[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

コミュニケーション施策の成功確率を高めるために、花王のマーケターが意識している4つのこと

マーケターによるリレーコラム、今回は花王の辻本光貴氏。施策目的に合う最適な一手を選ぶために検討していることについて。
花王 辻本光貴氏

花王株式会社の辻本です。

生活者とのコミュニケーション施策を立案する際、マーケターは無数にある打ち手の中で、目的に合う最適な一手を検討します。

ただ、その最適な一手を選ぶことが難しく、私はいつも悩んでいるのですが、その際、成功の確率ができるだけ高くなるように、「IT・メディア・個人の多様性・オークション」の4つを意識しています。今回はこの4つについて紹介します。

①最新ITはパートナーから学ぶ

ITの発展により、新たなメディアやアドテクノロジーが生まれ、マーケターの打ち手は日々増加しています。

マーケターは最新のITを熟知する必要はありませんが、デジタル活用が当たり前の現代に、ITを知らずに戦略と戦術を練るのは地図を持たずに山を登るのと等しいです。施策の是非を判断するためにも、必要な最低限の知識は持っておかなくてはなりません。

たとえば、AI・IoT・ブロックチェーン・MR(複合現実)・ビックデータなどの言葉の定義や、そうしたITが成り立つ原理を説明できますか。普段使用するパソコンなどのデバイスと、サーバーの間でどのような通信がなされているか想像できますか。

ざっくりでも良いのでITの仕組みを知ることは大事です。仕組みを知らなくても言葉を知っていれば、IT活用した施策は実行できるかもしれません。しかし、「この仕組みを応用すれば、おもしろい取り組みできるだろう」と自分で新たな企画を練ることは難しいです。

ITはマーケティングを表と裏で強化します。

表面は“人々を感動させる新たな体験の創出”、裏面は“適切な人にアプローチする確率の向上と業務効率化”です。両面を設計できるマーケターが今後は求められると私は考えます。

最新のITに関して、正確な情報を最速で入手するにあたり、一番頼りになるのは、パートナーである代理店やツールベンダー、プラットフォーマーの担当者です。

「何ができるか」「どのような仕組みか」「何が必要か」「メリットとリスクは」などについて、日々彼らと会話を交わし、情報収集し、ITへの理解を深めることで、最新の技術を他社に先駆けて活用することで、よりユーザーと効果的なコミュニケーションを取れる可能性が高まります。

②メディアの利用動向に敏感になる

企業が生活者とコミュニケーションをとるために、メディアは重要な手段の一つです。

私はメディアを選定するときに、「届けたい顧客に情報伝達する可能性」を考えます。なぜなら、打ち手は無限でも、人間の可処分時間は有限だからです。その際、ターゲットとなる生活者を一人ひとり異なる存在と見るか、デモグラフィックで集合体として見るかによって、選定するメディアと打ち手が変わります。

私は「30代男性」ですが、1日の中で空いた時間は下記のように使います。

  • 朝:TVのニュース番組
  • 夜:TV・YouTube・TVerの動画(1〜2時間)・SNS(10分程度)・読書・ゲーム

1週間単位であればSpotifyやレシピ系のアプリが入ってきますし、1ヵ月単位ならビジネス情報誌が入ってきます。

つまり私に広告を流すためには、上記のいずれかのメディアではないとアプローチができず、確度高くアプローチできるのはTVかYouTubeかTVerです。

一方、私を個人ではなく、「30代男性」という集合体として見ると、メディア消費に異なる傾向が出るかもしれません。

以前に、Twitter・Instagram・SmartNewsの女性の利用状況を、美容関心度の高さで比較しました。詳細は記載できませんが、当時は下記のような結果が出ました。

  • 美容関心層の方が、3つのメディアのいずれかを使っている可能性が高い
  • 非美容関心層の方が、Twitterのみ、Instagramのみのユーザーが多い
  • SmartNewsは美容関心の有無でメディア利用に差が出にくい

漠然と「美容関心層はInstagramの利用率が高い」と思い込んでいた私にとって、学びになりました。

限られた可処分時間をどのメディアに割くのかは個人の好みと、その人の属性に起因しています。人によってはTwitterが好きな人もいれば、Instagramの方が好きな人もいます。それは各メディアのUIやUX、存在するコミュニティによって、生活者それぞれの使い勝手や、居心地の良さが変わるからです。

