。
 
 96年にインフォシークを立ち上げて、広告セールスを始めた時も、最初は毎日30万PVになるとサーバーは落ちるは、それが何故かわからないは、サーバーが落ちると放送事故と同じだから3倍返ししろという代理店のおやじはいるは・・・。まだ「ピ~ひょろひょろ」のダイヤルアップ時代、夜11時がゴールデンタイムのインターネットは、まだ技術系の人のものであって、情報システム部門の人がターゲットの広告が多くを占めていた。
 なので、日本で最初のアドネットワーク=DACネットワークをつくって、OS別配信でUNIX配信をすると、サンマイクロシステムさんの情報システム部署向けのセミナー広告はクリック率が28%もあった。
 
 インターネット広告の価値を一挙に上げてくれたのは、やはり孫さんだ。街頭でモデムを配るという凄まじいプロモーション活動は、ADSLを普及させ、常時接続、定額、高速通信を実現させ、ネットユーザーの拡大と共にひとり当たりの接続時間も3倍以上にもなった。おかげで、ネット広告市場は一気に拡大し、DACも恩恵を受けた。
 
 93年にインターネットを始め、その翌年に世界で最初にバナー広告が始まったの受けて、その2年後にネット広告を売る会社を立ち上げ、そのまた2年後に日本で最初のアドネットワークをつくり、さらにその3年後に会社を上場させた。そのスピード感は決して遅いものではなかったと思う。それもインターネットがすごいスピードで進化するからこそで、それに乗っかって自分も常に変化していけた。いまだに退屈することはない。

 82年に新卒で入ってから既に広告業界に31年いる訳だが、その2/3はネットユーザーだったことになる。もちろん長けりゃいいってもんじゃないけど、この20年にネットと広告にまつわるエポックメイキングな意味のある出来事を、歴史的評価を含めて書き留めておいた方がいいかもしれない。

トラディショナルな広告マンがデジタルを勉強しない訳

12 years 6ヶ月 ago


①たかがネット広告とバカにしている。(でも内心不安でいっぱい)

②今さら恥ずかしくてデジタルの勉強などできない。(確かにもう遅い)

③何とか逃げ切れるだろうと思っている。(その考えは甘い)


 大概、本当にハイエンドなブランディングコミュニケーション開発に携わったことのある一流広告マンであれば、少なからずデジタルマーケティングの重要性を認識し対応できているとは思う。もちろん優秀なSPプランナーもしっかりデジタル対応できているだろう。総合代理店と言ってもピンキリなので、受け止め方は様々だろうが。
 
 前回のエントリー(アドテクノロジーの人が「広告」を知らないということ)に多くの反応があったのだが、おそらくアナログ広告マンからは、いわく「こういう広告を知らない人たちに現場の主導権を奪われつつあるのが問題だ」とか、「結局なんにも知らないこういう人たちにひっくり返されるんだろうけど・・」というような実に情けないコメント。いかにも自分は広告コミュニケーションのプロのような口ぶりだが、一流のアドマンならこんなことは言わない。

 広告コミュニケーションの知見、経験がしっかり身についているのなら、ちゃんとデジタル勉強して対応すれば、彼らは怖くないはず。
 主導権を奪われているのは、しっかりデジタルに対応できてないからでしょ?

そもそも、アナログ広告マンが、ネット広告仕事をしようとすると、まず経験したことのない「デジタルストレス」に晒される。ネット仕事は、まだまだ確立していないので、いろんなレギュレーションがあり、多くの例外的対応を余儀なくされる。地雷原ばかりなので、必ず事故も起きる。その上、ここで終わりという息の抜けるところがないので、従来のマス広告やプロモーションの仕事をしてきた広告マンには、デジタルストレスが立ちふさがる。
 今から対応するには、確かに大きな障壁がある。もちろん年齢の問題もあるが、それだけではない。

 確立している従来広告ビジネスに慣れてしまってから、デジタル業務に入ると、ストレスが大きい。問題は順番で、まずはデジタルストレスに慣れてから、マスを覚える方がうまくいく。その意味では新入社員はまずデジタル部門で研鑽させたほうがいい。3~5年鍛えたら、営業に出してビジネス全体をコーディネートさせるといい。
 デジタル知見がある人材がフロントに立つことが、総合代理店に一番求められている。フロントにデジタル知見がないから、そもそもデジタル仕事をゲットできない。いいデジタル仕事が獲れなければ、いくら優秀なスタッフがいても、そのスタッフもすぐスポイルされてしまう。それだけデジタル仕事は生ものであり、どんどん進化していく。半年先端に近い仕事ができなければ、スタッフは劣化する。そのためにもクライントと日々インターフェイスするところにデジタルスキルを配置しなければならない。
 
 総合代理店は何でもワンストップで営業が窓口となり、様々な専門スタッフを連れてくるのが流儀であったが、もうそうした手法は限界だ。
 このスピード感の求められる時代に、クライアントに行ってその場で解決できないのは、クライアントにストレスを与えるだけ。いちいち「スタッフに訊いてきます」では話にならない。そんな代理店に頼まなくなるのは当然だろう。

 経営層だけでなく、中間層もデジタルマーケティングへの認識と一定以上の知見のない代理店の20代の若者は、会社の看板など要らないように次世代アドマンとしての研鑽をすぐ開始しなさい。若いから大丈夫ではない。今やっていないことがリスクなのです。

