業界人間ベム

「山を盛るより谷を埋めよ」 ~「新世代デジタルマーケティング」にはこんなこと書いてますシリーズ その2~

10 years ago

 
~コミュニケーションブランクをつくるリスク~


「新世代デジタルマーケティング」にはこんなこと書いてますシリーズ その2 です。


キャンペーン型の広告展開について、最近広告主の間で問題視されていることがある。それは、キャンペーンでTVCMなどを使って「盛り上げる」のだが、「キャンペーンが終わるとすぐに効果が減衰して、元に戻ってしまう」ということだ。

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 これは感覚値でそう言っている訳ではなく、商品の販売量などで昔よりキャンペーン後にシュリンクする速度が増したという広告主がいる。原因は想像でしかないが、やはり世の中の情報量が多すぎて、消費者のメモリーがもたなくなっていると考えられる。

 そうなると、この現象に対応するためには、2つの対応策が考えられる。

ひとつは、「もっとキャンペーンでのサウンド量を上げる」、そしてもうひとつは「キャンペーンとキャンペーンの間の谷間になんらかの対策を打つ」である。

 競合するブランドがどんなタイミングでどんなキャンペーンを打ってくるかという(相手があること)こともあるので簡単ではないが、基本的に今キャンペーンの山をもっと高くしようとすると実態としてはどうなるかを想定してみよう。

 下記図)はTVCMのフリークエンシーのモデルである。GRPはリーチとフリークエンシーに分解できるが、ここで算出される平均フリークエンシーとは、正規分布する訳ではない。たいがい、0回、1回、2回という過小フリークエンシーの接触者と、フリークエンシー過多の接触者とに2極化する。
 広告会社は「このCMでの有効フリークエンシーは〇回だから、〇〇〇GRP打たないといけません。」というだろう。しかし、有効フリークエンシーを平均フリークエンシーとしてGRP量を決定して出稿しても、有効かつ無駄のない「適正フリークエンシー」で接触している人は案外少ないのだ。
 これはTVCM投下の特徴で、出稿プランを多少変えたくらいでは補正されない。

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 この状況で、TVCMの投下量を増やすと、20回見ている人に25回見せることになりがちだということだ。そうであれ、山をさらに高くするように「盛る」よりも、合間または「谷」になっている部分に対策を打った方がいいということになる。

 もうひとつの視点で考えてみよう。

競合ブランドが大型キャンペーンを打ってきたとする。定常的に調査している自社ブランドの認知や購入意向数値が下がってきて閾値を割ってきた。
 当然対抗しようと同じようにTVキャンペーンを実施するために広告代理店を呼び、CMのプランを出させるし、TVスポットの枠を抑えさせる。しかし、どんなに急いでも実施までには2~3ヶ月はかかる。
 その間、消費者のマインドには競合ブランドが優位になっていく。自社ブランドのコミュニケーション資産(ストック)を測るメーターがあるとすると自社ブランドのキャンペーンが始まる2ヶ月先までどんどん減衰していく。
 
 つまり「打ち手」を競合と同じTVCMキャンペーンだけで考えていると、「即」手は打てない。マーケティングコストを考えると、この間(つまり自社ブランドのコミュニケーションブランクの間)になにかしらの手を打って「谷間」を出来るだけ浅くしておく方がよい。即手を打つことで谷をそこしでも埋めておいたほうが、2ヶ月後のTVキャンペーンだけで盛り返すよりもコストがかからない。

 では即打つ手とは何があるのだろうか。

 まず考えられるのは、デジタル広告である。PCネット広告、スマホ広告など、しかもDSPやリスティング広告などの入札による運用型広告である。


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 そもそもDSPとはデマンドサイドつまり広告のバイイングサイドのための広告買い付けシステムである。
 このシステムの広告主にとって画期的なことは、バイサイドの好きなタイミングで、好きな量、好きな価格で、好きな配信対象にだけ、広告を配信する(買う)ことが出来る。

 従来、広告というものは売る側の論理で出来ている「広告枠」を買う側が選んで買うモデルしかなかった。ところが検索連動型広告から始まり、DSPによるPCやスマホへのディスプレイ広告の入札買い付けは、まったく買う側の論理で出来ている。
 効果がないなと思えば、すぐやめてしまうこともできる。

 こういう仕組みのアドバンテージをよく理解して活用しないといけない。まだ日本ではDSPというとリターゲティング広告のためのツールのように思われているが、本来は「運用」で最適化を図るために、キャンペーンによる予約型広告のパフォーマンスをリアルタイムで捕捉しながら、まさに「間」を埋めるためにあると言える。

 特にTVのパフォーマンスをつぶさに見て、補完したり、相乗効果を生むために使うのがブランディングを目的とする広告主には最もハマっていると言える。

 

 キャンペーンのピークをどう作るかは、競合ブランドとのマインドシェア争いがある場合に最も留意されるべきだが、(販売シェアや店頭占有率などの状況しだいではあるが、)キャンペーンとキャンペーンの谷間に、従来より施策を打つ方が有効なマーケティングコストの使い方になるはずだ。それだけ今まではほとんど谷間を放置していたと言えるだろう。

「予算がプランを決める」からの脱却を

10 years ago

「新世代デジタルマーケティング」にはこんなこと書いてますシリーズ (その1) です。

 アロケーションというキーワードはここ数年で、広告やマーケティング業界で定着した感がある。「割り当て」ということだから、ほぼ予算配分ということになるのだろう。

 広告の世界では、「予算がプランを決める」という性格が強く、例えば「2億くらいないとテレビ出来ないよね」とか、いずれにしても大きなコストがかかるテレビをやるかどうかからスタートしてプランニングされているのは事実だろう。ある種の「お買い物ゲーム」である。(昔「がっちり買いましょう!」という番組があって、大物を買ってから数字合わせのための商品があったのを憶えている。)

 その発想に引きづられると、「ではオンライン広告はテレビに対して15%ね・・・」とか、そんな決め方になる。
 しかしよく考えてほしいのだが、例えば2億の予算で15%の3000万をオンラインに使うとして、その使い方は無数にある。マスメディアとは違う。誰にターゲットして配信するのか、どんなフォーマットで、どんな効果を目的にするのか、つまり、配信設計、KPI設定、目標数値設定、効果捕捉手段、入札運用型であればオペレーション方針、そういうことが決まらないといけない。まず決めるべきはそうしたプランだよね。
 もちろん予算はないと困るが、そもそもKPIの達成目標が設定できないで、予算だけ決まるのはおかしくないでしょうか?

 広告をもう少し「投資」として考えるなら、バイイングコントロールをする宣伝部は、ファンドマネージャーのようなもので、事業部からお金を預かって、それを特定のマーケティングのパフォーマンスにしてみせるプロにならないといけない。この時、ファンドマネージャーであれば、効率の悪いものを買ってしまったら、ずるずる持っていないで「損切り」する。また目標のパフォーマンスを獲得したら、予算は余らせる。そういうものである。

 予算を使い切ることが前提ではない。

マーケティング目標を達成するが前提である

「今回のキャンペーンの目標は『ターゲット○○○万人にリーチさせること』であり、『ターゲットに○○○○万インプレッション接触させること』であり、『ターゲット認知を○○%まで到達さえること』である。」と目標設定できないキャンペーンであってはいけない。

「予算化でスタートして、予算で出来ることというプランニングをして、プランどおりに執行して、終わってから効果があったか調査してみる。」こういうの、もうやめましょう。

 そもそも終わってから調査したって、もう終わってるんだから何も「打ち手」に繋がらない。キャンペーンを始める前からずっと自社ブランドと競合のKPIをリアルタイムで捕捉していないといけないのであって、キャンペーンはそのKPIの目標値を設定して、達成させるためにある。それも競合という相手のあることなのだから、目標は常に相対的なものでもある。

 だからこそ「運用型」のマーケティング施策の実行スタイルが必要になる。

 事前にベストなプランなど決まらない。

 運用でベストにするのだ。


 

