Step 2-4 Web戦略書の作成(KGI・KPI等)
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クイズ
- タイトルにある「KGI・KPI」とは何でしょう?
- 『2時間でわかる【図解】KPIマネジメント入門 ―――目標達成に直結するKPI実践書』堀内智彦:著 あさ出版:刊
- 『図解ポケット KPIマネジメントがよくわかる本』松原恭司郎:著 秀和システム:刊
- 『マンガでわかるWebマーケティング 改訂版 Webマーケッター瞳の挑戦!』村上佳代:本文・マンガ原案・全体監修 ソウ:マンガ/作画 星井博文:シナリオ インプレス:刊
Web担当者として配属されたときの壁の1つに、専門用語があります。特に、KGI・KPIのようなアルファベットの頭文字を並べたと思われる専門用語は何を指すのか、想像さえつきませんよね。
そんなときは、わからないままにせず、PCやスマホで調べたり、上司や同僚に納得できるまで聞いたりしましょう。初心者の特権ですから、恥ずかしがる必要はありません。
なお、次のような解説書も出ていますので、一読するとよいでしょう。
さて、クイズに出したKGIとKPIはWebサイトでの成果を表現する言葉たちです。2-4では、Webサイトの目的と一緒に解説していきますね。
戦略策定フェーズ | 1. プロジェクトの発足 |
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2. プロジェクトの方向性の決定 | |
3. Web戦略の策定 | |
設計フェーズ | 4. サイト設計 |
開発フェーズ | 5. サイト制作・開発 |
6. 運用準備・運用開始 | |
運用フェーズ | 7. 運用・効果測定・改善 |
Web戦略書
プロジェクトの方針が決まったところで、さらに具体化したWebサイトの戦略を考えます。「Webサイトをどのように使えば、プロジェクトを成功させることができるのか」を決めて、Web戦略書としてドキュメント化していくわけです。実際にはマネージャ―やディレクターといった人たちが作ることが多いのですが、共有されたときに理解できるようにしておきましょう。
Web戦略書には、おおよそ次のような項目が書かれています。
- Webサイトでの成果(目的・KGI・KPI)
- ユーザーシナリオ(ユーザー体験シナリオ)
- 集客方法
- システム構成
- 運用方法
- 効果測定と改善 など
「集客方法」については1-4で解説しました。システム構成、運用方法、効果測定と改善については2-19以降で説明しますので、2-4では主に、「Webサイトでの成果(目的・KGI・KPI)」「ユーザーシナリオ(ユーザー体験シナリオ)」に焦点をあてて解説します。
Webサイトでの成果(目的・KGI・KPI)
あなたのWebサイトはどのような成果をあげるためのものか、具体的に考えてみてください。1-1で解説した「サイトの目的と役割」(読んでない人は読んでみてくださいね)では、サイトの目的の例として「販売ルートをネットにも拡大し、売上UPを図る」というのもあるよ、と紹介しました。
では、どのくらい売上をあげることが目標なのでしょう? 「ECサイトで毎月500万円の売上をあげる」と決めると、もっと具体的になりますよね。このように数値化されていない「目的」を具体的な数値にしたものを「KGI(Key Goal Indicator)」といいます。
では、この売上500万円/月が達成されるのは、どんなときでしょう? たとえば毎月、5,000ユーザーがサイトにきてくれて、そのうちの10%が1万円購入してくれれば達成できますよね。きてくれるユーザー数5,000、購入してくれる確率10%、客単価1万円といった、具体的な施策を伴う数値を「KPI(Key Performance Indicator)」といいます。
ここで気づいた方も多いと思いますが、500万円を達成するにはほかの方法もあります。たとえば購入してくれる確率をあげれば、きてくれるユーザー数を減らすことができます。
また、サイトを運用し始めればすぐにKGIが達成できるわけではありません。定期的にKPIの数値を確認して、それに応じた施策を打つことで、KGIに近づけていくわけです。
上記で目的を数値化したものをKGIだと紹介しましたが、数値化した表現を定量的とよび、数値化しない表現を定性的とよびます。つまり、「販売ルートをネットにも拡大し、売上UPする」という目的は定性的で、それを具体的に数値化したKGI、KPIは定量的だといえます。また、施策を行ってKPIを達成することでKGIも達成できるので、KPIは先行指標とよぶことができます。
- 目的(定性)
- KGI(定量、目的数値)
- KPI(定量、先行指標)
KPIは施策の繰り返しで調整する
上記は簡略化して解説していますが、実際にはもっと細分化したKPIを考える場合が多くあります。たとえば訪れてくれるユーザーも、「検索サイト」から、「広告」から、あるいは「SNS」からなど、サイトへの入口はいくつもあります。
「資料請求数の確保」をサイトの目的とする場合を考えてみましょう。
- 目的:資料請求数の確保
- KGI:月間40件の新規顧客の資料請求数をサイトから得る
資料請求数を確保するため、KGIを「新規顧客の資料請求数を月間40件」と設定したとします。では、それを実現するために必要なKPIは何でしょうか?