アドテクノロジーの人たちが「広告」を知らないということ ~応援しているからこそちょっと厳しいことを言うと・・・~

12 years 6ヶ月 ago

残念なことだが、アドテクノロジーやネット広告サービスをビジネスとする人たちの多くが、「広告」を知らない。というか、広告コミュニケーション開発やマス広告のメディアプランニングや実施の実務経験がない(代理店や宣伝部経験がなければ、仕方ないけど・・・)のに適切な勉強をしていない。

そして、アドテクノロジーの人の多くが「広告を知らない」ということがどういうことかが分かっていないで、簡単に「広告コミュニケーション」を語る。
ベムはアドテクノロジーの人たちの多くと懇意だし、みな素直で頭のいい子たちばかりなのだが、理屈だけで「従来の広告はこうだから・・・」とやったことのないことを安直に語るんだな、これが・・・。(ああ、そんなこと言うとまた高広くんに突っ込まれるのになあ~と思いながら聞いてる。で、大概、思ったとおりになる。w)

その上、今年で18年目になる日本のネット広告やWebマーケティングの歴史で、何がどう積み上がってきたかもよく知らない。アドテクノロジーやってるんだから、せめてこの領域のことくらいは理解していて欲しいと思う・・・。

アドテクノロジーじゃなくて、マーケティングテクノロジーだろって話もあるけど、そうであってもテクノロジーは知っていてもマーケティングを知らない。「広告」もマーケティングの一部だしね。

こういうことを云うのは、私がテクノロジーベンダーの諸氏を応援しているからなのです。マーケターの課題を理解して、単にプロダクトアウト型の提案をするのではなく、ソリューションを提供するパワーをつけて欲しいのです。そのためにも「広告」や基本的な「マーケティング」を知る努力が求められる。

アドテクノロジーの人たちにも今からでも「広告コミュニケーション」を知ること、つまり、広告コミュニケーション開発の実際を知ること、または、そのために土台となるコミュニケーション開発のエッセンスや基本行動様式を理解する努力をしてほしい。マス広告はどうやって取引されていて、メディア戦略はどう組み立てられていて、上流から下流のビークルプランに落ちてくるのか、を知って欲しい。
リスティングの広告文の100本ノックじゃなくて、マス広告のコピーライティングの1000本ノックとか、事例研究、コンセプトワークのトレーニング、撮影現場を見るなどやれることはいっぱいある。
以前広告制作の現場にいた人が、ネット専業代理店に転じて、「撮影」がないことに驚いたと言っていた。パンフレットや雑誌広告の撮影、CMの撮影・・・、写真画像や映像という情報量の多いクリエイティブに携わるのと、テキスト広告文やバナー画像(素材は既に出来上がってる状態)だけと向き合うのと、それらの制作プロセスに関わるのとでは、ずいぶん幅が違う。もちろん撮影という画づくりが始まる前の表現コンセプトを揉むところが肝心なのだが。

テクノロジーはテクノロジーだけではほとんど価値を生まない。テクノロジーを使いこなす人の資質や知見として必要なものを、今のうちに再確認して、どうスキルとして確立するかを考えて、人材育成プログラムを発動していかないといけない。

「広告は変わる」けど、「広告」はなくならない。

広告コミュニケーションの経験者が、テクノロジーをおぼえるのか、テクノロジー側の人が広告コミュニケーションをおぼえるのか、双方に道があるようにしなければならない。ベムはテクノロジーの人にコミュニケーションの知見を与えるためのプロセスを考えて提供できるようにしたい。自分が広告のコミュニケーションの人であって、テクノロジーを学習してきたが、こちらも有力なプロセスだが、データサイエンティスト的人材育成には、いささか限界を感じないでもない。
データ(数字)をインテリジェンス(情報)にし、シナリオとしての仮説を頭の中に描ける人をMathmanのなかから育成したい。
 
広告会社は、数学、統計、計量経済学なんかやってきた学生をどんどん採用して、データサイエンティストとして活用しつつ、広告コミュニケーションが実践できる場において育成することを考えないとね。代理店にいるのに「広告」を知らないなんてことがないように・・・。
代理店のリソースは人材とクライアントの口座だけだからね・・・。

『広告主』って言葉、もうやめる?

12 years 6ヶ月 ago

 広告主、アドバタイザー・・・、広告の発注者ってことですよね。これからも広告を出稿したり、制作したりすることには変わりないんだが、いわゆる「広告」を買うばかりがブランド側の施策ではない。ではないどころか、ブランドが自社でやることがグンと増えて、ペイドメディアの発注者であるところの「広告主」ってワードがブランド側の立場をぴったり表す言葉にはならなくなってくる。

 ブランドはオウンドメディアを中核に、またDMPなどによって顧客と未来の顧客をデータベース化して、都度ベストな方法でベストなタイミングでマッチングされたメッセージをプッシュできるようになる。
 そもそも配信先データベースはブランドが持っていて、買う側の論理(買いたい価格で買いたいタイミング)で掲載面だけ買うことになってくる。

 そもそも広告主というワードには、メディアの掲載基準をクリアした発注者かどうかと、最終責任者である立場を明確にする意味がある。SSP側の仕組みで、掲載面のサプライサイドとバイイングサイドとで都度マッチングが行われると、メディアやビークルごとに掲載基準でこの業種はだめだとか、いいとか。広告代理店の営業が中に入って、どうだこうだする必要もない。
 ペイドメディアの売り買いでさえそうなると、なお「広告主」って、これからのブランド側、マーケター側を示すワードではなくなるのではないでしょうか。


 広告主協会がアドバタイザーズ協会に名称変更して久しいが、業界ではやはり「広告主」って言う。滑舌の悪い代理店の経営者のせいで、「アドバタイザー」って普及しないわけではないだろうが、アドだけでもないマーケティング活動の主体を、ブランドというかマーケターというか、いずれも合意がないと通じないが、「広告主」の方どう思います?

