インタビュー

Webプッシュ通知はどう使う? 「通知ウザイ」と思われない利用方法と導入の仕方

実はWebでも使えるプッシュ通知。利用シーンや通知頻度、導入時の注意などをフェンリル株式会社様が提供する通知エンジン開発責任者の伊藤伸裕氏に聞いた。

ほとんどの個人がスマートフォンを所有する現代において、プッシュ通知はメールに代わる重要な通知手段として多くのスマートフォンアプリで利用されており、個人に向けた通知の利用も盛んだ。

一方、ビジネスの現場ではスマートフォン・タブレットの利用が増えてはいるが、まだパソコンの利用が主流となっている。システムやニュースの通知の大半はメールに頼っており、利用者が重要な情報に気づきにくい。

フェンリル株式会社は、こうした背景を受け、プッシュ通知をウェブブラウザで受け取ることができるプッシュ通知エンジン「BoltzEngine(ボルツエンジン)」の開発を行っている。ウェブブラウザのプッシュ通知は今後どのように活用されていくのか、今回はプッシュ通知エンジンの仕組みとサービス、ウェブブラウザプッシュ通知のメリットについて迫った。

フェンリル株式会社 伊藤伸裕氏

そもそもプッシュ通知ってどうやって送っているの?

プッシュ通知の仕組みはいたってシンプルである。まず、プッシュの許可をJavaScriptでユーザーのウェブブラウザに表示させる。これがユーザー側に許可されると、プッシュ通知の送り先情報がブラウザから発行される。

その情報をアドレスととらえ、サーバーに送り返すと、今度はサーバーからブラウザに対してプッシュ通知を送りたいときにその送り先情報を使ってプッシュ通知が送られるという仕組みだ。

スマホでのプッシュ通知の仕組み
Webブラウザでのプッシュ通知の仕組み

スマホのプッシュ通知は馴染みがあるけど、Webでもプッシュ通知が使える?

スマートフォンのプッシュ通知といえば馴染みが深いが、実はWebのプッシュ通知サービスが広がりだしたのはつい最近だ。ブラウザの標準規格が確立したのが2016年の12月、これにBoltzEngineが対応したのは2017年4月と、ここ1、2年のことだ。

「元々システム自体はあったが、ブラウザによって規格が異なるのでなかなかリリースできなかった」と伊藤氏は語った。

スマホのプッシュ通知は普及して数年たつが、Webのプッシュ通知はまだまだこれから。では、Webプッシュ通知はどういったシーンで利用するのが有効なのか。

自由度が高く、利用シーンは様々

「BoltzEngineでのWebプッシュ通知は勤怠管理などの社内システムで特に活用できると考えていました」と伊藤氏は語る。しかし、世の中の流れとしてはWebプッシュ通知をマーケティングに使用する流れになっている。

プッシュ通知はメルマガの代わりになりえるか

「メルマガとプッシュ通知は並存していくと思います」と伊藤氏は言う。それは、一度に送れる情報量に明確な差があるためだ。メルマガと比べ、プッシュ通知は送れる情報がとても短い。

プッシュ通知は送れる情報が短い代わりに、情報をタイムリーに届けたい、新着情報の更新を届けたいというときに使われる。対して、メルマガはプッシュ通知に比べて情報を確認してもらうまでに複数のステップが存在するが、より詳細な情報を伝えたい、知りたいというときに活用できる。

伊藤氏にメルマガとプッシュ通知への反応の違いを聞いてみると、メルマガよりもプッシュ通知のほうが反応が良い場合が多かったようだ。メルマガの開封率が3~5%だったものが、スマホアプリでは15~20%にアップしたこともある。

プッシュ通知をメルマガの役割に置き換えてしまうより、補助的役割に使う方が良さそうだ。

Webの接客ツールの補助にも

Web接客では、すぐに接客ができない場合、ユーザーがページを閉じてしまうことがある。その場合、Webプッシュ通知は非常に有効だ。ページを閉じてしまったユーザーに対して「回答しました」とウェブブラウザにプッシュ通知を送ることで、再びページに来てもらうような通知を行うことができる。

パーソナライズされた通知は可能?

現状の技術でも、「この記事を読んだらこういうアクションをする」というようなWebプッシュ通知を組み込むことは可能だ。とはいえ、実際にそこまで運用できているのはごく少数の会社のみというのが現実。

しかし、将来的には配送状況の通知やログイン通知など、ユーザーの行動に則した、よりパーソナライズされた通知を送っていくことが可能になっていくと考えられる。

プッシュ通知のデモ

通知頻度はどう決める?使う際の注意点

プッシュ通知を行う上で、通知頻度の設定は重要だ。あまりにも通知の頻度が多すぎると拒否される可能性が高まるため、ユーザーに負担にならない通知頻度と通知の仕方を考える必要がある。