- KPI_a:検索エンジン経由のアクセスの訪問数
- KPI_b:SNSからの訪問数
- KPI_c:広告からの訪問数
などが考えられます。さらにいえば、検索エンジン、SNS、広告経由の訪問のうち、実際に資料を申し込んでくれた確率もKPIに設定して改善していくようにすれば、両方のかけ算で最終的な資料請求数の変動要因の状況を確認できます。
こうしてKPIを設定したら、アクセス解析では、定期的にその数を追っていきます。そして、その数値が良くなるように広告やコンテンツを改善するなど対策を考えます。
KPI、KGIの決定には、期日を明確にすることが重要
また、KPIを検討するうえで重要となるのが、KGIを「いつまでに」達成するのかということです。その期間によって、求められるKPIや対策する施策内容が変わってきます。
たとえば、3か月でKGIを達成するのか、1年でKGIを達成するのかによって、広告を利用して急激に集客をすべきなのか、コンテンツ作成をじっくりと行い、長期的に達成を目指すのか、施策は変わります。
そしてKPIも変わります。たとえば、短期的であれば広告流入がKPIの重要指標の1つとなりますし、長期的にみれば検索エンジンからの流入をKPIとするかもしれません。何か定量的な数値目標を掲げる際には、その期日も明確に戦略として定義しておきましょう。
そこで、Web戦略・設計書には、運用方法とともに、アクセス解析などの効果測定の方法や改善タイミング、期日なども記されます。もし手元にWeb戦略書があれば確認してみてください。
ユーザーシナリオ(ユーザー体験シナリオ)
Web戦略を立てるときには、ユーザーシナリオ(ユーザー体験シナリオ)というものを作成しておくと便利です。ターゲットユーザーがどのようにWebサイトを利用するのか、Webサイトに訪れる際のニーズ(抱えている問題)から、ニーズに応える(問題解決に至る)までに必要なもの、その体験全体を可視化したものです。
これをプロジェクトメンバー全員で共有することで、それぞれの役割が異なったとしても、どのようなデザインがよいか、どのような機能が必要か、あるいはどのような施策が必要かがみえてきます。
類似のものでカスタマージャーニーがありますが、カスタマージャーニーは明確なペルソナを仮定し、そのユーザーの行動全体を時系列で可視化したものです。ユーザー体験シナリオとは異なりますので、注意しましょう。ユーザー体験シナリオは、あくまでも何のためにユーザーがWebサイトへ訪れ、どのように問題解決に至るのが最適なのか、ニーズ区切りで可視化します。詳しくは2-9以降で解説します。
ユーザー心理に基づいた行動プロセスを考えてみよう
Web戦略を立てる際に知っておきたい知識として、AIDMA(アイドマ)モデル、AISAS(アイサス)モデル、AISCEAS(アイシーズ)モデルという消費者の行動理論があります。知っているという方も、なんだか難しい横文字が出てきたなと思う方もいらっしゃるでしょう。マーケティングでは基礎的な知識で、実はそんなに難しくないので覚えておくことをオススメします。
AIDMA(アイドマ)モデル
消費者の感情がどのように動くことで行動に至るのかを、注意(Attention)→関心(Interest)→欲求(Desire)→記憶(Memory)→行動(Action)というプロセスで示したモデルです。これらのプロセスの頭文字をとって、AIDMAとよびます。
AISAS(アイサス)モデル
スマホなどでインターネットを使うことが多くなってからは、SNSやWeb広告などで商品を知り、検索してECサイトで購入する、という行動も多くなりました。次のようなプロセスです。
購入後、SNSへの投稿などで共有(Share)することで、それを見た人の注意(Attention)をよんだり、検索(Search)行動を促すことになったりもします。
こうしたネットで検索し、購入後に共有する消費者行動のプロセスを考慮した行動モデルは、AISASモデル以外にもあります。たとえばAISCEAS(アイシーズ)モデルは、注意(Attention)→関心(Interest)→検索(Search)→比較(Comparison)→検討(Examination)→行動(Action)→共有(Share)というプロセスです。ほかの商品と比較して、どちらにするか検討するというプロセスが入っています。
