インタビュー

成果につながるBtoBサイトの条件は? Webサイトの診断テストを開発した理由

短期刈り取りの施策に集中していないか? 成果につながるBtoBサイトについて、Nexal上島氏とエクスペリエンス橘氏に聞いた。
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BtoBマーケティングにおいて、Webサイトのあるべき姿をしっかりと把握して、改善をしている企業はどのくらいいるだろうか? 国内のBtoB企業のWebサイトの課題について、Nexal 上島 千鶴 氏、エクスペリエンス 橘 守 氏にお話をうかがった。

記事後半では、両社が共同開発した「Webサイトのデジタルマーケティング実力評価診断」の開発背景や診断内容も聞いた。

 

短期刈り取りの施策に集中していないか?

BtoBマーケティングにおけるWebサイト活用の課題はいくつかある。1つ目は「組織的な課題」だ。現在、MAやSFAといったデジタルマーケティングのソリューションを導入する企業が増えているが、効果を最大化するには土台となる自社Webサイトの役割が重要になる。

しかしWebサイトの管理に目を向けると、Webサイトの管理は広報や宣伝部が行い、Webを接点とした案件創出活動は事業部が個別に行うといったように、別組織で動いており事業部と連動できていない企業が未だに多い。

上島氏は、デジタルマーケティングとインサイドセールス組織構造として下図の6つに型に分類した。

デジマ×インサイドセールス組織の6つの型

たとえば、事業部内にデジタルマーケティング、インサイドセールスがある組織「事業部内発足型」がMAツールを導入する場合、短期刈り取り施策がデジタルマーケティングのメインとなることが多いという。

具体的には、表現の自由度が高いLP(ランディングページ)をいくつも用意し、広告で誘導して資料ダウンロードを促しリードを獲得する、といった施策だ。

この方法は短期的にリードを獲得するには有効だが、中長期の視点で見たときは、「良い施策とは言えない」と上島氏は指摘する。

LPは、商品検討プロセスで言えば1ショット単位の個別最適化された内容になる。他社比較した内容やオンラインセミナー動画、事例PDFなど、ユーザーにとって価値ある内容が多数含まれているにもかかわらず、結果として事業部ではWebサイトの階層構造を無視した形でLPを作ることになる。期間限定でのLPであれば良いが、LPが乱立している企業では検索結果でコーポレートサイトより上位に表示されているケースもあった。

どんなに良いコンテンツが揃っていても、Webサイトの階層構造がめちゃくちゃで情報がどこにあるのかわからないようなサイトでは、本来のWebサイトの役割を発揮できません。結果としてユーザーにとって使いづらく、事業にも貢献できないWebサイトになってしまいます(上島氏)

株式会社Nexal 代表取締役 上島千鶴氏
1973年生まれ。理工学部経営工学科卒。1996年~大手情報サービス(東証1部)にて人事、営業、企画、事業開発に従事。2004年~複数の外資系ITを経て2007年独立系コンサル会社Nexal,Inc.を設立。全タッチポイントを顧客中心に再設計するBtoCビジネスや、事業戦略からマーケティングを定義し組織成長を後押しするBtoBビジネスなど、顧客視点のDXコンサルティングに従事。大手中心に200事業体以上の実績を持ち、豊富な経験と知見を持つ。

「現状のまま放置のレベル」と「改善により達成できるレベル」の差は「損失」

2つ目の課題として「サイトの課題を数字で説明できるWeb担当者の不足」を挙げた。情報構造の整理やCMS、ITインフラも絡んだWebサイトのリニューアルになると数千万円以上の費用がかかることもある。「これだけの投資を数字をもとに、論理的に経営陣に上申して、改修にかかる予算を獲得できるWeb担当者が少ない」と橘氏は言う。

大手企業ではミッションの細分化が進んでいて、SNS担当、コンテンツ担当、LP担当など業務が断片的になってしまい、Webサイトの全体的な課題、特に構造的な課題を把握する、という大きな視点が欠けている

