2016日本のマーケティングテクノロジーランドスケープ改訂版
さて、先日公開のランドスケープに関して各方面からのご意見もありさっそく改訂させていただきました。引き続きご意見いただければ幸いです。
さて、先日公開のランドスケープに関して各方面からのご意見もありさっそく改訂させていただきました。引き続きご意見いただければ幸いです。
テレビのプログラマティックバイイングに関してはDIGIDAYに寄稿しました。
http://digiday.jp/agencies/tv-programatic-buying/
さて、スマホの動画が関しては、PCほどユーザーの受容性に関して、まだ改善の余地がある。そもそも動画広告のインベントリーとなる動画コンテンツ開発が必要だ。またパケット代の課題もまだ日本にはある。フリーWifiの普及ももっと進まないといけない。
そうした課題は解決することにはなると思うが、それまではそうそう一本調子での拡大市場になるとは思わない。いわゆる踊り場がいったん来るだろう。しかし第2弾ロケットが噴射するのは時間の問題で、そこからの加速はすごいことになるだろう。
そこで、テレビのプログラマティックとの時期も問題だ。
ベムは、テレビが、スマホ動画がまだ第2弾ロケットに点火する前に、プログラマティック対応を進めないと、主客は逆転されると思う。
ベムは以前から終始、「e-メール」という言い方が「メール」になったように、デジタルマーケティングからデジタルという形容詞が取れる前提で取り込まなければならない。」と言っている。また、「デジタルマーケティングとは、マス・リアル・ネットの3領域すべてをデジタルデータで統合し、顧客導線を最適化する試み」と定義している。
そして、今はもっと踏み込んで、敢えて「デジタルマーケティング」とは、「マーケティングの再定義の機会を与える材料」と考える。
一見、「デジタルマーケティング」と言われればピンとくるマーケティング施策はある。従来のマスメディアによるコミュニケーション施策やリアルプロモーション施策ではない、ネット環境を舞台にデータとテクノロジーを駆使するマーケティング施策ということだ。そして、テクノロジーとデータ分析という旧来のマーケターの苦手とするスキルの壁に当たって、その専門性をまずは獲得しないといけなくなる。そこまではそのとおりなので仕方ない。
しかし、本当は、従来のマーケティングとは別にデジタルマーケティングを確立することが求められているのではない。
「マーケティングがデジタル化」するのである。
そして、大事なのは、このデジタル化という大きなパラダイムシフトに乗じて、「広告販促」のことをマーケティングと呼んでいた企業が、その企業にとっての「マーケティングの再定義」をし、それを全社員で共有する機会と捉えることなのである。
さて、ベムはいわゆるマーケティングダッシュボード構築を担うことがあるが、それはやっとPOEのデータをリアルタイムで競合ブランドも含めて同一画面上に表示できるようになったからだ。しかしこれらを提案していくと、事業サイドからは、「実際には売上利益(という目的変数)に貢献するのはこうしたマーケティング施策よりも、価格政策や工場からの出荷タイミングなので、それらも説明変数に加えたいと言われる。これらもデジタルデータとしてダッシュボードに取り込める。営業活動のパフォーマンスも説明変数化できるはずだ。
4Pのプロモーションだけを「マーケティング」と定義する時代ではない。
そして、「マーケティングのデジタル化」がこの「マーケティングの再定義」を促すのである。
企業の経営企画部門の方々に言いたいのは、「デジタルマーケティング部門」をつくればいいのではないということだ。組織(箱)をつくるのはいいが、肝心なのはそこに入れるスキル(人材)をどう定義し、どう育成するか、そして全社のマーケティング活動の本流にどう統合していくかである。この3つめが重要で、そのためには前述の「デジタル化によるマーケティングの再定義」を経営企画室が主導しないといけない。そして経営トップがそれを十分理解・認識して、全社員に向けてその新しい定義とその意味を共有させないといけないのだ。
よく行われる「デジタルマーケティング組織化」は、マーケティング活動の「幹」に部分に関われない場合が多い。ブランドマネージャーなどマーケティング施策全体を仕切り、事業責任を負う側からすると、デジタルはよく分からないし、面倒くさい。でも全く取り入れないと経営からも「デジタルはやっているのか?」と言われる。そこで、デジタル専門部門にデジタル施策を企画実施してもらう。しかしそれはマーケティング活動の「幹」ではなく「枝葉」のものに過ぎない場合が多い。デジタルを付け足して化粧する程度だ。
そもそも、従来のマーケティング活動の本流・本丸のところがデジタル化しなければ意味がない。
ということは、従来のマーケティングの本流・本丸(幹の部分)が、どういうスキルを獲得するかをしっかり定義することだ。
組織は箱から考えるのではなく、そこに入れるスキルセットから考えて、そのためにはどういう仕事(OJT)でそのスキルが育成されるかで組織の役割とポジションを設定しなければならない。
ベムはこれを極めて具体的に定義している。具体的に定義できるから、具体的にそうしたスキルセットの育成方法が提案できる
「CMを科学する」 ~その3~ です。
テレビを観ない若年層が多くなっている。これは家にいてもテレビを観ない、場合によっては「単身世帯にテレビがない」という現象が、そもそも都市部でのテレビ番組のゴールデンタイムの晩の時間帯に帰宅していないということに加わって、さらに若年層の視聴時間低下に拍車をかけている。
生活時間帯が都市部と地方では、かなり違う。ローカルに行くと帰宅時間も早く、当然テレビ視聴時間も比較的長くなっているはずだ。(遊ぶところも都会に比べて比較的少ないだろうし・・・。)こうしたことは東芝のレグザの視聴ログデータを見れば分かる。全国21万台以上のデータだから、ローカルでは何時にスイッチオフにしているかなど明確だ。
若年層への到達がテレビだけでは難しくなっていることは、「CMを科学する」でも言及しているとおりだが、それは都市部でより顕著に起きていることだと言っていいだろう。
だとすると、テレビの視聴データ(特に個人視聴データ)が関東・関西・中部など都市部中心でローカルは取りにくい状況であることを考慮にいれないといけない。
従来テレビの視聴データは調査パネルによるものなので、なかなか全国津々浦々まで機械式の測定装置を配置することはコストの問題で難しい。だが、こうしたことがいわゆる全数型データというものの登場で解決されるかもしれない。
米国では、様々な全数系テレビ視聴データがある。ただし、CATVやディッシュなどの衛生放送などサブスクラーバー型が中心である。
WPPが買収したレントラックは、こうした全数系データを収集している。今後コムスコアとの連携がどう進むか注目だろう。
で、本題だが、地方のテレビ視聴データをもっと詳細に出して、アロケーションのためのマーケティングデータとする必要があると思う。そして、実態の価値にあったパーコストを提示することで、テレビのローカルエリアへのアロケーションシフトが考えられる。
考え方はこうだ。
エリアごとのターゲット人口と購買力を計算する。
ターゲット一人あたりの購買期待値に対して、一人あたりいくら広告を投じるかが決まる。
そして、都市部とローカルのメディア接触率に差があれば、都市部とローカルのアロケーションは変ってくるはずだ。
商品に対する購買力はカテゴリーやその企業やブランドのエリアごとの販売力で違う。この係数は広告主が用意するとして、ターゲット人口についてはローカルテレビ局側が精査すべきだろう。
それによって、逆算でエリアごとの適正パーコストが弾き出されるはずだ。
地方局のパーコストは〇〇〇〇円とキリのいい額になっているが、ちゃんと計算すると、そこそこ違ってくるだろう。
こういうマーケティングデータが出揃えば、広告主つまりバイイングサイドから見て、適性な配分を算出すると、もちろん例外もあるだろうが、多くの場合、従来よりローカルへのアロケーションがより多くなるのではないだろうか。(それは今の地方局のパーコストがその広告主にとって適正かどうかに掛かっているが・・・)
また、同じエリアで歴史が長いので、ほかの局よりパーコストが高いって今でもあるようだが、よっぽど番組のクオリティが高くて視聴質に自信があるようなので、ここはちゃんと視聴質を測ってみたらどうだろうか。
米国では、日本よりはるかに局に個性や特徴がある。だから視聴層も違う。
同じCMが他局よりアテンション値が高いという数値をセールストークに使っている局もあるくらいだ。
そういうことが実証できれば同一エリアで到達する視聴者数が同じでもパーコストを堂々と上げればいい。
マーケティングコストのアロケーションは全国一律にすればいいというものではない。デジタルデバイスへのシフトは、テレビが届かない状況が顕著なエリアから始めていくことが適切だろう。
それにはテレビ視聴データを全国つぶさに見る必要がある。極めて高額な全国ネットを番組を買っている広告主は、30局ネットなら30局すべての視聴データを吟味すべきで、またスポットのエリア配分も地方局のパーコストを精査しつつ適正化すべきだろう。
もうかれこれ3年が経ちますが、2013年にこのブログにデジタルインテリジェンスとして「日本のマーケティングテクノロジーのランドスケープ」を掲載しました。実はこれは今は亡き鈴木望くん(旧レスポンシス)と私の共同作業でした。
