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御社の「強み」は、本当に価値のあるUSPですか?(USP活用 前編)

USPは、顧客にとって価値があり、競争における優位性を生み出し、保てるものでなければならない。

他社と違ってさえれば、それが自社の強みになるわけではない。USP(Unique Selling Proposition)つまり自社独特の強みは、顧客にとって価値があり、競争における優位性を生み出し、保てるものでなければならない。

この記事の内容はすべて筆者自身の見解であり(ありそうもないことだが、筆者が催眠状態にある場合を除く)、Mozの見解を反映しているとは限らない。

大勢の後を追いかけている者が先頭に立つことは、まずない。

独り行く者は、未踏の地に立つ自分を見いだすだろう。

この言葉を残したのは、アラン・アシュレー=ピット(本名フランシス・フィリップ・ワーニグ)だとかアインシュタインだとか諸説あるが、だれの言であろうが、この力強いメッセージの本質が失われることはない。

ここには非常に重要で、この言葉を心に刻み込まなければ見すごしがちで、人生のあらゆる場面で有効な教訓がある。それは、愛や幸せといったことからビジネスやマーケティングに至るまで、競争相手のやり方を真似るだけで、自分で道を切り開くことを怠れば、大きな過ちを犯すことになりかねないということだ。

マーケターなら差別化の重要性はだれもが痛感しているが、僕たちは人生の大半を通じて、普通であることを求めるよう教え込まれている

僕たちは青春時代のほとんどを、人と違ったことをしないようにと懸命に努めながら過ごす。「普通すぎるから」とか「人と極端に違っていないから」といっていじめられることはない。僕たちは友達が着ているのと同じ服を買ってくれと親にねだったものだし、みんなが持っているのと同じリュックサックを欲しがり、同じ自転車を買いたがった。

携帯電話が普及し始めると、親に平身低頭して、RAZRやStarTAC(グーグル検索しなくてもこれを知っていたら、ボーナスポイントをあげよう)を買ってくれとせがんだ。スマートフォンの時代になれば、iPhoneだ。

こんなもの、本当に欲しかったのだろうか? もちろんだ。ただし、理由は、最先端でクールな製品だったからだけではない。周りがみんな持っていたから欲しかったのだ。「持っていないのは自分だけ」なんて状況にはなりたくなかった。人と違っているのはいやだった。

しかし、ありがたいことに、僕たちは大人になるにつれて、普通でいようとすることの誤りに気づき始める。独立した個人へと歩みだし、人と違うことがすばらしい場合がしばしばあると理解できるようになるのだ。

とはいえ、個人レベルでは人と違っていることを歓迎し始めたからといって、必ずしもビジネスや仕事の場面でも同じように考えられるわけではない。

僕たちは、周りと同じであることを、無意識かつ自然に求める。人と違うことを求めるなら、競争で優位に立てるよう真に独特な存在になりたいなら、そうなるように努力しなければならない

本当のところ、だれだって人とは違う人間になれる。実際、だれもが非常に異なっている。同じDNAを持つ一卵性双生児でさえ、はっきりと違う個性を持つことは多々ある。

しかし企業の場合、本当に難しいのは、顧客にとって適切で価値があり、優位性を生み出せるような形での差別化を図ることだ。

売れる製品やサービスは、他のあらゆる製品やサービスと大きく異なっている。これはきわめて単純だ。そして、きわめて難しい。

オースティン・マッギー著『Brand Is a Four Letter Word』より

Revel Atlantic Cityの例を見てみよう。Revelは、2012年にアトランティックシティに建設された70階建ての豪華カジノ付きホテルだ。

Revelと同じクラスのカジノは、アトランティックシティには存在しない。しかし、それには理由がありそうだ。アトランティックシティのことをよく知らない人でも、この街の観光サイトにアクセスすれば、5つの大型バナーが目につくのだが、そのうち、ギャンブルについてのバナーは1つもなく、3つは遊歩道で開催されるイベントに関連するバナーだ。

