ソーシャル広告の費用対効果を高めたい! マーケターがするべきビューアビリティの改善策とは?
デジタル広告にまつわる、さまざまな疑問や現場で直面する悩みを抱えるマーケターの末広告美さんが、アドベリフィケーションの専門家・山口さんに解説してもらう連載。
第5回は「ソーシャル広告のビューアビリティを改善する具体策」です。
前回のレクチャーを参考に、
チームでソーシャル広告の目標KPIを設定しました。
それは素晴らしいですね!
でも、実際に計測してみると
やっぱりビューアビリティが低くて......
一体何をすれば良いんでしょうか?
今日はよく用いられる2つの対策を例に、
ビューアビリティの改善策を学びましょう!
ソーシャル広告の計測結果を
ビューアビリティの「改善」に繋げる
前回は、ソーシャル広告のビューアビリティを最適化するための重要な3ステップのうち、ステップ2までをご説明しました。今回は「ステップ3:改善する」について具体例を交えて解説します。
- ステップ1:ソーシャルメディアで達成したいKPIを明確にする
- ステップ2:KPIとビューアビリティの最適なバランスを取る
- ステップ3:改善する(今回はここを解説)
ステップ3: 改善する
前回もお話した通り、全メディア、全フォーマット共通で「これをやればOK!」と言う対策はありませんが、それでも共通する原因があります。今回はそれらのよくあるケースを用いて、改善策についてお話しします。
[改善例1]
意図しない配信の偏りを回避するため
自動最適化をやめ、手動管理に切り替える
デジタル広告キャンペーンの運用でよく使われているのが「自動オプティマイズ機能」です。予算を最大限に利用しながら一番コスト効率よくリーチが取れるよう、メディアの配信システムが最適なプレースメント(広告の配信面)を選んでくれます。自動オプティマイズ機能は「広告の自動配置」などメディアによって使われる名称は異なりますが、ほとんどのメディアで提供されています。
自動オプティマイズ機能を設定すると、作成するキャンペーンはひとつで良く、リーチ最大化に向けて自動調整してくれるので予算管理がとても楽です。その一方、自動オプティマイズ機能を使っていることが、意図しないビューアビリティの低下に繋がることもあるので注意が必要です。
自動最適化で配信した結果
ある化粧品ブランドでは、ソーシャルメディアで、新商品の宣伝に「リーチ」をKPIとした広告を配信することにしました。化粧品ブランドのマーケターは、プレースメントA・Bに同じ割合で広告が出る事を想定していましたが、配信結果をみてみると、プレースメントAとBへの広告配信は8:2と大きく偏っていました。
自動オプティマイズ機能によって、コスト効率の高い(安い価格でリーチを獲得できる)プレースメントAに、ほとんどの広告配信が偏ってしまったのです。KPIである「リーチ」は最大化できたものの、プレースメントAはビューアビリティが低かったため、その結果、キャンペーン全体のビューアビリティも低くなってしまいました。
プレースメント | ビューアビリティ | 配信割合 |
---|---|---|
A | 5%(低) | 8割 |
B | 20%(高) | 2割 |
広告が表示される機会(リーチ)が増えれば、ターゲットとするユーザーが広告を見る機会が増え、結果的にコンバージョンの増加につながるはずです。しかし実際には、多くの広告はビューアビリティが低い状態=「見られる状態にない広告」として配信されていたため、コンバージョンは期待を下回る数値となりました。
手動管理で配信した結果
この結果を受けて、化粧品ブランドでは、同じ目的の次のキャンペーンにて、リーチとビューアビリティのバランスが取れるよう対策を実施しました。配信割合を理想的な5:5の割合に近づけるために、プレースメントAとBのキャンペーンを作成して、全予算を5:5に配分したのです。
この対策の結果、前回の自動オプティマイズ機能を利用したときに比べて、1リーチあたりのコストは高くなったものの、ビューアビリティの高いプレースメントBで、しっかり「見られる状態」で広告を配信できたことで、コンバージョンに増加が見られました。
自動オプティマイズは便利ですが、その特徴を把握して上手に活用していきましょう。
ときには、手動管理の方が
良い場合もあるんですね!
