リンクビルディングの効果を高めるテクニカルSEO②ソーシャルシェアの効果を高めるSEO施策
この記事は、前中後編の3回に分けてお届けしている。中編となる今回は、前編で紹介した優先すべき3つのタスクのうち、「ソーシャルシェアラビリティ(共有のしやすさ)を高めるタスク」について説明する。
→ まず前編を読んでおく
リンクビルディングキャンペーンタスク①
リンクビルディングのSEO効果最大化のためにソーシャルシェアの効果を高める
今のSEOのリンクビルディングキャンペーンにおいて、ソーシャルメディアは無縁ではない。
ソーシャルメディアは、世界中のウェブサイトの参照トラフィックの約25%を占めている。そのため、ソーシャルメディアに合わせた最適化はリンクビルディング戦略の重要な部分となる。つまり、ソーシャルメディアは今やコンテンツプロモーションの中核部分であり、リンクビルディングプロセスに求められる要素となっている。
そして、ソーシャルメディアを利用するユーザーは特にモバイルを利用している傾向が強い。
こうしたモバイルファーストのオーディエンス向けに最適化するには、以下のような措置を講じればいい。
- HTTPSの環境設定を見直して接続の遅延を減らす
- CWVを改善し表示速度とUXを改善する
- OGPのデータを更新して、ソーシャルシェアラビリティを高める
HTTPSの環境設定を見直して接続の遅延を減らす
セキュリティは、テクニカルSEOのなかでも特に単純なものだと考えられやすい要素だ。確かにHTTPSは検索順位決定シグナルだが、SSL証明書を取得するだけで実現できると考えている人は多い。だが、それは一部にすぎない。SSLが必要なのは間違いないが、それは始まりにすぎない。HTTPSは、単に証明書を買う以上の最適化が可能なものなのだ。
HTTPSの最適化には、サーバー側のアップデートが必要なことが多く、セキュリティ検証プロセスを効率化することで、ウェブ接続の速度と質を改善できる。
これは、Facebookなどのソーシャルメディアサイトでは特に重要だ。Facebookは高いレベルの暗号化とセキュリティを備えており、参照先のドメインにも同様に高いレベルを求めている。セキュリティレイヤーによって接続時間が減速し、ユーザーの信頼に影響を及ぼすこともあるため、ここに時間をかけることでキャンペーン全体のパフォーマンス向上に貢献できる。
SSL/TLSの品質をテストする
すべてのSSLが同等というわけではない。セキュアなウェブサイトの利点は、検索バーに鍵のアイコンを表示させることにとどまらない。SSL証明書(とHTTPS設定)を最適化すれば、最新バージョンのデータ転送プロトコルを使用し、エラーを出さないようにできる。
では、セキュリティ技術の専門家ではないSEO担当者は、どのようにしてHTTPS環境を最適化すればいいのだろうか。
いまWebサーバーで利用しているSSL/TLSのパフォーマンスをチェックしてくれるツールを利用するのだ。
ツールは複数ありそれぞれ診断内容が異なるため、並行して実行することで、措置を講じるべき部分の全体像を把握できる。あるツールで検査に合格し、別のツールで合格しない可能性もあるため、重層的なアプローチを採ることでより良い結果が得られる。
最初にトップレベルのSSL/TLSチェックを実施する
手早くチェックするには、サイトをSSL ShopperのSSL Checkerにかけてみよう。有効期限や、SSLがすべてのウェブブラウザに信頼されているかどうかについて、トップレベルで概要を確認できる。
使い方は簡単。サーバー名(Web担ならwebtan.impress.co.jp
)を入力して[Check SSL]ボタンを押すだけだ。
チェック結果では、すべてに緑色のチェックが表示されるのが望ましい(もしエラーがあったのならば、証明書の発行者に直接対処してもらうことになる)。
私の経験では、ここでエラーを修正すると、サイトの表示速度に効果がある。あるクライアントの場合は、チェーンの問題を解決することで、サーバーの接続時間が全体で約70%短縮され、Chromeでの平均ページ読み込み時間は60%以上短縮された。
完全な診断を実施する
SSL Server Testを利用すると、セキュリティ構成をより詳細に診断できる。このテストでは、サイトをランク付けして、さまざまなセキュリティ指標を評価する。