サイトの中に進むと、これはさらにはっきりする。カジノへの言及はまるでなく、出てくるのはビーチや遊歩道やショッピングのページばかりなのだ。

要するに、アトランティックシティという土地に、本格的なギャンブラー向けの市場は存在しない。それがあるのはラスベガスだ。そのため、Revelが独自の強みを有しているからといって、顧客をこのリゾートに呼び込んで、決算報告を黒字にするまでの力は持ち得なかったのだ。

2012年第2四半期、Revelは3,517万7,000ドルの純損失を計上し、続く第3四半期には、損失が3,683万8,000ドルに拡大している。

USPを作り出すこと」は、重要だと言われる。USPとは「Unique Selling Proposition」の略で、「自分のところだけが持っている独特の強み」を意味する言葉だ。しかし、単にUSPがあるだけでダメなのだ。そのUSPは、オーディエンスにとって価値があり、競争における優位性を持つものでなければならないのだ。

簡単そうに聞こえるだろうか。では、ここで大事な注意点を。この優位は、長期間にわたって物理的に可能な限り持続できるものなければならない。

「競合がこの強みを完全に真似るには、どのくらい時間がかかるだろうか?」

USPを考えるにあたっては、こんなことを自分に問い掛けてほしい。

競合がこの強みを完全に真似るには、どのくらい時間がかかるだろうか?

この質問に対する答えを探り、競争相手が巻き返しを図ってあなたの成し遂げたことをそっくり真似するとしたらどんな対策を打てるのかを、見つけ出す必要がある。この実例を見たければ、グーグルとBingの争いを見てみるがいい。あなたのUSPがどんなに優れていても、あっさりとあきらめる競合企業などない。ほとんどの企業が、何らかの形で軌道修正したり適応したりするだろう。

知っている人は知っているだろうし、よく知らないという人もいるかもしれないが、シアトルのコーヒー企業、スターバックスの例を見てみよう。同社は長年にわたって、喫茶事業のレベルアップを幾度も試みてきたが、成果はわずかずつしかあげられなかった。だが、同社が本当に苦労してでも参入しようとしていたのは、ペストリーやパン、デザート、フードの市場だった。

これらの市場では、他店のほうが大きな成功を収めてきた。彼らは、高品質の紅茶やベーカリー商品が、自社をスターバックスという(たとえ話をするならば)オオカミから差別化するUSPだと考えていた。そして、彼らのレンガ造りの家が、オオカミから自分たちをこれからも守ってくれると考えるのも当然だった。

ThinkStock/iStock/Madredus
ThinkStock/liquidlibrary/Dynamic Graphics

だが、現実はおとぎ話と違い、煮え立った鍋の中にオオカミが落ちて終わりというわけにはいかない。

競争相手の機敏な動きを決して見くびってはならない。競争上の不利を覆そうとしているときは、なおさらだ

自社による製品やサービスの改善では競争相手を打ち破れないとなれば、勝てる別の会社を買収するという選択肢はいつだってある。

スターバックスは、数か月間の交渉の末、ベーカリーのLa Boulangeの買収で合意に達したことを2012年6月4日に発表した。「主力のフード製品のレベルを上げ、高品質で職人の技が光るベーカリーブランドを築く」ためだ。

スターバックスとは直接競合していないような中小規模のカフェやベーカリーショップだったとしても、いつだって新たな挑戦者は迫ってくる。

実際、こうした喫茶店が、自分のUSPを守るレンガの壁の中でつかの間の安心を得ている間に、同じ2012年の大晦日、オオカミは鼻息荒く、多くの資金を紅茶販売のTeavanaに一気につぎ込んだ。スターバックスは、6億2,000万ドルというきわめて安い買収額で、Teavanaを完全子会社化したのだ。

批判のあるなしは別にして、この話は企業、とりわけ十分な資金力のある企業が機敏に動く能力を持つことを鮮やかに物語っており、競争相手の優位を崩すために並外れた力を発揮することが多いという事実を示している。

スターバックスは7か月のうちに、市場のマイナープレイヤーを脱して、紅茶やペストリーで優位に立つために必要なツールをすべて手に入れたのだから(ここのラズベリーパウンドケーキを食べたことがあるだろうか、最高だよ)。

この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。差別化の重要性を訴えた前編に引き続き、後編となる次回では、USPをどのように自分の仕事に活かしていくかを見ていく。→後編を読む

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