マーチャンダイジングこそ最強のコミュニケーション

12 years 6ヶ月 ago

 ベムは昔、ダイレクトマーケティング事業をクライアントと合弁会社をつくって行う案件の担当をしたことがある。最初は広報事業だったが、ビジネスとして拡大していく。その拡大とは、当初のメイン商材で顧客になってくれた会員に対するいわゆるリストマーケティングになったからだ。具体的にいうと、数万円以上する年1回の限定販売商品を頒布するメンバー会員を募り、この数万人の顧客に対するマーチャンダイジングをするモデルになった。限定された顧客リストに対して、モノやサービスを開発するのだ。これは実に面白い体験だった。
 この経験で認識したのは、マーチャンダイジングこそが最強のコミュニケーションだということだ。「あなたのためにつくったこの商品(サービス)です。」というメッセージは強い。もちろん売れないものもたくさんあった。半分メーカー、半分デパートの外商のような仕事は広告会社の人間としては実に新鮮だった。

通販マーケティングは基本的に、まずは不特定多数に告知して、商品の購買を促し、顧客化したあとのリテンションを促すものだが、特定の顧客リストに対するマーケティングをしようとすると、肝心なのはマーチャンダイジングだ。
新規顧客獲得、リピート、ロイヤルティ獲得というCRMの概念に、DMPによる商品開発でLTV最大化を組み込む時代が来ていると思う。
つまり、既存商品の販売量をKGIとして、コミュニケーションを問うことばかりするのではなく、ロイヤルユーザーと伴に商品開発をするということだ。
 メーカー思考だと、シーズが特定されていると思いがちだが、実は顧客をベースにマーケティングしているので、今の上顧客は何を欲しているかを探索して、あらゆる商品やサービスを提供するという意識に転換しないといけない。シーズは顧客の方なのである。

 特にマスブランドの企業がダイレクトマーケティングをするということは、むしろそういうことなのではないだろうか。メーカー思考ではなく、リテーラーになったつもりで、顧客視点で、ダイナミックなマーチャンタイジングを行う発想を取り込む必要がマスブランド企業にはある。
 この思考が、従来のマスマーケティング事業部と融合することが、B to C企業全体のマーケティングを変革することに繋がる。

 商品力を問わず、コミュニケーションだけ最適化するダイレクトマーケティングには限界があると同時に、マスマーケティング商材を抱える企業内でのシナジーが効かない。マス企業のダイレクトマーケティング部門の使命は、独立事業部として売上げ利益を上げるだけでなく、直接顧客を知っているからこそ出来る顧客視点のマーケティングを全事業の資産として生かすことだ。

 よって、企業がプライベートDMPを構築していくためには、CRM事業部門の参画が欠かせない。
 ダイレクトマーケティングしかしない通販事業者にも当然DMPがマーチャンダイジングに活用のチャンスはあるが、マスマーケティング企業こそ、せっかくダイレクト事業をもっているなら、これらを繋ぐことが求められる。

 つまり、経営トップがこれを理解し、経営判断することが求められるのだ。

エージェンシーランキングから趨勢をみる。

12 years 6ヶ月 ago

少しばかり話題にするのが遅れたが、昨年のエージェンシーランキングをアドエイジ誌が発表している。
 トップ20位までを抽出すると、(見にくい表で申し訳ない。一番右の数字が前年比伸長率%なので、ここを見てください。)

AGENCY HEADQUARTER 2012 2011 %CHG
1 WPP London 16,459 16,053 2.5
2 Omnicom Group New York 14,219 13,875 2.5
3 Publicis Groupe Paris 8,494 8,086 5
4 Interpublic Group New York 6,956 7,015 -0.8
5 Dentsu inc, Tokyo 6,390 5,951 7.4
6 Havas Puteaux 2,287 2,291 -0.2
7 Hakuhodo DY Tokyo 2,184 1,934 12.9
8 Epsilon Irving,Texas 1,223 1,146 6.7
9 MDC New York 1,071 940 13.9
10 Experian MS New York 947 791 19.7
11 Acxiom Little Rock, Ark 823 819 0.6
12 Sapient Corp Boston 772 686 12.6
13 IBM Interactive Chicago 717 439 63.3
14 DJE Holdings Chicago 690 629 9.7
15 Cheil Worldwide Seoul 597 461 29.7
16 ADK Tokyo 580 580 -0.1
17 Aimia Montreal 486 574 -15.3
18 Media Consulta Berlin 481 460 4.6
19 Groupo ABC San Paulo 402 448 -10.3
20 inVentiv Health New York 388 363 6.9
出典:アドエイジ誌

