【レポート】Web担当者Forumミーティング 2024 秋

「GA4が難しいを卒業!」 解析のプロ 小川卓氏の“迷わない”データ分析・改善の法則

顧客を正しく理解し、態度変容を促すために、Google アナリティクス 4を使って取得するべきデータ、分析手法を、小川卓氏が事例をまじえて紹介している。

Google アナリティクス 4(GA4)は、サイトを訪れているユーザーのことを理解するためのツールだといえる。ユーザーの気持ちを正しく理解することで、サイト改善につなげることができる。そこで、「Web担当者Forum ミーティング 2024 秋」に登壇したHAPPY ANALYTICSの小川氏は、顧客を正しく理解するために取得するべきデータや分析手法を解説した。

HAPPY ANALYTICS 代表取締役 小川 卓 氏

価値あるユーザーを増やすことが大切

あなたは、どのような数値を見て施策を行っているだろうか? 小川氏はまず、よくある指標やKPIの例、そして改善対象の指標と改善施策例を提示した(次図参照)。

よくある指標やKPIの例
一般的な施策

上図にあげたKPIや施策は確かに大切だ。「Webサイトのビジネスインパクトの計測」「増減の原因分析」「施策を定量的に評価すること」を可能にするので、サイトの健康診断として常に把握しておく必要がある。

ただし、これらの考え方だけでは、改善に行き詰ると小川氏は言う。なぜなら、これらの数値だけを見ても、できることは限られているからだ。

一般的な改善施策をすることは重要だが、そこから新しい何かを生み出すことは難しい。施策によって改善できることはあるが、限定的なことも多い(小川氏)

これを打破するためには、ユーザーの態度や気持ちを軸において理解する必要がある。ではどうすればいいのか? 以下の質問を考えてみよう。

  • 1人が100回閲覧する場合と20人が5回閲覧する、どちらが良い?
  • 興味のない100人と興味のある100人、どちらの方が良い?
  • 突発的な購入者と継続的な購入者、どちらの方が良い?

3つとも後者の方が良いだろう。しかし、前者と後者のいずれでも、PV(ページビュー)数や訪問数といった数値で見れば、同じになってしまう。

また、新しいビジネス創出では、突発的な購入者ではなく、商品や自社に興味関心があるユーザーを集めることが大事になる。興味がある人がマネタイズの土台をつくるわけだ。そのような、「価値あるユーザーを増やす」ための改善をしなければならない。

では、自社のサイトに価値を感じてくれている人は、どのような行動をとっているのだろうか? コンバージョンしたかどうかはいったん置いておいて、考えてみてほしい。次のような行動をとっているのではないだろうか?

  • 熱心な読者で頻度高く情報収集をしてくれている
  • サイトに来るだけではなく、商品探しを真剣に行っている
  • サービスに対する満足度が高く、継続的に利用している

ユーザーの一人ひとりに聞くことができないため、これらを100%正しく計測することは難しい。しかし、自社サイトに興味関心のあるユーザーがとる行動をGA4で計測することは、きちんと設定さえすれば可能になる。

たとえば、商品詳細を見た人が100人いて、カートに入れた人が30人のとき、残りの70人のなかには、「じっくり悩んで今ではなかった」という人もいれば、「5秒見てこれは違う」という人もいる。「カートに入れなかった人」と一括りにするのではなく、そこはきちんと区別して計測すべきだということだ。じっくり悩んだということは、興味関心があるということだからだ。

事例紹介:GA4でユーザーの興味関心を計測する

GA4の計測タグを入れると、PV数やダウンロード数、ユーザー数、流入元などのデータを見られるが、ユーザーの興味関心を計測するにはそれだけでは不十分だ。小川氏は、カスタマイズして、次のようなデータをとっておくと良いという。以下は、ユーザーの興味関心を計測するためにとるべき項目の例だ。

ユーザーの興味関心を計測するためにとるべき項目(ユーザー軸の指標)

継続利用:コホート分析

GA4では、「コホートデータ探索」というテンプレートが用意されており、コホート分析が行える。以下の図は、コホート分析を利用して作成したレポートで、「ある週に来た人の数を100%とし、翌週は何%来てくれたか」という表である。

