アドベリフィケーション入門

消費者からの指摘!? 企業がデジタル広告のパフォーマンス計測を始めるきっかけと成果

「アドベリ入門」最終回の第7回は、日本の企業がデジタル広告のパフォーマンス計測を始める理由に着目。どのような成果が出たのか、成功事例もご紹介します。

デジタル広告にまつわる、さまざまな疑問や現場で直面する悩みを抱えるマーケターの末広告美さんが、アドベリフィケーションに詳しいIASロボット君に解説してもらう連載。

最終回は「デジタル広告のアドベリ計測を始める動機と成果」を解説します。

末広

ロボ君、他のみんなはどんな理由で、
アドベリを始めているのかな?

ロボット君

理由はさまざまですが、
大きく5つに分かれマス。

デジタル広告の配信状況を、広告の視認性(ビューアビリティ)や不正(アドフラウド)、ブランド毀損(ブランドリスク)などの観点から効果検証する「アドベリフィケーション」。

世界的に普及し、最も先行するアメリカでは、すでに主要広告主の9割が導入しています。デジタル広告の効果検証ベンダーであるIntegral Ad Science(IAS)が計測している、日本国内の広告インプレッション(広告の表示)数も、過去5年で6.5倍に増加。これは、日本国内でもアドベリフィケーションを使ってパフォーマンス改善に取り組む企業数が確実に増えていることを意味します。

日本国内の広告インプレッション数は、過去5年で6.5倍に増加

日本企業がデジタル広告の
アドベリを始める5つの大きな動機

日本の企業は、なぜアドベリを開始したのでしょうか? その動機に目を向けると、組織内で自発的に発生したポジティブな推進によるものだけでなく、社外からのネガティブな指摘を発端に、アドベリ導入を検討することも決して少なくありません。

日本の企業がアドベリを始める理由に着目してみると、5つに大別できそうです。

1. 社外からの指摘

  • YouTube上の不適切な動画に広告が配信され、消費者からクレームがきた
  • デジタル広告の使い方について、株主総会で質問を受けた

不適切な場所でブランドの広告を目にし、不快感や不信感を抱いた消費者からコールセンターに問い合わせが入ったり、株主総会で広告におけるブランド毀損にどう対処しているのかなどを指摘されたりすることにより、アドベリツールの導入を開始するケースです。

しかし、「おたくの広告が変なサイトに出ていたよ!」と指摘されても、何の対策も行っていない場合、ブランド毀損が発生した事実の確認はおろか、そのページを特定できません。そこで、広告効果検証ツール(アドベリ)の出番です。アドベリツールを導入することで、問題の把握はもちろん、不適切なサイトに出てしまった際の事後の対処だけでなく、サイトの安全性を事前に確認したうえで広告出稿を行うことが可能になります。

今まで、コストやオペレーションのハードルからアドベリの導入を見送ってきた企業が、社外からの指摘で動き始めることは多いようです。実際にIAS(効果検証ベンダー)にも、お客様(実際の消費者)からの問い合わせやクレームを受けた後に相談に来られることは良くあります。

末広

広告を出している私たちより、
外部の方が先に見つけることもあるんだね……。

ロボット君

デジタル広告は、掲載場所を完全に把握することが難しいデス。
だから、お客様が先に不適切な広告表示を見つけるケースもありマス。

2. 社内の上層部、グローバル本社からの指示

  • グローバル本社の指示で、アドベリ未導入の日本法人に対応の指示
  • トップダウンでのブランド保護の指示

グローバル企業では、本社主導で世界中の各拠点に一斉にアドベリツールを導入するケースがあります。ある日突然「アドベリフィケーションツールを導入せよ」との指示が出てきたことにより、日本法人の担当者が大至急でアドベリの準備を進めるわけです。アドベリ運用が当たり前なグローバル企業に限らず、ブランド保護の重要性を認識した国内経営層から、ブランド保護に対処せよとの指示が入り、トップダウンで一気にアドベリ導入が決まる例も多いようです。

