アドベリフィケーションって何? いまさら聞けない、デジタル広告の不正問題と対策とは
デジタル広告の不正問題にまつわる、さまざまな疑問や現場で直面する悩みを抱えるマーケターの末広告美さんが、アドベリフィケーションの専門家・山口さんに解説してもらう新連載スタートです。
第1回の今回は、「アドベリフィケーションとは何か?」について。
うちの会社でもブランドを守るために「アドベリフィケーション」を始めよう、と言われたけれど…略して「アドベリ」ってなにー?!
どうぞ、ご安心ください。私がこっそりわかりやすくお教えします。
わ、出た。アドベリに詳しい方ですか? じゃあ早速、アドベリって何ですか?
アドベリは「アドベリフィケーション」の通称で、その名の通り「Ad=広告」の効果を「ベリフィケーション=検証」することを意味します。
アドベリフィケーション3指標とは?
配信しているデジタル広告が、悪意のあるボット※ではなく生身の人間に見られていたのか、広告がきちんと見られる状態にあったか、そして企業価値やブランドイメージを損なう危険のあるページに表示されていないか、それらの問題を計測、検知して改善につなげる行為までをアドベリフィケーション(以下、アドベリ)と言います。そして、3つの観点から広告の品質計測に使われる指標が、いわゆるアドベリ3指標「アドフラウド」「ビューアビリティ」「ブランドセーフティ」です。
- アドフラウド=本物の人間に見られていたか
- ビューアビリティ=見られる状態にあったか
- ブランドセーフティ=ブランド毀損につながるリスクがないか
なぜアドベリは必要なのか?
でも、どうしてアドベリって必要なんですかね? 私としては、広告がコンバージョンにつながっていれば、それで良いような気もしますが……。
今のコンバージョンが半分近く人に「届いていない」、「見られていない」インプレッションで達成できていたとしたら、より多く人に見てもらうことで一層効果が引き出せますよね?
たとえば、末広さんの会社では、毎月「100万円」の広告予算で出稿しているとします。100万円分の広告配信を行いながら、実際は100万円分の広告表示ができていなかったとしたらどうでしょうか。
100万円の広告費のうち、20万円分の広告は、人間ではないボットへの表示で消費され、さらに20万円分は広告が半分しか見えていないような場所で配信されている。加えて、10万円分はブランドにふさわしくないページに表示されていたとします。
その場合、100万円分の広告出稿をしたにもかかわらず、実際は50万円分しか適切に配信されておらず、コンバージョンにつながった広告配信にかけた金額は100万円ではなく50万円だった、ということなります。
確かに! 広告費の半分が無駄になっている……そういう状況が起こっていないかを知るために「アドベリ」が必要なんですね!
アドベリは広告の配信状況を知るだけでなく、広告費をしっかりコンバージョンにつなげるために役立つのです。
インプレッション課金の広告の場合は、配信された時点で課金されるので、たとえ人間ではないボットによるインプレッションでも、複数のバナーが重なっているような不正な広告枠でも、配信された時点で課金され、広告予算が無駄になります。
もし、正しい場所に適切に広告が表示できていれば、予算が50万円でも同じコンバージョンが確保できたかもしれないですし、適切な広告表示に100万円を丸ごと投下できれば、単純には計算できないですが、2倍のコンバージョンを生み出す可能性もあります。
さらに担当者のみなさんが注意すべきなのは、ネガティブな影響を生み出す広告配信を行っていないか、ブランド価値を自ら危険に晒すような広告配信を行っていないか、ということです。
ネガティブな影響を生み出す広告配信とは?
たとえば、どういうことでブランドが危険に晒されるんでしょうか?