 注目なのは前年比の伸長率だ。
前年比63.3%という驚愕の伸長を果たしているのが、IBM Interactiveだ。前のエントリーで「広告代理店対システムインテグレーター」と書いたが、融合モデルが次世代エージェンシーであり、テクノロジーエージェンシーというかたちが有望なことを物語っていると思う。同様にExperin Marketing Service も20%近い伸びだ。Experianのマーケティングサービス部門のこの会社がエージェンシーランキングに入っていることはある意味アドエイジの見識でもある。Experianは米国の一般人の理解では「個人のファイナンシャルスコアを算出する会社」=銀行や、ローンや、クレジットカードの利用状況を把握し、スコア化して、ローンの利率や査定に役立てるデータを出す3強の一つだ。こういう会社のマーケティング会社が遠慮なくどんどん伸びてる。ベムはデータ活用推進派だが、この手のデータがどこまで使われてるんだろうと脅威に感じないわけではない。

次に注目は、韓国のチェイルワールドワイド。サムスンのAEだからこの伸長率も納得。(サムスンは世界一の広告出稿社になったようだ。)
一昨年秋、ベムはソウルに招かれてチェイルのデジタルマーケテイングリーダーズカンファレンスで、基調講演をやってきた。2000名弱の社員の内800名以上が海外だと言っていたから、正真正銘ワールドワイドなエージェンシー。キム会長は日本語もペラペラ。全部日本語でお迎えいただいて恐縮した。
とにかく勢いがある。一気にADKが抜かれちゃったね。

また出身はカナダのMDCグループ。最も早く自社システムでエージェンシートレーディングデスクを立ち上げたグループである。経営にこうした先見性と機動力があることが奏功しているのだろう。

 さて、話を5大メガエージェンシーグループに移すと、一昔前に比べてるとインターパブリックの不振が目につく。WPP、オムニコム、インターパブリックの3大メガエージェンシーだったはずなのに、ピュブリシスに抜かれてんだね。
電通は単独では今も世界一だし、Aegisの買収で完全にグローバル・メガエージェンシーになった。実態はそうじゃないという意見もあるが、
http://astand.asahi.com/magazine/judiciary/fukabori/2012092000008.html
 ベムはそうは思わない。2位以下とは次元の違うグローバル化を果たしていると思う。電通アメリカの動きなど見ていると今までと全然違う。

 ところで国際会計基準だと、エージェンシーの売上げとは日本でいうところの売上げ総利益だ。Gross Incomeってやつだ。電通さんも国際会計基準にするという記事もでてましたな。日本でいう売上げつまり扱い高はBillingというのかな?WPPだとおそらく日本の広告費より多いんじゃないかな。ただ海外ではBilling(扱い高)はほとんど意味がない。
 日本で扱い高にこだわるのは、メディアの扱い高シェアが問題だからだ。営業部門からすれば本来は総利益がすべてだが、仕入れ部門からすると、仕入れ額がそのエージェンシーの仕入力の指標だから扱い高主義になる。だが、もうそういう時代じゃなくなるだろう。日本の広告代理店というところは、従来、経営陣でもBSどころかPLもろくに読めないのが多い。人件費が何にどれだけかかっているか管理できていないので、総利益まででしか評価できていないケースもまだある。まあ経営が前時代的なんですな。営業利益ベースで管理できないようでは経営などできない。逆に言うと、昔はよくあんなどんぶり勘定で経営できたもんだなと感心する。

 ところで、WPPって何の略か知ってますか?と先日のセミナーでも受講者に訊いてみた。まあ有名な話だから広告関係者はほとんど知ってるでしょうが、Wire Plastic Products なんですな。ワイヤーとプラスチックを扱って籠かなんか作ってた会社の法人株を買って、持ち株会社にしたわけです。ベムはアサツー出身なので、BBDOと提携した時とWPPと提携した時の違いを体験的に言うと、BBDOは広告会社なので、マーケティングのフィロソフィーやメソッドを教えてくれた会社だ。マーケティング部門に心理学博士がゴロゴロいるのでビックリしたのを憶えている。BBDOウエストのLAオフィスとCM制作した時はハリウッドクリエータを自在に駆使できるそのクリエイティブ開発力には脱帽だった。
 一方、WPPはホールディング会社なので、そういうクリエイティブやマーケティング手法での具体的な連携がそんなにあるわけではないように思う。グループのJWTやOMも競合会社だしね・・・。日本以外ならグループのリソースはもっとうまく使えるだろうが、そこは日本の特殊事情がいろいろあって・・。

 
 アドエイジ誌のランキングにどんな会社が入ってくるかは、その時代の趨勢を反映している。そもそもアドエイジがエージェンシーとしてどんな会社をランキングに入れるかからしてそうだ。IBM Interactive や、Experian Marketing Serviceがこのランキングに入っているところに意味がある。
 ベムは日本国内で競合する広告代理店同志で合弁会社をつくるということをやってみた。しかし、これからはシュリンクする広告業界内でシェイクハンドすることはもうあまり意味はないだろう。いかに業界の外のプレイヤーと組めるかという視点が大事だ。