コホート分析例 継続率

興味関心があるからこそ継続しているので、継続率はKPIの1つと考えることができる。たとえば、メディア関連のサイト、アプリは継続率を重視している。

流入元×継続率

この継続率を、流入元や他セグメントとかけ合わせることで、どういう行動が継続訪問につながるかを分析できる。たとえば以下の図は、流入元と継続率の関係を見るレポートだ。

流入元と継続率の関係を見るレポート

「検索エンジンAからの流入の方が、Bからの流入よりも継続率が高い」、あるいは「このランディングページから流入すると再訪率が高い」などの傾向が読みとれれば、施策を立てる参考にできる。ランディングページの評価指標として直帰率を見ることが多いが、直帰したとしても、後で戻ってきて継続購入してくれるようになったなら、そのランディングページは評価されるべきだろう。

商品閲覧回数×継続率

次に紹介するのは、商品閲覧回数と継続率の関係を見るレポートだ。ECサイトで商品を1個だけ見たユーザーよりも、複数個見たユーザーの方が、継続率が高いことがある。ただし、多すぎてもよくはない。

何個が最適かは、次図のような、いくつの商品を見たかというデータと継続率をかけ合わせた分析で把握可能だ。これによって、複数商品を見せるようなコンテンツや機能を追加すべきか、否かの判断がつくようになる。

商品閲覧回数と継続率の関係を見るレポート

コンテンツに対する評価

コンテンツの評価を計測するには、コンテンツごとに「Goodボタン」と「Badボタン」を設置する方法がある。各ボタンのクリック数を計測し、ランキング順に並べると、ユーザーにとって役立っている記事とそうでない記事が明確になる。ここから、よいコンテンツと悪いコンテンツに、どのような特徴があるのかを見つけるという方法である。ポイントは、ページを評価するのではなく、ユーザーはこういうテーマのコンテンツを良いと判断すると捉えることだ。

FAQコンテンツのうち、どのQAをクリックしたかなども、ユーザーの理解に役立つ。ユーザーが何につまずいたのかがわかれば、「商品詳細ページに、あらかじめ説明を記載した方がいい」などの施策につながるからだ。

また小川氏は、コンテンツを評価するには、読了率を見るのがお勧めだという。GA4では、どこまで読んだのかといったデータを細かくとることもできるが、ユーザーは何に興味があり、どのような記事を最後まで読みたいと思ってくれているのかをおさえることも重要だからだ。

スコア

スコアリングの際、サイトの全行動を見るときりがなく、どう重み付けすればいいかわからないと悩む人も多いだろう。小川氏は「スコアリングはファネルにおいて一番落ちているところを中心に見ている」という。

たとえば、ECサイトで商品詳細ページからカートへの遷移で7割落ちているという場合、その7割を「カートに入れなかった」と一括りにするのではなく、次図のような行動を計測してスコア化するといい。ユーザーがどういう気持ちで行動したのかを類推するためだ。

離脱が多い遷移のページをスコア化してグラデーションを見る

商品詳細ページでサムネイルをクリックしたということは、いろいろな画像を見て商品を確かめたかったと推測できる。商品についてさらに情報を得ようとしていると考えていいだろう。あるいは、再入荷ボタンを押したなら、欠品していたからカートに入れられなかっただけで、購入の本気度は高いと考えられる。このような個々のユーザー行動を、GA4では「イベント」として設定して計測できる。

スコアの重み付けは、最初は大雑把で良い。小川氏は、迷ったらとりあえず全ての行動を1点にしてもいいという。データが溜まって分析した結果、どの項目が成果との関連が高いかがわかったら、点数を付け替えればいいからだ。

スコアリングの結果、どのページを優先的に改善すべきか、どのような機能を追加すべきかなどが考えられるようになる。たとえば、サムネイルと購入に強い相関があったなら、サムネイルが1枚しかないページにサムネイルを増やすという施策が考えられる。

LTV(ライフタイムバリュー)

GA4には、「期間での累計購入金額」を把握できる、「ユーザーのライフタイム」というテンプレートがある。これを使うと、1回訪問したユーザーのその後の行動を確認できる