自動オプティマイズと手動管理を
上手に組み合わせてみましょう。
[改善例2]
広告クリエイティブを修正する
次の対策は、広告クリエイティブです。ソーシャルメディアではユーザーは素早くスクロールしコンテンツを閲覧しますが、短時間の露出に適した広告クリエイティブが表示されていれば、ブランド認知が向上し、購買意欲を高められます。
クリエイティブの使い回しは避ける
横長のフォーマット用に作成したクリエイティブに簡単な変更を加えて、縦長の動画のフォーマットに使い回すケースがあります。縦長の動画を見るつもりのユーザーは、上下が黒く加工された動画が与える違和感に気づき、広告を飛ばしてしまいます。広告クリエイティブは、フォーマットにあったものにするのが大前提です。出したい広告配信面にあったクリエイティブを使うことにより、ビューアビリティの改善が期待できます。
広告クリエイティブのA/Bテストをする
キャンペーンで、どんなクリエイティブが良いのか分からない場合、出稿を予定しているメディアに最適な広告クリエイティブは何なのかを、テストをして探っていく必要があります。
- 最初の2~3秒でブランドを訴求したもの、していないもの
- 冒頭で、商品パッケージを見せたもの、見せていないもの
- クリエイティブの使用文字数を減らしたもの
- スピード、テンポを変えたもの
先に述べたようにソーシャルメディアの特性はそれぞれで異なり、ユーザーの使い方もまたメディア毎に異なります。たとえば短尺動画がメインのソーシャルメディアの場合、広告の早い段階(開始から2~3秒)で視覚や音声を使って目立つようにブランディングを行うことで、主なパフォーマンス指標に良い影響を及ぼした事例もあります。
さまざまなアプローチを試して精度を高め、個々の状況に合わせてビューアビリティの良いクリエイティブを見つけ出すことをおすすめします。
広告を届けたい相手の行動を知って、
伝わるクリエイティブを探していく。
大変そうですけど、結果に繋がると分かれば、頑張れそうです!
計測データから得られた知見は、自社だけのもの。
必ず今の、そして未来のキャンペーンに活きてきますよ。
ビューアブルな広告がもたらす売上への効果は
ノンビューアブルな広告と比べて約3倍!
売上に対する影響を考えた場合、高いビューアビリティを維持することは、どの程度重要なのでしょうか? ビューアビリティを改善することが、売上に「プラスの影響」を与えるのでしょうか?
答えは、YESです。
IASでは、ビューアビリティがROAS(広告費用対効果)と売上増加にどの程度の影響を与えるのか、その程度を測定すべく、大手消費財ブランドの協力を得て検証を行いました。
その結果、ビューアビリティと売上増加の間に顕著な相関関係があることが明らかになりました。大手消費財ブランドの広告に接触したグループの売上は、広告非接触のグループと比較して、売上が3.3%増加しました。その増加した売上の実に74%が「ビューアブルな広告の閲覧者」によってもたらされていたのです。
ちなみに、ビューアブルな広告とは、Media Ratings Council(MRC)基準に照らし合わせてビューアビリティ(視認性)が確保されていた広告のことで、ディスプレイ広告の50%以上が、少なくとも1秒間閲覧できる状態になっていた広告を指します。一方で、このMRC基準を満たさない、視認性が確保できていなかった広告をノンビューアブルな広告と呼びます。
さらに、ビューアブルな広告に接触した消費者グループは、ノンビューアブルな広告に接触した消費者グループに比べて「ROASが約3倍も高い」ことも明らかになりました。
また同じ検証では、売上増につながる最も適したタイムインビュー(ビューアブルなインプレッションが継続して表示された平均時間)は「3秒~10秒」であることも判明しました。3秒〜10秒間ビューアブルだった広告が、それよりも短い時間、あるいは長い時間ビューアブルだった広告の両方を上回る増加指数118を記録し、売上促進・ROASに直接的な影響を及ぼしていました。
ビューアビリティ最適化に王道なし
クリエイティブや配信方法を地道に模索しよう
ビューアブルかどうかで、
ROASが3倍も違うなんて驚きです……
見られる広告であることが、
成果を出す第一歩ということですね。
世界の広告主の中では、デジタル広告のビューアビリティは非常に重要視されています。
自分たちがビューアビリティを重視するか否かに関わらず、常にビューアビリティにまつわる最新のトレンドを把握することも大事です。特にソーシャル広告は、消費者の行動の変化が激しく、トレンドの移り変わるスピードが非常に早いメディアです。ユーザーの行動を測定から把握し、広告クリエイティブや配信方法を地道に模索していくことが、結果として大きな違いを生みます。
ソーシャル広告のビューアビリティ最適化に王道なし。
コツコツやった分だけ、成果が出る広告といえますよ!
頑張っていきましょう。それでは、また次回!
ソーシャルもやってます!