[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

刺さるメッセージを作るためのポイント6つ ! 「ポジショニング」「バイヤーペルソナ」「USP」を明確にしよう

マーケターコラム、今回は村石怜菜氏。適切な対象に適切なメッセージを作るためのポイントを紹介します。

みなさん、こんにちは。村石怜菜です。

過去2回*、プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)について紹介しましたが、その職務領域は明確に線引きしにくく、グレーであると言われています。企業やサービスなどによっても業務や担当領域、責任範囲、KPIは異なることも多々。しかし、PMMの役割として必ず共通するのは「プロダクトのポジショニングを明確に定義し、マーケットに対して適切なメッセージを作り、適切な対象に届ける」ということではないでしょうか。これはPMM、プロダクトマーケティングのみならず、すべてのマーケティング活動に共通する役割だとも言えるでしょう。

そこで今回は、「プロダクトのポジショニングの明確化」「マーケットに対しての適切なメッセージ作り」のポイントについて、紹介したいと思います。

*過去記事:
プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)になりませんか?
プロダクトマーケティングを知るために、押さえてほしい3つのこと

ポジショニングを明確にし、マーケットに対し適切なメッセージを作る

「プロダクトのポジショニングを明確に定義し、マーケットに対して適切なメッセージを作り、適切な対象に届ける」という役割を果たすため、PMMは次のことを行っています。

  1. 自社のプロダクトのポジショニングを明確にする
  2. マーケットに対して適切なメッセージを作る
    → USP(ユニーク・セリング・プロポジション)を届けるための具体的で明確なメッセージを作る
  3. カスタマーエンゲージメントを高めるマーケティング活動を実施する
  4. 3をフェーズに合わせて展開する

今回は、1、2を行う際のポイントを紹介していきます。

ポイント1:USP(ユニーク・セリング・プロポジション)を理解してメッセージを作る

マーケットに対して適切なメッセージを作るにはUSPを理解する必要があります。USPとは「ユニーク・セリング・プロポジション(Unique Selling Proposition)」というマーケティング用語の頭文字を取った略語で、「ユニーク・セリング・ポイント(Unique Selling Point)」と呼ばれる場合もあります。明確かつ簡潔に自社プロダクトの強みを顧客に伝わりやすくしたものを指し、プロダクトの強みだけでなく、そのものによって消費者にもたらされる具体的な利点のことを言います。

利点というと「品質と比較して、価格はわりと安価」といったものが思い浮かびがちですが、そうではなく「他の競合にはなく、自社にはあるもの」=「独自性(Unique)」と捉えれば良いと思います。マーケティングでもストーリーテリングが重要な時代。この独自性こそが要諦となるのです。

USPはなぜ、誰のために定義するのでしょうか。それはマーケターだけに関わらず、すべての社員が、「顧客(顕在/潜在)が感じる、直感的でふとした素朴な疑問」に素早く答えるためです。USPを定義することは、マーケティング戦略を練る際だけでなく、それ以外の領域でも役立ちます。

例えば、ブランディング、それに使用するコピーライティングなど、マーケティング全般における意思決定のほかにも、営業活動全般にも活用できます。PMMやマーケターはプロジェクト単位の部門横断チームと仕事をすることが多いので、プロダクトの仕様や詳細を深く知ることができます。そうして知り得た専門的で難解な情報や専門用語を、一般消費者に向けて、マーケティングやセールスの主要メッセージに変換することも役割の1つです。

ポイント2:ターゲットが持つ「なぜ・理由」を正しく理解する

プロダクトのポジショニング、USPなどを定める際には、ターゲットとなる企業やユーザーを理解することが不可欠です。

  • ターゲットが抱える問題とは何か
  • ターゲットはなぜ問題を抱えているのか
  • ターゲットはどのように解決手段を見つけるのか
  • ターゲットがプロダクトをどのように評価し、誰が購買の意思決定をするのか

これらのようなターゲットが持つ「なぜ・理由」を正しく理解することで、ポジショニングとUSP、メッセージを定義することができます。

ポイント3:立ち戻るためのバイヤーペルソナを設定する

ターゲットを理解するために用いられる王道の手法で思い浮かぶものは何でしょうか。「カスタマージャーニー」や「ペルソナ」ですね。いざプロダクトを作るとなるとどうしても「ユーザーペルソナ」(あるいはカスタマーペルソナとも呼ぶ)に着手しがちです。ユーザーペルソナは、そのプロダクトの機能を利用する人を想定し、BtoCであればそのプロダクトを利用する消費者を、BtoBであれば業務上そのプロダクトを利用する人(マーケター/営業スタッフ/経理など、プロダクトの機能による)を想定して作成します。