http://g-yokai.com/2013/02/post-300.php
今回2016年版としてリバイスすることになりました。
アビームの本間さん、ベストインクラスプロデューサーズ菅さんとの共同作業となりました。
「テレビCMを科学する」に関しては、「テレビCMの到達実態がここまで分かるのか」という反応をいただく。と同時に「こんなに解明しちゃって大丈夫ですか?」というご心配もいただく。w
この本の趣旨は、人口動態や視聴時間の偏差から、世帯視聴率だけでマーケティングすることに無理が出てきていて、また世帯視聴率ベースで番組が評価されてしまうと、ますます若い層のテレビ離れを促してしまうことになるので、視聴質という概念も含めて、「テレビの本当の効果を明らかにすることはテレビのためにほかならない」ということである。
テレビの持っているアテンションの力は、他のどんなメディアよりも強い。
それを明らかにすれば良いのだ。
ベムが明らかにしようとしているのは、「不都合な真実」ではない。「本当の効果」であって、テレビを最適化する材料である。もっと効果的に、もっと効率的にするためのデータである。
従来の評価の仕方を守って、テレビCM市場を守らないのでは意味がない。
マス広告を何も知らないデジタル小僧がテレビをディスってみせるのが、ベムは大嫌いである。テレビもネットも熟知しているからこそ、デジタル時代にどうしたらいいかをテレビ業界に提言するためにこの本を書いている。
テレビ業界の方たちに言いたいのは、「テレビの本当の味方は私だ」ということである。
『視聴質』とは何か
『CMを科学する』のなかで最も大きなテーマとしているのが『視聴質』。
従来も旧広告主協会が「テレビの視聴質」を測定してほしいとのメッセージを業界に投げかけたこともある。ただ『視聴質』の定義も、その測定方法も確立しなかった。
ベムは今回の本で『視聴質』を下記のように定義している。
① ビューアビリティ(テレビが点いていて状態で、テレビの視聴可能範囲に視聴者がいる度合い)
② アテンション(テレビ視聴可能範囲に視聴者がいて、テレビ画面を注視している度合い)
③ コ・ビューイング(誰と誰で観ているか)
④ 表情反応(画面注視時にどんな表情をしているか)
本にも登場するティーヴィジョンインサイツ社の測定技術では、上記の4つをデジタル
データ化してサーバーに送ることができる。(映像ではないのでプライバシーは保護されている。)
赤外線センサーやデプスセンサーによってこうした視聴者の状態を数値化できている。実際ほとんど真っ暗な部屋でも家族の構成員の誰がテレビの前にいて、画面をどの程度注視しているかしっかり測定できている。
まずビューアビリティだが、ネット広告のビューアビリティはPCなりスマホの画面をユーザーは注視しているというのが前提で、画面に広告画像が現れているかが、ビューアビリティなわけだ。一方テレビはその逆で、画面には映っているものの、ユーザー(この場合視聴者)が視聴ないし注視しているかを測定しようというものだ。
当然だが、曜日や時間帯で、テレビが点いていてもじっとテレビの前にいるかどうかが違ってくる。平日の朝は通勤通学のために身支度している時間帯なので、じっくりテレビの前にいる状態にはならない。しかしながら音声は案外しっかり聴いている(聴こえている)というのがテレビである。
テレビというメディアの特にプッシュ力の源泉は音声(サウンド)がデフォルトであることだ。こういうメディアは他にはなく、テレビ広告の高い訴求力を支えている。
次にアテンションつまり画面注視度だが、これも音の影響を受けて画面を向くということが大いにある。アテンション値は、サウンド効果の賜物でもある。
とはいえ、テレビの前にいてもスマホをいじるのに夢中でテレビの音も上の空という状況もある。そうしたこともデータ化されている。
次にコ・ビューイングという概念がある。これは「誰と誰で観ているか」だ。実は一人世帯を別にして、複数人数世帯だと、一人より二人で観ている方がアテンション度合いが高い、また二人より三人で観ているほうがよりアテンションは高い。
同じ映像なりコンテンツを共有しているということで、人はより放送を注視する。そして番組によってこのコ・ビューイング率は大きく違うのだ。
テレビマンがよく使ってきた「お茶の間」ということを再定義することになる。
テレビはその昔、街頭テレビの前に何百人も集まって、力道山とシャープ兄弟の一戦を固唾を飲んで観ていた。それはまさに注視していた。家庭にテレビに入ってきてもテレビは家族全員が正座して観るような時期もあった。そこから世帯あたりの人数はどんどん減っていき、一方、テレビ受像機は一世帯に何台もあるようになった。
だから世帯視聴という概念は変化してきた。
世帯視聴率もそうである。
ビデオリサーチの世帯視聴率のカウントの仕方は、家に3台テレビがあっても、1台で観ていれば、世帯視聴率は100%だ。同じ番組が2台点いていると、母数が1世帯増えるという計算になる。なんか釈然としないが、やはり世帯視聴率という概念が、一世帯に1台のテレビということを前提しているからであろう。
さて、このコ・ビューイングのデータが面白いのは、このCMは「お母さんと子供が観ていて、子供が笑っている」という状態を測定記録できるということだ。④に画面注視している視聴者の表情も測定していると書いたが、表情分析は
・スマイル
・サプライズ
・ネガティブ
・ニュートラル
の4つの表情を数値化している。
これと、コ・ビューイングを掛け合わせると、ある業種の広告主にとってはCMによって獲得したい目標(ゴール)を測定できるということである。
さて、こうした視聴質数値と、視聴者の意識や行動にどんな相関があるのかが次のテーマである。すでに実証実験でこれも測定している。
さらに、CMの効果はクリエイティブのパーフォーマンスだけで左右されるわけではなく、
・タイミング(時期・曜日・時間帯)
・オーディエンス(誰が観ている)
・コンテンツ(どんな番組内、前後にCMが入ると)
とクリエイティブの掛け合わせになるのだ。
変数は多いが、測定はできている。
ご興味のある広告主の方は、まずは是非『CMを科学する』を読んでいただいて、デジタルインテリジェンスにお問合せください。
テレビの視聴データに関しては長年ビデオリサーチが独占してきた。20年以上前にはなるが、一時はニールセンが日本でもテレビの視聴率データを販売していたこともあるが、(ベムも代理店時代ニールセンのデータを買っていた。毎月営業さんがCD-ROMを持ってくるというのどかな時代だ。)その後撤退してしまった。
広告収入モデルの民放テレビ局にとって、ビデオリサーチ社の視聴率データは「取引通貨」だ。スポットは基本パーコストで取引されている。視聴率が下がればいわゆる「持ちGRP」が下がって、販売できる在庫が減るということになる。なので、テレビ局にとっては視聴率獲得に躍起になるのは当然のことである。
そこに昨今、ビデオリサーチ以外のテレビ視聴データを扱うサービスが次々と登場している。インテージ、スイッチ・メデイア・ラボ、東芝ライフスタイル、ティービジョンインサイツなどである。
ところが、彼ら新たなデータサプライヤーに対して、「余計なデータを出すんじゃないよ」という声を浴びせられることがあると聞く。
しかし、こうしたテレビの本当の到達実態を詳らかにするデータは全部「不都合な真実」なのだろうか。
ベムはこれらのデータをかなり分析しているが、むしろ「テレビの本当の力を提示できていいのではないか」という部分もたいへん多く、今のトレンド(とにかく若年層に関しては、本当に到達効率は落ちている)のまま本当の到達実態を明らかにせず、そうしたデータによる最適化もせずにいて、完全にデジタルに主導権を奪われてから「データが・・・」と言い出して遅いと思うのだが・・・。くしくも米国では2017年にデジタル広告市場がテレビ広告費を超えるという予測が発表されている。英国では既に広告費全体の過半数がデジタルだ。今はまだ「デジタルで補完しましょう」だが、「テレビで少し補完しようか」になってからでは遅くないかなと僕は思う。
民放の周波数帯域は非常に経済合理性が高く、これを民間放送に割り当てたのは、GHQの方針だ。もちろん「大本営発表」の反省からであるが、(ちなみにテレビ放送業界の市場はNHKの事業規模を加えても3兆円に満たず、雇用している人数も数万人だろう。この周波数をデジタル化してその一部をモバイル通信に振り分けただけでもはるかに大きな市場と雇用が生まれたのは言うまでもない。)基本これらの周波数帯域の電波は国民のものであって、テレビ局のものではない。民放が広告を収益モデルとしていて、そこに広告費を払っているのは広告主だが、その広告主の商品やサービスを買っているのは消費者である。よって消費者が間接的にテレビ広告費を払っている。その効果・効率を上げることは商品やサービスの質が向上してかつ安く消費者の手に届くことに繋がる訳だ。
その意味でも電波は国民であり消費者のものであるので、テレビ広告の効率効果を上げることは良いことであり、決して不都合なことではない。
4/15に宣伝会議から「CMを科学する」を出版します。
下記が目次です。
CMを科学する
~「視聴質」で知るCMの本当の効果と、デジタルの組み合わせ方~
はじめに
第一章 新たなテレビ視聴データで実態を把握する ~視聴率から視聴質へ~
テレビの視聴実態を正確に捉える
「取引通貨」としてのビデオリサーチのテレビ視聴率
新しく登場したテレビ視聴ログ測定サービス
同じ視聴率でも「視聴構造」や「視聴者定着率」が違うという実態
