「ユーザーの動線を邪魔せずインパクトを残す」タテ型動画広告で成果を上げる『LODEO』がすごい
近年、InstagramやTikTokなど、スマホでの画像表示を横長から縦長に見せるUIが増えてきている。こうした流れを読んで、いち早く動画広告に流用し、スマートフォンに特化したアドネットワーク「LODEO」を開発したサイバーエージェント アドテクスタジオのチームを牽引しているLODEOカンパニー 事業責任者の加藤 徹 氏に話を聞いた(以下、発話は敬称略)。
――動画デモを見て「インパクトのある広告表示だな」と強く印象に残っていて今回お伺いしました。「LODEO」はどういうソリューションなのでしょうか?
加藤:LODEOはスマートフォン動画に特化したアドネットワークです。アドネットワークとは、複数の媒体に対して一括で動画広告を配信できるサービスのことです。LODEOの特長としては、「縦型」で動画広告を配信できる点で、横型に比べて、縦型の方がスマートフォンの画面を大きく占有できるので、ユーザーに目にとめてもらいやすくなります。
動画広告の配信先に関しては、私たちが「プレミアムメディア」と定義している法人運営の信頼性の高いメディアと1社1社と直接契約を結んでいるので、お客様のプロダクトに合わせて配信先を選んでいただけます。
――商品の特性に合わせて広告の露出先をきちんと決められるという、ブランドセーフティの要件も満たしているのですね。現在、何社くらいの企業で導入されているのでしょうか?
加藤: 現在までで数百社ほどご出稿いただいています。テレビCMの訴求力を高めたり、認知を高めたりするブランディング活動の一環としてご利用いただくことが多いです。
「ユーザーの行動を邪魔しない」と「広告を見せたい」を両立する
――実際に動画広告はどのように表示させているのでしょうか?
加藤:動画広告の表示方法は全部で3パターンあります。
- 1つ目は「タテフル」
記事などのコンテンツ間に、最大でスマートフォン画面の90%を占有して縦型動画を自動再生できる - 2つ目は「フリックパネル」
横型広告(16:9)とフリックパネル型広告(1:1)の2種類を組み合わせて配信できる動画広告。横型の動画広告を上部に置き、その下部にフリッカブルな広告のパネルを設置フリックパネル型は、動画再生用のサムネイルや静止バナーが3~5枚設置可能。スマートフォン画面の90%を活用して再生できる動画広告 - 3つ目は「ビッグパネル」
横型の動画と大型のパネルを組み合わせた広告フォーマット
3パターンの利用率は、「タテフル」が約7割、「ビッグパネル」が約2割でそれ以外は「フリックパネル」という状況です。
いずれのパターンでもユーザーの行動導線を大きく邪魔しないということがポイントです。ユーザーは動画広告を見るためにコンテンツを見ているわけではないので、動画広告をスマホの画面いっぱいに表示すると不快ですよね。そこでLODEOの場合は、「×」ボタンで広告を閉じなくても、下にスクロールするだけで、広告をスルーできるという機能を持たせて、「ユーザーの行動は阻害しない」「動画はきちんと見せる」のどちらも両立させるということを目指しています。
――なるほど。サイトを見ながら「おっ、このCMなんだろう」と目がとまる動画広告になっていますね。
加藤:この機能のほかに、動画をもっとインタラクティブに表示できるよう、インタラクティブ動画の技術提供をしているカナダのSpotful(スポットフル)と連携し、「TappableVideo(タッパブルビデオ)」という機能を追加しました。この機能により、動画再生中に商品購入ページへ遷移したり、地図やSNSを表示できたり、動画の上で動画を展開することも可能です。
Spotfulはもともと「動画の上にスポットを置く」という技術自体を持っており、企業のサイト動画などに提供してきた会社なのですが、この技術を動画アドネットワークの配信サービス上で活用できれば、これまでにない動画広告サービスを提供できるのではないかと考えて相談を持ちかけた結果、技術連携が実現しました。
動画の上にスポットを置く機能は2018年6月にリリースしたのですが、ここ数か月でご利用いただくケースが急激に増えています。
縦型のフォーマットがこれからメジャーになる! とサービスの舵を切った
――改めて、アドテクスタジオの体制をお聞かせください。
加藤:アドテクスタジオはサイバーエージェントグループのアドテクノロジー分野におけるサービス開発・提供を行う横断組織で、2013年に設立しました。
アドテクスタジオが提供しているソリューションは、位置情報を使ったターゲティングソリューション「AIR TRACK」や、滞在時間を最大化するDSP「Skyrocket」、チャットボットサービスである「AI Messenger」など、広告の販売促進に特化しています。LODEOもそのうちの1つです。