広告管理では、単純にその広告から成果にたどり着いたか否かを見ることが多いが、一度購入しただけでなく、その後に何度も購入しているかどうか、という行動も評価すべきだろう。そのランキングは、その場でコンバージョンしたというランキングと大きく異なる場合もある。

GA4でオーディエンスを作成する

こうしたデータを取得するうえでやるべきことは、GA4でオーディエンスを作成することだ。オーディエンスの定義は、「特定の条件を満たしたユーザー群」である。

Webサイトに来てくれているユーザーが、リピート購入してくれるとか、毎日コンテンツを見にきてくれるといった、実際になってほしいお客様になるまでには、いくつかのプロセスがある。Webサイトに1,000人来ているとしても、別々のステージにいるはずだ。それを、あるステージごとに、ユーザー群というかたまりとして分けよう、ということだ。たとえば、次のような分類が考えられる。

ユーザー群の定義例

このユーザー群ごとに、計測した例が以下になる。ユーザーがどこに進もうとして、どこで離脱しているのかが、わかるようになるわけだ。

ユーザー群ごとの数値を見る例

オーディエンスの新規作成は、管理画面のオーディエンスから行う。オーディエンス作成画面では、条件を設定し、有効期限を指定すればいい。イベント名の指定や、キーイベント登録も可能である。有効期限は、頻度高く訪問するサイトなら30日程度、BtoBなど検討期間が長い場合は数カ月など、商材によって異なる。

よくあるオーディエンス条件

以下の図のようなオーディエンス条件がよく使われている。

オススメの条件例

GA4でオーディエンスを分析する

オーディエンスを分析するということは、次のステップに進んだ人たちと進まなかった人たちを比較して何が違うのかを明確にし、より多くの人たちに次に進んでもらえるようにすることだ。

たとえば「ステップ1を満たした、かつ、ステップ2を満たした」というグループと、「ステップ1は満たしたが、ステップ2を満たしていない」グループを、セグメント機能を使って作る。そして、双方の流入元や閲覧ページ、行動などを比較して、「ステップ2に進む人たちはどういう行動をしやすいのか」を読み解き、より多くの人たちに進んでもらえる施策を実行すればいいわけだ。

態度変容を促すための顧客分析と改善

あなたは、サイト改善の目標を、以下のような数値の改善で考えていないだろうか?

  • 訪問者100万人を150万人にする
  • エンゲージメント率を40%から60%に上げる
  • セッションあたりのPV数を1.5から2.2に上げる

もちろん、これらの数値が上がること自体は悪いことではない。しかし、これらはユーザーの気持ちを無視した数値の改善であり、ビジネスゴールに対する効果は限定的だ。必要なのは、ユーザーに態度変容を促すことだ。たとえば、以下のように考えて、それを実現するKPIを設計しなければいけない。

  • 訪問者のなかで、商品を真剣に検討している人数を3万人から5万人に増やす
  • オンライン学習サービスに申し込んだ人のうち、成長を実感できた割合を2割から4割に改善する

これまで解説したことを上手に活用するためには、次の3点が大切になる。

  • 今までのKPIや指標と並行で利用する(新たな視点+1)
  • 短期的にはビジネス影響が少ないが、中長期においては欠かせない考え方
  • 「この施策が○○のユーザーのためになっているのか?」という視点で考える

小川氏は、「どの数字が上がるかではなく、ユーザーに安心してもらえる、納得してもらえる、興味をもってもらえる、見つけてもらえる、最後の後押しをする、といった観点で施策を考えてほしい」と語り、講演を終えた。

\参加無料・ぜひご参加ください!/

Web担主催イベント

キヤノンMJ、カルビー、@cosme、中川政七商店などが登壇! 2/25(火)・26(水)開催

「デジタルマーケターズサミット 2025 Winter」アーカイブなしの【無料】オンラインLIVEセミナー【広告主・マーケター限定】
用語集
EC / KPI / LTV / PV / コンバージョン / セッション / タグ / ダウンロード / ファネル / ページビュー / ランディングページ / 検索エンジン / 直帰 / 直帰率 / 訪問 / 訪問者
この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

チャーン
チャーンは英語でChurn。Churnは日本語で「かき混ぜる」という意味だが、ビ ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]