スイッチ・メディア・ラボ社のSMARTデータ
視聴者クラスターを把握する
テレビのビューアビリティとアテンション
テレビ視聴質を分析する
録画再生によるCM到達を加算して考える
現場レポート① 脳波測定でここまでわかる! 無意識にアプローチするCM評価測定
第二章 クリエイティブを科学する方法論
無理やり見せて意見を聞く調査の限界
AI値というデータでテレビCMクリエイティブを最適化できるか
最初の5秒のAI値が高いと15秒全体も高い
CMの賞味期限と特性 9つのタイプ
視聴者はCMのどのコマに釘付けになり、どのコマで視線を外してしまうのか
タレントの起用は効果的か
テレビCMはブランドの文脈で、オンライン動画はユーザーの文脈でつくる
オンライン動画をつくってから、テレビCMをつくれ
なぜタケモトピアノのCMで赤ん坊は泣き止むのか
男性脳・女性脳
現場レポート② 脳科学で消費者の本音を知る!ニューロマーケティング最前線
第三章 宣伝部が採用すべき新たな考え方
なぜ最もコストの高いテレビCMが経験と勘の世界で許されてきたのか
宣伝部こそデータ武装を急げ
テレビCMの効果としての購買データ
デジタル時代に浮き彫りになるテレビCMの2つの欠点
テレビスポットCMの2つの課題
「テレビCMとオンライン動画の組み合わせ方」3つの考え方
テレビCMとオンライン動画広告をインプレッション数でシームレスに管理する
「予算がプランを決めてしまう」状況からの脱却を
テレビCM到達の実態を知ろう
クリエイティブ・ブリーフの作り方
テレビCMだけで「コア・アイディア」を考えるべきではない
DMPを使ってテレビCMを最適化する
リアルタイム運用で最適化する
購買を期待する消費者の数でマーケティング手法を考える
テレビCMが当然のようにブランドで考えてみよう
現場レポート③ 英国アンルーリー社の「Unruly ShareRank TM」による「共感を呼ぶ動画とは何か」
第四章 CMを科学するために
テレビは既にデジタルデバイスである
残存GRPをどう考えるか ~期間中の投下配分の最適化~
ティーンエージャーにブランド訴求しておくこと
現場レポート④ テレビCMとオンライン動画、データ活用の今
第五章 「CMを科学する」向こう側
スマホや搭載カメラを通じて「人のこころ」のデータが流通しはじめた
現在、手が届く生体データとは
マーケティング業界におけるニューロサイエンスへの投資
投資対象の技術はグローバル普及できるものか
フェイシャルコーディングの老舗、リアルアイズ
Webcamを使って、表情からコードを読み取る
アフェクティーバのビジネスとしての将来性
人間の意思決定のバイアスに食い込む
「ファスト&スロー」とは
現場レポート⑤ デモグラフィック×モードで考えるスマホ時代のメディアプランニング
第六章 最新米国レポート(取材:榮枝洋文)
オンラインのみの放映に踏み切るNFLフットボールの放映権
視聴データの主導権争いが始まる
ニールセンのVOD視聴率の操縦術
1000種類のビデオを制作放映したレクサスのフェイスブック利用法
誰も踏み込まない米ニールセンのテレビ視聴率の牙城
広告主は自己防衛の視聴動向データへの投資へ
「視聴率」を捨て、エンゲージメントでバズ・フィードと競うテレビ局
ネットフリックス対アマゾンのImplict Data(潜在データ)争い
テレビ通貨「レーティング」の主導権
視聴率計測企業の主導権争い
おわりに
横山 隆治
4月15日に宣伝会議から『CMを科学する』が出版されます。12月に2冊出したので、5ヶ月間に3冊出すという粗製濫造感が否めないベムだが、自分で言うのも何なのだが、この本結構な力作である。テレビCMの到達実態をいろんな角度から検証してみた。日本で初めて『視聴質』とは何かも定義してみたし、脳波やアイトラッキングや視線や表情を読み取る最新テクノロジーが「人のココロ」をどうデータ化するかという話に至ってはCMの領域を超えた話になっている・・・。
で、
このブログでは、この本に沿ってポイントなり書ききれなかったことを書いてみる。今回はその1ということになる。(とはいえ、このブログを書いている最中にキース・エマーソンの訃報に接して、ショックで文章がまとまらなくなる可能性もあるので、ご承知おきください。4/19にビルボードライブに行くはずだったのですが・・・。)
まずは、テレビ番組の録画、録画再生によるCM到達の話である。
東芝レグザのユーザーに許諾をとっての視聴ログデータは、シングルソースでリアルタイム視聴(ライブ視聴)と録画再生視聴が測定できている。
リアルタイム視聴でのCM到達のみをカウントしている日本のテレビCM市場では、「録画再生ではCMはほとんどスキップされているもの」という論調があって、どうも評価の対象にならなかった。しかし米国ではすいぶん以前から3+と言って放送後3日以内の録画再生率を視聴率に加えてカウントするなどの仕組みが進んでいる。
日本でもやっとビデオリサーチが来年からこうした録画再生率も通常の視聴率測定世帯に統合して900世帯での調査となることが予定されている。
ベムが東芝レグザデータで、こうした録画再生によるCM到達(つまり再生時にCMがスキップされずに視聴された分)を見てみると番組によっては、非常に大きな到達量をなっているケースがあることを掴んでいる。ちなみに東芝さんのデータは2016年2月時点で全国21万台、関東地区だけでも9万台分の視聴ログデータである。今後こういうデータが全数系になっていくのが必然である。購買行動データも数万人のパネルでは、出現しない商品が多く、たいがいマーケターはブランドが大きく育ってたくさん売れる前に知りたいはずなので、シングルソースでメディア接触から購買までを紐づけたいとなると両方(メディア接触データも購買行動データも)全数系である必要がある。
さて、以下は結構衝撃的なデータである。でもその前に東芝のレグザの視聴データの計算の仕方に触れておく・ビデオリサーチ社では家に3台テレビがあったとして、そのうち1台でも視聴されていれば世帯視聴率は100%である。(ちなみに2台映っていると母数が1台分増えるという計算だ。)一方東芝さんは「視聴率」とは言わず、「視聴割合」と言っている。この計算は家に3台あって、そのうち1台点いていると33.3%になるので、そこを考慮して以下の数値を見てほしい。
図は、上があるスポーツ中継のライブ視聴におけるCMタイムの視聴率と録画再生され、かつCMがスキップされずに視聴された分を足し上げた数値、下は同じくあるドラマのそれである。
スポーツはそもそも生で観ないと面白くないコンテンツなのか、この中継がラグビーのワールドカップほど保存しておきたいと思わせるものではなかったのか、ここでは録画率が低い。一方ドラマはライブ視聴では視聴率(ここでは視聴割合)が4.1%しかないのに、録画再生率が11.3%もある。その上で、CMがスキップされずに視聴された分をライブ視聴時のCMタイムの視聴率に足し上げると、このドラマのトータルなCM到達は8.5%となって、ライブ視聴での番組視聴率で3倍近いスポーツ中継を超えることになる。
こうなるとかなり評価が違ってくることになる。
広告主もこうしたデータをしっかり把握しておかなければなるまい。
ドラム(タルカス聴きながら書いたので、ドラマがドラムになってしまいました。w)やアニメは比較的録画率・録画再生率が高く、アニメなどはCMのスキップ率が低い。子供にCMをスキップするリテラシーが低いのと、CMにアニメキャラクターが出てくるなどでCMが視聴されやすいのだろう。この録画率・録画再生率・CMスキップ率を番組ごとにデータ化しておくのも、最終的なCM到達量を確保するためのメディアプランに重要なことだろう。
日本のネット広告も20年の歴史を持つこととなった。10年ひと昔として、ふた昔分まですべて辿れる人も少なくなっているかもしれない。また、盛んに「デジタルマーケティング」を声高に標榜していても、マスやリアルのマーケティングどころか、このネット広告の歴史もろくに知らない者も多い。まあ知らなくてもいいんだろうが、たかが20年でも学ぶべきことはたくさんある中身の詰まった20年であることは私が保証する。
さて、ネット広告の専業代理店という業界が成立して久しいところではあるが、私はどうもその住人たちの「広告人」としてのスキルがほとんど育っていないのを危惧している。今は「広告人」というより「マーケティング支援産業に携わる者」といった方がいい感じだが・・・。そして、歯にきぬ着せず言うと、その責任はCPA至上主義で彼らにそれを握らせるだけの刈り取り系の「広告主」にもある。
そもそも「広告人」は「広告主」に育てられる。
かくいう私も、「広告主」の方々に育ててもらった。某ビールメーカーさんの宣伝部さんや某化粧品メーカーさんの事業部の方々をはじめたくさんのクライアントさんだ。
彼らは事業主であり、マーケターであった。ブランディングコミュニケーション資産によって自社の商品やサービスがどう売れるのかについて常に頭を廻らせていて、そのプロセスを熟知しており、また新しいことへチャレンジもさせてくれた。(そういう余裕もあった時代だが・・・。)
その意味では、社内のアカウンタビリティの容易さに流されて、CPAばかりを代理店に握らせて、1コンバージョン当たりの費用だけで出稿を管理するという安易なことしかしていない「広告主の担当者」は全くもって「マーケター」ではない。クリエイティブを中心としたコミュニケーションと商品開発力を含めたブランドマーケティングによる最適化を志向するのが「マーケター」である。
