Web担当者になったら知っておきたい「基本」が学べる Web担ビギナー

Step 2-9 UXとCXのポイント

Step 2-9で知ってほしいことは、ユーザーシナリオ作成の際に考慮したいUX・CXのポイントです。

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クイズ

ここで復習です。ユーザーシナリオとは何でしょう?

サイトを利用してくれるユーザーの体験全体を可視化したものですよね(Step 2-4参照)。作成する際には、次の3点を考慮しようと説明しました。

  • ユーザー心理に基づいた行動プロセス
  • Webサイトを訪れる前・中・後のプロセス
  • ユーザーの抱える課題(悩み)に注目

これらをふまえて、2-102-11でユーザーシナリオの事例を紹介しますが、大切なのはユーザー視点です。繰り返しになりますが、企業サイトなのでどうしても企業視点から制作しがちになります。ユーザー視点であることが成功の決め手です。

  • 企業視点でユーザーシナリオを作る
  • ユーザー視点でユーザーシナリオを作る

Step 2-9では、顧客やユーザーに軸足をおいてユーザーシナリオを考えるための、UX(ユーザー体験)、CX(顧客体験)のポイントについて解説します。

Step 2-9は、Webサイト構築・運用のためのワークフロー中、設計フェーズの「サイト設計」に関わる内容です。

戦略策定フェーズ1. プロジェクトの発足
2. プロジェクトの方向性の決定
3. Web戦略の策定
設計フェーズ4. サイト設計
開発フェーズ5. サイト制作・開発
6. 運用準備・運用開始
運用フェーズ7. 運用・効果測定・改善

UXとCX

UXやCXという言葉は、すでに耳にしている方が多いのではないでしょうか。UXはUser Experience(ユーザー体験)の略で、ユーザーとして商品やサービスを使っている間の体験全体を指します。そしてCXはCustomer Experience(顧客体験)の略で、商品やサービスを選んで買って、利用するという顧客としての体験全体になります。

つまり、UXが「利用者の体験」としてみるのに対し、「企業側から見た顧客の体験」としてみるのがCXだともいえます。しかし、ユーザー体験も顧客体験も、同じ一人の人間の体験です。つまり、「ユーザー」という側面に焦点をあててみるか、「顧客」という側面に焦点をあててみるかの違いはあるものの、重要なのは「その人にとっての価値ある体験を提供できるか」にあります。

  • 重要なのは「その人にとっての価値ある体験を提供できるか」

モノ、コトが大事

では、ユーザーや顧客の価値とは何でしょうか? たとえば、カフェやレストランは、飲み物や食べ物の美味しさだけでなく、テーブルや椅子、接客態度やBGMとして流れる音楽、窓から見える景色までもが、客にとっての価値の1つになるでしょう。商品やサービスじたいの「モノ」の価値だけでなく、一連の体験で得られる「コト」の価値をも含めて考えることが大事になります。

レストランを客が選ぶのは、料理のすばらしさだけではない。
商品という「モノ」だけでなく、モノを含めた「コト」の価値に着目することが大切
  • 「モノ」だけでなく、「モノ」を含んだ「コト」の価値に着目する

CXとNPS

シャネルなどの高級ブランドでは、商品そのものの価値はもちろんのこと、シャネルのお店に行き、店員に丁寧な接客を受け、商品を選んでいることそれ自体が大きな価値になっていますよね。また、シャネルの服を着て出かけ、「シャネルの服ね、素敵ね」と友人に褒めてもらう体験もまた価値になります。

ところで、シャネルのようなブランドには多くのファンがいて、新作が出るのを待って、いち早く購入してくれたり、積極的にその良さを周りの人に語ってくれたりします。そうしたファンや支持者のボリュームを表す数値に、「NPS」というものがあります。

NPSは、Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)の略です。商品の購入後やセミナーに参加した際のアンケートに、「あなたはこの商品(セミナー)を他の方にも紹介したいと思いますか?」という項目をみかけると思いますが、これはNPSを知るための問いです。NPSはCXを改善するための1つの指標として活用されています。

  • NPSはCXを改善するための1つの指標である

ただし、ここで気を付けておきたいことは、NPSの数値が高いから良い、低いからダメ、と判断するのではなく、「なぜその点数なのか」に着目し、ユーザーのコメントを参考に改善点を検討するなど、NPSをより良い体験にするきっかけとする姿勢が重要です。

UXとUI

さて、UXとCXのように、UXと比較される用語としてよく取り上げられるものにUIがあります。UIは、User Interface(ユーザーインタフェース)の略で、まさにユーザーとのやりとりを行う接点です。では、UXとUIはどのような関係でしょうか?

たとえば、ユーザーが欲しい服を着たいために、ECサイトで服を選び、購入するとすれば、欲しかった服を着ることが目的であり、ECサイトというユーザーとコミュニケーションをとる接点は手段になります。つまり、UXは目的を実現する体験全体であり、その手段がUIだといえます。逆にいえば、UIは目的を実現できるものにしなくてはいけません。

  • UXは目的を達成する体験全体で、UIは手段

Webサイトの利用前後もUX

UXの定義のなかには、利用最中だけに注目するものといった定義もあるようです。しかしWeb担ビギナーでは、利用前、後をも含むものとして説明していきます。

Webサイトの利用前後も含めてUX。たとえばWebサイトでの体験はUXの一部分でしかない
  • Webサイトを利用する前・中・後もUXとする
◇◇◇

2-9では、CX・UXのポイントについて解説しました。Step 2-10Step 2-11では、UXにもとづいたユーザーシナリオの例を紹介します。

ポイント
2-9「UXとCXのポイント」のポイント
  • 重要なのは「その人にとっての価値ある体験を提供できるか」
  • UXやCXでは「モノ」だけでなく、「モノ」を含んだ「コト」の価値に着目する
  • NPSはCXを改善するための1つの指標である
  • 利用する前・中・後もUXと考える
復習ミニテスト

Q2-9-1 UXに関して、間違っているものはどれ?(単一選択)

  1. UXは「モノ」の価値だけに着目する
  2. 利用する前・中・後もUXである
  3. UXもCXも、大切なのは「価値ある体験を提供すること」

1. UXは「モノ」の価値だけに着目する

もっと学び、成長するために
参考記事:“UX王子”が語る、KPIではなく人間中心設計(HCD)の観点から見るUXデザイン https://webtan.impress.co.jp/e/2014/12/18/18897
本記事の監修者

安藤 昌也(あんどう まさや)

千葉工業大学 先進工学部 知能メディア工学科 教授

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、大手システム開発会社、経営コンサルティング会社取締役、国立情報学研究所特任研究員、産業技術大学院大学助教、千葉工業大学工学部デザイン科学科准教授、教授を経て、2016年より現職。博士(学術)。人間中心設計推進機構認定人間中心設計専門家、専門社会調査士。
ユーザーエクスペリエンス及びUXデザイン、人間中心設計の教育・研究に従事するとともに、企業とのUXデザインに関するプロジェクトを多数手がける。
主著に『UXデザインの教科書』丸善出版(2016)などがある。

デザイン:三苫慧子
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