ただ、メディアの特性や利用動向は、常に変化しています。新たなメディアが生まれると生活者の余暇の過ごし方が変わりますし、それに応じてまたメディアの位置づけも変化します。

単にリーチの多さだけではなく、情報を届けたい人が普段どのメディアを使う確率が高いかを考えることで、正確にコミュニケーションがとれる確率を高めることができます。

③個人の多様性を念頭に置く

個人の多様性とは、コミュニティとの関係に基づく複数の人格のことです。デジタル世界にはアカウントという概念が存在し、1人の人間が人格ごとに異なるユーザーとして活動できます。

先ほど、「各メディアのUIやUX、存在するコミュニティによって、生活者それぞれの使い勝手や、居心地の良さが変わる」と説明しましたが、使用するメディアによって個人の人格(モード)は変わります。

具体例を挙げると、1人の人がInstagramではグルメアカウントを作り、Twitterではアイドルファンアカウントを作るようなイメージです。Instagram活用時には食に関する最新トレンドスポットや、有名シェフが監修したコンビニスイーツの情報を発信し、好きなアイドルが出る野外フェスや、アイドルとコラボした限定グッズが当たるキャンペーン情報を発信したいときにはTwitterを使います。なぜかというと、自分が築き上げたアカウントの人格を崩したくないからです(もちろん、アカウントの人格を気にしない人もいます)。

1stパーティデータの活用を進めるために、ユーザーIDの統合を進めている企業も多いかと思いますが、ことSNS内で発話を促すような施策の場合は個人の多様性を意識した施策立案、語りやすい土壌づくりが必要です。

④広告のオークション原理を考慮する

デジタル広告のターゲティングには、マーケティングの“ターゲティング”とは少しニュアンスが異なり、オークション原理が含まれています。そのため、デジタル施策を立案する際、「それは本当に必要なターゲティングだろうか」と社内で目線合わせをするようにしています。

ターゲティングをかけると対象者が減るため、対象者の希少性が高まります。さらに他社も同じ人に広告を配信する場合は、オークション原理が働き、より多くの予算を投資しないといけません。

よって、たとえば小学生以下の子どもがいる女性にターゲティングしたいときには、必ずしも「小学生以下の子どもがいる女性」というデータを使わずに、だいたい30代女性であれば〇〇%の確率で子どもがいるから、デモグラフィック(ユーザーの年齢や性別等の情報)をもとにした配信でも良いという考え方もあります。

少し高めの金額を払ってでも確実に対象者に情報を届けるのか、ざっくりでもよいので、広く網を張りながら対象者に情報を届けるのか、確率と投資金額を天秤にかけるようにしています。

施策の投資対効果を検証する際には、配信手法を考慮に入れる必要があります。絞り込んだターゲティング広告は、デモグラのみの緩いターゲティング広告よりも投資対効果が良いのが前提だからです。

たとえば、デモグラのみの緩いターゲティング広告と、購買データ活用のターゲティング広告で態度変容効果が同じだった場合、購買データを活用してターゲティングする意味があったのかを問い直す必要があります。

こうした配信前の仮説と効果検証を繰り返すことで、商品ごとに最適なターゲティング方法を、目的に合わせて選択できるようになりました。

おわりに

ここまで紹介してきたように、テクノロジーとそれを活用する生活者を理解して、数学的な思考ベースで最適な一手を打つように私は努めています。

今回は触れていませんが、前回の記事で紹介したように、配信されるデバイスによって態度変容効果は変わります。また、各メディアの特徴に合わせて、生活者に確実にメッセージが届くようなクリエイティブ作りも重要です。

マーケティングの一要素であるコミュニケーション施策を立案するだけでも考えることが多いため、マーケティングは奥が深いです。苦労した上に失敗することもあります。しかしその分、成功したときの喜びは大きいです。

4月に入社した新入社員の方々、出社の機会が増えて対面で仕事をするようになった2年目や3年目の方々、異動でマーケティングに携わるようになった方々が、コミュニケーション施策立案で悩んだ際には、私の記事が少しでも役に立ちましたら幸いです。次回もお楽しみに。

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