【事例編】優れたコンテンツによるリンクビルディング――最少の手間で最大の被リンクを得る戦略
この記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。後編となる今回は、視点を変えながらリンクネットワークを可視化してシンジケーションネットワークについて理解を深め、さらに実際に行ったコンテンツキャンペーンの結果も紹介する。→まず前編を読んでおく
よりグローバルな視点
昨年、Forbesのカレブ・リータル氏は、GDELT Projectという素晴らしいプロジェクトで、米国および世界中のGoogleニュースパブリッシャーのダイナミクスに目を向けた。このプロジェクトでは、GDELTの巨大なニュース記事データセットを活用し、上述したようなネットワークをGephiで可視化した。
この記事の前編で示したビジュアルマップはすべてのリンクを調査したものだが、このビジュアルマップは、コンテキスト内リンクだけに目を向けてリンクネットワークを構築したという点で異なる。
おそらく、こちらの方がニュースシンジケーションのネットワークをより正確に表しているだろう。というのも、グラフに影響を与えるサイト全体のリンク、ナビゲーションリンク、その他の非コンテキストリンクをより適切に解析しているからだ。
加えて、このグラフは、世界のほぼすべての国の1億2100万を超える記事を使用して生成されたもので、個別リンク10億件の4分の3近くが含まれている。これまでに集約された世界のニュース環境のダイナミクスを最も正確に表したものの1つだ。
エッジの重みは、各ノードから他の各ノードへのリンクの総数で決まっている。リンクが多いほどエッジは強くなる。ノードの大きさはページランクを使って計算されている(先に挙げたものはドメインオーソリティを使っていたが、似たような指標だ)。
リータル氏はこのビジュアルマップを利用して、主流のパブリッシャーに売り込むすべての人に影響が及ぶ、非常に興味深く潜在的に強力な関係を推測できた。最も重要な関係には、以下のようなものがある。
グラフの中央に巨大な塊が見える。リータル氏が指摘しているように、この塊の本質は「グローバルメディアの中核」と考えることができる。
緑色のノードは米国のメディアを表す。これは、前の例と同様、これらの主要なニュースメディアが相互リンクしてお互いの記事を取り上げている頻度の高さを示すとともに、彼らが小規模のパブリッシャーや地域および地方のメディアを参照する頻度がいかに低いかを示している。
興味深いことに、CNNは地域や地方のニュースへの配信に独自の役割を果たしているようだ。CNNから一番右側の青い塊へ多くのリンクがあることに注目してほしい。
リータル氏は、これはNYTやWPなど他の大手メディアがコンテンツを課金制にしている結果かもしれないと推測している。コンテンツを売り込む人にとって、この点は重要だ。有料コンテンツは、シンジケーションを大幅に減らす可能性があるという点で、考慮すべき問題だ。
NPRの塊も興味深い。NPR関連の記事間だけでなく、NPRとWPおよびNYT間にも強いつながりがあることを示唆している。
NPRのメインサイト上で取り上げられると、多くの傘下サイトにシンジケーションされる可能性がある。NYTやWPで取り上げられた場合でも、こうした相互リンクのために同様の効果がある。
国際的シンジケーションを探している人には、他にもいくつか興味深い点がある。yibada.comのなかでもny.yibada.comのようなサイトは米国のニュースを扱っている。中国語のコンテンツを扱っているが、英語をはじめとする他言語のバージョンも用意している。
このようなサイトはいい売り込み相手ではないように見えるかもしれないが、米国に拠点を置く英語のパブリッシャーと同じ記事の多くをカバーしていることを考えると、売り込みに成功する可能性が高い。
グラフの下部にある青とピンクの塊は、それぞれロシアとウクライナの報道機関だ。それらのリンクの大部分は自己完結型だが、世界的メディアに向けて3つの橋があるように見えることに気付くだろう。具体的には、BBC、ロイター、APとの橋だ。これは、これらのメディアで取り上げられると、少なくとも東ヨーロッパとロシアでは、はるかに広範な国際的シンジケーションにつながる可能性があることを示唆している。
加えて、言語が異なるパブリッシャー間に全体として深い相互リンクが欠けていることは、英語の記事を世界中で取り上げられるようにするのは非常に難しいことを示している。
ZDnet.comなどのサイトは外国語版を展開しており、多くの記事を各国語版向けに翻訳している。このようなサイトは、本来ならリーチが難しいであろう外国メディアのほとんど孤立した島々にリンクシンジケーションが可能な、またとない機会を提供してくれる。
読者には、こうしたインタラクティブなコンテンツをもっと探ってみることを推奨する。個々のパブリッシャーに目を向けてみると、扱っているどの記事に対しても、どのようなシンジケーションが可能かについて深い洞察が得られる。
これらのネットワークを介して記事がどのように拡散されるかには、多くの要因が影響するのは事実だ。とはいえ原則としては、シンジケーションネットワークが広範に及ぶほど、多くの機会が存在する。
