コンテンツマーケティングでプログラマティック取引を活用する手法の具体例付き解説(後編)
コンテンツマーケティングでのコンテンツ配信でのプログラマティック取引を解説するこの記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。今回は、プログラマティック配信について、どのような活用の仕方が考えられるかを見ていこう。
→まず前編を読んでおく
この記事は、コンテンツマーケティングの大きな2つの課題「コンテンツ制作」「コンテンツ配信」のうち後者、つまり「作った良質なコンテンツをいかに良いターゲットに触れてもらうか」に関する解説だ。
実際には、どう機能するのか?
コンテンツマーケティングを積極的に行うにあたって、作ったコンテンツに集客するのに自由に使えるサプライサイドの選択肢が「フルスタック(全部盛り)」にある世界というのは、すばらしい。そのすばらしさは、どんなふうにオーディエンスをフォローし、やり取りができるかについて考えてみるとよくわかる。しかも、それは自分がどこにいようとほとんど関係ないのだ。
このプロセスは、ウェブ上のどこでオーディエンスが見つかる可能性があるのかを理解することから始まる。そのためには、マーケティング全般にわたる広範なオーディエンス理解の一環として使われており、おそらくは誰もがよく知っているだろう多くのツールやプラットフォームが利用できる。
オーディエンスを理解する
コンテンツ配信のキャンペーンを開始する前に、ターゲットとする消費者がどこにいるかを明確に把握しておくことが不可欠だ。そのために、僕は次の基本的なプロセスに従っている。
Zazzleでは、GlobalWebIndexという素晴らしいツールを利用できる。これは僕が最近何度か書いたり話したりしているツールで、戦略全体を推進する中核的な原動力となりつつある。このプロセスでは、GlobalWebIndexを利用して、以下の例のようにオーディエンスが定期的にどのチャネルを使用しているかを把握する。
ここでは、3つの類似ブランド(赤・黄・緑)を、英国の平均(紫色)と比較して示している。オーディエンスが検索サイトや消費者レビューサイトを利用していることは容易に見てとれる。したがって、ターゲティングが有効であることを確認できる。
次に、これをさらに細かく分けてみたい。それにはまず、オーディエンスインサイトデータの大手提供業者であるコムスコアやヒットワイズを確認する。
両社のデータから、オーディエンスが自分のサイトの前後に訪れるサイトや、関心事についてのより広範な見方、訪問行動など、あらゆる情報を抽出できる。以下の例では、英国におけるBBCサイトについて、訪問者が直前にどのようなサイトを訪れていたかがわかる。
これらのツールを使用して、自分のサイトや競合または業界大手のサイトを分析することで、オーディエンスがどこにいるかを素早く正確に把握できる。
そうした企業向けツールは敷居が高いという人は、AlexaやSimilarWebを使ってみると、もっと小規模なデータセットからではあるが、同様の情報が得られる。
他の多くのデータを重層的に利用することもできる。たとえば、次のようなデータがある。
ターゲティングのタイプ ソースの例 行動 BlueKai、eXelate、Bizo、Hitwise、Lotame、Peer39 リターゲティング グーグル、Facebook、CRM、サイトデータ ジオターゲティング モバイル位置情報データ(Factual、Location Graph)、モバイルアプリケーションデータ(PushSpring) クロスデバイス Facebook Atlas、グーグル、オラクル、LiveRamp、Drawbridge コンテキスト 多数 実際には、個々のデータプロバイダについて気にする必要はほとんどない。ただし、プログラマティックプラットフォームの多くは、これらのソースをシステムに集約して、対象を正しく絞り込むためのワンストップソリューションを提供していることは理解しておいて損はないだろう(プラットフォームの例は後述する)。
クリエイティブを作る
このガイドの作成においては、適切な種類のコンテンツを作成するプロセスがすでに確立されていると仮定している。
僕は以前、アプローチに疑問がある場合に効果を最大限に引き出すコンテンツ戦略やキャンペーンを設計する方法について書いたことがあるが、この配信メカニズムの魅力は、それが主要なキャンペーンの場合と同様に記事やガイドにとっても効果的だということにある。
これを理解するために、理論上の例を2つほど示して、それがどのように展開するかを見てみよう。
例1:スポーツカーの購入者を対象とした動画レビューコンテンツ
次のような場面を想像してみよう。
数か月前から新車の購入を検討していた人が、ようやく、何度かつぶれていた週末の予定が空いて理想の車に試乗できることになった。
土曜日、競合する自動車メーカー3社の車に試乗したのだが、帰る頃にはますますわからなくなってしまった。欲しいと思っていた車の乗り心地が一番ではなかったからだ。
これら3つの自動車メーカーは、この人がその夜に思案しているタイミングで、自分のところの車を選択候補にあげてほしいと考えるだろう。