「広告代理店」対「システムインテグレーター」

12 years 6ヶ月 ago

 「ゴジラ対キングギドラ」みたいなイメージにしたかったが、いまいち迫力が乏しいのは両方ともあまり勢いがないからかな。

広告代理店は、メディアの枠を売ることで成り立っている。もともとはスペースブローカーで、新聞の枠を売るために、「広告文も書きますよ」から始まって、CMクリエイティブや調査、マーケティング、プロモーション、PRなど様々なサービスを提供するようになったが、結局は広告枠を売るために提供しているサービスだ。
 
 一方システムインテグレーターの収入源はもちろん発注する企業ごとのシステム構築にある。巨額なコストがかかることでは、広告メディアと似ていて、ここで利益を上げるので、それに至るまでのコンサルなどのサービスは、そのものがゴールではない。

 一部のシステムコンサルも、マーケティングコンサルのようなことにチャレンジして元広告代理店マンを入れたりしてみているが、そううまくいっているとは聞いたことがない。

 もともと会いまみえることのない両者であったが、今後競合することになりそうだ。(逆にいうと、競合できない広告代理店は市場から退場するだろう。)
広告マーケティングの世界にも、「データが通貨」という時代が迫っている。そして、システムインテグレーターも業務管理システムなどの「守り」のシステムからマーケティングテクノロジーの世界に進出しなければならないからだ。マーケティングテクノロジーをスクラッチでつくる企業はほとんどない。
 

 その領地争いの舞台になりそうなのが、DMPである。
広告業界は、DSPの機能拡張型DMPにまずは乗り出すだろうが、本丸は企業が広告の最適化に留まらず、商品開発ほかすべてのマーケティングに活用するためにある。
 そもそも巨大なデータを扱ってきたシステムインテグレーターにとって、基幹システムから上流のマーケティング領域に踏み出すチャンスでもある。
 しかし、DMPはターゲットセグメントをかけたあと実際にメッセージを当ててみて反応をとることで実証しないといけない。その意味での広告配信は必須なのである。

 アドテクノロジーとマーケティングテクノロジー、これらの領域には様々な機動力のあるテクノロジーベンダーがいる。
「かゆい所に手が届く」開発を一生懸命やっている彼らを応援したい。利用者となる企業も是非、中小規模でもテクノロジーベンダーと直接向き合って、どんどん要件定義をして、より良いシステムをお互いにつくるくらいの姿勢であってほしい。

とはいえ、大手エージェンシーも、システムインテグレーターも、それを黙って観てはいないだろう。(しかし日本のエージェンシーは米国でのATD/DMP攻防戦に比べると、あまり分かっていないようだ。『DMP入門』の補稿をご覧あれ。)
そういう意味では、彼らと思想を共有し、しっかり味方につけるのは、エージェンシーかSIerか・・・。
アドエイジ誌のエージェンシーランキングで、上位では最高の伸び率を示しているのがIBMのインタラクティブエージェンシー部門(法人?)であることを気付いているだろうか・・・。

ブランド力の可視化とデータサイエンティストを「口説く」こと

12 years 6ヶ月 ago

 最近、重回帰分析によるマーケティング投資の最適化の仕事に関わることが多い。

実際に何が売上にどのくらい貢献したかを見ると、短期的な広告投資は意外なほど効いていない。ベースラインという広告やプロモーションを打たなくても売上が上がるラインがたいへん大きいのが分かる。実はこれこそがそのブランドや企業の資産である。もちろんブランド力とかコミュニケーション資産、流通への配荷力、営業力いろんなものの総体である。

 デービッド・アーカーが「ブランドエクイティ」という概念を提唱してから、ブランド力を定量化する試みはいろいろされてきたかとは思うが、本当にこれを可視化するのは難しい。
 ベースラインというのは、解析不能という意味でもあり、データマイニングをするサイエンティストには未確認のゾーンということになる。

 私は、数学や計量経済学をやってきたような地頭のいい人材に、是非我々のマーケティングコミュニケーションの世界に入ってきて欲しいと思っている。こうしたことが出来る頭脳は、従来の広告屋を鍛えてどうにかなるレベルではなく、「データ取扱い者免許」みたいのを持っている人に、「広告コミュニケーションって面白いでしょ?」「このベースラインというブランド力みたいな訳の分からない部分を可視化してみないか?」のような甘言を用いてこちら側の世界に連れ込みたいと思っている。

でないと、マーケティングコミュニケーションの世界は立ち行かないからだ。

96年にインターネット広告の転じて、日本初のアドネットワークづくりを始め、アドテクノロジーにどっぷり浸かってきたが、今こそ、それ以前の15年間、マス広告/ブランディングコミュニケーション開発を嫌というほどやってきた経験が活かせるチャンスはないと感じる。

データサイエンティストに広告マーケティングの世界に携わってもらうために、コミュニケーションの面白さを語って「口説く」こと・・・。ライフワークになりそうだ。

Don't think Feel !

