1億総マーケター社会が到来!? マーケターはどうリスキリングすれば良いのか?
こんにちは。花王株式会社の辻本です。
最近、「基本情報技術者」「応用情報技術者」資格に続いて「ITストラテジスト」資格を取得しました。
「マーケターなのになぜそんなIT系の資格を?」と思うかもしれませんが、自分なりのリスキリング(Reskilling)の取り組みの一環です。
リスキリングとは、働き方や業務の変化に対応するため、新たなスキルや知識を習得することで、近年ではDX人材を育成する観点から、経済産業省も注目しています。
今回は、私の経緯を事例として、マーケターのリスキリングについてお話しします。
1億総マーケター社会の到来
マーケターは専門職だと言われていますが、果たしてそうでしょうか?
確かにマーケティングを本職とする人からすれば、専門職だと考える方が多いかもしれません。
しかし私は、「現代は“1億総マーケター社会”である」と捉えています。
昔と違って自分で事業を始められる手段が数多く存在し、誰でもすぐに経営者・マーケターになることができるからです。
あらゆるツールやサービスが普及した結果、誰でも簡単に事業を始められる社会になりました。
例えば、BASEのようなネットショップ作成サービスを活用すればオリジナルグッズを販売できますし、VOCALOIDで作曲し楽曲提供サービスに登録をすれば、作曲家として収益を得ることも可能です。
事業を継続させるには、マーケティングの知識は欠かせません。つまり、本職がマーケターではなくとも、副業マーケターやクリエイター兼マーケターのような人たちが無数に存在する時代なのです。
本職マーケターの私は、1億総マーケター社会を「自分の可能性を広げてくれる時代になったな」と歓迎する一方で、恐ろしい時代になったとも感じています。なぜならば、本職マーケター以外とも競い合わなくてはならなくなるためです。
例えば、あなたがある玩具メーカーのマーケティング部長だとして、子どもたちの興味喚起を図るために、動画コンテンツをソーシャルメディアで配信すべく、外から優秀な人を招きたいとします。候補者は次のとおりです。あなたなら誰を雇いますか?
- 他社に勤めるマーケター(副業OK)
- 数々の企業を渡り歩いたマーケティングコンサルタント
- 子どもたちに大人気のYouTuber (他企業での商品プロデュース経験あり)
誰を選ぶか、人によって判断はさまざまかもしれませんが、要は、マーケティング業務をマーケター同士ではなく、様々な才能・経験を持つ方々と奪い合うような構図が出てくるわけです。
これは本職マーケターにとって、自身の存在価値を問われる状況です。
私は今から3年前、入社5年目のときに「1億マーケター社会の到来」を想像して、「自分はマーケターとしての存在価値を今後も発揮できるのか?他分野で経験を積み、マーケティングの才能がある人たちと渡り合えるのか?」と不安に思いました。
そこでリスキリングによって、本業では得られない経験や知識を数年間で獲得しようと志しました。
個人スキルアップと業務関連スキルアップ
まず、2つのスキルアップ方針を立てました。個人スキルアップと業務関連スキルアップです。
- ①個人スキルアップ:個人で収益を得る構造を作り出し、マーケティングのテストができる礎を作る
- ②業務関連スキルアップ:日常業務の周辺領域にあるIT関連の知識を習得し、実務に活かす
この2つを意識してプライベートの時間を活用すれば、マーケター専門職として貴重な存在になれるのではないかと考えました。
※個人のスキルアップの内容については、以前の記事にまとめています。ご興味のある方はこちらをお読みください。
ITストラテジストを目指した背景・合格までの道のり
ここからは「②業務関連スキルアップ」に焦点を当ててお話しします。
入社5年目(今から3年前)の私は、部署再編により「デジタルマーケティング部」から「メディア企画部」へと移りました。デジタルマーケティング部には、以下の3つの組織がありました。
- デジタルコミュニケーションを手掛ける組織
- データ基盤を構築し分析を手掛ける組織
- ブランドサイトやサイト内タグの設計管理等を手掛ける組織
3つの組織のリーダーは情報交換して、部長のもとで花王のデジタルマーケティングを進化させる戦略を構築していました。
その過程を見て、私は「『情報インフラを整え、収集したデータをもとに分析し、コミュニケーションに活かす』という企業の情報戦略には、組織間の情報交換が欠かせない」と学びました。同時に、「この3領域を1人でこなせるマーケターになりたい。それぐらいでないと、1億総マーケター時代を生き残っていけないのではないか」という若手ならではの野心的な考えが頭に浮かびました。
3領域をこなせるスーパーマーケターになるには、「知識」と「経験」が必要です。ただ、経験を積みたいからといって、しかるべき部署へ確実に異動できる保証はありません。
よって、情報インフラを整えてデータ分析を行う「経験」は、個人スキルアップに関わるテストマーケティングの方で積むとして、まずは「知識」を身につけようという考えに至りました。ここで登場するのが「ITストラテジスト」という資格です。
ITストラテジストとは、「経営とITを結びつけて経営戦略や事業戦略を立案する人」のことで、CIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)、ITコンサルタントなどが取得するような国家資格です。
経済産業省所管の独立行政法人 情報処理推進機構(通称:IPA)が出題する試験には、経営戦略や事業戦略などの経営に関わる知識だけではなく、情報セキュリティやデータ分析、インフラ構築に関する問題、論文問題(合計2,000字程度)も出題されます。
この資格を取得すれば、ITに関する広範な知識をもつ人間だと認めてもらえると考えた私は、まずは基本情報技術者試験、次に応用情報技術者試験を受験して少しずつ知識を蓄えては資格を取得し、今年ついにITストラテジスト試験に合格しました。30歳までに取得という目標を掲げていたため、非常に嬉しかったです。
入社5年目から約3年にわたりITに関する知識を習得しながら、マーケティングの実務経験を積んだ私が学んだことは大きく2つです。
- ①情報戦略は経営戦略・事業戦略が根底にあって初めて成り立つ
- ②最新テクノロジーの活用は、顧客理解とブランドとの調和がないと技術偏重の試みで終わる
この2つは次回以降のコラムで改めて説明します。
リスキリング〜自分の手札は自分で増やそう〜
世界的に有名なマンガ『ピーナッツ』で、作中に登場する犬のキャラクター・スヌーピーはこういうことを言います。
「配られたカードで勝負するしかないのさ…それがどういう意味であれ」(『完全版 ピーナッツ全集 21』119ページ)
自分にないものを求めて嘆くのではなく、自分にあるものを活かして人生をいかに豊かにできるかという前向きな意味があると私は解釈しています。
しかし、リスキリングの観点でいうと、スヌーピーの言葉を少しだけ変更したいです。
自分の手の中の「配られたカード」だけでなく、広く周りを見渡せば、さまざまなカードが散らばっています。そのカードを宝探しのようにワクワクしながら集めて、手札を増やしていくというマインドが大事ではないでしょうか。
“宝探しのようにワクワクしながら”と表現した理由は、学習は苦痛であってはならないからです。
そこはスヌーピーの教えに従って、「手の届かないところにあるカードは無理して拾わない。拾えないことを嘆かない。好きこそものの上手なれを意識する」ように、私は心がけています。
これから先、私は“マーケター 兼 ITストラテジスト“として、経営戦略や事業戦略に沿った形で、ITを駆使したマーケティングができるように、経験を積んでいきたいと思います。
このマーケターブログでは、マーケティングだけでなく、DXを推進する方々にも参考になるような話をする予定なので、今後ともご期待ください。
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