実際のリンクシンジケーション
Fractlは、創業以来6年間で1500件を超えるコンテンツマーケティングキャンペーンを実施し、大手パブリッシャーに対して、人間的な触れ合いを重視した1対1のアウトリーチによる販促活動を行ってきた。以下に挙げるのは、コンテンツ制作と販促活動の結果として目にしたコンテンツシンジケーションに関する2つの見解だ。
まず、単体のキャンペーンについて見てみよう。
Fractlは先ごろ、「記憶のなかのブランド(Branded in Memory)」というキャンペーンで顧客のSigns.comが大きな成果を上げることに貢献した。
このキャンペーンは、人々がブランドのロゴをどれほど覚えているかを、「記憶を頼りにロゴを描いてもらった」結果を楽しく視覚的に示したものだ。有名ブランドのロゴを人々に記憶から再現してもらい、全体として思い出してもらえる割合が最も高いとみられるブランドをより深く理解するためにデータを分析した。
戦略的な宣伝や、一般向けの大々的なアピール、そしてプロジェクト全体の「格好いい」要素が功を奏し、このプロジェクトは多くの主流メディアに広く取り上げられ、広範なシンジケーションを実現できた。
以下は、このシンジケーションが時間の経過とともにどう推移したかをネットワークグラフ形式で表したものだ。
グラフのすべての要素を見たり調べたりしたい場合は、上のGIF画像をクリックするか、ここをクリックすると、インタラクティブ版にアクセスできる。これまでの例と同様、ノードの大きさはドメインオーソリティに関連付けられている。
ここで注意すべき重要な点がいくつかある。
中央のノードを囲むオレンジ色のノード群は、Signs.comのランディングページに直接リンクしている。
いくつかの記事が取り上げられてノード(メディア)につながり、それ自体が、Signs.comプロジェクトについて書かれた記事を参照する多くのリンクを生み出した。8時の位置にある青い塊はその好例だ。この場合はBoredPanda.comに取り上げられたものだ。
Signs.comにリンクしていないノードは二次シンジケーションだ。これらはSigns.comにリンクしているノードを通じてリンクの価値を渡すものだ。
これはチャンスだ。Fractlでは、これらの二次シンジケーションを顧客のドメイン名を直接参照するdofollowリンクに変えるために、こうした機会をすべてフォローアップしている。
アニメーション表示では、Signs.comの主要記事だけでなく独自の二次シンジケーションを獲得したノードに対するリンクの蓄積ペースについて、興味深い洞察が得られる。GIFでは、記事の取り上げられ方について、1年間の様子を表している。
私が経時的なリンクの獲得について調査して投稿したMozの過去記事で明らかになったように、リンクの約50%は最初の1か月に獲得され、残りの50%は次の11か月に獲得されている。
次に、Fractlの顧客キャンペーンのうち、(全期間ではなく)約3か月分にわたってシンジケーションネットワークを集計するとどうなるかを見てみよう。
これをさらに深く調べたい人は、ここをクリックするか、上の画像をクリックすると、インタラクティブ版が表示される。これまでの例と同様、ノードの大きさはドメインオーソリティに関連付けられている。
注意すべき重要な点がいくつかある。
「Placement」と表示されている中央付近の茶色の塊は、顧客サイトのランディングページに直接戻るリンクだ。これらのリンクの多く、またはほとんどは、そのパブリッシャーに所属するライターやエディターに対する売り込みの結果であり、自然なシンジケーションの結果ではない。
多くの大手ハブの周囲には、そのハブ独自のリンクノードのネットワークが形成されていることがわかる。9時の位置にはentrepreneur.com、12時の位置にはCNBC.com、10時の位置にはUSATodayなどが見える。
シンジケーションによって、これらのメディア上の記事にリンクバックされている様子がこのビジュアルマップでどう見えるかを考えると、大量のリンクノードに囲まれているパブリッシャーが、主な売り込みターゲットの例に挙げられる。
まとめ
新たなデータツールによって、ニュースメディアや、もっと大きな「ブロゴスフィア」の世界がいかにダイナミックに機能しているか、さらに理解を深めることが可能になっている。特にネットワーク可視化ツールを利用すると、パブリッシャー間の関係、およびこれらのネットワークを通じたコンテンツの配信やシンジケーションについて、他の方法では得られない洞察が得られる。
嬉しいことに、自分自身のデータでビジュアルマップを作成するのは非常に簡単だ。たとえば、Fractlによるコンテンツ例のリンクグラフは、最初のニュースネットワークの包括的なビューと併せて、SEMrushからの被リンクエクスポートを使用して作成した。
加えて、GDELTなどのサードパーティーのリソースでは、ほとんど未開拓のツールやデータセットを提供している。これによって理解が深まり、コンテンツのプロモーションやシンジケーションのプロセスを最適化しようとしている人に大きな利点をもたらす機会が得られる。
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