ユーザーシナリオは、こうした消費者の感情の動き、行動をふまえて作ります。 KGIを達成するためのKPIや施策を検討するうえで、こうした消費者の感情や動き、行動を踏まえて定義するとよいでしょう。
つまり、Webサイトの中だけで完結するのではなくて、あなたのサイトを訪れてもらう前のユーザーの心理、そして訪れたときの心理・行動、さらにサイトを離れた後の心理・行動までを考慮するわけです。
- Web戦略は、ユーザー心理に基づいた行動プロセスを考慮して作るとよい
ただし、共有(Share)は商品自体の満足度が大きく影響しているので、Webサイトの施策だけではどうにもできないところでもあります。
- Web戦略は、Webサイトを訪れる前・中・後のプロセスを考える
Web戦略は、Webサイトを訪れる前・中・後のプロセスを考える
さて、ここでマーケターによく読まれている書籍『ジョブ理論』(クレイトン・M・クリステンセン:著 ハーパーコリンズ・ジャパン:刊)の一部を紹介しましょう。その中に、ファストフード店が「どうすればミルクシェイクが売れるか」を調査した例があげられています。サイトの例ではありませんが、ユーザーの行動を考えるうえでとても大切なことが書かれていました。
まずは客に「ミルクシェイクをもっと買いたくなる改善点」を尋ねてみました。「値段? 量? 味?」具体的に聞き、実際に変えてみるけれど売上はあがらずじまい。
そこで視点を変えて、どういう目的でミルクシェイクを買うのかを聞くことにしました。
結果、「早朝の客は、通勤のために自動車を運転する間の退屈を紛らわせるのに、ちょうどよいからミルクシェイクを買っている」ということがわかりました。買う理由は「安価」だとか「すごくおいしい味」ではなかったので、値段や味を変えても売上は上がらなかったのです。
早朝の客は、「通勤のために自動車を運転する間の退屈」という課題を解決するために「すぐには飲み終わらないミルクシェイク」を買っていたのです。
本書には夜の客の例もあげられていますが、それぞれにその時間帯だからこそ起こる客の用事、目的のためにミルクシェイクを買っていました。「ユーザーはどのような課題を解決するためにその商品を選ぶのか」に注目してシナリオを考えることは、とても重要だとわかります。
- ユーザーシナリオは、ユーザーはどのような課題を解決するためにその商品を選ぶのかを考慮して作るとよい
ユーザーシナリオの作成方法については2-9以降で解説しますが、ユーザーの抱えている課題解決をはかるためのシナリオであることを覚えておきましょう。
2-4ではWeb戦略書に記す目的・KGI・KPI、ユーザーシナリオについて解説しましたStep 2-5からはサイトの設計書について解説します。
- ポイント
- 2-4「Web戦略書の作成(目的・KGI・KPI、ユーザーシナリオ)」のポイント
- 「目的」を具体的な数値にしたものが「KGI(Key Goal Indicator)」
- KGIを達成するための具体的な施策を伴う数値が「KPI(Key Performance Indicator)」
- ユーザーシナリオは、ユーザーの抱えるニーズ(問題)に注力し、問題解決に至るまでのプロセスを考慮して作るとよい。
- ユーザーシナリオは、Webサイトを訪れる前・中・後のプロセスを考えるとよい。
- ユーザーシナリオは、ユーザーはどのような課題を解決するためにその商品を選ぶのかを考慮して作るとよい。
復習ミニテスト
Q2-4-1 KPIに関する記述で間違っているものはどれ?(単一選択)
- 1. 目的を数値化したものがKPIである
- 2. KPIは先行指標である
- 3. KPIをアクセス解析で確認しながら施策を打つことが重要である
1. 目的を数値化したものがKPIである
Q2-4-2 ユーザーシナリオに関する記述で間違っているものはどれ?(単一選択)
- 1. ユーザーシナリオは、Webサイトを訪れる前、離れた後についても考慮する
- 2. ユーザーシナリオは、ユーザーにWebサイトにきてもらうための脚本である
- 3. ユーザーシナリオは、ターゲットユーザーのニーズに着目して作る
2. ユーザーシナリオは、ユーザーにWebサイトにきてもらうための脚本である
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