12 years 6ヶ月 ago

ご存じ(じゃないか)ブルース・リーの「燃えよドラゴン」でのセリフだが、今、新たなデジタルなデータによるファインディングから、マスもリアルも含めたマーケティングコミュニケーション全体を改善することに関して、「何か大きな変革が出来そうだ!」とまさに感じるマーケターを応援したいと思う。
 デジタルな施策によって得られる、かつ今までのマスでは得る事が出来なかったデータをポジティブに捉え、これらを積極的に活用しようとする姿勢だ。「何か今まで出来なかった事ができるかもしれないぞ!」とまずはビビッと感じることが大事であり、デジタルに感じることが出来るマーケターこそ、デジタルマーケティングの推進者である。

デジタルマーケティングは、マスマーケティングで長年成功体験のある大企業広告主こそ早期に身に着けなければならない知見でありスキルである。
 私も82年に広告会社に入社以来、最初の15年はTVCMを10数本つくり、大手広告主のブランディングコミュニケーション開発にどっぷり浸かって携わってきた。No.1ブランドのコミュニケーション開発は、そのアウトプットに至るまでの思考回路が徹底して吟味される。思いつきのアイディアだけで「面白ければ良い」というCMづくりでは全くない。
 ブランドイメージ調査の分析も、競合ブランドとどんなイメージでせめぎあっているかをイメージ獲得シェアから導き出すなど、非常に科学的なアプローチも経験した。
 なかでも私が最も勉強になったのは、コピーライター小野田隆雄さんとの仕事で、「優秀なクリエーターは本当に懐が深い」と実感した。小野田さんは「横山くん、調査データからもいろんなコンセプトワークが出てきてるでしょ?どんどん僕のつくるアウトプットを条件づけてよ。」と言って、「縛り」をかけろと言われたことを鮮明に憶えている。そして実に骨太のコピーをつくってくれた。力量がないクリエーターは条件づけられるのを嫌う。
 アイディアで面白ければ良ければいいものをつくるのは簡単だ。ブランド資産がないものは何でもいいだろう。アウトプットされるものが、何を残すか(ネット・インプレッション)にこだわって、ブランドメッセージ(What to say)と表現方法(How to say)を導き出す力量のあるクリエーターとの仕事を多く経験できたのは私の財産だ。そうした広告マンとして経験があって、96年から日本のネット広告誕生の時から関わった。インフォシークの最初の原稿素材はフロッピーディスクに入ってバイク便で着た。
 当初ヤフーが扱えないハンディキャップを埋めるためにつくった日本で最初のアドネットワークや、実績データを入力し反映させたプランニングシステム、そして自前のアドサーバー開発など事業者、経営者としてやってきたことは実に身になったんだろうとも思う。そして今こそ、マスマーケティングとの融合が本格化する時期が来たことを本当に感じている。超大手広告主のブランディングとデジタル広告の両方を経験させてもらったという経歴の責任として、マスマーケティング企業がデジタルを取り入れて新たなマーケティングを構築するためのサポートをしたいと思う。
 もっと広告主から「何が障害となっていてデジタルマーケティングがまだまだ推進できないのか。」「どうすれば進むのか。」を聞く機会を持ちたいと思う。

DMP入門 ~顧客を知るためのデータマネージメントプラットフォーム~

12 years 7ヶ月 ago

DMPの入門本を出しました。


表紙.jpg


下記は目次です。

目次


はじめに

第1章 DMPとは何か

1-1 データを駆使したデジタルマーケティング
   デジタルマーケティングで全体を最適化

1-2 DMPの役割と機能

   DMP事業者の採用とプライベートDMPの構築

   DMPを定義する7つの要素

   顧客ID、Webサイト訪問クッキー、会員ID、ソーシャルIDなどを統合する

   統合されたデータを分析し、クラスタリングを生成する

   生成したクラスターを連携するツールにデータをフィードないし交換する

   生成したクラスターに属するユーザーデータを可視化する

   特定ユーザーと類似または関連づけられるユーザーに対象を拡張する

   ユーザーセグメントを最適化し、セグメントごとのメッセージを最適化する

   ユーザーデータを広告配信に利用し、かつ広告配信反応によってデータの精度を高める


第2章 DMPの代表的なプレイヤー

  2-1 日本のDMP事業者

      AudienceScience「Gateway」

      DAC「AudienceOne」

      Platform ID「Xrost DMP」

  2-2 マーケティングテクノロジーのランドスケープ

   統合型ソリューションをどう活用するか


第3章 DMP活用の視点

  3-1 広告から見たDMPの活用

     DMPを広告配信に活かす

     リターゲティングとの違い

     分析単位をページビューからユニークユーザーへ

     セグメントされたユーザーの重なりを把握する

     重複の排除


   3-2 メディア側から見たDMP活用

     メディアのDMP利用法

     メディアの分析をオーディエンス単位で行う
 
     オーディエンスデータの提供

     DSPへオーディエンスデータ提供する場合

     SSPにオーディエンスデータを付随して提供する場合


   3-3 広告主から見たDMP活用

     広告主のDMP利用法

     自社データの管理、セグメント化

     興味の軸でセグメント

     モチベーションの軸でセグメント

     ユーザーの状態でセグメント

     外部オーディエンスの購入


第4章 広告主のデータ活用ステップ

   4-1 広告主のDMP活用ステップ

      広告主のDMP活用7つのステップ

      1.プライベートDMPの構築

      2.プライベートDMPへのデータ保管

      3.外部DMPとのデータ・連携分析

      4.内部オーディエンス分析

      5. データ分割(セグメント作成)

      6.広告配信連携

      7.広告配信結果フィードバック

  4-2 プライベートDMPとプライベートDSP

    広告配信を最適化するDSP

    プライベートDSPのニーズ

    広告主、代理店、メディアのデータ競争が始まる?