末広

うちの会社も、もともと上層部からの
「ブランドを守れ!」の号令で
アドベリを開始したので、ここのカテゴリかも。

3. 環境の変化による必要性

  • 官公庁からのプロジェクトの発注内容に、デジタル広告出稿時のリスク管理が加わった
  • 新型コロナの大流行、ウクライナ侵攻のニュースなどの記事が増え、ブランドセーフな環境で広告配信を行う必要が出てきた
  • JICDAQに加入し、8つの「広告掲載不適切コンテンツカテゴリ」を避けた広告配信のために、何かしら対応が必要となった

例えば、官公庁からのプロジェクトの発注内容に「アドベリ対応」が要件として加わったり、国内外の政治情勢の変化、軍事侵攻などセンシティブな記事が増え、デジタル広告出稿時の「リスク管理」に対する緊急性が高まったりなど、環境の変化がアドベリツール導入の推進力となるケースです。

また、広告業界の健全な発展を目指す日本のJICDAQ(一般社団法人デジタル広告品質認証機構)に加入したことにより、JICDAQが定める「広告掲載不適切コンテンツカテゴリ」に該当するコンテンツを避けて広告配信をする必要性が、アドベリツール導入のきっかけになることもあります。

JICDAQが定義する「広告掲載不適切コンテンツカテゴリ」
  • 犯罪を肯定したり、美化するなどして犯罪を助長しているもの
  • 売春や児童ポルノなどの猥褻行為や違法な性表現に関するもの
  • 生命の死や暴力表現などの醜悪、残虐な表現で不快感を与えるもの
  • 詐欺行為や悪徳商法などの消費者等を騙すもの
  • ヘイトスピーチなどの差別や人権侵害をしているもの
  • 偽ブランド品の販売や海賊版サイトなどの商標権や著作権を侵害するもの
  • 危険ドラッグなどの違法薬物の販売やそれらを肯定するもの
  • その他違法、不当な内容または社会通念上好ましくない内容が含まれているもの

引用:⼀般社団法⼈デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)「ブランドセーフティ認証基準 」(2021年5月)

例えば、広告効果検証ベンダーの1社であるIASが提供する「JICDAQセグメント」を利用すると、広告枠が配置されたページの内容をリアルタイムで解析し、不適切カテゴリに該当するページへの広告配信を即座にブロックしたり、事前に入札対象から除外したりできます。

ロボット君

刻々と変化する国際情勢や時事のなかで、
自社ブランドを保護するには、
テクノロジーの活用が欠かせないんデス。

4. デジタル広告のROI改善ニーズの高まり

  • デジタル広告のビューアビリティを上げて、効率・効果を上げたい
  • 広告の不正(アドフラウド)の発生率を把握して、無駄な広告費を削減したい

デジタル広告のパフォーマンスは、マーケティングの成果を左右します。100万円分の広告配信を行っていても、例えば、ビューアビリティの確保された広告配信が全体の半分しかなかったら、100万円使って50万円分の価値しか生み出せていないことになります。このように、視認性が確保できていない広告や、ボットの閲覧による不正な広告インプレッションに費やされている損害の程度を把握して改善したいというニーズも、アドベリツールの導入につながっています。

ロボット君

悪意を持った業者が作る、
不正を行うボットに注意してクダサイ…

5. クッキー廃止を見越した対策の必要性

  • クッキー廃止を見越して、コンテキスト・ターゲティングを始めたい

第三者クッキーの非推奨化が近づき、長年利用されていたターゲティング広告を今までどおり活用するのが難しい事態となっています。従来のターゲティング手法に代わる技術として期待されるのが「コンテキスト・ターゲティング」で、このソリューションへの期待はアドベリ利用の大きな動機となっています。

コンテキスト・ターゲティングとは、広告効果検証ベンダーが提供するターゲティング手法で、広告枠が設置されたページ内の文章と文脈、さらに記事全体の感情表現をAIが自動解析し、ブランドに適合した広告を配信するものです。IASの調べでは、コンテンツを読む消費者の興味や読み手に与える感情を分析して広告を配信するため、単に消費者の属性からターゲティングをするオーディエンスターゲティングよりも、効果が高いという結果も出ています。

末広

私の会社でも、アドベリ計測の次のステップで、
コンテキスト・ターゲティングの利用を考えています!

