インタビュー

なぜ日本にはCMOが少ないのか? SitecoreのCMOに聞いた

SitecoreのCMOペイジ オニール 氏にデジタルマーケティングの専門組織やCMOのあり方、女性の働き方などについて、編集長 四谷志穂が話を聞いた。
左から、Sitecoreのアジア地域 責任者のジョーダン ライジズ(Jordan Reizes)氏、同社 CMOのペイジ オニール(Paige O'Neill)氏、同社 日本法人代表取締役社長の酒井 秀樹 氏

デジタルマーケティングの重要性に着目し、専門部署を作り、CMSを導入してWebサイトをリニューアルする企業が日本でも多くなった。しかし、CMOが力を発揮している企業はどれだけあるだろうか? そもそもCMOの役割とは何だろう? 今回、多くの企業にCMSを提供しているSitecore(サイトコア)のCMO ペイジ オニール氏、ジョーダン ライジズ氏、酒井 秀樹 氏にお話を伺う機会を得た。デジタルマーケティングの専門組織やCMOのあり方、アメリカでのWebサイトの変遷、女性の働き方、などについて、Web担当者Forumの編集長 四谷志穂が話を聞いた。

日本にCMOがいないのはなぜ? CMOの役割とは?

インタビュー当日は、“【サイトコア事例祭】お客様に寄り添うデジタルエクスペリエンス演出への第一歩”をテーマに、ホテル雅叙園東京で「Sitecore Digital Marketing Summit 2018」が開催されている最中。登壇の合間をぬってお時間をいただいた。

四谷: お忙しいなか、ありがとうございます。さっそくですが、日本ではCMOが少ないのが現状です。そもそもCMOの役割とはなんでしょう?

ペイジ オニール氏(以下、オニール): CMOは、マーケティングに関わる要素を横断的に見ることが仕事です。たとえば、私のチームには、「PRを管轄しているコミュニケーションの部門」「デジタルマーケティングを管轄しているデマンドジェネレーションの部門」「お客様へのメッセージを統括するプロダクトマーケティングの部門」があります。

また、各地域を担当するマーケターもいます。たとえばここにいるライジズが、アジア地域を担当しています。このように、サイトコアのビジネスがある地域では必ずローカルの状況をみる人たちを置いています。

CMOがマーケティング活動の全体を俯瞰してみることで、新しい技術が出てきたときに、それをうまく全体に組み込めるのだと思います。ところが、まとまっていない細分化された組織になると、全体像さえまとめることが難しくなります。

そしてCMOに求められているのは、戦略をしっかり持つことです。デジタルをどう活かすのか、最新技術をどう活かすのか、明確な戦略をもち、常に企業を前に進めるため、企業を業界のなかで最先端にしていく。CMOは、新たに出てきたマーケティングテクノロジーを、組織のなかでプッシュしながら活かしていくことを役割としています。

Sitecore CMO(Chief Markting Officer) ペイジ オニール(Paige O'Neill)氏

四谷: 日本でも、マーケティングを横断的にみることの必要性が理解されつつあります。とはいえ、企業よりもブランド製品の方が強いことも多々あります。そうすると軋轢が生まれることもしばしば…。たとえば、「なぜ横断的な部署が途中からやってきて、ブランド製品が長年やってきたマーケティングになぜ口出しするのだ」というようなことです。

オニール: アメリカでも同じことがあります。強力な製品をかかえている企業、部門自体が多い企業ではそういう傾向があります。たとえばP&Gが各ブランドにCMOを付けているのはそういう理由があってのことです。

四谷: そういう場合、全体を俯瞰する役割はいないということですか?

オニール: 各ブランドをまとめるCMOがいるところもありますし、その役割をCEOが果たすところもあります。「企業」を売りたいのか、あるいは「ブランド」を売りたいかによって違いが出てくると思います。いろいろなモデルがありますね。

酒井 秀樹 氏(以下、酒井): たとえば、CEOの下にデジタルマーケティングを行う専属組織を作る場合もありますね。マーケターもいればデザイナー、エンジニアもいるようなデジタルマーケティングができるスペシャルタスクフォースをCEO直下におき、そこであらゆる施策を試したうえで、うまくいったものを現場に落としていくケースもあります。

日本法人代表取締役社長の酒井 秀樹 氏

日本国内の破壊(destruction)に伴う変化はこれから?

四谷: 日本では、「デジタルマーケティングを企業に取り入れていきたい」といっても、上司に理解されないことも多いんです。

ジョーダン ライジズ氏(以下、ライジズ): アメリカでは、デジタルによる「破壊(Disruption)」が自明です。たとえばUber(ウーバー)などの台頭で既存企業にとって換わられています。ですから、デジタルマーケティングが重要だという認識が浸透しています。

酒井: 日本はどちらかというと規制に守られていますよね。たとえば、Uberが日本に入ってきても業界が強くて、浸透しづらいということはありますね。

ライジズ: それが日米の違いを生む一つのポイントなのかもしれませんね。実際にビジネスが「破壊」されてしまう環境になれば、「何かをやらなければいけない!」となりますが、そこまで追い込まれていなければ、新たな施策を打つ必要はないわけですから。

四谷: 確かに日本でデジタルによる「破壊」が起こったものとして、パッと思い浮かぶのは、メルカリやZOZOくらいですね。

ライジズ: 海外では、「破壊」のスピードがすごく速いんです。本当に早く動いて対応しなければ、どうにもならないことになってしまいます。

Sitecore シニアマーケティングディレクター アジア地域責任者 ジョーダン ライジズ(Jordan Reizes)氏

オニール: アメリカでも、デジタルによる破壊が起こる前に「デジタルマーケティング」が注目を集めていました。日本にもその流れが加速度的にやってくるかもしれません。

また、デジタルが企業に広がらない理由の一つに、日本のマーケティングの機能が分散傾向にあるからだとも考えられます。これは、日本にCMOがいないのはなぜか、にも関わってきますね。

デジタルが消費者にもたらすメリットとは?