Web担当者は、Webサイトにおける現状の課題を洗い出し、あるべき姿を見出して、そのギャップを埋めていく、という作業をしなければならない。

たとえば、現状(下のライン)をGoogleアナリティクスやその他の解析ツールで数値として把握して、あるべき姿(上のライン)とのギャップがそもそもWebサイトにおける損失であると捉えるべきだ。

現状、問い合わせが1,000件、売上が2億円だとすると、問い合わせ1件当たりの単価は20万円。改善によって問い合わせが2,000件になれば、20万円×2,000件で売上が4億円まであがります。担当者は、現状のサイトのままでは、2億円の損失があることを経営者に示し、そのための予算取りをしなければなりません(橘氏)

あるべき姿と現状のギャップが損失

経営陣を説得するには、Webサイトの構造を変える改善をすることで

  • 「どんなベネフィットが得られるのか」
  • 「変えないことによる損失がどれくらいなのか」

を具体的な数値で示して説得する必要がある。

改修にかかる費用を試算することはもちろん、現状の「Web経由での問い合わせ売上」「問い合わせ単価」を把握し、さらに改善した場合のそれぞれの数値を予測しなければならない。ところが現状問い合わせ1件当たりの価値を数値化している企業は非常に少ない。

BtoBサイトは、ほぼすべてのサイトに伸びしろがある

BtoBサイトは、ほぼすべてのサイトに伸びしろがあり、マーケティング施策によって業績に貢献するサイトに成長できると2人は口をそろえる。マーケティング施策を実践するためにMAの導入などを進める企業も多いが、前述したようにWebサイトの構造が整備されておらず、コンテンツも十分でない、解析もできていない状態でMAを入れても、コンテンツ閲覧をはじめとするWeb上のトランザクションによるユーザーのスコア評価といった基本的な設計ができないので、リードの品質評価が機能しない。

また検索エンジンの検索結果に表示されない場合、短絡的にリスティング広告やLPだけを上位表示させるためのSEO施策を行いがちだが、検索エンジンはユーザーにとって有益なページを表示することを目指しているので、ユーザーにとって使いやすくわかりやすいサイト構造に見直すほうが先だと橘氏は話す。

一般的に、Googleの検索順位が1位なら検索件数の30%の流入、10位なら1%の流入まで下がると言われている。単純計算するならば、ページの一番下で問い合わせが100件来ているなら、1位表示になれば3,000件になる可能性があり、その差は2,900件だ。この差をリスティング広告でまかなおうとすると、獲得単価1件1,000円として290万円の広告費用を投資する必要がある。

BtoB企業のWebサイトにおいては、サイトの現状に関する品質評価を数字で行わずに、本質的な課題ではなく手を付けやすい近視眼的な個別施策を行いがちだということです。私に言わせれば、サイトに本質的な課題の改善余地が100%あるのに放っておくのは、会社に貢献せず損失を与え続けているという点で“有罪”です(橘氏)

株式会社エクスペリエンス 代表取締役 橘 守 氏
リクルート、ネット系スタートアップ数社を経て、2005年エクスペリエンス設立。デジタルマーケティング分野における顧客利益の最大化をゴールとしたサイト戦略立案、サイト設計、実装、リリース後のKPI設計、PDCAサイクルの支援までを手掛ける。「数字で説明する。」が信条。08年日本産業広告協会日本BtoB広告賞グランプリ、経済産業大臣賞受賞他受賞多数。

サーバーや自社DB、構造化されたサイトが用意できれば、数億円の投資でも数年でペイできる

構造化されているサイトとは、顧客が商品を選定する際に、どの情報が影響を及ぼすかを理解して、自社の商品すべてにおいて、必要な情報を正しい場所に配置しておくことである。どの商品でも同じ粒度、深さで情報が公開されている必要がある。