そもそも、部分最適である「CPA」至上主義がそのブランドや企業にとって本当に寄与しているかをもっとよく思考せねばならないだろう。たとえその部分だけを上からミッションとされていてもである。またそうした部分最適管理でマーケティング効果を管理できていると勘違いしている「上」はさらに問題である。
そうした「マーケター」ではない「広告発注管理者」としかインターフェイスしていないネット専業の広告代理店マンが育たないのは自明の理である。なにも専業だけでないだろう。総合代理店であっても担当する広告主が「マーケター」ではないのでは、提供すべきる知見も限られる。「打ち手」が限られた中で、ひたすらCPAを下げるPDCAを繰り返すことは「作業」であって、「知恵」や「知見」の要る世界ではない。
そして、その代理店も、半ば「売上」を握らされているのに、「打ち手」の幅を広げる提案・努力が足りない。CPAで管理されている広告代理店が売上を伸ばすには、コンバージョンの絶対数を上げなければならない。(本来そう思考するのは事業主側であるべきだが・・・。)そこを、同じ広告表現で出稿する掲載面や配信ターゲットをいじるだけでなんとかなるほど世の中甘くない。4Pのプロダクト、プライス、プレイスと、S・T・Pから全体を見渡さずに売上を上げることなど出来ないし、そもそもマーケティングの時間軸をどうおいて最適化するかという発想すら欠落しているのが残念である。
対象の商品やサービスを例えば「3年」というタームで見ての投資対効果の最大化なのか、この1ヶ月で最大化するのか、毎月毎月今月の売上を最大化しようとして、3年間が最大化出来るということにはならないということは、マーケティング施策を俯瞰して見れば明らかであるが、事業主のトップは、自分でやっていないとすれば、社内の誰がこうしたマーケティング施策を俯瞰して全体最適を担うのかを明確にしなければならない。
もちろん代理店側にそうしたコンサル能力があればよいのだが、コンサル力・プランニング力・オペレーション力という3つの要素の内、基本オペレーションを売っている代理店にそもそもコンサル力を期待するのは酷というものだろう。
コンサル力はクライアントが課題を設定できていないところから指南するからこそ価値がある。クライアントが課題は分かっているが、解決方法が分からないので頼るのがプランニング力だ(最も典型はクリエイティブ)。だが、クライアントが課題も解決方法も分かっているが、自分でやるのが面倒だからアウトソースする作業だけ担ってもそこに高い付加価値は望めない。
従来からも媒体枠の販売だけという業務はあった。しかし、そこにはある程度確立された広告表現があり、それを前提に広告の到達状況をプランニングするもので、クリックやコンバージョンを保証するものではないし、少なくとも広告表現の制作プロセスにもコミットして仕事が行われていた。ネット専業の代理店マンが一度も撮影に行ったことがないとか聞くと、やはりそれでは「広告人」とは言えないし、何だか可哀想にすら思う。
そういう文化だから、例えば、リアル店舗の購買データを扱ってデータ分析するのにも関わらず、店頭を見に行くという行動様式を持たず、パソコン上の数字が高いのか低いのか分からない。クリック率やCPAは消費者の使用・購買シーンのイメージを想起させるものではない。
「広告」も「マーケティング支援」の一環であり、デジタルによってマーケティングの再定義を必要としている今、パートナーであるエージェンシーの担当者のスキルを上げることで、回り回って広告主側のメリットになるという昔の広告主さんの考え方が今あまりないのが残念だ。
まあ、それもある意味エージェンシー側の甘えかもしれないが、昔より広告マーケティングでの施策の幅は大きく広がったが故に、広告主さん側がやらないといけないことが多すぎて余裕がなくなってしまった。
広告はエグゼキューションあってのものだけに、作業はなくならない。なくならないが、作業をするだけでは価値が上がらない。
しかし、オペレーションするからこそのリザルトラーニングが新たなプランになっていくのであって、そこはデジタルだからこその価値づくりがあるのだ。ただそこを価値に繋げるには掲載面や配信ターゲットなどだけではない多くの変数をダイナミックに扱う知見が前提となる。
よく「マーケティングコミュニケーション」というけど、これはまさに読んで字のごとく、マーケティングとコミュニケーションがオーバーラップする部分に我々の仕事があるということだ。「コミュニケーションとは何か」の本質にアプローチできないで「広告」を語ることは出来ない。
「広告」を仕事にしているという自覚があるなら、自分のスキルを再確認し、将来的にも価値あるキャリア形成になる道を模索して欲しいと思う今日この頃である。
ちなみにある人との対談で「刈り取りという言葉が消費者をバカにしているようで嫌いである。」という発言があった。ベムも全く同感である。
ベムもデジタルインテリジェンスも関わっているテレビジョンインサイト社のテレビ「視聴質」測定システム。XBOXのキネクトによるビューアビリティ・インデックス(テレビが点いていて、テレビの視聴可能範囲に視聴者がいる度合い)とアテンション・インデックス(テレビの前にいて、テレビ画面を注視している度合い)を毎秒測定している。ボストンが米国本社の拠点なのだが、先日のスーパーボウルでもその「視聴質」を測定している。
ベムも前半観てて、録画して出社した。ヤフートップとか見ないようにして、会社のみんなにも「結果言うなよ」と牽制しつつ帰宅してハーフタイムショウを観る。もちろんコールドプレイもビッグネームだが、50周年のハーフタイムショウという割には、ここにビヨンセ出なかったら結構地味じゃないの?とか思う。まあベムの年齢からすると、マイケル・ジャクソン、ストーンズ、ポール・マッカートニーなんかが出たやつの方が華やかって思っちゃう。
ハーフタイムショウでは、視聴者がビヨンセに視線をより多く送ったことが分かる。ビヨンセが登場してからのアテンションインデックスは24%も跳ね上がる。コールドプレイで始まり、ブルーノ・マーズ、そこにビヨンセ登場となる流れの中心はやはりビヨンセだった。
こうしたデータは、またこのブログでも取り上げましょう。
デジタルインテリジェンスが正社員を募集します。
また次世代型トレーディングデスクのプログラマティカも人財募集をかけます。
デジタルインテリジェンスはコンサル会社です。
デジタルマーケティングを「マス・リアル・ネットのすべて領域に打ち手(解決策)をもつマーケティング思考」と定義しています。よって、ネットの世界だけに閉じているマーケティング活動はデジタルマーケティングではないと言い切っております。
最近、「リアル行動ターゲティング」と「新世代デジタルマーケティング」という2冊の本を上梓しました。
「リアル行動ターゲティング」は、スマホのロケーションデータによるターゲティングを「今どこにいる」というような矮小化された発想ではなく、「時間と空間、動線などからユーザーをプロファイリングして、今までになかったターゲットセグメントを創造しようとする試み」としています。
「新世代デジタルマーケティング」では主にマス広告の雄である、テレビ広告を新たなデータと分析手法でその到達実態を詳らかにして、打つべき「施策」をリアルタイムで行っていこうと提唱しています。また「視聴質」を初めて明確に定義し、その測定手法やアウトプットデータの例を紹介しています。テレビ広告という一番大きな市場と影響力をもつメディアの今後のあり方に踏み込んでいます。
全く新しい切り口でテレビ広告を最適化する。
リアル行動で全く新しいターゲットセグメントを創造する。
いずれも、いわゆるトラディショナルな「マーケター発想」が必要です。
CPAを毎日追いかけているのとは、「まったく別の脳」を使います。
その脳を鍛えます。
またデジタルインテリジェンスは日本では唯一、DMPにおけるそのブランド独自の「拡張ロジック」をつくる会社です。それもまたテック発想ではなく、マーケティング発想がないとできないものです。
今まで、DMP導入コンサルなどのデジタルマーケティングコンサルのほかにも、実際のエグゼキューションを含むデジタル広告配信におけるハイエンドな配信設計、KPI設定、管理ダッシュボードづくり、などもやってきました。
今後このスキルは次世代型トレーディングデスクの「プログラマティカ」が担います。
CMARC(テレビCMアクチャル到達補完デジタル広告配信システム)の運用ノウハウもリアル行動によるターゲティングセグメントも、日本ではこの会社にしかないメソッドによるスキルセットとなります。
募集要項は下記のURLでご確認ください。
http://di-d.jp/recruit/index.html
テレビCMとデジタル動画広告、その「補完・組み合わせ・相乗効果」を考える場合、それぞれの視聴態度やどんな時間帯でどんなモードでユーザーは接触しているかを考察する必要がある。
テレビの視聴態度は他のメディアと比べるとかなり受動的(パッシブ)だ。
だから、CMクリエイティブを事前チェックする場合、ある意味強制的に視聴させて測定する手法なので、実態とのギャップが出ると思われる。
またクリエイティブチェックの調査では、CMだけを評価することになるが、実際には、どんなタイミング(時期・曜日・時間帯)で、どんなコンテンツ(番組)の中で接触したかも大きな変数となる、また接触頻度別に感じ方や反応が変わることが確認されていて、それもクリエイティブによって、オーディエンスによって違う。