四谷: 少し、角度を変えてサイトコアさんのことをお伺いしていきたいと思います。まず、フィロソフィーをお聞きしたいです。

オニール: 私どもの理念は、「弊社のお客様がそのお客様に対して、パーソナライズした体験を提供していくお手伝いをする」ことです。デジタルエクスペリエンスは現在、あらゆる業種や企業のなかで、一番重要なトップ戦略になってきています。私どもは、弊社の製品をその心臓部分におきたいと思っています。お客様のブランドが、そのお客様のことを深く理解し、より良い関係性を構築できるような場にしたいのです。

四谷: 消費者からすると、テクノロジーが進化したことでどのようなメリットが生まれていると思いますか?

オニール: アメリカでは、Webサイトなどのテクノロジーが登場する以前から、お客様の情報が隠れているところを発見して、収集、分析、セグメント化して、顧客を理解するということを長らく行ってきました。

そこに、テクノロジーが浸透し、技術が成熟するにつれて、より顧客理解が深り、顧客に応じたエクスペリエンスをリアルタイムに提供できるようになりました。

たとえば、「オンラインでお買い物をする」「リアル店舗でお買い物をする」「買い物をする前にオンラインで調べものをする」といった、認知から購買、購買後の体験すべてで顧客に関するあらゆる情報を総合的に組み合わせていくことで、360度のお客様の像がみえてくるわけです。

企業が顧客のことを理解しようと努力することで、消費者の暮らしも楽になるでしょうし、消費者はより良い選択を行うことができると思います。

一方で問題になっているのは、企業がどれくらい顧客のことを知るべきなのかという観点です。企業が持つ顧客に関する情報のなかにはナレッジも含まれていますが、パーソナル情報も含まれています。この情報をどう取り扱うべきかは、今後の課題と言えますね。

四谷: 日本でも個人情報の問題は避けて通れない話になってきていると思います。テクノロジーの進化とともに、Webサイトの役割も変わってきたといえるでしょうか?

オニール: 大きく変わってきています。Webサイトは、お客様にその企業をより良く理解していただくためのエクスペリエンスを提供する場になっています。さらに、リードの生成場所、需要の生成場所、あるいはお客様の体験を準備する場所、よりパーソナライズした体験を提供する場所になってきています。

私がキャリアをスタートさせたころ、CMOは、Webサイトなどのテクノロジーが意思決定に関わるとは、まったく考えてもいませんでしたから。

最後に…IT業界で活躍する女性の方へ

四谷: サイトコアでCMOをされている女性のオニールさんに、個人的なことも含めて最後に質問させてください。私には2歳の子どもがいますが、編集長になって、仕事と家庭の両立に悩んでいます。新たな立場に挑戦する気持ちはあるものの、心の迷いもあります。そういう迷いを打ち消して、走りながら実績を積み上げていく持久力はどこからくるのかを、オニールさんにお聞きしたいのです。

オニール: 私には2歳の子はいませんが(笑)…良い質問だと思いますし、同時にとても難しい質問だと思います。

テクノロジー業界は女性が少ないということもあり、私は、同じ業界で働く女性に対して話をする活動をしています。私自身、幸運なことにすぐれたメンターに恵まれてきましたが、四谷さんの質問に対して、明確な回答を持っていません。

ただ、高いキャリアを目指す人にとっては、仕事とパーソナルライフのバランスがとれない悩みが出てくることはどうしてもあります。

一つアドバイスできるとしたら、新しい仕事のやり方をつかめば、編集長をやりながら家族との生活もうまくやっていくことは可能だと思います。そのためには、自分でしっかりと境界線をひくことです。

私が若い女性と話をする際には、たとえば、子どもを迎えに行かなくてはならないときに「ごめんなさい」という態度はしないようにと話しています。誰でも自分のパーソナルライフをもつ権利はあるわけですから、そこで謝らなければならない理由は一切ありません。

また、仕事で語るという側面もあります。その若さで編集長をされているというのは、良い仕事をされている結果だと思うので、自分の仕事でまわりを説得していくということができる人だと思います。

20年前に比べて、社会的にもそういった考え方に対して受け入れ態勢ができているのではないでしょうか。自分の求めているものを怖がらずに表現して、線をひかなくてはいけないときにはしっかりと自分から表した方がいいでしょう。

四谷: 仕事でまわりを説得する、そういう覚悟も必要ですね。ありがとうございました!

(取材 四谷志穂(編集部)/写真・文 渡辺淳子)

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