ベムのトークセッション第3段

10 years ago

マーケティングのデジタル化で、事業者によってのマーケティングの再定義が必要なように、マーケティング支援産業でも特に人のスキルの再編成が必要です。

ネット領域に閉じたスキルが通じなくなるのは時間の問題で、マーケティング支援とは全体像としてどうなっていて、デジタル化でどうなるか・・・。これを踏まえた上で、キャリアを設計することが大事になっています。

第1回、第2回とセッションはたいへん熱を帯びてきております。

第2回参加者はみなさんセッションが終わってからみんなで呑みに行ったみたいですね。w

そういう社外ネットワークができて情報交換するのもいいかもしれないです。

次回 は 11/30 18:30~ です。  是非ご応募ください。

http://eventregist.com/e/bem_talksession_03

VICEが発表した「TVにネイティブアド」は本当にすごいのか

10 years 1ヶ月 ago

DIGDAY JAPAN を読む機会が多い。

なかでも、最近ではこの記事に注目した。

DIGIDAY Japan
ネイティブアドを行う、初のテレビ局「VICELAND」誕生:Webのビジネスモデルは通用するのか?

http://digiday.jp/publishers/vice-coming-to-tv/

これを読んでもらった上での解説エントリーだ。

身近なたとえ話を考えて見よう。テレビ東京が「ガイアの夜明け」をブランデットコンテンツと定め、スタートアップの企業達にフォーカスした紹介番組にシフトさせ、中国Youkuと放映パートナーシップを結んだとしよう。これでテレビ(局)のネイティブアド事業の出来上がりだ。

今後はフジテレビでも日テレでも、ブランデットコンテンツを制作する本数が増え、自社配信にこだわらず拡散するパートナー(売り先)を探す(営業する)、という事が始まるのは時間の問題だろう。

今回VICEのCEOシェーン・スミスが発したコメントがすごかったのは、「テレビのネイティブアド」の旬の話題を、タイミングを見計らったようにIABの国際カンファレンスで発表をしたこと。VICEメディアは元はモントリオールのローカル「パンク」雑誌としてスタートした。スミスCEOがWEBメディアとしてここまで業態を変遷させたことは驚く。もう一つ凄いのは、コンテンツをグローバルに展開させる(営業する)と標榜したこと。

日本のテレビ局の事業モデルがどうシフトするのか、という目線でこのニュースを紐解いてみる。そのためにまずは、日本のテレビ局とアメリカのケーブルTVの事業の違いを整理しておこう。共通点が見つけやすくなる。

■局とは「作り手」なのか「送り手」なのか。

アメリカには「ケーブルテレビ配信社」(コムキャスト、タイムワーナーケーブル、ディッシュTV等)と、ESPNやA&Eらの「ケーブル番組制作チャンネル」とが存在する。これらをひっくるめて「ケーブルテレビ」と略して呼んでしまうのでややこしい。日本のテレビ局は上記の両面を兼ね備えて「局」と呼ばれていると考えてよいだろう。

結論から言えば、日本のテレビ局は、良し悪しは別にして「番組制作チャンネル」という制作者側の色がだんだん濃くなる可能性がある。少なくともネットフリックスへ番組制作で手を組んだフジテレビの動きはこの方向だ。今まで政府からの利権で儲けていた「配信者」側ビジネス、を今後どう扱うのかが見ものだ。


■パイプ屋なのか、制作屋なのか
アメリカに話を戻す。ネットフリックスやHULUの登場以前は、アメリカで「テレビ番組を見る」場合、視聴者は「ケーブルテレビ配信社」に月額100ドル程支払って200チャンネルを見る、というスタイルが主流であった。このケーブルテレビ配信社(コムキャスト、タイムワーナーケーブル、ディッシュTV等)を、話の区分をわかりやすくするためにコンテンツを送り届ける「パイプ屋」と表現しよう。パイプ屋は「200チャンネルパッケージ」や「スタンダード50チャンネルパッケージ」等の価格差別したバンドルメニューを用意して視聴者に売る。パイプ屋事業には、上記の古来のケーブル配信社だけでなく、電話線事業のベライゾン、AT&T等が参入している。

今回のVICEと発表をしたA&Eは「番組制作チャンネル」であり、パイプ屋にチャンネルを購買契約してもらって利益をあげる側だ。平たく言えば番組制作して放送局に売る「プロダクション」なのだが、1本単位ではなく「チャンネル」としての仕入れ契約を年単位で行なう。良い番組チャネルとしての「ブランド力」を高める事が、彼らの生命線だ。

当然パイプ屋に高く売れるチャンネル(ESPNは筆頭)と、あまり高く売れないチャンネル(A&E)が存在する。ちなみに1契約者あたりのチャンネル平均単価は31セント。ESPNはその20倍の6ドル強だが、A&Eは30セントだ(※SNL Kagan調べ)。

madman01.jpg 図2 ケーブルテレビ局(コムキャスト、タイム・ワーナーケーブル、ディレクTV等)が、ネットワーク局(ESPN、TNT等)に支払う、購読者1件あたりに占めるコスト。業界平均は約41セント、中央値は14セント。ESPNがダントツで6ドル、A&Eは登場していないが30セントと言われている。


■ディズニー資本のA&Eでもミレニアム狙いのコンテンツが作れない
A&Eは、ディズニーと米ハースト社(コスモポリタン等の雑誌)の50/50ジョイントで作られた「番組制作チャンネル」。A&Eとはアート&エンターテイメントを意味する。傘下には同じ名前のA&Eの他、「H」のロゴでお馴染みのヒストリーチャンネル、今回改名をする事になったH2、他10チャンネル持つ。

このA&Eが立ち上げたH2チャンネルが、A&Eの自力ではミレニアム世代を引きつけることができず、お手上げたった。18-49歳の層ではついに昨年比20%の落ち込みがあった。今回の発表は
(DIGI DAY引用)2016年初頭に、衛星・ケーブルテレビ局A+Eネットワークが保有する「H2チャンネル」を「VICELAND」と改名し、A&Eとともに運営すると明らかにした。A&Eが「VICELAND」の株式の過半数を保有し、放送や業務面を統括。残りの半数近くを保有するVice Mediaがすべてのコンテンツを提供する。(ここまで)

A&Eが先見の明があったのはVICEに2014年から資本をいれていた事だ。この交渉も主導権を持っていたのはVICE側で、当初はタイム・ワーナーをパートナー交渉をしていたが、バリュエーション価格が折り合わず、A&Eがパートナー権を獲得した。

A&EネットワークはVICEに15%(約300億円、2.5億ドル)出資した事になっているが、他にもマーチン・ソレル率いる英WPPがVICEに2011年に数%、ルパード・マードック率いる21 Century FOXが5%(約84億円、7千万ドル)と、ちゃんと出資している。VICEのシェーン・スミスはカナダ出身だ。日本のテレビ局は、グローバルコンテンツについてどれほど積極出資をしているだろうか。競っている矛先が日本の井戸の中での視聴率では、コンテンツプロバイダーとしての伸びシロは小さい。

VICEの現在の価値は6000~7200億円(50~60億ドル)と言われており、15%保有するA&Eは約600億円(5億ドル相当)、5%保有するFOXは約240億円(2億ドル)程の理論上のキャピタルゲインを作った事になる。このように、番組制作チャンネルが自社内に制作機能を持たずとも、グローバルに伸びるコンテンツへの早期投資によって、チャンネルブランドを成長させている。この投資の輪が欧米人の同士の人脈ネットワークの中で粛々と進んでいる。

続く


最適な「拡張のロジック」はブランドごとに違う

10 years 1ヶ月 ago

DMPは潜在層から効果的なターゲットセグメントをつくるものである。CRM領域だけやるならリコメンドエンジンに毛が生えた奴で十分だ。なぜDMPを採用するかと言えば、顧客したユーザーから、顧客化する可能性の高いまだ潜在層をターゲティングするためである。

メーカーでECサイトでもリアルチャネルと同じ商品を売っているのなら、そこで顧客化したユーザーを分析・拡張して、まだ顕在化していないか、顕在化を把握できていないターゲットに適切なコミュニケーションが出来るようにするのがDMPの最大の目的と言っていい。おそらくリアルチャネルでの販売量がほとんどであろうから・・・。