脳波や心拍数、アイトラッキングなどで測定する場合、男女差が相当出る。脳科学も進歩していて、男女の脳の構造や感じ方が違うことは時々テレビ番組で話題になるのでご存知の方も多いだろう。女性がターゲットのCMクリエイティブ制作の際は、よくよく女性脳を研究した方がいいのだ。それは男性ターゲットでもまったく同じことだが・・・。
「モード」という言葉を使ったが、テレビ視聴者ないしスマホユーザーがどんな「気分」で接触しているかは、当然デバイス別の傾向もあるが、それだけではない。利用プラットフォームやタイミングやコンテンツによって違ってくる。またどうもスマホというデバイスはPCとはまたずいぶん違って、幅広い「モード」があるように思う。
テレビCMは受動的、パソコンは能動的と単純に考えていた時期と違い、デジタルデバイスの主流がスマホになった今、スマホの接触態度はもっと研究する余地がありそうだ。
デジタルデバイスだからアクティブだと考えるのは安易である。スマホ利用でもパッシブな接触をするものや時間帯などがあり、テレビとの組み合わせを構成する際の重要な要件となるだろう。
比較的自己関与の低い「商品カテゴリー」では、パッシブな視聴態度のアプリ利用時に広告を配信した方がいいかもしれない。
テレビCMが若年層特にティーンにおいてその到達効率が落ちていることは拙著「新世代デジタルマーケティング」でも実態データを含め言及している。
子供はみんなテレビを観るものという時代は終わっていて、周辺の小学校くらいのお子さんをお持ちの方に聞くと、ほとんどがYouTubeばかり観ているという話が多い。
昔は「全員集合」みたいに観ておかないと、学校で話題に乗り遅れるという番組があったが、今はほとんどない。また視聴ログを見ると必ず観ている番組というのは非常に少ない。例えば、10%くらいの視聴率のドラマだと、リアルタイム視聴をしたTV端末はとりあえず全話ないし1話観ていないという視聴パターンが1番になるものの、2位~8位くらいまではどこか1話しか観ていない。
いずれにしてもティーンのテレビCMの到達率は昔に比べ大きく落ちている。
さて、本題はこれからだ。
テレビでティーンエージャーにブランド訴求をしようとすると、一番効率の良かったテレビが期待できなくなっていることで、懸念されることがある。それは「ターゲットが20代以上だからティーンには今はいいや」と思っているとたいへんなことになるということだ。
従来は対象が大人でも十分テレビCMはティーンに到達していた。それが今は非常に届きにくい。若年層は観ない人と観る人が2極化していて、ほとんど観ない人がじりじり増えているのだ。全く観ない人にはいくらテレビのGRPを増やしても意味はない訳で、テレビCMだけブランド訴求をしていると、まったくブランドを認知もイメージも持たない若者がいっぱい醸成されているということになる。
ベムは昔、あるアニメキャラクターのインスタント麺の商品化とCM制作に携わったことがあるが、この商品の味はその即席麺メーカーの定番ブランドの味だった。つまり子供たちに味を刷り込んでおきたいという戦略であり、将来の需要のために商品化した戦略的なものだった。(キャラクター商品だけではほとんど黒字化できなかったかもしれないが、目的は単に今の売上ではないのだ。)
テレビCMはブランド訴求には最も効果的なものだろう。そのテレビCMがティーンに届きにくいとすると、彼らが大人になった時に、「そのブランドに何の意識も反応もしないでスルーする」ことになる。
今ターゲットでないからと言って、放っておくとトンでもないことになるのだ。昔は意識しなくてもテレビで届いていたティーンへのブランド訴求が、今はほとんど出来ていない」という実態、気づいておこう。
その4)デジタル人材の本格的な流動化スタートの年
~レガシー代理店マーケ・ストプラ系人材復権の年~
昨年からいわゆるデジタルマーケティング人材が転職する傾向が始まったと言える。2016年はさらに流動的になるだろう。マーケター側もエージェンシー側も両方である。
特にエージェンシー側は、デジタルに特化していた人材をレガシー代理店が取り込もうとする傾向が顕著になる。しかしいわゆる転職市場にいる人材は限られている。デジタルマーケティング支援をする企業は、地頭の良い学生をいかにこの業界に連れて来られるかは今後の業界の趨勢を決めるだろう。
またコンサルティングファーム系にデジタル人材が異動する傾向はさらに顕著になるだろう。コンサルティングファームはIT系人材や広告会社人材、ブランドマーケター人材などを取り込むだろうが、そもそもコンサル会社の文化の違いによって、取り込んだもののうまく機能しないケースが多いだろう。
コンサルも従来の概念論で終わる訳にはいかず、エグゼキューションを担ったり、成功報酬モデルを導入するなど、マーケティングのデジタルシフトでは実際成果を上げることを求められるだろう。
~使うのはデジタルデータでも必要なのは従来のマーケター発想~
一方、レガシー代理店では、従来のマーケ・ストプラ系人材にデータドリブンなプランニングを求められる傾向がいっそう強くなる。これはネット専業系にデジタル領域を任せてきた広告主が、「打ち手」がネットに閉じていた間は良かったが、「打ち手」の広がりと伴に、プランニングにそもそものマーケター発想が必要なことに気づき始めるからだ。
デジタルデータを駆使して最適化されるのはテレビであったり、リアルなメディアだったりするようになる。スマホのロケーションデータを使ったターゲティング発想もネット専業文化の知見では難しいだろう。
その意味で、レガシー代理店のこうしたスキルへの見直しが起きるだろう。
しかし、事はそう簡単ではない。
レガシー代理店のマーケ・ストプラがこうしたデータドリブンなプランニングが出来るかどうかである。
料理すべきデータの扱い方に慣れている人材はほとんどいないだろう。
アウトプットする能力はあっても、インプットデータを咀嚼する能力がないというのが実態だろう。ここがこういう能力開発も最もキモになるところだ。
ただ、マーケター発想でデジタルを料理しなければならない以上、まず必要なのは従来のストプラ思考なのであって、デジタルしか知らない人材には求められるアウトプットは出来ないと考えていいだろう。
いずれにしても、「マスメディア・リアルプロモーション、クリエイティブ」という領域と「ネット・テクノロジー・デジタルデータ処理」という領域が分かれて存在することでの「価値の低減」はなんとか食い止めなければならない。
ベムは従来から、アナログおじさんのところにデジタル小僧が来てマン・トゥ・マンでコンビを組んで新たなスキルを創出するようなトライがされるべきだと発信している。
そうした意味では単なる人材流動だけではだめで、オン・ザ・ジョブでの融合スキル開発などチャレンジすべきことはたくさんある。そもそも新しい種が出来る時は個体に突然変異が起きる。あまり大きな組織単位の発想ではなく、個人に「突然変異」が起きやすい環境を用意することが先である。
何人かにスキルが生まれてからスキルトランスファーのための組織を考えるべきだ。
マス広告を扱う人材のデジタルデータ活用能力が試され始める年だとも言える。
その5)マーケティングダッシュボードから事業ダッシュボード・経営ダッシュボードへの進化の年
~POEリアルタイムダッシュボードが確立することで入力変数は広告プロモーション領域だけではなくなる~
ビデオリサーチ以外にも秒間データでテレビ視聴ログデータを供給する事業者も複数現れている。ほぼリアルタイムでテレビCMのアクチャル到達データを自社競合とも取得して、ダッシュボードに反映させることが可能だ。テレビに限ってはペイドメディアのリアルタイムデータは取り込める。ここにオウンドのセッション数やブランド名検索数、ソーシャルメディアでもブランド名記述などが持ってくることが出来る。
従って、POEの動向をリアルタイムで表示するダッシュボードが成立する。これらの説明変数をもとに、例えばメーカーなら取得しているPOSデータなどを目的変数としてフィードするとPOEダッシュボードが出来る。少し狭義な意味でのマーケティングダッシュボードである。
今年はPOEダッシュボードが普及し出す元年となるだろう。
・テレビCM出稿量
・テレビ番組内でのブランドや商品カテゴリーに関する話題発信数
・ブランド名、競合ブランド名検索数
・自社ブランドサイト訪問数
・ソーシャルメディア上でブランド名を記述するソーシャルアカウント数
・POSデータなどの売上データ
これらをリアルタイム捕捉することで、一定の閾値を超えた場合の「打ち手」を想定しておき、随時アクションが起こせる状況にするのは「マーケティング施策対応のあり方だと言えよう。
そして、このようなダッシュボードが価値を持ってくると、説明変数には単に広告プロモーション施策だけでなく、値引きのデータや工場からの出荷状況など、より売上利益に影響するデータの入力が求められるようになるだろう。
「狭義のマーケティングダッシュボード」から「事業ダッシュボード」に変革していく。
また、データドリブンな思考をより活性化するために、「データドリブンなオフィス環境」をつくることも課題になるだろう。実際にイトーキなどはこうしたオフィス環境設計を提案している。
エージェンシーがそうなるのはまだまだだと思うが・・・。
その6)ユーザーの関心文脈でコミュニケーションする動画制作がスタートする年
~テレビはブランドの文脈、オンラインはユーザーの文脈~
シェアやすく、かつブランドメッセージが伝わるクリエイティブとは?
