USPで仕事の成果を伸ばす方法――検索マーケ担当でもブランド担当でも(USP活用 後編)
USPとして自社独特の強みを定めても、CEOやCMOでなければそれを活かせない? そんなことはない。検索でもコンテンツでもブランディングでも、そのUSPを活かして仕事の成果を伸ばす方法はある。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。前編では差別化の重要性と本当に必要なUSPとは何なのかを見てきたが、後編となる今回は、USPをどのような形で自分の仕事に取り入れていくかを紹介しよう。→まず前編を読んでおく
この話がわれわれにとって重要な理由
OK、よくわかった。差別化は必要だ。それも、関連性を有し、価値があり、自分を守れて、持続性のある形でなければならない。
だが、われわれはCEOではないし、CMOでさえない。全社レベルでの変化を起こす力などない。
なぜこれがわれわれにとって重要なのだろうか。
デスクに置かれたプレートの肩書きがなんであろうと、だれもが変化を起こせると、私は確信している。
確かに、われわれの役職では、本日ただちに全社員のミーティングを召集することはできないだろうし、明日いきなり会社の方向性をがらりと変えることもできない。だが、自分が関わっている部分の仕事に変化を加えることはできる。
役職や担当地域に関係なく、自分の会社のUSPや顧客のUSP、さらにはコンテンツそれぞれのUSPは知っておくべきだ。そして、そのUSPを、あなたの仕事のあらゆる領域に臨機応変に適用しなければならない――SEO担当者や、リスティング広告担当者だったとしてもだ。
ここで、「Mechanics」(修理)という言葉の検索結果ページを例にしてみよう。
ご覧のとおり、この検索結果は地域色が非常に強いが、だからと言ってあなたが目立つことができないわけではない。
たとえば、どのAdWordsの結果も、1つを除いて、タイトルには「Mechanics」(修理)という単語が1つあるだけだ(検索結果上部に表示されている広告は、説明文が1行加えられているとはいえ、実際のタイトルは「Mechanics」だけだ)。
だが、1つだけ異なっているタイトルでさえ、その会社のUSPを示す上で優れた仕事をしているわけではない。「Mechanics at home」とは何だろうか。だれの家なのか。顧客のほうか企業のほうか?
私はスティーブ・クルーグ氏の著書『Don't Make Me Think』(考えさせてはいけない、邦題『ウェブユーザビリティの法則』)が大好きなのだが、その知識をもってこの検索結果の例を見ると、「よくわからないことが多すぎて、クリックする気にならない」ことに気づく。せめて「出張修理」、可能ならば「修理、ご自宅まで急行」といった風にすれば、半角25字までという制限を守りながら、要点をずっとはっきりさせられる。
AdWordsを利用しているのなら、毎月の支払額の多寡にかかわらず、上位10~15のキーワードのトラフィック量を確認し、業界の他社ブランドから自社をどれだけ差別化できているか評価してほしい。USPに注目させる広告文をテストし、成果を出そう。
ここではAdWordsのテキスト広告を例にあげただけだが、同じ考え方はあらゆるマーケティングに例外なく適用できる。
title要素とmeta descriptionタグ
先ほども少しだけ触れたが、USPを持つのは企業だけでなく、各コンテンツに独自のUSPを持たせることもできるし、また持たせるべきだ。title要素とmeta descriptionタグを活用して、自社のコンテンツと競合他社のコンテンツとの違いを明確にして、検索した人がクリックしたくなるような形で示そう。USPで優位性を確かなものにしよう。
特定のニッチ分野で強固なブランドをすでに築いているなら、すばらしいことだ。それを利用して他社より優位に立てる。実際には他の強固なブランドと競争していることのほうが多いかもしれないが、そのような状況では、「他社のコンテンツと差別化できるものは何か」と自問しよう。考え付いた答えが、あなたのコンテンツのUSPだ。title要素やmeta descriptionタグでこれをアピールし、CTRの上昇を見守ろう。
自社サイトの分析に着手し、オーガニック検索によるランディングページの上位10~15位を見て、差別化がどれほど功を奏しているか確認することを推奨したい。
title要素に変更を加えるのは、インバウンドを呼び込んでくれる金鉱に悪影響が及ぶかもしれないという心配があるかもしれない。テストを行い、USPに注目が集まるようmeta descriptionタグを変えてみよう。1時間ほどの作業で、SERPで順位を多少とも押し上げる変更ができるかもしれないのだから。
ブランディング
ここで、デジタルマーケティングの世界から出て、ブランディングの世界を眺めてみよう。TOMS Shoesは、Nike、adidas、Reebok、PUMA、New Balanceといった名だたる大企業と競合している。
マーケティング予算の豊富なこうした企業と正攻法で戦おうとしても、TOMSに勝てる望みはない。だからTOMSは、自社を差別化し、USPを作り、あらゆる機会を捉えてUSPを広める方針をとった。
具体的には、彼らは「One for One」(1足の購入で子供たちに1足を贈る)という標語で自社をブランディングした。これをトップページのtitle要素に入れ、発行するあらゆる販促資料に記載し、サイトを訪問するすべての人の目に第一に飛びこむようにした。そして、サイト全体に「善行に参加しよう」という行動喚起を仕掛けた。
2013年後半に起きたスキャンダルも一因となって、今では、TOMSが実際には非営利組織でないことは多くの人が知っている。だが、この件についてどう思うかは別として、TOMSのマーケティング戦略はその最終決算にプラスの効果をもたらした。Fast Companyの控えめな見積もりでも、2013年のTOMSの売り上げは2億5000万ドルとされており、3億ドル近くに達しているとする見方も多い。TOMSが名だたる大手企業と競合していることを考えれば、この取り分は決して悪くないだろう。
あなたがこの問題に関してどのような立場に立つかはともかく、TOMS Shoesは、自社ブランドを業界の大手企業と差別化する上で驚くべき仕事を成し遂げたのだ。
自社のUSPを知り、あらゆるチャンスを捉えてUSPを広めよう。
これは、繰り返し心に刻む価値がある。
USPを知り、title要素、広告文、ページ内の文章、ブランディング、その他のマーケティングキャンペーンなど、あらゆるチャンスを捉えてUSPを広める。オンラインでも、オフラインでも、差別化を図る。
そして、最初に紹介した言葉を忘れないでほしい。
大勢の後を追いかけている者が先頭に立つことは、まずない。
独り行く者は、未踏の地に立つ自分を見いだすだろう。
このシンプルな文から、膨大なマーケティングの知識を得ることができる。この言葉に耳を傾け、群衆から抜け出せば、成功が訪れる。
ソーシャルもやってます!