第5章 プライベートDMPに向けた企業の課題

   5-1 ビッグデータの現実

     ビッグデータとは

    そのデータに価値はあるか

    分析力で価値を創造できるか

    ビジネスプロセスの改革も必要


   5-2 分析におけるサイクル

    データによるビジネス改善のサイクル

    情報システム部とマーケティング部のギャップ

   5-3 分析機能の確立

    IT投資の偏向

    分析機能確立のためにクリアすべきこと

   5-4 プライベートDMP構築の意味

    ウェブマーケティングを超えるDMP

    データ分析の発展性


第6章 DMP時代の組織と人材

  6-1 データドリブンなマーケティングのための組織改革

      経験値から憶測するマーケティングの終焉

      マーケティング人材が育たなかった原因

      注目されるCMOの役割

      組織再編と人材育成の機会となるDMP構築

      DMP構築は企業変革の発火点

      チームみんなで情報を共有し、評価や判断基準を共有する

   6-2 DMP開発運用に必要な人材

      次世代マーケティングのための4種の人材

      データ統合によって新たな価値の創出を構想する

      「データマネージメントディレクター」

      収集統合したデータを分析して活用できるものにする

      「データアナリスト(データサイエンティスト)」

      どんなセグメントにどんなメッセージを最適化する

      「コミュニケーションプランニングディレクター」

      データによる最適な広告配信を設計する

      「デジタルターゲティングプランナー」

【補稿】DMPは会社が変わる「きっかけ」となる


第7章 DMPの活用事例と業界展望

   ゴルフダイジェスト・オンラインの中澤伸也氏に聞く

   日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会 代表幹事本間 充氏に聞く

   対談 野内敦×横山隆治


付録 海外のDMP動向

   海外DMPの動向

   グローバルマーケターの意向を反映する海外DMP事情

   エージェンシーグループの事例(1)MDCパートナーズ:ゼロからのDMP構築と人材確保

   エージェンシーグループの事例(2)WPPグループ:マインドシェアによるDMP「COREプロジェクト」の立ち上げ

   DMP専業社の事例(1)BlueKai:アドテク企業が狙うブランディング領域とは

   DMP専業社の事例(2)Lotame:DMPが勝る、メディアバイイング機能とのすみ分け

   「プライベートDMP」設立によるマーケターのエージェンシー離れ

    著者紹介

Marketers, Agencies Locked in a Data Tug of War を読み解く

12 years 7ヶ月 ago

ちょっと前の記事になってしまったが、3/25付けのアドエイジ誌掲載の「Marketers, Agencies Locked in a Data Tug of War」を読み解いてみる。

http://adage.com/article/agency-news/marketers-agencies-battle-owns-data/240518/

・明らかに、エージェンシーとクライアントで、データの所有権の争い(協議)がある。
 
・データは今や、マーケティング業界での、アツい「通貨」だ。

・クライアントの為に購入したサードパーティのデータに至るまで、エージェンシーのテクノロジー(プラットフォーム)の中に蓄積されてては、クライアントは使い勝手が悪い。

・データの所有権に関する、エージェンシーとクライアントとでの争いがある。

・クライアントも独自のインハウスプラットフォームを作るブームがある。

・Omnicomは、クライアント横断型のデータは作らない、クライアント個別のデータ蓄積に徹する、と言っている(オムニコムのAnnalect:DMPのDMP)「アイデアだが、連合制モデル、とでも言うべき
 みんなが使えるデータ形式になるのではないか」

・Turnは、「所有権問題、というのは、ちと古い」 「今後は、データがある事が前提での、アクセス権、の議論になるだろう」

・HTC曰く、「契約書を作る時は、エージェンシーとの契約ではなく、その先のベンダーと広告主との契約を、必ず結ぶパターン」にしている。

・DSP、DMPの裏で動く、マネーシャッフル(データシャッフル)を理解することが鍵。


など、非常に重要な話が議論されている。


さて、従来のアドテクノロジーに関しては、アメリカが最低でも2~3年先を行っていてくれたので、どういう方向に収斂するかが分かってから日本でのダイレクションを検討できた。しかしDMPに関しては、その差は1年ないんじゃないかと思う。その意味で日本のプレイヤーにもリスクが大きい。しかし、その分先行メリットはより大きくなっている。先行した者に追いつくのは至難の技だろう。それだけ、チューニング(学習)による改善効果が高い仕組みだと思う。

オーディエンスデータは「マーケティングの通貨」たりえるか

12 years 7ヶ月 ago

 オーディエンスデータとは何か。基本的にネットユーザーである消費者ひとりひとりのWebの閲覧データをベースに、デモグラフィックデータ、ジオグラフィックデータなどの情報を紐付けておいて、それぞれがブランドにどう関わるかを分析できるようにしたデータ群と云える。

 ブランド側(企業側)は、自社メディアへの訪問を果たしているファーストパーティクッキーをベースに見込み客としてのターゲットセグメントを組成したい。しかし自社メディアのコンテンツだけでは、情報量が足りない。自社サイトのコンテンツだけでオーディエンスを評価するほどのコンテンツではない。
精緻な情報でしっかりしたターゲットセグメントを組成するには、同じクッキーが外部メディアでどんな閲覧行動をしているかというデータが有効である。