たとえば、公序良俗に反するコンテンツ、著作権を侵害するようなコンテンツ、違法薬物や暴力などの不快なコンテンツを提供するページに広告が表示されている場合です。他には、子供向けのコンテンツなのにアルコール飲料の広告を出してしまったり、車の事故のニュースの隣に新車の広告が出てしまっていたりなど、さまざまなケースが考えられます。
デジタル広告は、紙媒体の広告のように「どこの媒体」の「どこページ」に自社の広告を出すかを丁寧に1つ1つ選ぶものではなく、アドネットワークを介して、さまざまな場所の広告枠を効率よく購入し、掲載していくものです(媒体と1:1で取引をする純広告以外)。
デジタル広告を使えば、驚くほど多くの人へリーチする機会を得られる一方、残念ながら、自分たちの知らないところで、好ましくないページに自社広告が掲載されてしまっている可能性もあります。
先述のとおり、公序良俗に反するコンテンツ、著作権を侵害するようなコンテンツ、違法薬物や暴力などの不快なコンテンツを提供するページなど、広告主側が事前にわかっていたら、絶対に広告は出さないはずです。
その他にも、コンテンツ自体に問題がなくとも、適切な組み合わせではないばかりに、消費者を不快にさせている場合もあります。たとえば、子供向けのコンテンツなのにアルコール飲料の広告を出してしまったり、車の事故のニュースの隣に新車の広告が出てしまっていたり、というケースです。
それらの広告表示が消費者に見られることで「ブランド価値の低下」につながっていくわけです。
広告費の無駄が発生しているだけでなく、気づかないうちに、自社のイメージやブランドの価値を落としていることもあるとは……怖いです。それは、上司も気にするわけですね。
アドベリが必要な理由、WHY! が伝わって良かったです。
アドベリは何から始めればいい?
だんだん理解できてきました! では、アドベリは何から始めればいいのでしょうか?
何はともあれ、まずは「計測」です。末広さんも、おそらく毎年、健康診断をされますよね? アドベリ=健康診断と捉えてもらうといいですね。
健康診断の結果を見ることで、今の自分の体の状態を正しく把握し、このまま過ごしていて良いのか、はたまた何かを改善したり、病院にかかったりする必要があるか、病院にかかるのであればどの臓器が問題かを特定して、生活の改善や対策を進めると思います。
デジタル広告もそれと同じです。デジタル広告配信の健康診断が「計測」だと考えてください。今まさに行っている広告配信を計測して、健康的に配信できているか、リスクがあれば、どこで、どのくらい発生しているのかを把握し、継続的に数字を追いかけていくことで初めて、打ち手が考えられるわけです。この追いかけることを「モニタリング」とも言います。
次に、計測(モニタリング)ができたら、その結果を「比較」します。比較には、IASが定期的に公開している、メディア品質の指標をデバイス別、国別に一覧化したレポート「メディアクオリティレポート」を参照すると良いでしょう。日本や世界の基準値と比較して、今の自分達の広告配信が健全なのかを知ることができます。
比較し、対策すべき箇所がわかったら、いよいよ広告配信の「最適化」です。たとえば、ブランドセーフティとアドフラウドに対応するには、大きく「ブロッキング」や「入札前ターゲティング」の2つの方法があります。
ブロッキングは、広告が表示される直前に配信先の環境をリアルタイムで検証・解析し、リスクのある環境だと判断した場合は、広告配信を止める技術です。インプレッション課金は発生してしまいますが、ブランド毀損のリスクを軽減できます。
一方、入札前ターゲティングは、プログラマティック広告を介して広告を購入する前に、設定した条件を満たす媒体のみに入札を行える技術です。これを利用するには、DSPを介してプログラマティック広告を利用している必要がありますが、広告費が無駄に使われるのを防ぐことのできる最も強力な方法です。
みなさんの広告配信に不正をもたらす悪意のある技術はますます高度化し、ソーシャルネットワークや動画ストリーミングなど、デジタル広告の形態も常に進化しています。
それら異なるデバイス、異なるフォーマットのデジタル広告を横断して、統一した指標を取り改善につなげるには、アドベリフィケーションを導入し、代理店と指標を確認しながら、次のステップを考えるのが良いと思います。
それではみなさん、また次回!
ソーシャルもやってます!