 そこで重要なのは、今通常行われている汎用拡張ロジックは、あまり効果が出ないということだ。クルマにはクルマの拡張ロジックがあり、化粧品には化粧品の拡張ロジックがある。もっと言えばそのブランドごとに「反応者から同じ反応を起こそうとする人を特定していくロジック」は違うということだ。

 おそらく日本で初めて反応者の拡張配信実験をやったのは私だと思う。6年前の実験では、効果が出た商品カテゴリーとほとんど出なかったカテゴリーに分かれた。その時は「グラフ理論」を使った拡張で、そこがブラックボックスで原因を究明できなかったが、同じロジックでどんなカテゴリーも効果的な拡張ができるという訳にはいかないということは分かった。汎用ロジックでうまく拡張できるブランドの方が少ない。
 その後も研究しているが、拡張ロジック構築にはマーケター発想が必要だ。

 また、事業者が1stパーティデータだけで捉えている顧客や顕在化ユーザーから逆引きするだけでは、潜在層の中の見込み客をあぶり出すのは難しい。その意味でデジタル広告は「広告であり、ユーザー反応を観る調査でもある。」ソナーを海中に投じて、魚群を発見するように、新しいターゲットセグメントをマーケター発想で仮説立てして反応を試すことをもっとやるべきだろう。見えていないターゲットの発見の可能性がある。
 
 新たなターゲットセグメント創造や自身のブランドの拡張ロジック構築を出来るようになることがデジタルマーケティング時代のマーケターに求められるスキルになっていくかもしれない。

世帯視聴率だけを求めるから本当に欲しい視聴者が離れる

10 years 1ヶ月 ago

 個人視聴率の中でもっとも世帯視聴率に連動しているのが、F3の個人視聴率だ。世帯視聴率をリードして形成しているのはF3層と言っていい。だから世帯視聴率をあげるためには高齢層の特に女性が観る番組をつくればよい。もう若者向けをつくってもろくに観てくれない。そもそも商売は世帯視聴率でやってる。だから「29年ぶりの男女7人」とか、即、世帯視聴率が取れそうな(誰が観るか最初から分かる)企画に終始する。

そしてどうなるか・・・。

 そもそも人口動態を見ると、こんなにも高齢化してるんだから、もうテレビのせいじゃないかも・・・。
例えば、若年層をティーンと20代までと定義すると、関東地区だけ見ても、男女を分けるとそれぞれの人口比は10%を切る。若年層の個人視聴率は低いから、リーチや接触回数は当然もっと低くなる。足りないからGRPを増やしてもいいが、やはりそのほとんどは高齢層に当たる。というかテレビ視聴時間が極めて長い高齢層に当たる。もちろん商品がコンドロイチンなら問題ないが・・・。

 とはいえ、プッシュ力のあるマスメディアはテレビだけだ。

広告主からすれば、テレビ局にはもっと自分たちがターゲットにしている視聴層が観る番組をつくってもらわなければ困る。当然だが、その指標はもう世帯視聴率ではない。そろそろしっかりデータ分析して、重要な広告主が欲しい視聴層をどうやって視聴させるか、またどうやって視聴してもらうきっかけをつくるかを起案して、PDCAを廻すことをしないといけない。(今やってないとすると、もうタイムリミットギリギリだと思うが。)
広告主もターゲット視聴が採れる番組制作とそのプロモーションをもっとテレビ局に要請した方がいい。誰のためでもなく、広告主のためだから・・・。

プログラマティックバイイングはブランディングにこそ活用せよ。

10 years 1ヶ月 ago

パブ研の代表幹事をしております。

パブ研はパブリッシャーのための勉強会です。

全体会以外に、データ活用分科会、プログラマティック分科会が進行しております。

パブ研へのお問い合わせはこちらにメールを

office@pub-ken.net


以下はパブ研への寄稿文です。


プログラマティックバイイングはブランディングにこそ活用せよ。

 パブリッシャーにとって、プログラマティックバイイングによる広告スペースとオーディエンスの販売が利益を生むのか、はたまたそれによって広告収入はコンテンツの価値を反映してくれるものなのか、ここが一番知りたいところだろう。

 テクノロジーの導入に踏み込む時、十分にその理解が出来ていて、使いこなすことが出来るのか、投入するコストや労力を前に逡巡しがちになる。

 しかし、先行事例を待つまでもなく、コンテンツとそれによって獲得しているオーディエンスの価値を広告収入に結び付けるには、データを活用したプログラマティックによる広告セールスを仕掛け、知見を持つ以外にない。

 それは、大きなトレンドとして、ブランディング系の広告出稿も今後大きく運用型にシフトすることになると考えられるからだ。

 従来、広告主がブランドにキャンペーンを行う場合、基本は予算化ということが最も大きな要素となって、メディアプランが決まる。少なくとも2億以上ないとテレビは使えないとか、TVCMまではつくれないとか、予算がプランを決めるという要素が非常に強かった。

 ところが、デジタル広告という「いくらなければ出来ない」ということがない広告手法が大きく成長し、またデータドリブンなマーケティングが浸透すると、キャンペーンの目的はあくまで、特定のKPIを達成することであり、予算を消化することではなくなる。

 そういう思考が常識化することによって、事前にすべてのプランを固めてしまい、執行するだけという従来のスタイルから、リアルタイムにKPIを補足して、リアルタイムに「手を打つ」つまり運用によって最適化するというスタイルにシフトしていく可能性が大きい。

 経営から見ても、従来はマーケティング投資が売上利益にどれほど貢献しているかということが可視化できないし、広告販促費も予算化されてすべて使われてしまうので、販売管理費としては固定されている。
 これが、マーケティングROIが可視化できるようになってくると、広告投資の貢献度合いが見えて、目標KPIを達成すれば予算はすべて使われずに余らせるようになると、その分は販売管理費が減り、それはそのまま営業利益になる。
 こうなってくると、経営はもっとマーケティング投資、マーケティング活動に真剣にコミットして、従来より多くのヒト・モノ・カネを配分してくるかもしれない。

 マーケティング目標達成が予算消化より重要になる時、KPIをリアルタイムでしっかり捕捉しなければいけないという考え方が定着し、予算を最適化するにはリアルタイム運用によるプログラマティックバイイングが最も有効な手段だという考え方が浸透してくるだろう。もちろんKPIとして認知や購入意向や実販売数がダッシュボードで捕捉される。

 こうなると、本当に効果のある広告はどれなのかが明確にされてくる。指標がページビュー当たりの単価や、クリック当たりの単価ではなく、いかに購買に結び付いたかで評価されることになるだろう。そこで再度広告メディアは、そのコンテンツの質や価値と、それによって獲得できているオーディエンスの価値を本当の意味で評価されることになる。

 ブランディングにおけるコンテンツとオーディエンスの価値と、今後のブランディング活動におけるリアルタイム運用型広告へのシフトを想定する時、価値の高いコンテンツ供給をしている自負のあるパブリッシャーこそ、プログラマティックに踏み込んで、データによる自社のオーディエンスの価値をバイサイドに表明していくべきなのだろうと思う。


MADMANレポート最新号 その2

10 years 1ヶ月 ago

エントリーしたばかりですが、前エントリーでMADMANレポート9月号を最新号としてご紹介したばかりで、
10月号が出来上がってまいりました。

MAD MAN Report_Vol.11_Oct_2015.jpg

<2015年10月、Vol.11>
・金融機関がフィンテックを使い、行動マーケティングのその先の価値へシフト
・WPPソレルCEOが語るマーケティング世界を超える仕掛け 2つのプレッシャー: 
 ディスラプター(破壊者)とアクティビスト(仕手株主)との間で立ち向かうビジネス手法とは。
・ビデオ・コンテンツ吸収合戦の始まり。
ディズニーが買ったマルチ・チャンネル・ネットワークMCN老舗
メイカー・スタジオズのその後
・あふれるビデオコンテンツ、大資本ベライゾンとAOLによる
 「go90」プロジェクト
・ネットフリックスと同料金の月額$9.99を払ってユーチューブを見るか

MADMANレポート最新号 INDEX

10 years 1ヶ月 ago

デジタルインテリジェンス ニューヨークが発信する「MADMANレポート」

http://di-d.jp/leadership/indexmadman.html

最新号のコンテンツは

mad010.jpg

・誰も踏み込まない、ニールセンのTV視聴率牙城。
 広告主は自己防衛の視聴動向データへの投資へ

・ストア・ターゲティングの「便利」と「気味悪い」との境目は

・人体に紐づく情報、バイオメトリクスの個人認証がUXマーケティングを変える

・米国のオムニチャンネルの実態を見る。
 メディアが持ち上げるメイシーズはオムニ化の覇者か。=役員人事を考える=

・マーケティング業界から見た「ブロック・チェーン」テクノロジー

・追伸記:気になった事象

 です。お問い合わせ・ご購読ご希望の方は info@di-d.jp にメールを!