 メディアは、こうしたデータをブランド側に供給することでのビジネスを模索することになるだろう。実はこうしたデータ供給はメディアにとっても大きなメリットがある。メディアのオーディエンスはどんな購買行動をする人なのか、どういう事前行動があるのかを知ることはメディアにとっても果実である。
 オーディエンスデータはブランドとメディア間、あるいはブランドとブランド間でのデータエクスチェンジによって鍛えられる。

 もちろんそこにリアル購買行動データなどがマージできればさらに厚みのあるデータとなるだろう。どこまでをオーディエンスデータとして定義すればいいのかはこれからの課題だが、もちろんWebの閲覧や検索データだけでは、(特にリアルな販売チャネルを主力とする企業では)もの足りないはずだ。

 そしてこうしたデータは、ブランド側もメディア側もオーディエンスデータを鍛えることになるため、(データの価値を高めるため)流通するだろう。
 
 そして、オーディエンスデータというものの、こうしたデータはオーディエンスターゲティング(クッキーを特定するためだけ)に使われる訳ではない。自己関与の高い商品カテゴリーではオーディエンスターゲティングは機能するが、衝動的購買行動の商品カテゴリーでは、クッキーを追い回すだけより、タイミングや、掲載面のなどのコンテクストなどが寄与する。どんなタイミングで、どんな文脈に対してどんなメッセージが寄与したかも含めたデータとなるだろう。

 

私は、ブランドがDMPを構築して新たなターゲットセグメントをつくるということは、そのターゲットセグメントに「対」となる「メッセージ」が開発されるということだと思う。そして、私の感覚では、この「メッセージ」とはいわゆるクリエイティブではない。
 「メッセージ」とは「文脈」であり「キーワード」である。そしてそれをコンセプトとして開発すべきは「広告クリエイティブ」ではなく、「ブランド発のコンテンツ」である。

 要するに、ブランド側は基本こうしたコンテンツ開発を自社でやる(プロデュースする)能力を取り込む必要がある。データと向き合うデータサイエンティストとは、データから人間観察をし、響く文脈とタイミングの計り方を理解し、メッセージとコンテンツを発想できる人(あるいはチーム)である。(実際にアウトプットをつくるのは外部で良い。)

 今のところ広告代理店にはこうした知見はなく、ブランド企業側の方がはるかにこうした知見が育つチャンスが大きい。チャンスが自社にあるのに、面倒に思って代理店にアウトソースする企業は、おそらく自社でチャレンジする企業に、もう取り返しのつかない圧倒的なマーケティング力の差をつけられるであろう。

 私が完全クライアントレップとしてのコンサルティングファームを志向したのは、このマーケティングの大変革という状況で企業をサポートすることができるポジションだからである。

 ブランドがメディアとオーディエンスデータをエクスチェンジし、あるいは企業間でも流通させ、データの精度と知見を高めるマーケティングが台頭することで、オーディエンスデータは「マーケティングの通貨」足り得る。

 ただし、「枠」の流通にだけ介在する者を素通りする「通貨」であろう。

3MS(Making Measurement Make Sense)

12 years 7ヶ月 ago

 「メイキング・メジャメント・メイク・センス」 クールな名称だ。
3MSは、IAB(インタラクティブ広告協議会)、ANA(全米広告主協会)。4A(アメリカ広告業協会)などが参画し、運営委員を含めた50名の各界からの役員と、150名を超える参加者で指標づくりを目指すプロジェクトだ。
 
 3MSはデジタルだけでなく、テレビなど全てのメディアの共通指標(クロスプラットフォーム)をつくろうとしている。
 彼らが目的として掲げているのは、
 ・デジタルにおける正しい広告取引の通貨と測定基準をつくる。
 ・デジタル広告におけるソリューションの統一見解をつくる。
 ・現在進行している測定基準主体を明確にする。
の3点である。

 これらをどのように成立させていくかということでは、
 ・デジタルにおける広告取引の通貨を変える。
 ・取引で使われる測定指標の透明性と標準化を推進する。
 ・インタラクティブ広告がどのようにブランド構築に貢献しているか評価するための最良の方法を妨げるサプライチェーンの問題に対処する。
 としている。

http://www.iab.net/mmms

 3MSが広告主にもたらす機会は

 ・広告のビューアビリティ(広告が見られたか)とネット視聴率(eGRP)の採用
 ・デジタル指標の信頼性と信用性を大きく高める
 ・メディアに使う予算のROIを高める。
 ・予算配分の最適化のためのプラットフォーム横断の統一基準のサポート
 ・ブランディングのためのクリエイティブや在庫のより良い使い方
  
  の5つで、課題としては、
 ・積極的なブランディング効果測定活動
 ・ビューアビリティの全面的な採用
  の2点を挙げている。

 もともと、テレビなどにはOTS(Opportunity to See)という概念がある。配信ベースのインプレッション数が、画面に表示されていない場合、(つまりビューアブルでない場合)OTSという訳にはいかない。
 
 画面にビューアブルになっていれば、TVに映っているという状況よりは、確実な視聴に近いだろうであることは想像に難くない。
 その上、そのビューはブラウザを特定でき、ユニークなユーザーを特定することも可能だろう。
 ブランディング効果にいかに寄与するか、これから本格的に追及されることとなるだろう。いいことだ。


確認済み
2 時間 53 分 ago
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