――LODEOの開発の背景を教えてください。
加藤:LODEOのサービスは2015年に始動。その後、2016年に縦型の動画広告に特化したものをリリースし、現在に至ります。
縦型広告をリリースした当初、日本ではまだ縦型のフォーマットに馴染みがなかったのですが、海外ではSnapchat(スナップチャット)や国内のC CHANNEL(シーチャンネル)が「縦型に特化したメディア」としてメジャーになっていて、新しいサービスがどんどん増えていた時期でした。
私自身が当時、Snapchatで縦形の動画を見たときに、非常に迫力があって、没入感というか、つい見入ってしまう感覚があったんですよね。それを「動画広告」に置き換えたとき、これからは縦型が主流になってくるのではと考えたんです。
当時は言葉で「タテ型の動画広告」と言われてもピンと来ない方も多かったのですが、先んじて、動画広告のフォーマットを縦にして大きく見せてみようと、思いきってサービスを方向転換してスタートさせました。
そのあとに、Facebookの広告フォーマットやInstagramのストーリー機能などが縦型のフォーマットになり、TikTokなどの動画配信サービスも出てきて、縦型動画市場が加速度的に拡大してきました。
正直、リリース当初は「縦型のフォーマットはもう少し早く普及するかな」と思っていたのですが、リリースしてから2年経ち、ようやく「縦型で動画を見る」ということが確実にユーザーの間に普及してきたので、あの時、思い切ってサービスの舵を切ってよかったなと思っています。
――まさに先見の明ですね。PCで見ることを前提にして作られていたので「横型」が基本でした。その後、モバイルシフトが進んで、スマホでのUX向上のためにタテ型にしているサイトも増えてきましたね。
「少ない時間でインパクトを残す」ための2つのポイント
――縦型動画広告のクリエイティブ面でのポイントはありますか?
加藤: はい、動画広告のクリエイティブでは、「即時に関心を持ってもらう」「商品について理解してもらう」ように工夫をしています。
LODEOのフォーマットの場合、ユーザーが画面をスクロールしている途中に広告を表示させるため、スピーディーなユーザーの視点や指の動きを一瞬で止めなければいけません。そこで、動画の序盤にインパクトのある要素を入れたり、言いたいことをシンプルに表現したり、商品のロゴをしっかりと画角内に入れるなど、テレビCMとは違うアプローチが必要だと考えています。
また、動画の長さも重要なポイントです。尺の長さは短いもので5秒~30秒、どれだけ長くても1分程度に収めるよう推奨しています。よほどの関心がない限り、受動的に見ている動画広告を1分以上静止して見続けるユーザーは少数なので、短い動画でユーザーの記憶に刻むことを意識することが大事です。
――実際に使っているかたの反響はいかがでしょう?
加藤: デモンストレーションで実際の動画の挙動をお見せすると、「これはすごいね!」と第一声でいただくことが多いです。
本来、広告掲載のご提案をする際には、数値などをシミュレーションし緻密に詰めていくのですが、LODEOの場合、まずは実際にデモ動画を見ていただいて、そのインパクトや没入感を体験していただくと、お客様もユーザー目線で「感覚的にこれはいい」と言っていただけることが多いです。
また、広告配信の効果として、動画広告を見た人の広告想起や利用意向などのブランドリフト値がどの程度あるのか、配信先のメディア単位で細かく分類したサーベイの結果をお渡ししています。
私たちもLODEOを開発した当初は「この動画広告はどこまで効果があるのか?」と手探り状態だったのですが、実際にデータ分析をすると、多くのキャンペーンにおいて広告想起率など広告を見た人と見ていない人の差が大きく違うことがわかりました。
動画広告をユーザーに合わせて最適化することでブランドリフトを
――今後、組み込んでいきたい機能はありますか?
加藤: 大きく分けて2つあって、1つ目はユーザビリティの向上、引き続きユーザーとの接点であるアドフォーマットの「新しい在り方」にこだわっていきたいです。いま展開しているフォーマット以外に、もっと新しいユーザー体験を与えられるもの、色々なお客様の課題を解決できるものを考えて提供できればと思います。
2つ目は動画広告配信を最適化する機能の強化です。最適化のキーとなる指標はいくつかありますが、機械学習でもっとも購入意向が高いターゲットや出稿先を見極めて広告の配信ボリュームを増やしていったり、ユーザーの特性に合わせてクリエイティブを出し分けたりするなど、ユーザーに最適な動画広告を配信することでブランドリフト効果も上げられるような機能を組み込んでいきたいと考えています。
――ありがとうございました。
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