第一回のトークセッションを終えて

10 years 1ヶ月 ago

 このブログで告知させていただいたトークセッションを行いました。イベレジでお申し込みいただいた方が定員の5倍くらいだったので、今回ご招待できなかった方はたいへん申し訳ありませんでした。(次回優先させていただきます。)

 若い方が多く、小さな会議室に熱気に溢れておりまして、みなさんひとりひとりに今後のキャリア形成における悩みなり、課題だと思っていることをお聞きして、私なりにお答えできることをお話しました。

 やはり、広告だけでは解決できないこと、しかもメディアの出し先や配信ターゲットを替えるだけでは無理なことを、CPAという指標で握らされていることの矛盾は表出しておりました。商品やサービスが売れるにはいろんな要素がありますが、商品力・ブランド力という本来事業者側の責任であるものもギャランティさせられる傾向は強いですね。これに対して、いかに全体最適ないしマーケティングの時間軸をもっと長く設定してのROIの最適化に目を向けてもらうか、営業代行的に握らされるなら「広告」だけが「打ち手」では無理なんだからもっと「打ち手」の幅を広げていけるようにならないといけない訳で、そのあたりを個々のみなさんの状況に合わせて目指せる方向性を議論してみました。

 大きなトレンドを理解しながら、目指すべき方向と、ゴールイメージ、そこから逆算して今できること、1年後あるべき状態、3年後あるべき状態を明確にしておくことが必要です。第2次大戦が終わった時、ドゴールは20年後のフランスのあるべき姿(こうなっているというイメージ)を標榜して、そのためには今どうするか、1年後はどうするかを決めて実現していこうとしました。こういう発想大事ですよね。


 終わってから集まった皆さん一緒に飲みに行ったようです。w

ブランドの文脈とユーザーの文脈

10 years 1ヶ月 ago

 TVCMとオンライン動画のアロケーションに関しては、基本3つの考え方がある。ひとつは単純にターゲットリーチ補完、ふたつ目に認知の補完、これは適正フリークエンシーを補完するということ、(テレビだけだと大概、過少フリークエンシーと過多のフリークエンシーに二極化して適正フリークエンシーで当たる視聴者は少ない)そして三つ目は態度変容つまり購入意向などを促進するための相乗効果の醸成だ。
 三つ目はテレビCMだけではなかなか「自分事化」しない消費者を、その人に強く刺さる文脈でコミュニケーションすることでブランドメッセージを残したいという考え方だ。
 
 オンライン動画は配信対象とするユーザーをターゲティングする際に、そのユーザーはどんな文脈やコンテンツに強く反応しているかを判定できる。対象のユーザーはどんな要素が強く刺さるかでオンライン動画はクリエイティブブリーフをつくることが可能だ。

 テレビCMは、ブランドの文脈でメッセージが作られるが、オンライン動画はユーザーの文脈で作るというのもひとつの考え方だ。ただ、両方に接したユーザーが、テレビしか接触しないユーザーよりブランドの理解や購入意向などの態度変容をより起こすように相乗効果を醸成できるほうにしないと意味がない。つまりオンライン動画だけやる場合と、テレビCMとオンライン動画を両方使う場合は、少しクリエイティブの考え方が変わってくることになる。

 オンライン動画のクリエイティブ案に対して、テレビCMとトーン&マナーが違うのでNGだと言う広告主がいるそうだが、そこは割り切って、ブランドの文脈とユーザーの文脈でクリエイティブをつくるのだからある意味トーン&マナーは違って当たり前くらいでチャレンジしないと意味がないように思う。ただテレビCMとオンライン動画はアプローチは違うが、ブランドメッセージの何かに帰結するようにつくるということが肝心なポイントだ。そこに「技」が要る。
もちろんオンライン動画にもTVCMと同じトーンな&マナーを大事にする考え方もあるが、TVCMだけでは「自分事化」しない場合、オンライン動画による特定のターゲットへの特定のメッセージ認知をより大事に考えて、強く刺さるようにユーザーの文脈でアプローチすることを優先する考え方もある。
 
 オンライン動画の目的と機能、オンラインだから出来ることを整理していくと、そのブランドにとってのオンライン動画をどうつくるかが見えてくるように思う。効果を指標化して確実にトラックし、PDCAを廻すこと、場合によってはどんどん修正をかけていったり、大量に制作して、反応のいい素材に修練させていくとか、TVCMでは出来ないことにトライしないとあまり意味はないだろう。

アメリカトヨタではレクサスNXモデルの動画を1000本以上もつくって展開したとのこと。
http://web-tan.forum.impressrd.jp/u/2015/10/22/21349

 その意味では、効果の指標のひとつは「シェア」なんだろうと思う。そもそも動画はブランディングを目的とする広告主にとってのチャレンジ対象だ。ブランディングを目指す広告主にとっては、シェアされるかどうかを効果指標にすることは意外にしっくりくるような気もする。
オンライン動画は「シェアされる動画を、ワンポイントのブランドメッセージをしっかり残すことに成功しつつ作る」というスキルに一度フォーカスしてみたい。

デジタルインテリジェンスの採用情報です。

10 years 1ヶ月 ago

さて、デジタルインテリジェンスの採用の話です。

(株)デジタルインテリジェンス
 http://di-d.jp/index.html

何をしている会社かを一言で言うと、

マーケティングのデジタル化をサポートするコンサル会社です。

マーケティングのデジタル化とは、STPや4Pというマーケティング全体におけるデジタル化で、プロモーション領域だけの、しかもネット領域だけを対象にするものではありません。

私たちが志向している「デジタルマーケティング」とは、すくなくても4Pの内のプロモーション領域であっても「マス・リアル・ネットの3つ領域をデジタルデータで統合して、顧客導線を最適化する」ことです。ネット領域だけ最適化するのはネットマーケティングであって、デジタルマーケティングではありません。

ですから、
本当の意味での「デジタルマーケティング」をコンサルする会社です。


デジタルインテリジェンスには、マス広告や交通広告やクリエイティブの知見があり、かつネット広告の黎明期から20年、ネット広告ビジネスを様々なアドテクノロジーに関わってやってきた知見があります。

かなりハイエンドです。

ほとんどブランディングに関わる領域なので、CPAだけ見るということを全くしていません。しかし顧客獲得のパフォーマンスもしっかり指標化しています。そこではネット広告の効果だけを見ていません。

デジタル広告配信の配信設計をして、配信も担いますが、効果検証は認知や態度変容ほかリアルチャネルを含め購買行動への紐づけを含めて設計したりします。

ターゲティングセグメントだけなく、広告フォーマットや接触タイミングやフリークエンシーやキャンペーン期間内での投下バランスほか、もちろんクリエイティブも、様々な変数を評価して最適化のための知見を貯めています。

テレビとネットのアロケーションに関しては最も早くから検証しており、今後はユーザーのリアル行動データともマージしていきます。まさにマス・リアル・ネットを統合的に最適化します。

テレビ視聴データに関しては、おそらく今まで誰もやっていない分析を相当やっております。

大企業のオンライン動画クリエイティブもやっております。

また、「反応した人がターゲット」をいう考えのもと、特定の広告コミュニケーションに反応したユーザーを逆引き分析し、どういう人がターゲットなのかのプロフィール分析をしたりもします。