たとえば、事前のコンセントがなくいきなり「プッシュ通知を有効にしますか」と出てくる。これは、ユーザーからすると何故通知が出たのかわからないので拒否されてしまう。また、情報を見てほしい気持ちが先立ってあまりに頻繁にプッシュ通知を送ってしまうと、これもユーザーには負担になり拒否されてしまう。

こういったサイトが増えてくるとユーザーの通知拒否が増え、Webプッシュ通知が廃れてしまう恐れがある。伊藤氏は、「Webプッシュ通知の発展がこれからというこの立ち上がりの時期にこそ、導入企業に気を付けて欲しいことがある」と語った。

それは、必ずユーザーに何の通知かを知らせること。これは有効化率を上げるためによくとられているフローだ。

プッシュ通知はただ単に通知の可否を問うだけでは拒否される場合が多いので、ユーザーにとってどのような利益のある情報が得られる通知かをページ内に明記することが重要だ。これにより、ユーザーの通知に対する不安や不信感を取り除くことができる。

しかも、このフローを組み込むと、通知内容を承知のうえで許可をしてくれるロイヤリティの高いユーザーに通知を届けることができる。

サービスの利用にあたり、マーケティング担当者はエンジニアに対してどう依頼をすればスムーズになるのか

Webプッシュ通知を行いたい場合、マーケティング担当者だけではなく、社内のエンジニアと協力する必要がある。導入したいときにエンジニアへ伝えたい要素は以下の4つだ。

  1. プッシュ通知を有効にするときのステップ
    どのようなステップがあって、有効無効の表示が出るようにするのか。
     
  2. プッシュ通知をどう表示するか
    プッシュ通知はウェブブラウザの機能である程度自由に出すことが可能なため、どのような表示にするのかを決める必要がある。たとえば、クリックしたときにどのURLを開くのか、URLを開くときにタブを更新するのか、URLを新しく開くのかなど、開いたときの表示と挙動を決めておく。
     
  3. 管理側が通知をどう送りたいか
    管理側が通知をどのように送りたいかも考える必要がある。セグメントを分けて送りたい場合は、まずセグメントの情報をどうやってブラウザからたどってくるかを突き詰めなければならない。ユーザーログインのあるシステムの場合だと簡単だが、無い場合は、たとえばユーザーが「この記事を見ていた」など、ブラウザが持っている情報をまとめる必要がある。
     
  4. 送るタイミング
    時間指定ならばサーバーに時間通りに送れる仕組みを入れる必要があるので、クリックしたら送る、時間を決めて送るなどを決めてエンジニアに伝えると良い。

プッシュ通知は、融通がきく分色々なものを用意して対応させる必要がある。そのため、導入する際にはマーケティング側で最終的に何を目的にするのかを決め、そこからどういう仕組みを使うのかを考えてからエンジニアに伝えるとスムーズに導入できる。

BoltzEngineの特性

BoltzEngineはもともと、生放送番組向けの通知エンジンから発展し、スマホ、Webプッシュ通知の開発に至った。

制限なく大量に素早く送れる

普段から100万単位でユーザーを抱えているゲームや、人気の生放送番組でも100万人以上に通知を送っており、そういったシステムを想定基準として開発している背景もあるため、一度に素早く大量のユーザーへ通知を送ることに長けている。

また、BoltzEngineを利用するにはサーバーを自社で用意する必要がある。そのため、他のサービスで大量に通知を送っていることによりパフォーマンスが下がるというような影響を受けにくい。更にプッシュ通知を大量のユーザーに送った場合、一気にアクセスされてサーバーがダウンするという場合が考えられるが、これを避けるためにわざと速度に制限をかけ少しずつ送る機能もある。

手軽に通知を送れる

スマホではアプリのインストールが必要だが、Webプッシュはブラウザさえあれば通知ができるので、ユーザーに対して、低いハードルでプッシュ通知を届けることができる。ただし、SafariのWebプッシュに関しては未対応なので注意が必要だ。

単発利用と長期利用

BoltzEngineの利用者は、利用目的によって期間が異なるという。単発の場合はイベントやシステム移行のつなぎの期間に利用されることが多い。あるASPサービスから他のASPサービスに移行するとき、その期間のみ利用するような場合だ。

そして、長期では会社のポリシーとして外にデータを置けない場合、また、ASPサービスだと配信数が伸びてきて他のサービスにも適応したい場合、大量に送れない、従量課金がかかるとかという場合に使われることが多い。

料金

  • フラッシュプラン…月額8万円。ライトニング同様スマホアプリ1本利用可能で、ウェブサイト、メッセージ配信は無制限。イベントなど短期間向け。

  • ライトニングプラン…80万円買い切り。スマホアプリ1本(iOS、Android)と会社全体のWebサイトは無制限で全てカバーできる。メッセージは無制限。2年目以降のサポートとアップデートサービスなどは毎年10万円。

  • サンダーボルトプラン…スマホアプリもWebもメッセージ配信も無制限。

料金一覧 ※サーバーの運用費は別途自社負担

※料金については掲載時点の情報であり、最新と異なる場合がある。

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