3社の中で最も先鋭的な自動車メーカーは、プログラマティック広告コンテンツ戦略を展開しているとしよう。その企業は、独自の試乗データベースからの情報と併せてジオロケーションデータを照合したり、グーグル検索やYouTubeの視聴状況などを調べたりすることで、この人が興味をもっているのはどの車種なのかを明らかにできる。
これは、またとない機会を提供する。
他の自動車メーカーが単なるディスプレイ広告を配信しているのに対して、利用できる範囲内のあらゆるデータによって、よりリッチなコンテンツ体験を提供する機会が得られるかもしれない。
ユーザーが英国のブライトンに住んでいて、購入から3年のスポーツカーに乗っており、新車を探していることがわかれば、それに合わせてブランド体験を調整できる(たとえば、ユーザーがすでにスポーツカーを持っていて、リース期間がまもなく切れる可能性のあることを把握した上で、コンテンツにブライトン地域の販売店を含めることができる)。
あるいは、さらにスマートなやり方として、ライバル車と比較して優れているところを強調する動画をYouTubeで公開することもできる。
その後、CTA(Call to Action:行動喚起)によってその人物をブランドサイトに誘導できる。もちろんそのページは、車を購入してもらえるよう最も強く働きかけるために、動的にパーソナライズされたページだ。
他の人はどうあれ、僕だったら、そうした体験に大いに心を動かされるだろう。
例2:ノートPCの購入者
小売分野の企業の場合も同様だ。
Eコマース事業を運営している人が、購入ファネルの重要なポイント、つまり潜在的な顧客が購入製品を最終決定するときに、製品の価値を高められるような手を打ちたいとする。
これはどんな購入プロセスにも当てはまりそうだが、この例では、ノートPCについて考えよう。
この顧客の心のなかでは、次に買うノートPCはすでに2つ(MacBook AirかSurface Proか)に絞られている。これは、検索行動にレビューを読んだり比較サイトを閲覧したりすることが含まれていることからわかる。
この過程のなかに、自社のノートPCに関するレビューをリアルタイムで挿入できたらどうなるか考えてみてほしい。
インターネットで情報を探し求めている最中のユーザーを、僕たちの詳細な比較レビューが追いかけるのだ。インタラクションの可能性は巨大であり、さらにその中に、行動を喚起する動的なクリエイティブを組み入れれば、僕たちのサイトから発信するパーソナライズされた割引やインセンティブを提供して、「今すぐ購入」へと促すこともできる。
コンテンツ配信のプログラマティック取引、どこから始めればいい?
ここまできて、2017年の戦略に盛り込みたいと思ったとしても、いったいどこから始めればいいのかと戸惑ってしまうかもしれない。
すでに述べたように、市場や技術が比較的未熟であるという現状から、選択肢はまだかなり限られている。ただし、状況は急速に変化している。
予算に余裕がある人は、有料メディアミックスの一環としてすでにこのアプローチを採用しているだろう。そのような状況では、商業広告メッセージングではなく、コンテンツのほうにより重点を置いて戦略を練り直すことが課題となる。広告色をやわらげて、価値を高めることを目指してほしい。エージェンシーやチームと話し合って、テストするよう説得しよう。
広告代理店の多くでは、プログラマティック配信を「広告メッセージ以外のものを発信するプラットフォーム」として考えていないことはほぼ断言できる。そのため、「価値を高めた記事・動画・インタラクティブ資産などの配信メカニズムとしてプログラマティック取引を利用すれば、強力になるはずだ」ということを広告代理店に理解してもらえるように、マーケターであるあなた自身が働きかけ、支援することを自らの使命としてほしい。
そうした考え方の転換は、他者に先駆けて試すだけの意志と能力のある人にとって大きな機会であり、幸いにも実際にやってみることのできる使いやすいツールがたくさん提供されている。
中小企業向けのプログラマティック
大多数がそうであるように、自由に使える予算が少なく、Cadreonのような企業独自の技術を持つグローバルネットワークエージェンシーを利用できないからといって、運がないと思ってはいけない。
この市場に特化して設計されたプラットフォームは増え続けているからだ。
個人的に気に入っているのはAdmedoだ。これはプログラマティック経験がほとんどないか、まったくない人にとって使いやすいシステムになっている。独自のDSP(デマンドサイドプラットフォーム)を備えており、思いのままにカスタマイズできる。その結果として、いくつか素晴らしいプラットフォームも生まれている。
その他に検討すべき価値のあるものとして、以下を挙げておこう。
ZypMedia――地域での広告キャンペーンやジオロケーションが重要なビジネスに最適だ。
Pocketmath――ターゲティング、クリエイティブ、配信を完全にコントロールしたい小規模事業者には、これも魅力的な選択肢だ。
Brandzooka――動画クリエイティブが中心のキャンペーンを検討中の人に適している。
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