カスタマージャーニーをログで分析するのはある意味「人間観察」です。分析官が成果を上げるには、マーケティング施策を企画実施する人たちにシナリオ設計ができるように上手にコンセプトやキーワードを提供しなければなりません。それにはある種のセンスが必要ですが、デジタルインテリジェンスはデータサイエンティストに大事なそのセンスを醸成するための事例をもっています。


マーケティングダッシュボード⇒事業ダッシュボード⇒経営ダッシュボード 設計などもします。売上利益に相関する中間指標を発見してマーケティングROIを上げるためのアロケーションモデルなども設計しています。

DMP導入コンサルに伴って、組織コンサル・人材育成コンサルなども行います。採用もお手伝いしています。

クライアント側に立って、テックベンダー、エージェンシー、オペレーション会社などのベストなチームビルディングを行い、その運用をサポートします。

コンサル⇒分析⇒オペレーション⇒コンサル⇒分析・・・ というPDCAを廻します。

テレビ視聴データ、スマホのロケーションデータ、購買行動データ、ソーシャルアカウントデータなど有効な3rdパーティデータの活用を指南します。

大手企業のための「インハウスマーケティングラボ」構築のお手伝いをします。

ニューヨークから最新のマーケティング情報を毎月レポートしています。(MADMANレポート)

まだ書き足りないのですが、そんな会社です。

ちなみに、今年は11月末に
「新世代デジタルマーケティング」

「リアル行動ターゲティング」

という本が出版されます。


で、
欲しい人材は、

  ・今、総合代理店でTVスポットなどを扱っている若手営業マン
  ・同じく、交通広告やリアルなプロモーションに携わっている営業やプランナー
  ・同じく、ストプラ、マーケ部門にいてデジタルデータによる新たなマーケティング施策をこれから志向したい人
  ・今、データサイエンティストでデータからマーケティング施策へのシナリオ設計への橋渡しが出来るようになって、自身の価値を上げたい方

   です。

   いずれも価値の高い「本当のデジタルマーケター」に育てます。(業界人間ベム)

   採用ページをご覧下さい。

   http://di-d.jp/recruit/index.html

トークセッション開催します。

10 years 2ヶ月 ago

前回のエントリーは反響が大きく、投稿後8時間で10000セッションを超えるアクセスがありました。その最後に、セッションイベントを実施すると書きました。

少人数でトークセッションと「業界人間ベムの進路相談」をやります。

対象の方は、ネット専業代理店、総合代理店のデジタル部門、アドテクベンダー所属の方。

今後のキャリア形成について悩んでいる方、ネットの経験やスキルをより違ったフィールドで活用して
いきたいと考えている方です。

応募は下記へ(イベントレジストに応募ください。)

http://eventregist.com/e/bem_talksession_02

デジタルが分からないレガシー代理店人材が絶滅危惧種なら、ネット領域しか知らない(その外側の世界に何があるかも知らない)人材はもっと危機的

10 years 2ヶ月 ago

あえて「分からない」と「知らない」を使い分けました。
レガシー人材は具体的なデジタル領域の中身は分からないが、広告マーケティングの全体像のなかにおけるポジションと他に何があるかは理解している。しかし、ネットしか知らない人材はネット以外のマーケティング(それも4Pのプロモーションだけの)に何が存在しているかさえ知らない。
どちらがクリティカルかというと後者である。

最近40代くらいのレガシー代理店人材でデジタルについていけない連中が意気消沈としている感がある。ずいぶん変わったものだ。昔はネットなどバカにしていたのに、デジタルが分からないと評価されなくなった昨今、急にちんやりしている。

だが、ネット領域しかやらない、やれないのはデジタルマーケティングではない。本当のデジタルマーケティングはマス、リアル、ネットをデジタルデータで統合的に顧客導線をつくり最適化する試みであって、「打ち手」も「データ取得」も3領域を統合するものとなる。そして、なにより本来のコミュニケーション設計、クリエイティブ、コンテンツという最大の変数が本丸になる。

また、ロケーションデータなど多彩なデータでターゲットセグメントを新たに創造するにはマーケター発想が必ず必要になる。デジタルとかアナログとか関係ない本質が必要なのだ。

ターゲットセグメントもセグメントするからには対となるアクション(コミュニケーションであればメッセージ開発)がなければ意味がない。

そうしたことが出来るのは、レガシー代理店のマーケ・ストプラ、アカウントプランナー、もちろんクリエーター諸氏である。

そうした諸氏がデジタルデータを駆使して、マーケター視点でデジタルマーケティングを創造する時代が実は目の前にある。

だからこそ、レガシー代理店のアナログおじさんは今こそ、デジタルデータの料理の仕方を勉強して早急に対応して欲しい。その方策はいくつも提示できる。

マーケティングデータは、マーケティングのコメである。しかしコメはそのままでは食えない。炊いてご飯にして、それを料理してチャーハンやリゾットにしないと価値の高いものにならない。要はデータの料理人がいなければマーケティングにならない。マーケティング施策を企画実施して初めて成果が出るのであって、データを分析するだけでは意味がない。
きっとコメのまま持って来られても途方に暮れるアナログおじさんもご飯に炊いてあげれば、プロの料理人として活躍できるはずだ。

 ベムはネット系人材にマスメディアやクリエイティブの研修を何度もしたことがある。みんなCPAに縛られて創造性のある仕事に飢えているので、目の色をキラキラさせて広告コミュニケーションの広い世界の話を聞いてくれる。また研修を受けた人のなかにコピー100本ノックにもついてくる素養の高い人も随分いる。研修やワークショップは抜擢したい人材発見の場になる。
 こういう子たちは、出来るだけ早く今のネット知見をもって、しっかりマーケティング発想が出来る人材の元に行って師事すべきだ。

 ネット専業のやっているCPAを合わせに行く作業は、そのうちAIの登場も待つまでもなく自動化される。事業としてなくなりはしないが、そこで働く者の付加価値が下がるだけだろう。

 マスメディアを含むすべてのコミュニケーションメディアの知見と企画実施力を獲得するのか、クリエイティブという最も大きな変数を創造できるスキルを獲得するのか、リアルなプロモーションで消費者のブランド体験を醸成するプロになるのか、ネットしか知らない若い人たちは、すぐに勉強して目指すべき方向性にフォーカスする必要がある。

レガシーな広告代理店が長くやってきたすべてのマーケティング支援としての広告・プロモーション領域はデジタル化する。メディアもプロモーションもそしてクリエイティブですらデジタルなマーケティングデータの影響と恩恵を受ける。ネット領域でデジタルに慣れた人材が、広告マーケティングの全体最適をプロデュースできるレガシー代理店のストプラやクリエーターに師事して、お互いに刺激し合って、新たなスキルを創造して欲しい。
デジタル小僧はデジタルデータというコメを炊いてご飯にしてプロの料理人のレガシーおじさんとタッグを組み、料理人の技術を傍でいっしょに仕事してそのスキルを盗んで身に付けるといい。

 アナログおじさんはこのまま辞めていってはいけない。培ったメディアやプロモーションやクリエイティブの本質とそのDNAを次に世代に注入しないといけない。注入する相手はデジタル小僧だ。デジタル小僧たちもこのままネットしか知らないということがいかにクリティカルかに目覚め、両者の融合を果たす場に早く身を置かなければならない。

 ベムはその場づくりをライフワークとして始めようと思う。先週からちょっとしたセッションイベントをスタートさせています。

コムスコアのレントラック買収

10 years 2ヶ月 ago

アドバタイジングウィーク中のできごと。NY時間の火曜日

コムスコアによるレントラック買収が報道されました。

日本語版
http://jp.wsj.com/articles/SB12130066219006584032204581263802760631710

広告業界では、両社の合併は以前から予想されていた。広告世界最大手の英WPPがここ1年ほどでコムスコアとレントラックのかなりの少数株式を取得したことで、合併観測は強まった。WPPのマーティン・ソレルCEOは8月「両社が一つになることを歓迎する」と語った。(日経)