ターゲットユーザーが反応する要素(因子)は何か
オンライン動画広告の市場拡大は顕著になっている。しかしまだまだテレビCMと同じ素材を使っている例の方が主流で、動画広告というより動画のブランデッドコンテンツを作りシェアさせようという試みにテレビCM以外の素材制作は向けられている。
それはプロセスとしては当然の流れだが、オンライン動画広告用素材制作もオンライン独自素材を制作する企業が増えるだろう。
もちろんインストリームでのスキップ防止なども目的に改修されるCMというものから始まり、テレビとは違うオンラインでの視聴を前提にしたクリエイティブが量産され出すだろう。
テレビは非常にパッシブな環境であり、オンラインは基本アクティブな接触だ。またテレビでは視聴者はどういうユーザーか分からないが、オンラインではある程度分かる。どんなユーザーが広告配信面に来たかで配信する素材を最適化できる。
であれば、オンライン動画広告はそのユーザーが興味を持っている文脈でのブランド訴求にクリエイティブを最適化するという考え方が出来る。
オンライン用の動画の意味はそもそもどう考えたらいいのだろうか。
ベムが提起するのは、「テレビはブランドの文脈、オンラインはユーザーの文脈で」つくるべきだということだ。話を単純化すると「猫が大好き」で「可愛い猫の動画」をよく観ているユーザーには「猫」はユーザーが強く反応する文脈である。こういう要素分析を行い、ターゲットに強く刺さるクリエイティブを創出するのがオンライン側の役割になるだろう。そして、テレビCMとオンラインCMの双方を視聴した時に(おそらくターゲットによってはテレビCMは同じでもオンライン動画は違う)、化学反応のようにブランドメッセージがより強くスパークすることを目標にするようになる。
またブランディング効果に繋がる指標として「よりシェアされる」というデータ取得が可能で、「シェアされやすく、かつブランドメッセージが伝わるクリエイティブ」を制作する能力がオンライン動画クリエイティブでのスキルとして標榜されるだろう。
またユーザーが反応する因子分析をして、「クリエイティブに持ち込む要素」をデータから特定するようにもなると思われる。
データドリブンな「クリエイティブ・ブリーフ」が作られ、その上で良いアイディア、良いジャンプが出来るクリエーターが「良いクリエーター」として評価されるようになるだろう。(従来から本来そういうものだったはずだが)
その7)広告ブロックが端緒となってその連鎖によるネット専業ビジネス衰退の始まりの年
2015年はステマ問題などデジタル広告のなかでも「野放し」感のあるものに警鐘が鳴った年でもあった。またアドブロックの出現で業界は騒然となった。
広告ブロック自体の直接的な影響は少ないと思うが、ユーザーが気持ちよく受け入れられる広告配信への基調が出来る。うんざりするオンライン広告を是正する動きは、「刈り取れればよい」とする広告の配信を抑制する方向になるだろう。
既に買ったものやオーダーしたのに在庫がないとキャンセルさせられた商品の広告を配信してくる杜撰なリタゲに対する明確な拒否感も出てくる可能性も高い。
もうひとつは「消費者契約法」の改正がらみ。ここには業界的にもたいへん懸念される状況がある。一連の動きはユーザー重視、消費者重視の観点から、「刈り取れればよい」系の広告に一線を画して、そのあり方を問う傾向が強くなるだろう。この流れをきっかけとして、この領域の広告市場だけで食っている専業会社の淘汰が始まると思われる。
~ネットに閉じているスキルとCPA至上主義の限界露呈~
とはいえ、ネットを販売チャネルとしている事業者にとってのネット広告の「刈り取り機能」のパフォーマンス最大化志向はまだまだ続くだろう。刈り取り広告市場がシュリンクすることはない。しかしその最適化ソリューションを提供するサプライヤー側のスキルの限界は露呈してくる。そもそも「打ち手」が配信先や配信手法を変えるだけというのでは、もう誤魔化しは効かない。つまりそうした「打ち手」だけのパフォーマンス改善に限界が来るので、抜本的なクリエイティブ改善やそもそも広告以外の本当のソリューションを提供できるプレイヤーでないと淘汰され始めるだろう。
今までは、広告主の担当者が広告費を使うアカウンタビリティのあるCPAで社内を通してきた傾向は、パフォーマンスが頭打ちになることでもっとトータルな施策な考え方と効果指標が求められるようになる。ただCPAだけが目標化されてきた行動様式は特定の専業代理店では「文化」として浸透しきっているので、これを改革することは容易でないかもしれない。
~ダイレクトマーケティングでもブランディング効果を付加しないと続かない~
ブランディングとは「マーケティングの時間軸を長く設定したときのROIの最大化」だとすると、ダイレクトマーケティングの世界でも今日明日の売上の最大化ではなく、今後1年または今後3年の売上を最大化するにはどんなコミュニケーションが必要かを考える事業者も出てくるだろう。こうしたことは俯瞰して全体最適が考えられる経営に近いポジションから生まれる必要があるが、アフィリエイト、リスティング、リタゲと来て、刈り取りに特化してきた広告のパフォーマンスの頭打ち現象から、商品力とブランディングコミュニケーションへのマーケティングコストシフトが起こる可能性は高い。ただし、やはりそこには経営層のこうしたマーケティングへの見識が問われることになるだろう。
~優勝劣敗がはっきりし始める業界~
こうした市場の右肩上がりに翳りが見えてくるため、CPAを目標化してのパフォーマンスを試されている専業広告会社のなかにも、そろそろ優勝劣敗がはっきりしてくると思われる。広告本来のまだ興味関心が顕在化していない層(潜在層)に認知と態度変容を促す役割をどう醸成するかに関して、多様な「打ち手」をもって課題解決が出来る広告会社とそうでない会社というところで一線が画されるという言い方も出来るだろう。
番外) ブランド横断型マーケティング担当(DMPによるデータマーケティング担当)
が重要な機能として認識される年
人口現象社会の日本の市場で、ブランドマネージャーがブランドごとのマーケティングをすることの限界が明確になる。複数ブランドを展開する企業にとって、この位置づけのマーケターの必要性が大いに語られ、表明する企業が増えるだろう。
人口が減るなかでLTVを上げる、クロスセルを促進するなどの課題が出てくると、これはブランドごとにマーケティングしている事業部やブランドマネージャーでは出来ないことだ。またユーザーの年齢が上がれば、効率的に自社内ブランドに引き継ぐためにはどうしても商品視点ではなく、ユーザー視点でのマーケティングがメーカーにも必要なのである。
ブランド側のマーケターがCMOに成長するプロセスに、まず営業や広告部門を経験し、ブランドマネージャーを経て、ブランド横断型のDMPを駆使したユーザーベースマーケティング担当となることが求められるだろう。
複数ブランドを展開する企業では、こうしたスキルがCMOの必要条件となるだろう。
企業の経営トップは、マーケティングのデジタル化に伴って、「マーケティング」を再定義して全社員とその認識を共有する必要がある。「マス・リアル」と「ネット」の分断と部署ごとの部分最適化を打破して、全体最適に持っていくのはトップの責任だろう。もう「デジタルが分からない」というエクスキューズは通用しない。
総論として、2016年はマス(テレビ)とリアルにデジタルデータが最適化のために活用されたり、デジタルメディアとの連動が本格化する。そういう意味で、日本でも「広告マーケティングの本丸が本格的にデジタルを取り込みだす年」ということになるだろう。どうやら「アドバタイジングウィークTOKYO」も始まる。これも象徴的なことで、アドテク業者同士が説明し合うだけでは、(ネット領域のアドテクに閉じたところに)本当の意味のソリューションがないことが明確になったところで、新たに「本当のデジタルマーケティング」が認識される年と言っていいだろう。
その1)デジタル広告でパブリッシャーの連携が始まる年
英国の「パンゲア」など、巨大プラットフォーマーに利益を持っていかれているパブリッシャーが連帯して、自らの利益基盤を作ろうとする動きは日本でも始まるだろう。
良質な一次コンテンツを創出しているパブリッシャーが、デジタルシフトしても持続的な経営基盤を維持出来るようになるのは、受益者であるユーザーにとっても大切なことである。
広告というマネタイズでそれが成立するためには、アメリカの1/4とも言われる広告単価を本当の価値に見合ったところまで引き上げる必要がある。そのためにも掲載面の良質コンテンツが誘引する良質なオーディエンスとその接触態度をもって、広告の「ブランディング効果」をもっと主張したい。
それには、ブランディング効果を生むフォーマットや効果指標を新たにつくる必要がある。こうしたことはパブリッシャーが単独で出来ることではない。連携・連帯が必要となるだろう。
また、今後期待されるネイティブ広告の動画フォーマットなどでのクリエイティブも、ブランドの文脈というより、パブリッシャー側のコンテンツ文脈(=オーディエンスの文脈)でつくられるべきであり、こうしたことはエージェンシーに頼ることなく、パブリッシャーが連携してクリエイティブ開発機能を獲得すべきである。