サイト構造の見直し、サーバーなど環境や顧客データベース・商品データベースの見直し、コンテンツの精査と追加・編集・更新などすべて含んだWebサイトのリニューアルに数億円をかけてもその投資対効果を得られる。

ある製造メーカーのWebサイトは十数年前にリニューアルした。リニューアル前は事業部ごとに分かれていたサーバー、データベースを統合し、サイト内構造をきちんと整えたところ、その後、大型リニューアルは不要で運用できている。サイトが構造化されているので、新商品があってもコンテンツも追加しやすい。当時、リニューアルのために数億円もの予算を投資したが、その時の経営陣の説得理由が次のものだ。

  • リニューアル後は改修更新費用が削減できる(年間数千万円単位のコストダウン)
  • サーバー統合によるコストダウンとセキュリティレベルの向上
  • 売上への貢献

この事例のように、リニューアルの数千万円~億単位の投資が、将来を考えれば安いと経営陣に提案できなければ、大きな機会損失になる。Webサイトの骨組みから直すのは大変な仕事だが、それができればその後はコンテンツの更新、細部の改善でまわしていけるのだ。

データベースの整理、サーバー統合まで含めれば、億単位の金額がかかるのは当然です。自社の課題を認識し、論理的に証明できるのであれば、経営陣を説得し予算獲得ができるはずです(橘氏)

なお、経営陣を説得するコツとして2人が教えるのが「専門用語を使わないこと」だ。

コンバージョン、カスタマージャーニー、ペルソナなどの用語を使った途端、経営陣には伝わりません。投資対効果などお金を出す立場の人が重視していることや、横文字やカタカナではなく日本語で相手に伝わる言葉を選んで説明しましょう(上島氏)

客観的な評価が経営陣を動かすきっかけになる

経営陣の説得材料として使えるのが、冒頭でも紹介した「Webサイトのデジタルマーケティング実力評価診断」だ。「Webサイトのデジタルマーケティング実力評価診断」は、主にBtoB企業の商品サイト・ソリューションサイトの実力をユーザビリティやコンプライアンス、UI/UXなどの複数の観点から採点評価するサービスだ。

診断を受けると、今のWebサイトが点数で評価され、課題、解決のためのアクションの提案とともにレポートで提供される。ベンチマークと自社の結果が点数で出ると、経営陣を説得しやすい。

この診断は、次の6テーマ、27カテゴリ、詳細項目約200項目で評価する。

  1. 集客力
  2. 接客力(UI/UX、ユーザビリティ視点)
  3. 接客力(コンテンツ、機能視点)
  4. コンバージョン、追客力
  5. コンプライアンス対応力
  6. 運用力

現状把握のテストというだけでなく、次にとるべきアクションプランまでを提案するのがポイントで、報告レポートは百ページを超える場合もある。

サービスの提供価格は330万円(税込)。BtoBを中心とした事業単位またはコーポレート全体での評価が可能。ただし、グローバルサイトは言語、習慣の違いから、別料金になる。細かい条件などは問い合わせてほしいという。

この診断をご採用いただいた日本電産広報宣伝部さまからは「一般的な使い勝手を測るWEBサイト診断とは違い、ビジネス成果を上げるために解決すべきサイト課題を可視化することに特化したサービスという印象で、その診断結果は担当役員と共通の指標を持つことができ、意思決定のスピードが上がりました」というお話をいただいています(橘氏)

担当者にとっては、自分のこれまでの仕事の成果が数字で評価されるので怖いかもしれない。しかし、改善点があればそれだけ成長できるということだと前向きに捉えてほしい。

診断すれば、100%改善の余地があると評価されますが、それは改善すれば成果が上がるということ。改善をして競争力をあげてほしいです(橘氏)

マーケティングDXに取り組む前に、事業全体で見たときのWebサイトの役割を再検討してほしいです。MAを入れれば成功するというわけではなく、まずはWebサイトの土台を整える必要性に気づいてもらいたいですね(上島氏)

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