$732MM(約880億円)WSJ
http://www.wsj.com/articles/media-industry-welcomes-comscore-rentrak-deal-1443817114

発表後の水曜日にあった、レントラック、ニールセン、コムスコアが壇上に
広告調査協会(ARF:Advertising Research Foundation.)主催のセッション

アドバタイジングウィークでのビデオ
http://www.advertisingweek.com/replay/#date=2015-09-30~video-id=229~venue=2

ニールセンは今年末に「トータルメジャメント」のプラットフォームを発表するので
レントラックコムスコアの合併前にロンチを強調(2年かけて準備しましたからね)

コムスコア&レントラックも、ニールセンも、
売り先の客って、テレビ局やエージェンシーなんですよね、広告主、、、って雰囲気じゃない。そして売り物は「 viewership of digital and TV content in an apples-to-apples fashion.」 結局目玉の数をプラットフォーム横断で数える事。テレビ局も1指標より2指標あって良いけれど、結局支出が増えるだけですよね。
ちなみにレベニューはニールセンがコムスコア+レントラックの10倍。
Nielsen $6,300MM
Comscore $329MM
Rentrak   $103MM

その意味でも我々は、視聴の質、あるいはインパクトを測る広告主視点であることに意義ある気がします。

ADVERTISING WEEK NY レポート

10 years 2ヶ月 ago

デジタルインテリジェンスNY 榮枝から レポートです。

ニューヨークの広告フェスティバル「アドバタイジング・ウィーク」が来年は東京へ

ニューヨークの「アドバタイジングウィーク(AW)」が今年で12年目の開催、ロンドンが3年目の開催だったが、来年2016年に東京での開催の目処がたったようだ。

主催者であるStillwell Partners社のCEOとこの2年ずっと「ぜひ東京で開催しよう」と話をしていたが、ぐっと現実味がでてきた。先週末行われたアドバタイジング・ウィーク(AW)の会場で「来年は東京で会おう」という言葉が登場している(写真)。

AW tokyo.JPG


「カンヌ」をはじめ、クリオ、D&AD、それからスパイクアジア等、「広告&マーケティング」業界においてのインターナショナルな賞やフェスティバルは必ず日本の外(海外)で行われ、日本でのフェスティバルは存在していない※。(※アドテック・インターナショナルの開催はあるが、あの趣旨ではインターナショナル・フェスティバルとは呼ばないだろう。)

研修ツアーの名の下に日本の業界精鋭達がこぞって「視察」に行く姿は、1980年代のまんまである事が業界として悩ましかった。スパイクアジアはカンヌの主催者が傘下に収めたために日本での注目度が高まったが、あれとてシンガポールの媒体社が創設したローカルなフェスティバルだった。端的に言えば日本の業界発信力は人口530万人のシンガポールに負けているという事だ。

ぞろぞろ海外に行かずとも「学ぶ」事は普段の業務の延長でこなせば良いと考えるし、むしろ世界に先駆けて発信できる内容を日本で築いたり、あるいは世界の英知を招聘するパワーが日本に欲しいところ、と常々考えている。

AWは、エージェンシーの参加はもちろん、広告主(マーケター)企業、パブリッシャー&メディア企業、アドテク企業、業界協会、と一丸なって参加し、盛り上げる「マーケティング総括」なフェスティバル。クリエイティブに偏ってる訳でもなく、テクノロジーに偏る事もなく、フォーカスは「マーケティング本論」である所が非常に共感が湧く。賛同企業も年々増え、開催規模も12年間連続で大きく成長している。毎年膨らむプログラムのページ数は去年300ページの大台に乗り、今年は316ページ。この冊子の情報量は小さい画面のモバイルのイベントアプリだけでは、とうてい追い切れない。

今年のAW傾向だが、「プログラマティック」「モバイル」「ビデオ」「ローカル(ロケーション)」「IoT」「ニューロサイエンス」等の定番テーマは健在。あえてビジネスの行間を読むとすれば「テックやデータは当然として横において、コンテント(コンテンツ)はすでに押さえた」という自信のセッションのあちこちで見れた。

業界を牽引するWPPマーチンソレルはこの2年、自社の「データ・インベストメント」を強調していたが、今年はスポーツ、モデル、音楽のコンテンツホルダーをゲストに招聘するパネルディスカッションを開催した。ゲスト企業は何らかのエクイティー関係を持っている企業だ。ちなみにIPGのマイケル・ロスCEOもテーマは「コンテント」。この「コンテント」の傾向をどう解釈するかはMAD MANレポートを継続ご覧いただきたい。

下記リンクはマーチンソレルのセッション。AWは開催模様を後日ビデオ公開している。
http://www.advertisingweek.com/replay/#date=2015-09-30~video-id=277~venue=1

話はAWの日本開催に戻る。ニューヨークで始まったフェスティバルがロンドンに飛び火し、主催者は3番目の開催地として候補地を探していた。あやうく北京開催、あるいはシンガポール、と世界のコンベンション、カンファレンスの拡散傾向と同じ順序に収まるところだった。この東京開催となる「逆転劇」は5大ホールディングエージェンシーの一角、電通さん(&イージス)のご助力があると聞く。上位のオムニコム、IPGは米国発信、WPPとピュブリシスはヨーロッパ発信、5番目のホールディング企業電通さんの本拠地は東京(&ロンドン)。この世界地図においてAWが突然「北京」「シンガポール」開催となるのは許せない、が私のAW東京開催応援の気持ちだった。

今年もおそらく、80人ー100人程の日本からの出張者がAWのためにニューヨークに来られてたのではないか。今週はその出張レポートが花盛りになるだろう。「視察」の是非はさておき、自己投資として14時間の飛行機に乗り、ニューヨークという「アウェー」に来る意味は大いにある。普段の仕事との「異次元」が感じられ、フレッシュな感覚で情報を摂取できるからだ。この「ま逆」の感触を米国やヨーロッパの業界人に日本(東京)で味わってもらう日が来年やっと来るのだ。みなさんAW東京でお会いしましょう。


ニューヨーク中がAWの開催で賑わう.JPG

AWの初日オープニングパーティーは歴史建造物の教会で開催.JPG

過度なターゲットセグメント癖の罪

10 years 3ヶ月 ago

 確か行動ターゲティング広告を日本で初めて試したのはDACで、当然僕も携わっていましたし、すでに今から10年以上前に「行動ターゲティング」の本を書き上げていたと思います。もともとインフォシークの広告枠販売でDACを立ち上げた96年当時にも既にこの種のターゲティング技術はありました。

 セレクトキャストという技術(JOIが言うにはイスラエルの技術でモサドも使っておると・・・w。)を使っていましたが、ユーザーをクッキーでID化したうえで、インフォシークの中のどんなカテゴリーのコンテンツを閲覧したかでユーザーをクラスター化するのです。そこでは事前に440のディメンジョン(と呼んでいた)に閲覧コンテンツを分けておいて、ユーザーが閲覧するとそのディメンジョンのベクトルを付与する方式でした。当時はサーバーの容量の問題でデータを蓄積できないので、特定の方向のベクトルという数値に置き換えてデータそのものはその都度捨てる方法でした。
 当時としては画期的でしたが、サンノゼの開発チームはその技術を「すごいだろう!」と威張ってみせるのですが、サンフランシスコの営業チームにその話をすると、広告配信のインベントリー管理が出来ない(つまりフォアキャストが出来ない)と言って、「ありゃ、駄目だ・」と言っとりました。w

 さて、ターゲティング技術はその後も進化しました。キーワード、ビヘイビア、コンテキスト・・・。そして今後はそこにスマホのロケーションデータによるユーザーのリアル行動によるターゲティングも加わるでしょう。
 
 ただ、ちょっと現状を冷静に見ると、どうも細かいターゲティングをすることが目的化している風潮もなくはないのです。細かくターゲティングすることばかりが面白くなってしまい、本来の目的を見失うことがないようにしたいものです。
 効率を求めるのは決して悪いことではないのですが、同時に効果を得られなければ意味がありません。効果とは「効果の絶対量がある」ということです。