競合意識ばかりでお互いに向き合うのではなく、協調できることは積極的に連携を進める時期に来ており、大手パブリッシャーのリーダーシップにも期待する。
参考) http://digiday.jp/publishers/pangaea-symmachia-pubulisher-alliance/

その2)スマホのロケーションデータ活用で交通広告・折込チラシ大変革スタートの年
これはまた、ユーザー情報活用ポリシー再検討の年でもある
2016年はスマホのロケーションデータをターゲティングに活用する元年になるだろう。しかし、これには大きな課題もある。ロケーションデータを使われるユーザーにとって「気持ち悪さ」の払拭はそう簡単ではないからだ。これにはパーミッションの仕方もあるが、そもそも広告配信ルール、運用上の自主規制が必要である。
例えば、「セグメントする一括りを5000人以下にまでは絞らない」とか、個人特定に近づかないように運用面でのケアをするということである。
ここを間違えると、すぐには市場形成に至らない可能性もある。いくらシステム的に個人情報と紐づいていないと言っても使われるユーザーからすると「気持ち悪さ」には変わりない。
その上で、スマホのロケーションデータを活用したターゲティング技法が実現していくと、かなりマーケターにとっては幅広く使えるものになるだろう。
先ほどのダイレクトマーケターの「潜在層からの新規ユーザー掘り起こし」にも新たなターゲティング手法として注目されるはずである。
昨今はリタゲ偏重のように、既に興味関心を顕在化したユーザーにばかりをターゲットし、刈り取り促進にばかりコストを集中されているが、これはそもそもマーケターとしての発想が貧弱な証拠である。
ロケーションデータを使った新たなターゲティング発想は、「新たなターゲットを創出する」発想であり、リタゲ的な縮小均衡のターゲティングではない。
また、このターゲティングは従来の交通広告や折込チラシ、ポスティングサービスのプランニングに劇的な進化をもたらす。「打ち手」はスマホへのデジタル広告ばかりではなく、デジタルサイネージを含む従来の交通広告、折込チラシ、ポスティングほかリアルな施策に応用できる。2020年のオリンピックに向けて特に都内のサイネージなどは大きく変革され、進化するだろう。山手線の新型車両をはじめ、ディスプレイへのシフトで、時間を区切った広告表示など、印刷物からディスプレイへの進化の真骨頂というべき革新が起きるだろう。
こうしたサイネージへの広告配信プランニングを支えるのが、スマホのロケーションデータになるのは間違いない。またデジタルサイネージはその視聴可能エリアにいるスマホデータをキャッチして最適な広告配信をすることになるだろう。このような実験も今年2016年に行われると思う。

その3)全数系テレビ視聴データと全数系購買データが紐づく年
~新たなテレビ視聴データ分析とその活用が本格化する~
テレビ視聴データというとビデオリサーチ社をはじめパネル調査によるものと理解されているが、テレビ端末の結線率が上げることでネット回線を使った視聴ログデータ収集は様々な事業者によってトライされると思われる。いわゆる全数系のテレビ視聴データである。これに全数系の購買データが紐づくことが想定される。
つまりテレビ視聴と、その効果としての購買行動が測定されるということである。従来、メディア接触と購買データをシングルソースで見ることは出来たが、やはり数千、数万のパネル数だと確認したいブランドの購買データが出現しないとか、特定の広告のテレビ視聴者が少なすぎて分析に耐えられないということがあった。しかし、ビッグデータ時代、マーケティングデータは、ECやポイントカードデータという全数系購買データと紐づくべくテレビ視聴データも全数系となるだろう。
~視聴率から視聴質へ~
視聴率はテレビが点いているという状態を測定しているに過ぎない。また個人視聴を測るピープルメータも自分が観ている時はこのボタンを押し、観ない時はまたボタンを押すという行為を被験者に強いている訳だが、これがどの程度正確なのか、疑問を挟み込むとキリがない。
視聴率だけでなく、視聴質を測定できたらということはその昔当時の広告主協会からも業界に発信された経緯もある。
ベムの考える「視聴質」とは、「誰が観ているか」(オーディエンス)と、「どの程度専念して観ているか」(ビューアビリティ=テレビの前への滞在度合い&アテンション=注視度合い)、「誰と観ているか」(コ・ビューイング)、「どんな反応をしているか」(表情分析)などで構成される。
2016年はこうした「視聴質」データが世に問われる年にもなりそうだ。
Netflixが上陸してきたが、彼らが視聴データ分析をコンテンツマーケティングにまで応用し、成果を上げているのに対して、日本のテレビ局はあまりに視聴データ分析を怠ってきた。視聴率は単に「商品が何個売れたか」に過ぎない。視聴者構造やオーディエンス分析をして、「誰が何個づつ買ったか」、さらに視聴質分析によって、消費者が商品(番組やCM)にどんな関与をしたかをアテンション=注視度合いや、コ・ビューイング(誰と誰で観ているか=例えば母親と子供で観ている)状況、反応分析(表情)などでさらに深めるべきだろう。
昨年の週刊ダイヤモンドの特集タイトルは「誰がテレビを殺すのか」だったが、実際は体調が悪いのに血液検査もしないのだから、誰に殺される訳ではなく、自ら病気で弱っているのに処方箋を書いてもらっていないに過ぎない。需要より供給力が落ちているのが今のテレビ業界だ。ゼロサムだから日テレが頑張っているというよりCXの落ち込みで他局が相対的に良く見えるだけ。
~全国ネット番組をしっかり分析するローカル局データ~
全国ネット番組に関してはすべての地方局の視聴率がとれている訳ではなく、個人視聴率は機械式では東阪名しか取れていない。そういう意味では全国30局ネットと言ってもローカルのデータはほとんど分からないにも関わらず巨額なコストをかけて全国ネットの番組を買っている。
前述のようにテレビ視聴ログデータも全数系データで分析できると、すべてのローカルデータも十分分析できる。
こうした分析が進むと、ベムが予測するに、「都市部はデジタルデバイスシフトが進むが、ローカルのテレビ出稿はかえって増える。」と思う。
そうした「都市部のデバイスシフトとテレビ出稿のエリアシフト」の基調がこうしたデータから起きるのも2016年と言えるだろう。
いずれにしても、従来のマスメディアとデジタルメディアを連携して使うという基調が2016年から始まると言っていいだろう。

前回のエントリーで「左脳でインプットして、右脳でアウトプットせよ」と書いた。
左脳でデータ分析して「シナリオ設計」するものの、マーケティング施策としてアウトプットするのは右脳を最大限に活用するものになるということだ。
ところで、この右脳と左脳をつないでいるのは「脳梁」(corpus callosum、CC)という器官だ。で、この脳梁は女性の方が大きいのはよく知られている。男の1.5倍も細胞が密集しているそうだ。右脳と左脳を橋渡しする機能でいうと女性の方が優位にあるということだ。
なので、ベムは「左脳でインプットして、右脳でアウトプットする」デジタルマーケティング思考をする作業に女性が向いているんじゃないかと思う訳だ。もちろん医学的に何の根拠もありません。医学的に右脳と左脳をつなぐ機能が、左脳でインプットして右脳でアウトプットすることに通じるかどうかは別にして、左脳的思考と右脳的思考を連携させる作業が求められるとすると、こういう思考法とはどんなものかを意識してみたいのでこんな話もしてみます。
で、経験的に言っても、あるブランド体験をしたユーザーのログ分析をさせて、クライアントのブランドマネージャーに「これは私たちが何回ブレストしても絶対出てこなかった」とたいへん喜ばれた「ユーザー像」を導き出したのも弊社の女性分析官だったし、クリエイティブのワークショップでコピー100本ノックにしっかり着いてきたのも、普段DSPのオペレーションとレポーティング業務としている女性オペレータだった。
海外に行くと、広告マーケティング領域で活躍する女性は非常に多い。メディア系エージェンシーは半数以上が女性だしね・・・。メディアエージェンシーはプランニングメソッドがしっかり確立してたりするからそもそも左脳系の作業だ。
ネット専業にもたくさん女性が活躍していると思うが、だいたい細かい作業に長けていたり、緻密だったりする女性的な特徴を生かすのもさることながら、そこから右脳を使った「シナリオ設計」や「アイディア出し」が出来るようになる可能性も大きい。
そのためにも、広告のクリエイティブやプロモーションの企画開発・実施の実際にもっと触れてみるといい。
データ分析に自信がある女性の方、デジタルインテリジェンスでは左脳と右脳をつなぐ作業が出来ると思いますよ。ご応募ください。
先日、ベムが青学のマーケティング学科の学生さんたちに講義をした時に、後からみなさんが特に反応したフレーズがこれだったらしい。