これとは別に「バイヤーペルソナ」というBtoBマーケティングのフレームワークがあります。バイヤーペルソナは「誰に何を売ろうとしているのか」を正しく理解する手法の1つで、「オーディエンスペルソナ」「マーケティングペルソナ」と呼ばれることもあるようです。

バイヤーペルソナとは、BtoBマーケティングにおいて、自社プロダクトを購入する顧客(潜在/既存)をペルソナ化したもので、営業活動や市場調査、SNSリサーチなどを通して得た顧客企業データなどをもとにし、設定されます。

ポイント4:BtoB担当者(ターゲット)を深く理解する

BtoBにおけるバイヤーペルソナを作成するにあたっては、バイヤーの意思決定のフローである「バイヤーズジャーニー」を理解する必要もあります。窓口としてやりとりする担当者(ターゲット)の企業における立場や、周囲との関係性などが複雑に絡みあうため、ペルソナを通した深いターゲットの理解が重要になってくるのです。

バイヤーペルソナを決める際に一点注意したいのは、デモグラフィック情報(人口統計的な情報)は含まれるものの、プライベートな情報はユーザーペルソナよりも重要視されていないことです。BtoBプロダクトの購買検討から決定に至る過程においては、その担当者の趣味嗜好よりも、導入を検討するきっかけやモチベーション、導入の決め手など、企業観点の判断基準がとても重要になるためです。

ポイント5:バイヤーペルソナを作る際には各部署からの情報が重要になる

「バイヤーペルソナ」と聞いて、「そんなもの作ったことがない」と不安になる方も多いでしょう。私もユーザーペルソナは作りますが、バイヤーペルソナと検索してヒットするようなフォーマットでは作成したことはありません。

しかし、BtoBもしくはBtoBtoCのプロダクトにおいては、プロダクトのコンセプトなど、バイヤーペルソナのもととなる情報はヒアリングしているはずです。「あの企業に導入するのを想定するならAの機能が必要」「この企業にはお抱えのベンダーがいるから、部長のBさんとしてはAPIで連携して導入したいはず。その方が工数も短縮化でき、導入確度が上がる」など、こういった議論を重ねているはずです。

こういったバイヤーペルソナに関連する情報は、営業だけでなく、CS(Customer Satisfaction)チーム、広報といった多方面のメンバーから得られることが多いです。各人が各職務を遂行するために必要な情報ですし、さらに、1つの共通認識として人物像が定められれば、自社からのメッセージとプロダクトに一貫性を出すことができます。

いつでも情報を参照できる情報がギュッと濃縮されたバイヤーペルソナが1枚でまとまっていれば、確実にプロダクトのポジショニングやメッセージングの精度・理解度も上がり、プロダクトの成功に貢献するのではないでしょうか。

ポイント6:他部署や周辺環境の情報を把握する

自社のプロダクトの強みや弱み、独自性を理解するためには、日々プロダクトチームと一緒に肩を並べ、仕事をするだけでなく、営業やCSチームといった顧客との接触があるチームとの日々のコミュニケーション、情報交換も大変重要だと感じています。

プロダクトマーケティングを知るために、押さえてほしい3つのこと」で説明した「アジャイル手法」の1つであるスクラムのチームにビジネスサイドがいれば、積極的に会話・ヒアリングをし、もしいないようであれば、定期的な情報交換の場を設定しましょう!

これは自分自身の経験で痛感していることですが、顧客の声というのは、自分たちの想像よりも確かで、リアリティ溢れる宝の山のようなものなのです。業界によるとは思いますが、BtoBのSaaSはインサイドセールスの手法を採用している場合も多く、製品や関連情報は世の中に溢れていて、顧客の方が情報を持っている場合もあり、情報の非対称性が存在することもあるということを肝に銘じていなければなりません。

営業やCSでは日常的な情報だとしても、プロダクトチームにとっては、逆の場合が多くあります。仮に自社のプロダクトの品質が世界一高く、価格も競合と比較して安価だったとしても、自動販売機のように勝手に売れ、右肩上がりになるというのはなかなか起きないことです。そのため、プロダクトばかりを見るのではなく、社内の他部署や周辺環境の情報を把握しておくことも大切です。

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