 そして、ターゲティングセグメントに関していうと、大概は従来のリーチ対象から従来想定されているターゲットにのみ配信されるようにするという(無駄を省くという)発想がメインで、従来の発想にはなかった新しいターゲティング発想を創造するということはあまり行われていないようです。

 マーケティング施策ですから、効果の絶対量に要ること、いろんなクラスターをいろんな角度から観て、一本の串で串刺しに出来ないか考えてみること、つまりは全く新しいターゲットセグメント手法を開発してみること。

 そして、何よりもターゲットセグメントにはそのセグメントの人が強く反応する文脈があり、そのセグメント用のコミュニケーションが対になってなければならないということです。概してテックアプローチのみで考える人にはセグメントすることばかり考えて、そのセグメントの人にはどういうコミュニケーションをするのかという肝心な発想が抜け落ちています。同じメッセージを念頭にして対象を絞ることばかり考えていると、どんどん矮小化します。「こういうセグメントの人にはこういう文脈で攻めよう、こういうセグメントにはこんなメッセージで・・・」という具合にしていくと膨らんでいきます。逆に言うとユーザーが反応する文脈でセグメントするという考え方を持ち込まないといけないのです。
 

 ターゲティングし過ぎて、対象があまりに少なくなってしまっては、意味がない。そんなターゲティングぐせを治して、従来にないターゲティング手法を開発することこそマーケターの醍醐味です。

 新たな層を発見してターゲットを膨らますターゲティングを是非志向してください。

テレビの危機とテレビ局にとってのコンテンツ(番組)マーケティング

10 years 4ヶ月 ago

 どうやらホントにテレビが危機的な状況だとやっとテレビ業界の人も思い始めたようです・・・。テレビ業界が危機的かどうかは一般の生活者にはどうでもいいことだが、業界人としては免許事業で参入障壁が高く、ある意味で長らく「いい思い」をしてきたから、「いい思い」ができなくなるのは「たいへんだ」と思うわけだよね。広告業界もこの恩恵に与ってきたから、本当は単に守ろうとするのではなく、培ったマーケティング力で危機を打開する手伝いをしないとね。

 そもそも民放の周波数帯域(VHF帯)は、これを使う放送事業者にとっては効率的でとてもいい帯域なんだよ。だからGHQが占領政策の一環として(大本営発表で国民を騙してきたから、今後はそうしたことがないように)民間放送にこのいい帯域を与えていこうとした訳だ。

 でも、テレビ放送業界って、NHKの事業規模を足しても3兆円もない。雇用は数万人かな。周波数の一部を通信業界に割り振るだけでモバイルキャリアのつくる市場や雇用数は桁違いだ。
 
 周波数行政に関しては総務省の役人の方がよっぽど革新的。ローカル放送局などは再編したほうがいいに決まっているが、地方選出の代議士がそうさせない守旧派なんだよね。

 さて、テレビが危機に陥って、本当に困るのは誰か。
それは「広告主」です。

 2兆円弱の広告費をテレビCMに投入することで、マーケターとして広告主はいったいいくら売上利益を伸ばしているだろうか。(誰か計算してみたらどうだろう。テレビ広告で消費はいったいいくら拡大するのか・・・。ちゃんと中長期のブランド力構築への貢献度とそのブランド価値もカウントしてね。)

マスマーケティングを支えてきた「3つのマス」つまり大量生産モデル、巨大流通(量販店)、そしてマスメディア(テレビ)。大衆がいかに分衆化しても、マスマーケティングの効率の良さは変わらないので、分かれちゃったいくつかのクラスターを串にいくつも刺して同じものを買ってもらうのがマーケティングの醍醐味になったとも言える。
 
 ということは、今や唯一のマス広告メディアである「テレビ」の効果や効率が落ちては困るのは広告主以外にない。
 テレビCMの効果が落ちると、なくなるのはテレビ広告市場だけではなくて、テレビ広告で獲得出来ていた広告主の売上(消費)なんだよね。よくネットビジネスがテレビ広告を使うことでネット広告とは比べようもないくらい大量に会員を獲得できたりするのに驚くことがある。テレビ広告に代わる広告メディア、マーケティングメディアがあればいいが、有力なデバイス候補のスマホにはまだテレビ広告を代替する「枠」や広告フォーマットが確立しているとは言えない。
 それにテレビの持つプッシュ力に相当する広告メディアはない。

 しかし、本気で代替策の探索を始める時期に来ているのは間違いないようだ。
 
 最近テレビCMのアクチャル到達をつぶさにみる機会が多いが、ティーンエージャー、20代をターゲットセグメントとした場合、そもそも若年層の人口がホントに少なくなっているのに愕然とする。その上で若年層のTV視聴機会がどんどん少なくなっているので、到達率も落ちていて、到達者の絶対量たるやぞっとするくらい減少している。
 
 その層には、テレビCMの役割を代替する施策が急務である。もちろんデジタル広告が最も有力な候補だが、ただそれはいわゆる「広告」(ペイドメディア)だけでは難しいかもしれない。ブランデッドコンテンツを充実させてネイティブ広告などにものコンテンツ展開できるように、従来の広告フォーマットベースだけでクリエイティブ開発していてはダメということだろう。
 
 

ところで、
 日本以外のほとんどの先進国はテレビ事業がハードとソフトで分離している。

番組制作と放送事業を両方やっているのは日本くらいなので、欧米では番組ごとにいくらかけていくら回収するかのマネージメントがしっかりしている。番宣もどんなクリエイティブをどこに(誰に)打つことで視聴獲得にどれだけ跳ね返るかちゃんと見ている。

 制作を分離しているので、番組という商品を買い付けて視聴数に変換するマーケティングをしている。制作者(プロデューサー)がテレビ局の中で主導権をもってしまう日本とは環境が違う。とはいえ日本のスタイルでもコンテンツ(番組)をマーケティングできない理由にはならないよね。

 テレビ局も、メーカー企業の事業部やブランドマネージャーと同じで、商品つまり番組単位でプロデューサーがいて・・という仕組みだから、おそらく誰もユーザー(視聴者)データでマーケティングしようという思考は今のところまだないんだろうね。
 
 でも、これはメーカーやサービス事業者と同じで、おそらく複数のブランドを展開している企業のマーケティングはブランド横断的なユーザーデータを活用したデータマーケティング組織が絶対に必要になる。


で、
 視聴率を伸ばすには、視聴質を知る必要がある。

 「視聴質」とは、誰が観ているのかという「オーディエンス分析」と、どの程度専念視聴しているかという「アテンション分析」で把握できる。
 広告ビジネスを前提にすると、「マーケティング対象として価値のあるオーディエンスに十分な専念度で視聴されているか」ということだ。
 
 商品を買うユーザープロフィールという設定はマーケティングでは当然あるのだが、テレビ番組には視聴者プロフィールという設定がどれだけ出来ているか疑問だね。この番組のロイヤル視聴者は別のどこ番組のロイヤル視聴者かという括りをつくるだけでもグルーピング出来る。(これDMPの初歩の考え方なんだが・・・)

 そうしたらそのグループをいわゆる意味を持たせたクラスター化するために・・・。 
(調子にのって書いてると終わらくなるので)
      
続く  続かないかも・・・。

日経のFT買収 海外の見方と・・・

10 years 4ヶ月 ago

前回エントリーに続いて

デジタルインテリジェンスNY榮枝くんから「米国での日経のFT買収に関する見方」

東洋経済
http://toyokeizai.net/articles/-/78135

ロイター
http://jp.reuters.com/article/2015/07/24/ft-m-a-nikkei-breakingviews-idJPKCN0PX2SZ20150724

<引用すると>

調整後営業利益の35倍、そして実質価値のおよそ3倍の金額を支払ったことになる。

他の欧州系メディアの株価は、調整後営業利益の10─15倍で取引され、平均は12倍だ。買い手がそれなりのプレミアムを乗せるのは予想されるとはいえ、FTの場合、調整後営業利益に対する買収額の倍率は、米アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)が2013年にワシントン・ポスト紙買収で所有者グラハム一族に支払った金額の2倍前後にもなる。