で、いつものようにデジタルマーケティングって何?から講義した訳です。
コミュニケーション開発(クリエイティブとか)を始めとする様々なマーケティング施策の企画実施は経験値とアイディアの成せる技で、データ分析結果から簡単に導き出されるものではないのだが、データが活用されないマーケティング施策なんて有り得ないので「データからシナリオ設計する」という作業がこれからは必要になる。
例えば、クリエイティブは、データによって従来よりはるかに緻密な「クリエイティブブリーフ」が書かれることになるだろう。ある意味かなり条件づけされる。それでもそこから良いアイディアと良いジャンプがあってこそのクリエイティブなのである。
Netflixがコンテンツをマーケティングするデータ分析のごとくCMに関してもデータによるブリーフィングがされるようになるだろう。それでもそこからジャンプするのが本当に実力のあるクリエーターというものだ。
その昔、ベムは資生堂さんのコピーライターだった小野田隆雄さんが独立された直後にお仕事をさせていただいとことがある。その仕事のクライアントはたいへん調査が好きだったので、小野田さんから「横山くん、調査データがいっぱいあるんでしょ?遠慮なく調査から出ていることで僕を縛ってよ。」と言われたのを鮮明に憶えている。「条件づけて縛ってよ。」なんて当時自分の会社のクリエーターから言われたことがなかったので、力のあるクリエーターとはこういうものなんだと思ったものだ。
どこかで書かれているのを読んだが、職業で表すと確か「右脳でインプットして、右脳でアウトプットする」のは画家で、「左脳でインプットして、左脳でアウトプットするのが弁護士」、「右脳でインプットして、左脳でアウトプットする」のは内科医、そして「左脳でインプットして、右脳でアウトプットする」のが美容師なんだそうである。
言葉で「こんなふうにしてください。」と注文されて、髪を仕上げるという創作を行うということだろう。そう言えば、広告のクリエーターってそんなものかもしれない。
最近、DMP導入に関わってSIer系の会社がデータ分析官を多く採用して分析するのだが、「なかなか価値ある分析結果が得られない」という相談を受ける。まあ、ベムからすればそんなの当たり前で、マーケティング施策の企画実施経験のない人にそう簡単にアウトプットに繋がる作業が出来るとは思えない。
データはマーケティングのコメだが、コメは炊かないと食えない。またご飯も使って料理にしないと価値を生むことにはならない。
いくらデータ分析しても、マーケティング施策を実施して成果を上げるほかにはないのだから、「打ち手」に繋がらない分析は全く意味がない。
「ネット領域に閉じている(打ち手がネット広告やWeb施策しかない)マーケティングはデジタルマーケティングとは言わない」といつもベムが言っていることを講義ではお話したわけだが、マスやリアル領域とネット領域が企業のなかでも分離状態にあることを改善しないといけないこと、これから広告をはじめとするマーケティング支援産業に身を置くなら、是非、データ分析やテクノロジーに強いが、マスやリアルを含むすべてのマーケティング施策を「打ち手」の対象とする広告人やマーケターになって欲しいとお話した。
よくベムが講演で比喩として、「ネット専業はバントばかりしていて、『バットの角度を1度変えると、出塁率が1%増えます』みたいなことばかりしていて、一方レガシー代理店はホームラン狙いしかしなくて、ホームランが出ても、三振しても、どうしてそうなったかは全く意識しないまま次の打席に立つ。」という話を使わせてもらう。
「たまには、ヒットエンドランくらい試したらどうだろう。」
そういう意味ではCPAを握らされている専業系はかわいそうだ。だってCPAは広告だけで最適化できるもんじゃないでしょうが・・・。どうしてブランド力までギャランティーしなきゃいけないんでしょう?しかも広告における最大の変数であるクリエイティブでさえ押し付けられて改善させてもらえない(改善する能力があればだが)。
でもその状況で愚痴ばかり言ってないで、自分が出来る「打ち手」の幅を広げる努力をしよう。それには右脳でアウトプットすることの実際に触れよう。
レガシー代理店のアナログおじさんも、右脳でアウトプットには長けているなんだから、デジタル小僧のインプットを料理できるようになろう。
今朝、デジタルインテリジェンスから『CMARC』(TVCMアクチャル到達補完型デジタル広告配信)をリリースしました。
http://markezine.jp/article/detail/23501
このなかで、弊社の基本的な考え方として、TVCMの到達をインプレッション数(TVCMの表示回数)で指標化することを提案しています。
従来も、e-GRPだのV-GRPだのと、ネット広告の方をTVCMの指標であるGRPモデルにしようという努力がなされましたが、成功しているようには思えません。そもそも無理があるのです。
ベムは、広告代理店の時代にTVスポットや番組販売をものすご~く作業してきました。まあ、ローカル局も多かったとはいえ、おそらく少なくとも総計で数10万GRP分くらいのスポット作業をしたでしょう。
その経験値と、96年からネット広告ビジネスを立ち上げてきた(JIAAとWeb研の共同プロジェクトでネット広告の用語集をつくって広告の表示回数をインプレッション数と定義した)知見でいうと、TVCMの方をインプレッション数にしてしまって方がいいというのが私の結論です。
なぜかというと、TVスポットを買い付けている広告主のみなさん! みなさんは通貨としては世帯GRPで買い付けてはいるでしょうが、マーケティング指標としては個人GRP(TARP)を見てますよね。ターゲットGRPです。
でもこのパーセントで見る指標には問題があります。
ちょっと古いデータですが、1998年~2010年の12年間にM1の個人視聴率は98年を100とすると、2010年には70.4にまで落ちていますが、この間、M1の人口は8掛けになっています。ということは、M1への総到達量は98年を100とすると、2010年は56.8になっているということです。F1でも同じく64.2です。
つまり母数が減っているのに、ずっとパーセントで評価するのはおかしくないですか?ということです。
リーチを到達人数、GRPをインプレッション数というように絶対数で捕捉する意味は、まずエリアをまたいでも足し上げることが出来ること。そしてネット広告と同様の指標で捉えられるということで、TVCMとデジタル広告の組み合わせのしやすさがあります。
(CMARCではTVCMのターゲットリーチの補完をこの指標で行います。)
そして、
今回のCMARCは「リアルタイムで捕捉して、リアルタイムで手を打とう」ということを標榜しています。
TVCMとネット動画などの組み合わせの議論は、既にいろんな代理店からもシミュレーションモデルが出来ています。ベムも昨年はずいぶんTVとネット動画のアロケーションモデル構築のコンサルをしました。ここでもひとつの結論があって、事前のシミュレーションはナンセンスということです。
それはそうですよね。なにせTVCMのアクチャルGRPはひどい時はスポット案の7掛けくらいになってしまうこともザラにあるんですから・・・。TVが7掛けになることを想定してシミュレーションしてますか? それに、アロケーションモデルと言っても、ほとんど予算配分の話で終わってしまい、デジタル側をどう配信するかということまではなにもプランニングされないということです。例えばテレビスポットに8000万円使って、デジタルに2000万円使うのが適正配分と答えが出たとして、このデジタルの方の2000万円の使い方は無数にありますよね。誰に、どんなタイミングで、どんなフォーマットで、配信するのか・・・。CMARCでは、ターゲットセグメント(例えば20代女性)のリーチやインプレッション数が目標値に対して、TVCMではどれだけ足りないのか、はたまた、足りているのかをアクチャルをほぼリアルタイムで見ながら、足りなきゃネット動画を入札していくというモデルです。
逆に言えば、足りてれば何もしなくていいのです。予算余らせるべきです。
つまり、事前に最適化プランニングがあるのではなく、リアルタイムで実態を捕捉して「運用で最適にする」という考え方です。
そのためには、予算がプランを決めてしまうという従来の考え方ではなく、キャンペーンをやる以上はターゲットリーチやフリークエンシーに目標設定がなされなければなりません。広告主のみなさん、今回のTVスポットのキャンペーン、ターゲットにまずは関東地区だけで何人に何回見せたいですか? ターゲットは20代女性ですか、30代女性ですか?そのターゲット350万人に2000万インプレッションですか? 400万人に2500万インプレッションですか?
それを想定するためにも、まず今やっているTVCMがターゲット何人に何インプレッション、到達しているか見ませんか?
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