こちらも使い方は同じくサーバー名(Web担ならwebtan.impress.co.jp
)を入力して[Submit]ボタンを押すだけだ。
このツールは証明書だけでなくWebサーバーで対応している暗号化のやりとりや通信の方式まで詳細にチェックしてくれる。そのためチェックにも時間がかかるし、数多くのレポートが表示される。
そのなかでチェックしておくといいのは、Webサーバーで対応しているセキュリティプロトコルの情報だろう。
リンクビルディングキャンペーンを最適化するには、Webサーバーで新しいTLS(トランスポートレイヤーセキュリティ)プロトコルを利用できる状態になっているのが望ましい。具体的にはTLS 1.2、理想を言えばTLS 1.3が動いていることを確認しておきたい(対応していない場合はインフラチームやサーバー管理者に設定を依頼することになる)。
TLS 1.3は2018年頃から使われるようになり、それ以降、大規模なCDNやOSで好まれる接続プロトコルになった。TLS 1.3は安全が高まっただけでなく、ネットワーク接続の手順を省くことで接続の遅延を約45%短縮できる。
要は、初めてそのサイトを訪れるユーザーにとってのUXが良くなるということだ。
Cloudflare、Facebook、AndroidはこのTLS 1.3プロトコルをデフォルトで使用しており、個々のサイトに応じてアップグレードすることで、相当数のウェブユーザーのパフォーマンスを改善できる(ちなみに、Cloudflareだけでも世界中のウェブサイトの約16%、CDNを利用しているウェブサイトの約81%に使われている)。
TLSをアップグレードすると、より多くのユーザーが新しい(および確立された)リンクからサイトにすばやくアクセスする助けになる。
CWVを改善し表示速度とUXを改善する
グーグルがコア ウェブ バイタル(CWV)を導入したことで、表示速度の指標や今後のアルゴリズムアップデートで、全体としてモバイルページの読み込み時間がさらに重視されるようになった。
リンクビルディングキャンペーンでは、あるページへのトラフィックが急増する可能性がある。ただし、グーグルはよく観察しているので、君のページがCWVで測定される高品質のUXを少なくとも75%のユーザーに提供していない場合、そうしたトラフィックはページの検索順位に影響を与える可能性がある。
GoogleアナリティクスやGoogle Search Consoleで対象ページを含めたCWV値をモニタリングして、対処するべき課題を確認しよう。
OGPのデータを更新して、ソーシャルシェアラビリティを高める
ソーシャルメディアでのURL共有(シェア)がリンクビルディングキャンペーンを構成する一部になるのはほぼ確実だ。しかしその効果を高めるは、投稿がソーシャルメディア上でユーザーの目に留まりやすくするように、OGP用タグの内容を調整しておくことが必須だ。
ソーシャルメディアにリンクを投稿してもページのメイン画像が表示されない場合は、OGP用のmetaタグを更新する必要がある。ページのHTMLにタグが記述されていないか、CMSのフィールドに入力されていないためかもしれない。いずれにしても、修正しておく必要がある。
正しく指定されているはずなのにうまく表示されない場合は、各ソーシャルプラットフォームが用意している検証ツールを使う。プラットフォームが各URLのmetaタグをどう認識しているかを調査し、必要に応じてプラットフォーム側のキャッシュを更新したりできる。
大規模なサイトの全体を調査したい場合は、Screaming FrogのCustom Xpath Extractionを使用するのも手だ。サイトをクロールした後に、ソーシャルメディア用のmetaタグの情報を抜き出して一覧で確認できる。
この情報をもとに、どのような指定をするかを決定し、それに応じて更新するよう開発チームに依頼することになるだろう。
3回に分けてお届けしているこの記事も、後編を残すのみとなった。次回は、優先すべきタスクの残り2つ、「サイト全体のSEOを改善する機会を生み出すタスク」と「キャンペーンの実効性を最大限に高めるタスク」について説明する。
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