72万人の購読者の70%を電子版が占める。FTの14年の収入が約5億1800万ドル、営業利益は3700万ドルに上ったことも公表されている。

<引用終わり>)


つまり、1600億円強で買った会社の営業利益44億円だから、35倍(35年分)程の
ディール。

WPPのCEOマーチンソレルが少なくとも3本のビデオ・インタビューを受けている。

「奇妙なディールだ」

「というのは、コストシナジーはなさそうだ(何かを兼用する事はない)。
顧客シナジーもない。」

ソレルCEOがWPPのメディア担当に至急確認した結果、彼の言葉で
「FTはフレキシブルでない」
=広告主のプロモーションに積極的ではない。
という愚痴に似た表現を出している。(もっとフレキシブルにメディア買わせろよ、プロモーションのオファーを受けろよと・・・。)

とはいうものの、
一方で、デジタルでの広告ビジネスがプラットフォーマーに比べるとパブリッシャーにとっては大きな収益源になりづらいのも事実。

日経が活路を見出して、現在も進行中なのが
「サブスクリプション・モデルへの復活」
今、広告界を震撼させている「ネットフリックス型」ビジネスモデルへの復活。


日経新聞のオンラインは月10本、登録者には無料で読ませている。
 (これを、海外では「メーター制Metered model」と言う)

これをFTは月3本だったのだが、これを今年2月に「撤廃」をした。
(そのかわり、トライアル版で、1ヶ月1ポンド=読みたい放題、という入り口を設けた)

このメーター制は、2007年から開始をしていて、紙の読者をまずデジタル併用の読者に仕上げ、いずれデジタル購読読者を柱に立てるまでの読者移行期の施策なのはお馴染み。

日経もこの方向に向かってるので、いずれ「撤廃」の時期は近いのだろう。
ニュースコンテンツやアーカイブコンテンツはアクセスできないようにしても、経営が成り立つ、大丈夫だという事業ノウハウはFTから直接いただける事になる。

確かに、私の肌感で、FTはサブスクライバーじゃないので、肝心な所で
強行に記事を読ませない(購読者になれ)というパターンであり、読みたいコンテンツが1日1度のペースで登場する。
(週1000円程)

そのかいあって、FTはプレミアム読者の数や単価を伸ばしている。売却したピアソンの発表では
プリント+オンライン読者 737,000 (昨年比14%増)
うち、デジタル520,000,

https://www.pearson.com/news/announcements/2015/july/pearson-2015-half-year-results.html

このFTの作戦(メーター制の廃止)は、景気の変動が大きい時(=経済危機がくるとき)に大きく読者を伸ばす傾向がある。

金融危機、なんてのが来れば、「日経記事」「FT記事」は購読されまくる訳で、
一気に有料読者を増やせるチャンス。まさにその目前で
ピアソンから買わされた(買いたかった)のだと思える。
 (ますます、景気の谷が見えてきた気がする)

=====
日経が気が抜けないのは、高い買い物をした今からがさらなる投資の始まりで、
「合理化」とは逆の方向に、FTへの「追加投資」「さらなるデジタルへのアクセル」が
投資として必要になる事だろう。

その意味からは、IT投資、デジタル投資に積極的な
ロイターやブルームバーグが親となってFTを買う事が合理的だったろうが、日経が手を上げて着地したという事は、その「アクセルを踏むよ」という意志を宣言しているに違いない。

初動で投資をケチると、優良なエディターが続々出て行く事になるので。

マーチン・ソレルCEOはインタビューで
「アクセル踏まないなら、『サヨナラ』になる、」と日本語で語っていた。

http://www.reuters.com/video/2015/07/24/i-would-not-have-done-the-ft-nikkei-deal?videoId=365063662


まあ、こういう場合やっかみ半分、大概「高く買いすぎだよ」とか揶揄されるものだ。まさに日系(日経)企業が伝統的な欧米メディアを買ったから余計そうなんだろう。

でも、ベムは日経さんの英断を高く評価するね。

為替が円安だろうが、こうした企業買収によって自らをグローバル企業に変革するチャレンジをすることで、デジタルとグローバルが表裏一体の今の時代を生き残る経営判断だったと思う。さらなるデジタル投資を自らに課した訳で、デジタル化によって購読料や広告以外のビジネスモデルへの進出だって可能性を感じる。
 電通さんやサントリーさんに続いて日経さんもこうした買収によるグローバル戦略に踏み切った。こういうダイナミズムがないことにはグローバル経済では勝ち残れないだろう。

「アド・テック」でも「マー(ケ)・テック」でもなく、「フィン・テック」

10 years 4ヶ月 ago

  最新号のMADMANレポート(デジタルインテリジェンスNY栄枝による月刊の米国広告&マーケティング業界のニュース&トレンドキャッチアップレポート)が非常に読み応えがあるので、ちょっと内容を抜粋して見ます。

madman8.JPG

 このレポートMarketing ・Advertising・Digital・Media・Agency・Networkの頭文字と取ってMADMANということなんですが、もちろんマディソンアベニューのMADMENであることは広告業界の人ならお分かりですよね。榮枝くんはあのタイムズスクエアのビルボード(LEDサイン)を手掛けたNYでは有名人。みんなオープンな情報なんですが、米国に20年近くいて広告ビジネスをやってきた知見と英語力で読み取るトレンド情報は身内ながら素晴らしいと思う。

 さて、今月号はアップル・ペイを中心に取り上げているが、その中の一説をベムの解釈で書いてみる。

 今や「アドテクノロジー」や「マーケティングテクノロジー」から「フィン・テック」つまり「ファイナンシャル・テクノロジー」に注目が集まっている。
 リーマンショックでRTBというアドテクが金融業界のテクノロジーでつくられた。もともと金融のテクノロジーはその人材からしてレベルが高く、彼らからするとアドテクなど「赤子の手を捻る」程度の話だったろう。ただハイエンドな金融テクノロジストが手掛けていたのは業界内のスペシャリストが使うもの(当然一般人が損をして、プロが儲けるためのテクノロジーなのだから)だ。

 これがアップルペイのように一般向けに、「使い勝手の良さ=ユーザーエクスペリエンス(UX)」でファイナンスの世界に逆流した。もちろんアドテクノロジーもマーケティングテクノロジーも、従来の金融業界プロ向けテクノロジーほどではないものの、業界向け、(Googleのアドワーズが一番幅広く多くの人が使うだろうが、)それでも一般人が使うもんじゃない。
 ところが「フィン・テック」は完全にコンシューマ向けもあり、幅広い。オンライン型「アプリ銀行」を始めとした新しい金融テクノロジーの世界が出来た。ゼロの数が広告業界とはいくつも違う「ファイナンス業界」が「コンシューマが心地よく使えるUX開発」を目指していっせいに動き出していて、産業インパクトがでかい。
 そもそもの力量では雲泥の差だが、それでもアドテックの世界はグローバルのそれと仕組みそのものは同等の日本のアドテクというものがあるが、マーケティングテクノロジーとなるとずっと引き離されていて、「ファイナンシャルテクノロジー」に至っては、またしてもどれだけ先に行かれたか分からなくなった。

fintech.jpg

https://www.venturescanner.com/sector_maps/financial-technology.pdf


 アップルペイにしても、フェリカやおサイフ携帯で先行していた日本の技術だが、これまたあっという間に席巻されてしまいそうだ。(すくなくとも日本以外のグローバル標準になってしまいそうだ。)
 まあ、未だに電子マネーどころかクレジットカードも使えないタクシーがいっぱい走っている日本だから、決済に関する感覚が違うことが技術以前の問題だろう。

 デジタルインテジェンスの役員会はスカイプでニューヨークと上海と恵比寿を繋いでやるのだが、前回はNYでのアップルペイの話と上海でも電子決済システムが2種類普及していて、会食すると割り勘するそうだが、をまず一人が払っておいて、あとのメンバーがスマホで電子送金して終了だそうだ。全然日本より進んでる。

 アップルペイの何が凄いのか、興味のある人はMAD MANレポートをお読みください

確認済み
2 時間 58 分 ago
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