効果検証がもたらす成果

実際にさまざまな理由でアドベリ計測を始めた後、どんな成果が出ているのか。IASが携わった他社の成功事例をいくつかご紹介します。

共通するのはアドベリ三指標の数値が改善すると、それがコンバージョンやCTRの改善につながり、キャンペーンKPIの改善が最終的に、広告の費用対効果の改善につながるという事実です。

アドベリフィケーション3指標
  • ビューアビリティ=見られる状態にあったか
  • アドフラウド=本物の人間に見られていたか
  • ブランドリスク=ブランド毀損につながるリスクがないか
アドベリ計測後の効果と改善

【大手食品メーカー】
アドベリ3指標の全てが改善。結果、キャンペーン効果も大きく向上

世界のさまざまな地域で複数のブランドや食品カテゴリを展開する多国籍企業では、各国で購入したデジタル広告のメディア品質と効率の確保に向けて、アドベリツールを導入。17カ国で115億インプレッション以上のデジタル広告を検証し、広告パフォーマンスの透明性を実現しました。その結果、各マーケットでデータに基づく意思決定が可能になりました。

【事例】大手食品メーカー

【大手自動車メーカー】
ビューアビリティの改善により、カタログダウンロードが83%増加

ビューアビリティの計測に基づく改善施策を行った大手自動車メーカーでは、対策を講じていない広告キャンペーンと比較して、カタログのダウンロード数が83%増加。コンバージョン率は1.8倍となり、キャンペーンのKPIを高められました。

この他にも、ビューアビリティを高めた結果、ホテルの予約率が1.7倍に向上したという大手ホテルグループや、店舗への来店者数が1.8倍になった大手家具販売店などの例もあり、ビューアビリティの向上が広告効果を高めています。

【事例】大手自動車メーカー

【インターナショナルスクール】
コンテキスト・ターゲティングで、ターゲットにリーチ

インターナショナルスクールでは、コロナ禍で現地での学校説明会が実施できないため、入学を検討している児童の保護者(外国人就業者および駐在員)に、バーチャル体験入学を早期に認知してもらう必要がありました。

クッキー廃止を見越し、コンテキスト・ターゲティングを活用。IASのソリューションで広告枠が用意されているページのコンテンツを分類、感情と情緒を分析して、より入学に興味が高いグループへのリーチに成功したのです。コンテキスト・ターゲティングが他の手法と比較し、高い結果を出しました。

【事例】インターナショナルスクール

【大手アルコール飲料企業】
ブランド適合性ソリューションを活用し、YouTube広告でのブランドリスクをゼロまで削減

大手アルコール飲料企業は、YouTube上の飲酒運転やアルコールに関連した危険なコンテンツとともに配信される広告配信に懸念があり、それが解決されない場合、YouTubeからの広告費の引き上げを検討していました。IASのYouTubeにおけるブランド適合性ソリューションを活用し、ブランドが設定する厳しい適合性基準を満たす動画を特定し、ブランドリスクのない動画への広告配信に成功しました。
 

【事例】大手アルコール飲料企業

日本のデジタル広告市場は
業界全体で守り育てていくもの

アドベリフィケーション入門の全7回を通じて、デジタル広告のパフォーマンス計測がもたらす価値やメリットをお伝えしてきました。

何を改善するにも、まずは「現状を知る」ことから始まります。アドベリフィケーションは、デジタル広告配信の現状を知る“健康診断”です。不健康な側面があれば、一体どこが悪いのかを特定でき、継続的に自社のデジタル広告を計測していくことにより、消費者の動きの変化にもいち早く気づくことができます。

 企業1社1社のデジタル広告の健康状態が改善することによって、日本の広告市場全体が世界のアドフラウド業者に狙われにくい堅牢な市場となり、消費者とブランドのエンゲージメントがより健全かつ活発に行われるようになります。これからも広告主、それをサポートする広告代理店、メディア・パブリッシャー、IASのような広告効果検証プロバイダーが一丸となり、誰もがメリットを享受できる、持続可能な広告市場を作っていきたいですね。

ロボット君

日本のデジタル広告市場は
みんなで守って育てていくものデス!

末広

いろいろ教えてくれてありがとう。
ロボ君、これからも一緒に頑張ろうね!  

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